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第6章〜転生王子は学校で

選択しよう

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 1年生が使う教室は、階段状になっていた。真ん中に通路があって、左右に長い机とベンチのような椅子がある。壁や床は石造りだが、こうしていると大学の授業でも受けてるみたいだ。
 席は自由だとのことで、俺たち4人は窓際の真ん中あたりに席を取っていた。
 背の低い俺たちにとって階段状なのは嬉しい。でなけりゃ前が見えなくて、必然的に一番前に座らなきゃいけなかったところだ。

 今日は授業と言うものはまだなく。学校内の案内と注意事項。一般科目の教科書の配布などが行われた。今は選択授業に必要な資料配布と説明が行われている。
 1年生は90人いるので、さすがに担任が1人では捌ききれないのだろう。教卓には1年生の担任だと言う2人の男女が立っていた。
 男性はマット・スイフ先生。女性はメリダ・ディナス先生だ。
 マット先生の髪はクルクルがきつめの天然パーマで、金髪なものだからまるで鳥の巣みたいだ。メリダ先生はストレートのボブヘアー。赤毛の髪がサラサラと顔にかかる度、邪魔そうに耳にかけている。

 さっきから見ていると、この先生たちの性格が全く違う。
 「あ、あの、では選択授業のし、資料を配り……あ、あれ?」
 そう言いながら、マット先生は教卓の上の紙の束を探った。焦っているのか「あれ?あれ?」と呟きながら、バサバサと音を立てている。そんな彼にメリダ先生が冷静に声をかけた。
 「その資料はもう配ってあります。」
 「え……?」
 キョトンと意外そうな顔をするマット先生に、俺たちは証拠を見せるように資料を掲げる。 
 「いつの間に…!」
 スーパーイリュージョンでも見たかのように驚愕した。
 いや、さっき他の資料と一緒に配ったのはマット先生だからね。無意識だったのかもしれないけど。

 「とりあえず資料は渡っているので、説明を進めてください。」
 マット先生のうっかりはいつものことなのだろうか?メリダ先生は何でもない事のようにマット先生を促した。 
 「す、すみません。」
 はは……と自嘲気味に笑いながら、頭を掻く。
 そんなマット先生を彼女は無言で見つめていた。アイスブルーの瞳は全く表情が読めない。
 彼は心の中できっと『呆れているならいっそのことそう言ってっ!』と思っていることだろう。
 しかしロボットが壊れたかと言うくらいの無言に、マット先生はダメージをくらったように肩を落とす。 
 30代半ばのマット先生は教師として先輩のようなのだが、20代のメリダ先生の方が精神的立場は上のようだ。

 マット先生は息を一つ吐くと、改めて俺達に向き直った。
 「えー、で、では、選択授業の件です。選択授業は自然学、薬学、鉱石学、天文学、史学、商学、召喚学、剣術、美術、加工、調理などが…あ、あります。」
 説明を聞きながら、俺は選択授業の資料をペラペラとめくる。
 一般科目も選択科目も先生が1人1人異なる。渡された資料には各教科の先生の言葉で、どんな内容の授業をやるかと言うことが書かれていた。

 「た、単位は各2単位で、い、1年で合計10単位必要です。ち、地理学は自然学、占星術は天文学、体術は剣術の授業に含まれます。それをやりたい方はその選択授業をえ、選んでください。」
「すみません。」
 俺の隣に座っていたレイが手を挙げた。メリダ先生がスッと無言で指をさすと、レイは立ち上がって口を開いた。
 「では最低5科目選択すればいいんですか?」
 メリダ先生はその問いに頷くと、人形のように表情を変えずレイを見た。
 「それでもかまいません。しかし成績によっては単位が貰えるかわかりませんから、多めに選択しておいた方が良いでしょう。」
 確かにそうだ。ギリギリすぎて単位落として留年になったらやばいもんな。入学式の時の校長の言葉が洒落にならなくなってしまう。余裕を持っておいた方がいいだろう。
 納得したように俺たちは頷く。

 するとマット先生は少し慌てたように、メリダ先生の言葉に付け足した。
 「で、でも多めに選択しすぎても、あなたたちが大変だと思います。各選択科目にはテストだけではなく課題による提出物などがあります。自分の出来る分量を考えて、無理ない数を選んでください。わ、わかりましたか?」
 俺たちが「はーいっ!」と返事をすると、マット先生はようやく安心したようにほほ笑む。

 その時タイミングよく終業時間の鐘が鳴った。ガランゴロンと響くように鐘が鳴り終え、メリダ先生は自分の持っていく書類をササッとまとめた。
 「では明後日までにどれを選択するか決めておいてください。それでは本日はこれまで。」
 そう言って素早い動きで教室を後にする。まるで風のような早さだ。
 「じゃ、じゃあ!も、もしわからないことがあったら、先生の部屋に聞きに来てください。」
 マット先生はあわあわと教卓の書類をかき集めると、慌ててメリダ先生の後を追っていった。
 あの二人…全くってくらいタイプ違うなぁ。 

 先生たちがいなくなると、教室が一気にざわめき始めた。そのまま周りと話し合いを始める者もいれば、今日の授業は終わったので席を立って帰る者もいる。
 俺たちはそのまま席に留まっていた。
 さて、選択授業か…どうするかなぁ。レイたちはどうするんだろうか?
 とりたい授業もそれぞれだろうと思うので、『皆仲良く合わせて授業』というのもあり得ないが、一緒ならば楽しいだろうなとは思っていた。

 「レイたちは何選択する予定なの?」
 俺が聞くとレイは書類をめくりながらため息を吐いた。
 「うーん、どうするかなぁ。」
 「僕は召喚学は外せないな。動物のこともっと知りたいし。召喚獣増やしたいし。」
 トーマの言葉に俺も頷く。
 資料によると召喚学は召喚に関する学問と、課外授業に出て獣と契約しに行くことがあるようだ。召喚に関して知りたいことあるし、この大陸特有の獣と契約をしてみたかった。
 「僕もそうだなぁ。カイルは召喚学よりも剣術?」
 「そうですね。フィル様と一緒の授業を選択したいところですが、召喚学はやめておきます。剣術は体術も合わせて学べますし。俺にとってこれは必須ですね。」
 カイルにしては珍しく目をキラキラさせている。
 先日のマクベアー先輩との試合以降、自主練にも余念がないからな。そうだと思っていた。
 だが、レイは剣術と言う言葉に渋そうな顔をする。
 「剣術は…ヤダ。合わない。」
 だよね。そんな気はしてた。

 「僕もパスかなぁ。剣術じゃ単位取れそうにないから…。僕は父さんに加工は絶対とれって言われてるんだよね。」
 気乗りしないと言うように、トーマはため息を吐いた。
 加工はその名の通り、加工技術によって物を作る授業だ。指定された課題もあるが、自由な課題もあって面白そうだった。
 トーマの出身であるクーベル国は職人の国だし、家も金物職人の家だからお父さんの希望もわかる。

 「うーん、僕も加工やろうかな。鉱石の加工したいし。」
 俺が考えながらそう言うと、トーマは嬉しそうに顔をほころばせた。
 「そうかフィルも鉱石屋の子だもんね。一緒なら楽しそう。フィルは鉱石学とるの?」
 「うん。いろいろと知りたいこと多いんだ。」
 俺が頷くと、レイは眉をひそめた。
 「えーフィル鉱石学とるのかよ。前に話しただろう?鉱石学のシエナ・マイルズ先生は気難しいって。地獄見るぞぉ。」
 まるで幽霊出るぞと言うように声色を変えて話す。

 そんなレイに俺は苦笑する。
 「まぁ、そこは興味あってとるから、最悪捨て授業だと思っている。単位取れなくてもしょうがないよ。」
 前もって聞いていたからこそ、あえてそう選択した。
 この授業も課外授業があって、鉱石探索に出かけるのは俺にとって魅力的だった。専門家の意見はやはり聞いておきたいし。
 しかしレイは納得しきれないようだ。またしても渋い顔をして呟く。
 「物好きな…。あ!!」
 
 急にレイの顔がパァッと明るくなった。視線が俺を通り越していたので、何だろうと振り返る。通路に女子が2人立っていた。
 「あぁ、アリス。」
 見知った顔ににこりと微笑む。同じ学年なのに、すれ違うことはあってもなかなか話が出来ないでいた。アリスも少し緊張したように話す。
 「選択授業何選んだかな?って思って。一緒にいい?友達も一緒なんだけど。」
 「いーよっ!いいに決まってるよ!どうぞどうぞ!」
 俺が答える前にレイが手招きする。まるで自分の隣に来いとでもいう様に、壁際に寄って俺との間をあけた。
 レイ……いや、別に来ることはいいんだけども。すでに4人で並んでるのに、横一列6人ってめちゃくちゃ話しにくいだろう。
 
 俺は上の段の席を指さした。
 「こっちに座りなよ。そうしたら話しやすいから。」
 「わかった。ありがとう。」
 アリスはにっこり微笑んだが、レイは盛大に不満げな声を上げた。
  



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 更新を楽しんでいただけて本当に嬉しいです。次回はこの続きです。
 そのあと授業のお話になっていきます。お楽しみに。

 

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