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連載

ダンジョンの中へ

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 ログインしてライナさんと合流し、軽く宿屋から出された食事を食べてからダンジョンに向かう。ダンジョンに向かう途中で、ライナさんと大雑把な打ち合わせを済ませる。

「とりあえず、地下10階を最初の目標にしようと思うんだ」

 自分はそう切り出す。ライナさんと途中で合流出来る出来ないは運任せになってしまうが、とりあえず地下10階まで到着したら報酬を貰って引き返す。それを何回か繰り返してお互いにダンジョンに慣れてきたら更に奥へと進む事にしよう、と。

「そうね、しばらくは様子を見るのも悪くないわね。お互い初めて入ることになるうえに、入ったら強制的にばらばらにされると言う条件まで付いて来るんだし、いきなり奥まで進もうと言うのは無茶よね」

 と、ライナさんの同意も得られた。とりあえず地下10階まで潜ったら脱出して、地上で情報交換を行うと言うことに決定した。そんな話をし終わったところで、ちょうどダンジョン入り口である神殿前に到着していた。


「いらっしゃいませ、ダンジョンに向かわれる方ですね?」

 神殿の中に入ると、何故か受付さんまでいた。とにかく今までのダンジョンとは色々と違いすぎるので、女王陛下の指示で管理が厳格になっているとのこと。

「今までのダンジョンとは、かなり異なっています。もしご存知で無ければ詳しく説明させていただきますが、どうしましょうか?」

 受付の妖精さんにそう尋ねられ、知っている情報を話して食い違いが無いかを確認する。大きく食い違っている事はなかったが、PTを組んでいると高確率でPTメンバーに出会いやすくなるので必ず組んでおく方がいいですよと念押しされたぐらいだ。ソロで入る事を止めるつもりは無いが、そうなると他の人と出会える確率はかなり低いとのことである。

「あと、人族の方には非常に申し上げにくいのですが……何処から入り込んだのかが分からないのですが、人殺しを好む賊がダンジョン内にいます。人族が居たからといって、必ずしも味方ではない事を忘れないでくださいね。そして、賊ではないにもかかわらず疑われても気をあまり悪くしないでください、お願い致します」

 と言う注意事項も付け加えられた。そういう事情があるのなら、疑われても仕方が無いだろうな。

「何処にも迷惑な奴って、居るものなのね……」

 ライナさんの感想に、自分も頷く。実に面倒くさい話である。ましてや妖精国は、人族……ゲヘナクロスとの一件がある。根っこの部分で、厄介な感情が眠っている可能性も否定できない。

(ダンジョン内では、外套のフード部分ははずしておいた方がいいかもしれないな。ドラゴンスケイルヘルムを他の人の目に晒す事になってしまうが……誤解を受けて切りつけられるよりはましなはずだ)

 ワンモアでは、PKはシステム上禁止されている。が、それが適用されるのはあくまでプレイヤー同士だ。ワンモア世界の住人とプレイヤーと言う関係であれば、殺し合いは可能なのだ。ダンジョン内で外套を着ている上に、フードで顔を完全に隠していたら盗賊の一味なのかと怪しまれてしまう可能性が上がるような予感がする。誤解を招く可能性は少しでも潰しておく方がいいだろう。

 受付の人に、ダンジョン調査の参加証明書を製作してもらい、ようやくダンジョンに入れるようになる。ダンジョンの入り口は、大きな門に水色の膜が張られており、この膜を通過する事でダンジョンの内部に飛ばされる仕組みとなっているらしい。

「じゃ、とりあえずダンジョンから帰ってきたら、あそこで合流しよう」

「ええ、分かってるわ。じゃ、お先に」

 待ち合わせ場所を確認した後、ライナさんはさっさと膜を通過して行った。自分もその後すぐに膜を通過する。膜を通過した途端、エレベーターが下に向かう時のような浮遊感を味わい……気が付くと、無駄にゴージャスな壁でできている部屋の中に自分は立っており、目の前には横に3人ぐらいが並んで歩けそうな通路が前後に存在していた。

(部屋と部屋を通路でつなぐ……不思議のダンジョンタイプかな)

 適当にあたりをつけた自分は、フードを下ろして顔を出してから前方にある通路へと向かって歩き始める。ともかく行動しなければ始まるまい。もちろんモンスターの生命反応や罠の有無は確認しているが、この部屋の中にはモンスターは一匹も居ないし、罠もなかった。さっさと部屋を出る……扉もないので、ただ通路に足を踏み入れたというだけなのだが。

(この壁を持って帰るだけでも、芸術品として飾れそうだな。本当にこのダンジョンは訳が分からない)

 通路の壁も、白いキャンパスに金と銀、そして青色で描かれたといった感じの模様が続いている。今までのダンジョンとは美しさも段違いだ。下手したら、小さな王城よりも立派かもしれない。ためしに指で触ったり、コンコンと壁を叩いたりしてみたが全く汚れないしヒビも入らない。何でできているのだろうか?

(それでもダンジョンである、と言う事は間違いないようだ)

 作動させている《危険察知》に、モンスターの反応が引っかかる。だが、モンスターの反応を感じ取って分かった事だが、かなり《危険察知》の有効範囲が狭い。エルフの森ほどではないが、ここもそういう探索能力を阻害する魔法か何かが展開されているようだ。それはまあ、今分かったからそれでいいとして、モンスターの数は3匹。こっちは一人なのだから、弓で出来る限り減らして接近戦を行うのは1匹だけにしたいところだ。

(とりあえず《百里眼》で確認するか……)

 幸いにして、モンスターが待機している部屋と自分の場所は直線の通路でつながっており、障害物が無い。だから視線が通る。見ることで確認すると、3匹はどれもが妖精国の中では最弱モンスターのハイ・ラビットのようだ。これならば何とでもなる。双咆を構えて、矢を番えて弦を引く。しっかりと狙いをつけてから《隠蔽・改》を発動して気配を消す。双咆の力があれば、これぐらいの距離は射程範囲内だ。

 6割まで引かれた双咆から矢が打ち出され、狙い通りに矢がハイ・ラビットに突き刺さり絶命させる。残りの2匹はこれで自分の存在に気が付き、部屋から出て自分の所にやってくるべく走り寄ってくるが、まっすぐこちらへ走ってくるその姿はただの的にしかならない。双咆から矢を放って、自分へと走ってくるハイ・ラビットの2匹のうち、片方を始末する。

「ピキー!!」

 仲間を殺されて激昂した様子を見せる最後の1匹が自分に突撃を仕掛けてくるが、自分はその突進を左手に装備している毒蛇の盾でアーツ《シールドパリィ》を発動して軽く受け流し、カウンターで蹴りを放つ。長引かせても意味がないので、さらにエルフ流の蹴り技である《バランス・クエイカー》を発動し、一気に最後のハイ・ラビットを叩き潰した。

(ふむ、モンスターの強さは外と変わらない、か。あくまで現時点では、だが)

 ウサギ達の毛皮や肉といったドロップアイテムを回収して、探索を再開する。しばらく探索したが、1階層で出てくるモンスターはハイ・ラビットだけであり、罠も小さな落とし穴の下に小さな針があるだけの可愛い物しかなかった。これ以上探索しても新しい発見はなさそうなので、地下に降りる階段、もしくはそれらしき物を探す。そして歩き回る事しばし、ようやくそれを発見する。

(階段じゃなくて、エレベーターもどきとは)

 上に載ると、ゆっくりと床部分が下に下りる事で一層下の区域にまで下ろしてくれる。天井は降りると同時に閉じられてしまったので、先に進むしかないと言うわけだ。一応お題目はダンジョンの調査なので、戻る意味はないのだが。

(今はとにかく前に進もうか。この階層には何がいるかな?)
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最初は静かな立ち上がりとなりました。
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