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連載

ダンジョン進行中

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(──2階はゴブリンだけ、3階はゴブリンとハイ・ラビットの組み合わせ……罠の種類は増えず、数も少ない。序盤中の序盤だからなんだろうが、かなり難易度は控えめだな。ハイ・ラビットをソロで倒せる人ならば、油断の方が厄介な敵になりそうだ)

 4階へと降りるエレベーターを見つけた時、自分はそう考えた。序盤から地雷やら毒やらがある本場の不思議のダンジョンに比べれば、装備を持ち込めてなおかつ罠もモンスターも少ないこのダンジョンは良心的過ぎる。それでいて、多少のお金が袋に詰まった状態で置かれていたり、武器や薬草なども僅かではあるが転がっていた。もちろん品質的に良い物ではなかったが。

 逆に、3階までがウォーミングアップで、4階からが本番と言うパターンかもしれない……とも考えた。4階に下りると、壁に描かれている模様が、金と銀と紫と言う組み合わせに替わっているからだ。そして何より。

(罠を発見……これは毒矢、こっちは酸か)

 罠の種類が増えた。毒はいうまでもないが、酸も厄介だ。不思議のダンジョンのように武具を錆びさせて来るのか、それとも防御無視のダメージをこちらに与えてくるのか……どの道、踏む訳には行かない。解除しなければ進めないと言うわけでもないので、罠はそこに放置する。いちいち解除していたら時間がいくらあっても足りない。

 モンスターは、ゴブリンにハイ・ラビット、そしてウォーゴブリンが混ざり始めている。単独行動している時なら、ウォーゴブリンといえど大して恐ろしい相手ではないが、モンスター同士が臨時PTを組み始めると厄介だ。分かりやすい例を挙げるなら、魔法を使うウォーゴブリンが後衛を務め、ハイ・ラビットやゴブリンが前衛を勤めるとかだ。ウォーゴブリンの魔法使いは回復も支援魔法も使えるので、面倒な事この上ない。

 そうならないように、倒す順番はしっかり考えないといけない。発見した場合は、真っ先にウォーゴブリンの魔法使いを気付かれてしまう前に射殺する事を徹底した。幸い数は多くないので何とかなっているが、そろそろ臨時PTを組めそうな存在と出会いたいところなんだが。何度目かのウォーゴブリンの魔法使いと槍使いの戦士を屠った跡に、ふうっと息を吐いていた時だった。

「そこの人族、動くな」

 そんな声が耳に届いた。《危険察知》で再確認するが、モンスターの反応ではない。そうなると……

「お前が賊でないと言うのならば、ゆっくりとこちらを見ろ。変な動きをしたら、お前の頭に風穴が開くと思え」

 高圧的な物言いで、こちらに指示を飛ばしてくる。

「ずいぶんな物言いだが、逆にそちらが賊ではないと言う証拠でもあるのかね?」

 そう言い返す。ゆっくりとこちらを見ろと言うぐらいならいいが、お前の頭に風穴〜と言われれば、流石に黙っていられない。そうして自分が声の聞こえてきた方向に顔をゆっくり向けてみると……

「我がケンタウロス族が賊だというのか!?」

 そう、そこには上半身が人、下半身が馬というケンタウロスが2人いた。男性と女性のペアのようだ。

「兄さん! そんな言い方をしたら反感をもたれるのは当たり前です! 確かに賊はいますが、だからと言って殺気をむやみやたらとぶつけては、こちらが賊と言われても仕方ないですよ!!」

 と、そんな事を女性のケンタウロスから言われている男性のケンタウロス。会話内容から察するに、どうやら兄妹のようだ。女性のケンタウロスはこちらにゆっくりと歩み寄り頭を下げてくる。

「申し訳ございません、実は先日このダンジョンの中で賊に襲われまして、兄は気が立っているのです。お許しを」

 そういうことか。ならば先ほどの言い分もまだ理解できる。

「いえ、そういうことでしたら。こちらこそ失礼な物言いを致しました、申し訳ございません」

 伝承とかに出てくるケンタウロスは、誇り高い種族だった筈だ。だが、ちゃんと礼儀さえ払えば争いになることも少なかった筈。少なくとも、この世界にいるハイエルフのような存在ではないだろう。

「すまん、賊ではなかったようだな。無礼な事をしてしまった。真に申し訳ない」

 と、男性のケンタウロスもすぐさま謝ってきた。その謝罪を自分は受け入れる。いちいち根に持っているほど暇でもないし。

「お2人とも、このダンジョンは修練のために?」

 折角敵ではない人達に出会えたのだから、少しぐらい話をしてもいいだろう。近くのモンスターは殲滅済みだしな。

「ええ、村を出まして修行の旅をしていたのですが、妖精国に入った時にここのダンジョンの話を聞きまして。修練になると考えて兄と一緒に挑んでおります」

 長い銀髪に白い肌、黄色い目の色をもつ兄妹の妹さんの方がそう教えてくれる。2人とも上半身には重鎧の胴体部分を纏い、下半身の馬部分にはケンタウロス専用と思われるプレートを装着している。

「このダンジョンならば、命を失う事がないから妹の修練にも向いていると思ったのだが……なかなかどうして。厄介な罠、いつやってくるか分からぬモンスター、そして賊。全く持って油断がならん。ゆっくりとこちらを向けと言ったのは、お前の目を見たいからだったのだ、賊の連中は欲にまみれた目をしているから濁っている。それで見分けるつもりだったのだ」

 こちらはお兄さんのお言葉。妹さんと同じような銀髪を短く切り、やや日焼けしたような色合いの肌に、黄色い瞳。顔は少なくとも自分よりはるかにイケメンだろう。ただ、その顔に傷跡がいくつかあるのは戦士の証と言った所か。

「自分はアースと申します。ここに入った理由は鍛錬のためなので、お2人と大体同じ理由になりますね」

 自分の名前を教え、軽く会釈する。暇つぶしをかねていると言う事をいう必要は無いだろう。

「いけない、申し遅れましたが私はティカと申します」
「すまない、もっと早く名乗るべきだったな。俺はライという。そして提案なのだが……アース、このダンジョンを出るまでの間でいいから俺達と組まないか? 俺達と一緒にいれば、賊と疑われる事も無いだろう」

 このライと名乗るケンタウロスの提案に自分は乗る事にした。ライナさんと合流できるかどうかは全く分からないし、一人でこのダンジョンをうろつくのは少々怖くなってきているのも事実。ならば、ここは協力し合うのが吉だろう。

「分かりました、その提案をお受けします、よろしくお願いします」

 そういって、ケンタウロスの兄妹と握手を交わす。

「こちらこそ」
「ああ、よろしくな」

 ケンタウロスの兄妹達との険悪なムードは完全に払拭されたので、お互いある程度手の内を明かす事にした。

「とりあえず、自分は遠距離では弓、中距離ではスネーク・ソード、近距離では蹴りで戦います」

 自分がまずは手の内をある程度明かす。大事な事なので2回。全ての手の内を明かす必要は無い。

「私はランスを持った突撃、弓による攻撃、剣も扱えます」

 これはティカさん。

「俺は弓と大剣が好みだな。ある程度片手剣と盾を使った戦闘も可能ではあるが、やはり近距離では大剣を用いたい」

 こっちはライさん。見事に戦士系の2人だな……

「そうなると、基本はライさんに大剣を持ってもらって前衛を勤めてもらい、自分がスネーク・ソードを用いた中衛、ティカさんが弓を用いた後衛と言う形ですかね? チャンスがあれば、ティカさんのランスによる突撃攻撃もありと言う事で」

 この自分の意見に、ティカさんとライさんは頷く。

「それでいいだろう、では行こうか」

 ライさんが音頭を取り、臨時PTが動き出す……が。

「ライさん、ストップ! 3歩先に毒矢の罠がある!」

 という、何とも格好が付かないスタートになってしまった。ライさんのばつが悪そうな顔に、ティカさんが苦笑していた。
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と言うわけで、ケンタウロス族が登場です。
もちろん出身は獣人連合ですね。
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