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第5章〜転生王子は学寮で

一夜明けて

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 昼ごはんを食べてひと段落していた俺は、ベッドに寝転がりながらうとうとしていた。知らず知らずまぶたが下がる。
 すると俺の頬にふにっと押される感触があった。そして立て続けにふにふに押される。
 目を開けるとコクヨウが肉球で、俺の頬をつついていた。
 「あにひへんの何してんの?」
 ボーッとしながら言うと、コクヨウはポツリと呟いた。
 【解せぬ。】
 何が?
 【死にそうな目にあったのだろう?何故我を呼ばぬ。】
 ああ、歓迎会の事か。
 コクヨウの手を掴んでふにふにをやめさせると、諭すように優しく言った。
 「コクヨウ出したら大惨事でしょ。我慢してよ。」

 【我慢できるか。あれでさえ活躍したというのに!】
 コクヨウは俺の手から自分の足を抜き取ると、その足で勉強机の上を勢いよく差した。
 そこではコハクがピッピッピヨッとリズムを取りながら、羽を広げたり飛び跳ねたりしている。
 何だろうあの踊り……。
 活躍できてうれしかったのか、歓迎会の後からやけに浮かれてるんだよなぁ。 
 コクヨウは悔しそうにコハクを見つめると、再び俺に向き直り頬をつつくのを再開した。苛立ちをぶつけているのだろうが、なんだか肉球でマッサージを受けている気分になる。

 【アニキっ!俺も呼び出しかかんなかったっすよ?仲間っす!】
 【ぼ、ボクもです!】
 テンガとホタルが「ハイ!ハイ!」と短い手を挙げる。コクヨウはそれをチラリと見て、フンと鼻を鳴らした。
 【お前たちは戦闘系ではないではないか。我はこの新たな地に脅威を見せつけ、名を轟かせねばならぬのだ。】
 何か前にそんなこと言ってたなぁ。その野望本気だったのか……。
 トーマと出会った時、テンガにお株を奪われたのまだ根に持ってるんだな。
 てか、そんなニヒルな台詞はいても、人のほっぺたをふにふにしながらじゃ様にならんと思うのだが…。
 しかしテンガはブルブルと震えてコクヨウを見つめる。
 【アニキっ!かっこいいっす!しびれるっす!!】
 【カッコいいです!!】
 ホタルも小さな目をうるうるとさせてコクヨウを賞賛した。
 2匹ともピュアなのか天然なのか…。 

 「それにしても、あんなに寝たのにまだ眠いなぁ。」
 俺は起き上がって、大きくあくびをした。その勢いでコクヨウが転がったので、ベッドから落ちる前に捕まえて抱っこする。
 あー、癒されるー。
 あたたかさとふわふわの毛並を触ってるといっそう眠気が増した。
 昨日は体を洗って夕飯食べてすぐ寝た。多分10時間くらいは寝たと思うんだけど、なんだかまだ眠い。

 「旅の疲れが出たのかもしれないですね。歓迎会も大変でしたし。」
 苦笑するカイルの言葉にうんうんと同意する。
 あれは衝撃的な歓迎会だった。だが、ふと自分の行動を思い返す。
 ジリジリ後ずさって、コハク起して、ヒスイに指示して、爪に引っかかって……。
 「僕の動きって……後ずさったのと三日月熊の爪に引っかかっただけじゃない?」
 運動量なら多分行ったり来たりしていたレイの方が多いかもしれない。

 「充分大変な出来事ですよ。」
 カイルが小さなテーブルにお茶の用意をしながら苦笑する。
 これからレイとトーマが来るので、お茶の用意をしているようだ。俺はコクヨウをベッドに降ろすと、お茶の用意を手伝い始めた。それに対してカイルが焦ったような声を出す。
 「フィル様が手伝われることは……。これは俺の仕事で…。」
 「もう同級生でしょ。安心して僕得意だから。」
 にっこり笑って手際よくセッティングする。
 何せアリスやカイルが来る前は自分でやってたんだから。
 カイルはあわあわとしていたが、やがて諦めたようにお茶の用意を再開した。

 「僕よりカイル大変だったよね。あのマクベアー先輩とやりあったんだし。」
 まさか模造刀とは思わなかったなぁ。あの先輩意外に演技力がある。すっかり騙されてしまった。
 寮長の説明だと前回の事件も誤解らしい。レイの刷り込みもあって、めっちゃビビったのに……。出すつもりなかったヒスイまで出しちゃったもんなぁ。
 おかげで俺が精霊と契約してる噂が広まり、食堂でご飯食べてると皆が見てくる。
 パンダになったみたい……。

 「カイルの方こそ疲れてるんじゃない?」
 俺がそう言うと、カイルは笑って首を振った。
 「いえ平気です。あの試合は勉強になりました。スケルス師匠には及第点貰ってましたけど、まだまだなんだと実感しましたし。」
 カイルは強さへのやる気が出たのか、グッとこぶしを握る。
 いや、あれはマクベアー先輩が別格なんだと思うけど…。まぁ、やる気になってるのに水を差すのも悪いか。

 「それで…筋がいいからとマクベアー先輩に剣術クラブに誘われました。」
 「そうか確かクラブ活動あるんだよね。」
 中等部・高等部はクラブ活動の参加が義務付けられている。部員何十人という大所帯もあれば、同好会のような小さなものもあるらしい。
 こっちの世界のクラブ活動だから、日本よりも変わったクラブがありそうで楽しみだった。

 「誘っていただいたことはありがたいんですが、どうしようかと思って…。」
 「何で?」
 カイルは剣術クラブ結構あってると思うんだけどなぁ。
 俺が首を傾げると、カイルは口ごもった。話しにくいことだろうか。俺がジッと見つめて話すよう促すと、諦めたように口を開く。
 「目を離したら自分の知らない所でとんでもない事起こりそうで…。」
 申し訳なさそうにチラリと俺を見る。
 理由、俺かいっ!
 【あぁ…その気持ちはわからんでもない。すぐ何か起こすからな。】
 ベッドの上で丸くなっていたコクヨウが、深いため息を吐く。
 否定したいが何も言えない。
 起こしたくて起こしてるわけじゃないのに…。
 クラブ活動の時間くらい何も起こらないことを俺自身が望んでいる。
 
 そんな時、カイルがドアの方に反応した。スタスタと歩いて躊躇なくドアを開ける。扉の前ではレイとトーマが今まさにノックをしようとしているところだった。
 「うわっ!」
 「びっくりしたぁ!」
 急にドアがあいて二人とも体をビクッとさせる。そんな様子にカイルは何でもないことのように部屋に迎え入れる。
 「何してるんだ。入れ。」
 「何って…え、わかったのか?俺たちが来たこと。」
 「カイルは耳がいいからね。」
 蝙蝠の獣人であるカイルは音に敏感だ。暗闇で動けるのもこの音の聞き分けによって人や物がどこにあるかを把握できる為だと言う。

 「あーーーっ!!コクヨウとテンガとホタルとコハクだーっ!!」
 トーマは部屋に入ってくるなり、俺の召喚獣を見つけて声を出す。ベッドに近付くと、テンションが上がったようにはわはわしだした。
 「これがコクヨウかぁ。俺初めて見たかも。旅行中はホタルとテンガとコハクくらいしか出してるの見てなかったし。」
 レイも近付いてコクヨウをマジマジと見る。
 レイが来る前にコクヨウを出したのはある意味賭けだ。カイルの推測ではデュアラント大陸以外の者はディアロスの伝承を詳しく知らないから、黒い獣がいたとしても直結しにくいのではないかと言うことだった。だからとりあえずレイで試してみることにしたのだ。
 これからの学生生活、仲の良いレイに存在隠したまま生活は無理だからな。
 
 「コクヨウってさ…。」
 うーんと唸っていたレイが、俺を見て眉を潜める。その様子に思わずドキリとした。
 「狼の子供だよな?犬みたいにころころしてるけど。」
 よ、良かったー!ばれてない?ばれてないよな?
 気付かないうちに詰めていた息を解放する。
 「狼だよ!こんなに凛々しい顔してるのにっ!」
 トーマが口を尖らせて言うと、コクヨウもレイの頭に飛び乗ってテシテシと足踏みする。
 【我を犬ころ扱いするな、小童こわっぱの分際で!】
 「ほらぁ、コクヨウも怒っちゃったじゃないか。」
 トーマがその様子をくすくすと笑う。俺もつられて笑って、コクヨウを抱き寄せた。
 「コクヨウそんなことしちゃ駄目だよ。大丈夫?レイ。」
 「痛くないけど馬鹿にされてる気分だった。」
 ポツリと呟くその言葉に皆が笑った。
 
 「じゃあ、お茶を飲みながら今後の相談しましょうか?」
 どこか安心したようなほほ笑みを見せて、カイルはお茶を注ぎいれる。
 部屋の中にマクリナ茶のいい匂いが漂った。 


※感想・お気に入り登録ありがとうございます。
 投稿楽しみにしている方々ありがとうございます。嬉しいです!
 一応自分の中で決めているのが、1日2日以内に投稿しようと頑張っている感じです。
 時間はどうしてもバラバラになってしまいます。すみません。
出来たら早く皆に読ませなきゃ!と思って出来た先から投稿するので。
 早め投稿目指して頑張ります!
 
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