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第5章〜転生王子は学寮で

新入生歓迎?

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 寮の部屋は8畳ほどの1人部屋だった。部屋の扉を開けると正面に窓があって、右に小さめの天蓋付きベッド、左に簡素な机と箪笥がある。
 荷物を箪笥側に置くと、すぐさまベッドにダイブした。思っていたよりもマットレスがいい。疲れも手伝って目を閉じたら寝てしまいそうだ。
 
 これから寮生活かぁ。懐かしいな。
 前世でも寮生活をやっていたことがある。その時は2人部屋だった。1年の時はルームメイトが人見知りな先輩で気を使い、2年の時はホームシックな1年生で気を使い、3年の時はヤンチャな同級生が一緒で気を使った。何でか一癖あるルームメイトに当たるんだよなぁ。おかげでどんなタイプも楽しんで受け入れちゃう性格が出来上がってしまった。

 何にしろ1人部屋なのは大変ありがたい。気を使わずにすむもんな。
 やっぱり王族とか貴族とかの子供もいるから学校側も配慮しているのだろうか。
 まぁ、そういう人たちにとっては、この部屋も施設も狭いものなのだろうが。
 
 だが、そもそも共同生活と言うものは不自由なものだ。
 俺の知っている寮は、2人部屋なのにここより狭かった。鍵もあってないような作りでプライベートもない。壁も薄かったから隣の部屋のいびきや音楽が漏れてきてうるさかったし。
 寮生活はワイワイしてて楽しかったけどなかなか大変なものなのだ。

 そう考えるとここは石造りだから部屋の中は反響するけど、壁が厚いのか隣の音は聞こえない。鍵もしっかりかかるようだし、環境としては良さそうだった。
 これだったら召喚獣出して話しててもおかしな人に思われないですむな。

 うとうととしながらベッドに埋もれていると、突然扉がバンッ!と音を立てて開かれた。
 「フィルっ!」
 呼ばれて俺は何事かとベッドから頭を上げる。見るとレイが扉を大きく開け放っていた。後ろにはカイルやトーマもいるようだ。
 しまった…頑丈な鍵があったって閉めなかったら何の意味もない。
 
 「せめてノックをしてから入ってきてよ。」
 文句を言ってもう一度ベッドに頭をうずめる。だがレイはツカツカと部屋の中に入ってきて俺を揺すった。
 「いいから起きろって。」
 「もぉ、どうしたの?」
 起き上がってベッドに座りながら、大きくあくびをする。レイは急かすように俺をベッドから立たせた。
 「先輩たちが、1年生は荷物を置いたら室内運動場に集まれって言ってるんだ。」
 その言葉に目を瞬かせる。
 「え?何で急に?」
 さっき寮長だと言う人から簡単な案内をしてもらったが、そんなこと一切説明もしてもらっていない。
 「とりあえず移動しながら話そう。」
 寮について早々に室内運動場?
 そのまま部屋の外へ連れ出されながら首を捻る。

 ステア王立学校は文武両道をうたい文句にしているだけあって、施設も大変充実している。
 寮内の施設は食堂や談話室や娯楽室だけでなく、室内運動場や自習室兼図書室なんていうのもあった。
 
 「何で運動場に集合か聞いてないの?」
 目をこすりながら聞く。
 「それが…新入生歓迎会だって言うんだけど……。」
 トーマもどこか戸惑ったような表情だ。
 はぁ?新入生歓迎会?ますますわからない。
 そういうものって皆がそろって改めて行うものではないのか?
 「まだ到着してない1年生いるんじゃないの?」
 入寮期日にはあと数日あるはずだ。
 「うん、そうなんだ。全員じゃないんだよね。平民の子は殆ど集まってるらしいけど。」
 トーマの言葉にレイは当然とばかりに頷いた。 
 「王族の子や貴族の子はいつも入寮がギリギリなんだ。だから集まってるわけない。」
 なのに今の時点で歓迎会?

 「あー…そういうこと?」
 寮生だった俺は何となく思い当る節があった。トーマはキョトンとして首を傾げた。
 「どういうこと?」
 「…手荒い歓迎でもあるんですかね?」
 カイルがうかがうように聞いてきた。俺はため息交じりに唸る。
 「手荒いかどうかはわからないけど…。」
 俺の学年の時は先輩に無茶ぶりされて、物まねとか歌とか歌わされたっけ。
 ここではどういった歓迎をするのか知らないが、王族や貴族の子が少ない時を見計らってのこととしたら嫌な予感がする。
 
 俺とカイルの予想にレイは「やっぱりかぁ。」とため息を吐いた。
 「初等部はそういうのなかったんだけどなぁ」
 げんなりした様子で肩を落とす。
 「とりあえず行かなきゃ…だよね?」
 トーマの言葉にお互い顔を見合わせた俺たちは、無言で深いため息を吐くと室内運動場へと向かった。

 個人部屋は2階3階にあって、俺たち1年の部屋は2階にある。大きな階段を降りると正面玄関のフロアで、その右脇が大食堂。食堂側の廊下を奥にしばらく歩き、渡り廊下で別の建物に入るとそこが室内運動場になっていた。
 室内運動場は小さな体育館くらいの大きさがあった。しかしその造りは体育館とは全く違う。地面は土だし、所々草や木が生えている。屋根もガラスで覆われ、さながら大きな温室のようだ。いや土の部分が大半なのだから、運動場にすっぽりガラスケースをかぶせた感じと言った方が早いかもしれない。

 俺たちが運動場に着くと、人だかりができていた。背の低い30〜40人ほどの塊は1年生だろう。そしてそれに対峙するようにしている40人ほどの一団は先輩方だろうか。1学年は50人〜60人と言う話だから…先輩方も2学年全員いるわけではないようだ。 

 そんな時、運動場の入口からドタドタと走って来る人物がいた。そうして先輩方側の先頭ど真ん中に立つ。
 先輩方はどの人もがたいが良いのだが、彼はひときわ体が大きかった。ヒューバートほどではないが、筋肉ムキムキである。中等部の生徒にしては年が上のように見えた。
 「よし!大体集まったな。」
 彼は胸を張ってそう言うと、熱い胸板を見せつけながら辺りに響き渡るように叫んだ。
 「俺は中等部3年ライン・マクベアーである!新入生を歓迎する!」
 
 彼を見た途端、レイを含めた1年生がざわめいた。
 「嘘だろぉ。」
 「マクベアー先輩卒業してなかったのかぁ。」
 「俺入寮日遅らせれば良かった。」
 辺りから小声で落胆の声が漏れ聞こえる。 

 「有名な先輩なのか?」
 他の生徒と同様に顔を青くしているレイにカイルがそっと聞いた。
 「いくつもの剣術大会で優勝してる人だよ。上流騎士の家系で戦闘スキルが高い上に、召喚獣も攻撃系。確か今16かな。」
 16歳?どうりで大きいわけだ。中等部は通常10〜13歳だもんな。
 カイルみたいに遅い年齢で入学したにしても、去年卒業できてなかったところをみると学問は苦手のようだ。

 「それでなんで皆ガッカリしてるの?」
 向こうには聞こえないようにか、極力声を潜めてトーマが聞く。レイはさらに向こうの様子をうかがいながら俺たちの耳に囁いた。
 「去年、初等部3年の剣術の授業に、後輩指導として先生が呼んだことあるんだよ。マクベアー先輩がどっかの剣術大会で優勝した時かな。そしたら20:1の試合やって怪我人続出しちゃって。それ以来皆苦手なんだ。」

 「……先生何で試合やらせちゃったかな」
 「俺もよくわからないんだよな。いきなり開始させられたし。先生もその中にいたから大丈夫かなぁって思ってたんだけど」
 20人の中に先生いたのかい。
 しかし、その先生の行動も変だな。大勢いたからと言っても剣豪に勝てるわけはない。試合するなら先生とマクベアー先輩とでやって、それを生徒に見せればいいだけじゃないか。

 「怪我人出たのに、先生止めなかったの?」
 青くなるトーマの肩に、レイはポンと手を乗せる。
 「初めの犠牲者が先生だからだよ。んで、骨折した状態で上の先生に叱られてた」
 「その試合の時レイはどうしたんだ?怪我したのか?」
 カイルが聞くと、にこりと笑う。
 「皆で一斉にかかって行ったんだけど、吹き飛ばされたふうを装って、そのまま気絶したフリした」
 多少呆れはするが、まぁ…責められないよな。初めの犠牲者先生目撃した後じゃ。 

 マクベアー先輩はざわめきを気にしないのか、明るい表情で俺たちを見渡す。
 「これから手合わせをしよう。俺は新しい1年生の力量を知りたい。君たちは俺達の強さを知って、これからの中等部生活の目標にして欲しいっ!!」
 マクベアー先輩はそう言うと、にっこり笑った。

 マジか……。





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 知り合いの方にオススメしてくださってありがとうございます。とても嬉しいです!プレッシャーですが頑張ります。
 誤字直しました。何かパソコンで入力してると…よく変な変換するんですよね。何故だろう。

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