トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
47 / 390
連載

妖精国の新しいダンジョン

しおりを挟む

 本日もログインして、ライナさんと合流。お互いこれといった事前準備も必要ないのでサーズからさっさと旅立つ。

「で、何処へ行くのかしら?」

「とりあえず妖精国にでも行こうと思ってる」

 高速馬車に揺られつつ、ライナさんからの質問に答える。そういえば、ライナさんと初めて出会ったのは妖精国だったっけな。

「妖精国かぁ〜、久々ね。何か目的があるのかしら?」

「いや別に。だが久しぶりに行ってみれば、何か面白い事が転がっているかもしれないだろう? しばらく歩き回って何も無ければ、龍の国に行けばいいだけだしな」

 雑談を交えつつ、サーズからファスト、ファストからネクシアへと馬車を乗り継ぎ移動。もちろんファストに入った時、サーズで掘った鉱石関連は全て倉庫の中に置いてきた。ネクシアからは歩いて移動する事で妖精国入り。入国審査もあっさりと終えて、久々に妖精国の玄関口でもある北の砦街へと足を踏み入れた。

「まずは宿屋で情報の入手かしらね?」

 ライナさんの提案に自分は頷く。妖精国では宿屋に酒場がくっついているのが基本。ある意味一番ワンモアの世界でファンタジーしているのはこの妖精国だろう。適当に見つけた宿屋の中に入り、宿屋の主人に挨拶をする。

「いらっしゃい、泊まりかい?」

「いや、情報が欲しい……泊まるかどうかはその情報の内容次第になるかな」

 まだまだ外は明るいので、大したネタが無ければ他の町に行くつもりだった。初めて妖精国に来た時にはなかったが、いまは普通に街と街の間に定期便として動いている馬車があるので、移動の敷居は大きく下がっている。もちろん時間がある人は歩いて移動しても問題はない。その場合はモンスターと戦うか、上手く逃げる必要があるが。

「情報ねえ。なら、最近広まっているネタが一つあるんだが、聞くかい?」

 宿屋の主人からの申し出に、自分は頷く。

「この国にもダンジョンが2つあるのは知っているんだろう?」

 この宿屋の主人の言葉に、自分は再び頷く。今まで入るきっかけも理由も無かったので一回も行っていないが、存在する事自体は知っている。

「そのうちの1つ……中央にある城下町から見て北側にあるダンジョンが最近異様な変貌をみせたらしい。なんでも、PTを組んで入っても入ったとたんにばらばらにされてしまう。その上地形に法則性があまり無く、言葉も、今の俺とアンタのように普通の会話方法以外は全てかき消されてしまうらしいんだ」

 ふむ、不思議系のダンジョンをベースとして、PTチャットを禁止と言うルールを加えた上に、スタート時にPTメンバーを強制的に別々の場所に飛ばすのか。かなり面倒だな。

「そんな状況では、生き延びる事自体が難しいでしょう? 立ち入る人はほぼいないのでは?」

 自分のようなプレイヤーなら死んでもやり直せるが、こちらの世界の人はそうは行かない。死んだら終わりなのに、そんなハイリスクなダンジョンに挑むだろうか?

「ところが、そうでは無くてな。このダンジョンはどうも、挑戦してもらう事に意義があると考えているらしい。ダンジョンに意思なんて物があればの話だがな。実際にこのダンジョンに挑んで死亡した奴はゼロだ。魔物や罠によって戦闘不能に追い込まれると、強制的に一定の治療が施された後にダンジョンの入り口まで戻されるようになっているって話だ。だから、むしろ戦闘の経験が気楽に積める場所として大人気になりつつある」

 なんじゃそら。死者が出ないダンジョンって、ダンジョンと言っていいんだろうか? もちろん死者が出ることを望むわけではないけれど。

「へえ、面白そうね。ちなみに、PTメンバーとははぐれたままなのかしら?」

 ライナさんも興味を持ったようで、宿屋の主人に質問を追加する。

「いや、生き延びて歩き回れば合流できる可能性はあるらしいぜ。そしてPTメンバーと合流できるまで、他のPTのメンバーと一時的に臨時のPTを組んで生き延びると言う方法を取るのが一般的になってきてる。最悪自分のメンバーと最後まで合流できない可能性もあるからな」

 ふむ、完全なソロプレイを強いられる訳ではない、か。その時に出会った人達と出来る事を相談し合い、いかにモンスターや罠にその場に集まった人間で対処するかどうかを迫られる訳だ。

「ちなみに、そのダンジョンのクリア条件みたいな物はあるんですか?」

 この自分の質問に、宿屋の主人はある、と答える。

「地下10階層ごとに、報酬を受け取って帰るか、更に下に進むかを選べる部屋があるらしい。現時点では30階が最下層と言われているな。いうまでもないが、降りれば降りるだけ報酬の中身が期待できる」

 一応の区切りはあるわけか。ライナさんを見ると、ライナさんの顔には『行ってみたい!』と書かれている。まあ、死亡する事もない様だし、行ってみるのも悪くはないか。

「そのダンジョンの場所は、何処なんでしょうか?」

 この自分の発言に、宿屋の主人はにやりと笑う。

「ここから直通の馬車が出ているから、それに乗ればいい。このダンジョンの調査は我らの女王陛下からも要請が出ているから、ダンジョンに入ってくれる奴は大歓迎だ。ダンジョンの周りには宿屋などの設備も作られているから、道具の補充や武器の修理などといったその辺の心配もない」

 と宿屋の地図を自分達に見せながら主人は言った後、一転してまじめな顔になる。

「だが、今までの死者がゼロだとしても、これからもそうだという保障は何処にもねえ。潜ってくれるのは大歓迎だが、キツイと感じた時は、地下10階で無理せず戻れよ。いいな?」

 確かにそうだな、今までがこうだったから、これからもそうだという保障は何処にも無い。この忠告に自分はもちろん、ライナさんも頷いている。

「馬車はここから出ている。頑張れよ」

 宿屋の主人は、地図で馬車の出ている場所を教えてくれた。まあ、街の南門だったんだが。宿屋の主人にチップを払ってから宿屋を後にした自分とライナさんはお店などには立ち寄らず、直接街の南門を目指す。そうして到着した南門では、複数の馬車が載る人を待っている、どうやら繁盛しているようだな。

 ダンジョン行きの馬車はすぐに見つかり、早速乗り込む。同じ馬車に乗ったメンバーは、自分とライナさん、龍人、プレイヤーが3人の合計6人だ。目的が同じなので、自然と馬車の中では雑談に花が咲いた。そうして馬車に揺られる事20分。そのダンジョン近辺に到着した。

 ダンジョンの前にまでとりあえず行ってみようということで、ライナさんと一緒に行って見ると……そのダンジョンは、何故か神殿のような外見を誇っていた。扉を開ければ礼拝堂がありそうな雰囲気だが……。

「なんか、凄い外見をしているわね。ダンジョンというから、てっきりおどろおどろしい入り口になっている物だと私は予想していたんだけど……」

 その意見には全面的に同意するよ。恐らくダンジョン内部の壁も、レンガや土壁のような物では無いのだろう。

「まあ、それは中に入れば分かる事か。とりあえず、今は宿屋を探さないとな」

 自分の言葉に、ライナさんもそうね、と同意してくれたので宿屋を探す。宿屋を探すついでに、道具屋、鍛冶屋なども探しておく。

 と言っても、ダンジョンの周りにとりあえず建てましたって感じで展開されていたので、探すまでも無くすぐに見つかった。宿屋もあっさりと見つかった……というか、一番でかい建物が宿屋だった。

 人がそれなりに居るということで、どうしても巨大化する物なのかもな。宿屋も複数あったが、一番近い宿屋でいいだろう。

「いらっしゃいませ! 『勇士の宿り木』へようこそ!」

 元気いっぱいの女性に出迎えられ、早速宿を取る。個室を二つ取り、鍵を受け取る。

「一緒の部屋でも良いんだけどな?」

 そうライナさんには言われたが、冗談じゃない。宿屋の一階に有る酒場で酒を飲んでいた男性陣からの視線が痛いの何の。外套のフードで顔を隠していなかったら逃げ出してたかも。

 こうして、自分とライナさんは妖精国に現れた新しいダンジョンを探索する事になった。
************************************************
ということで、しばらく話はダンジョンアタックになります。
しおりを挟む