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連載

ダンジョン進行中、その3

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 ダンジョンの6階を抜け、7階も大体踏破したタイミングだった。意図せず3人が同時につぶやいたのは。

「おかしい」「おかしいわね」「おかしいな」

 自分とケンタウロスの兄妹が、ほぼ同時に、ほぼ同じ言葉を口にしていた。お互いがお互いをつい見合わせてしまう。

「やっぱりおかしいと感じたか?」

 ライさんの言葉に頷く自分とティカさん。

「こんなに罠が多いのは変だ。これでは罠の発見能力、罠の解体作業を持つ人物がいなければ進む事ができない。なのに、このダンジョンでは入り口で強制的にメンバーをばらばらにされてしまう。それを考えると無茶苦茶すぎるだろう? ダンジョンに罠がある事自体はそんなにおかしい事ではないが……」

 この自分の意見に、うんうんと頷く兄妹。

「私としては……魔物の数がやけに少ない事に違和感を覚えるわね。前に兄さんや他の人と共闘した時はもっと多くの魔物と戦った記憶があるのだけど……」

 この意見に頷いているのはライさんだ。自分は今回が初挑戦なのでその辺は分からない。

「やはりその点がおかしいとしか言いようがないな。でだ、その二つを説明する事は恐らく可能だ」

 このライさんの発言に、自分とティカさんはライさんの顔に注目する。一応事前に《危険察知》で周りの様子を伺うが、モンスターの反応はないのでライさんの話をこのまま聞くことにした。

「俺の仮説だが、このダンジョンはPTメンバーの持ち味を生かさないと生き残れないようになっているのではないか、とな。アースと言う罠に対処できる人物がいるから罠が増える。3人とも弓を使えるから、弓を使って倒さないと厄介な魔法を使うゴブリンが良く出てくる。戦士である俺やティカがいるから、大剣で断ち切らねば倒すのに時間がかかる重装備を整えたゴブリンが出てくる。そう考えたんだが、どうだ?」

 ふむ。なるほどな。そう言われてみれば。PTを組んだPTメンバーの内容によってダンジョンの内容を変えていくのであれば、無茶な内容でもないな。

 たとえば物理一辺倒や、魔法一辺倒の臨時PTにそれぞれのアンチになるモンスターがごろごろ出てきたらそれだけで詰むが、物理攻撃と魔法攻撃が出来る人がPTを組んだらどうだ? 物理攻撃と魔法攻撃と言うお互いの持ち味を生かせば戦い抜く事が出来るだろう。

「兄さん、そうなるとあまりPTのメンバーは増やさない方がいいって事になるのかしら?」

 ティカさんの意見にも一理ある。ライさんの予測が正しいのであれば、メンバーが増えるほどにダンジョンは難解になっていくだろう。それにあわせて、PT内の連携も当然難しくなる。そういう面ではあまりメンバーを増やすと苦労する事になりそうだ、が。

「いや、それはどうだろう? 地下10階で一区切り付いて、地上に戻れると言う話だが……その一歩手前である地下9階にボス級のモンスターがうろついているかもしれないぞ? 出会うかもしれないし、出会わないかもしれないが……PTメンバーが少ないと、もしそんな奴が居た場合、対処できずになぶり殺しにされるかもしれない」

 と、自分はティカさんの意見に反論する。ワンモアの運営が、あっさり報酬がもらえる場所まで通してくれるとは思えない。ボス級のモンスターと不意打ちぐらいならまだ可愛い方で、エレベーターの降りた先でいきなりご対面とかやられても不思議ではないしな……

 ワンモア世界に毒されているのは自覚しているが、ここの世界はそんなえげつない事を平然とやるからな。

「アースの言い分ももっともだな。そうなると、このPTに足りないのは魔法使いか。合流できるとありがたいが……この階層まで単独、もしくはペアで生き延びている者がいてくれるかどうか……」

 ライさんの言う事ももっともだ。モンスターもPTを組んでいたり、ハイ・ラビットをテイマーのように飼いならして使役しているゴブリンもいた。おまけにオークも数は少なかったとはいえ遭遇している。そんな相手を少数で打ち破って進んでいる魔法使いがいるかどうか、微妙な線だ。

「魔法使いに限定しなくても、この階層まで降りてくるとなると少人数では少々キツイですからね。自分達もそれは例外じゃありませんし」

 と、自分はライさんの言葉に付け足す。

「そうね、やっぱりメンバーが多くいたほうが安定しやすいのは間違いないわね……連携の難易度が上がっても、やっぱり人を増やすほうが良いかも知れないね……数は力なんて言葉も、人族にはあるようだし」

 ティカさんの言葉に、自分は頷いて肯定の意を示す。ケンタウロスの兄妹が強いとは言え、一度に出てくるモンスターの数もじわじわと増えてきており、流石にこちら側が手傷を負う回数も増えてきた。

 そのせいで、今まで使わなかったのでほぼ忘れかけていた〈風魔術〉の中では唯一回復魔法である《ウインド・リカバー》を引っ張り出してきて唱えているほどである。MPは休憩すれば回復できるが、ポーションは使ったら減ってしまう。ポーションは緊急時に備えるため、出来る限り温存しておきたいので、引っ張り出したのだ。

 久しぶりに引っ張り出した《ウインド・リカバー》の魔法だが、一回分のHP回復量はかなり少ないし、有効範囲もかなり狭いのだが、この3人PTの中では唯一の回復魔法だ。ケンタウロスの兄妹に密着してもらって魔法を唱えれば、何とか3人全員を有効範囲に収める事が出来るのでぎりぎり有効と言った所か。

 数回ほど《ウインド・リカバー》を掛ければケンタウロス兄妹や自分の手傷もある程度は癒されるので、休息を取ってMPを回復してから行動を再開するの繰り返しでダンジョンを進む。

「あれは……どうやら、地下8階へ降りるエレベーターのようだな」

 モンスターのPTと通路でカチ会い、モンスターをばっさりと切り捨てた大剣を下ろしながらライさんがそうつぶやく。結局地下7階でも他の人達に出会うことはなかった。戦力を増やしたいと言うのに、なかなか上手く行かない物だな。

「アース君、魔物たちの反応はある?」

 ティカさんの確認に、自分はすぐに「反応はないな」と返答する。自分の声を聞いて、ティカさんも武器をゆっくりと下ろして後ろに背負う。

「モンスターの反応は無いが、他の人の反応が今引っかかった」

 自分も惑を鞘に収め、歩き出そうとした所で《危険察知》にモンスター以外の反応が掛かったのだ。モンスターでない事だけは確実、そうなるとこのダンジョンに同じ目的かどうかは別として、入ってきた人だという予測は立てられる。

「アース、その反応は何処だ?」

 ライさんの問いかけに、自分は前方を指差す。地下8階へのエレベーターがある部屋には、通路が3本繋がっている。そのうちの1本に自分達がいて、《危険察知》が知らせてくれた反応は反対側の通路からこの部屋に向かって進んできている。

「とにかく、エレベーターのある部屋で少し待ってみよう。もしかしたら、協力し合えるかもしれない」

 自分の意見にケンタウロス兄妹も同意し、部屋の中に入る。休息を兼ねて部屋の隅で待つ事数分、その反応は部屋の中にやってきた。

「や、やっとエレベーターがあったよぅ〜、もうへとへと〜」

 そんな声が聞こえてきた。向こうは羽根を動かして飛んでいる妖精が1人。

「まったく、いくら魔法が得意だとはいえ、最低限の体力は必要だろう」

 そんな事を言っている人族……恐らくプレイヤーではない……男性が1人。

「まぁまぁ〜、ここで一休みしていきましょうよ〜」

 そして、ブルーカラーのミリーが……って、ミリー!?

「ミリーもこのダンジョンに入っていたのか!?」

 つい、少々大きい声を出してしまったが、その声でミリーが自分に気が付いた。

「あらあら、アースさんじゃないですか。こんな場所で出会うなんて奇遇ですね〜」

 こんな場所で知り合いと出会えるとは。これはぜひ合流してもらわないとな。
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ミリーと再会です。そしてこの妖精も実は……

それから、本日を持って、一定数の話を消去します。詳しい事は活動報告にありますのでご確認を。さて、午後はダイジェストを書かないと……。
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