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連載

ダンジョン進行中、その4

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「なんだ、彼はミリーさんの知り合いだったのか?」

 向こうのPTにいる戦士風の装備をした人族男性が、ミリーに対して確認を取っている。

「そうですよ〜、とっても仲良くしてもらってます〜。ね、アースく〜ん」

 ダンジョンの中だと言うのに、相変わらずのんびり口調のミリーについ苦笑してしまう。だけど怒らせると恐ろしい女性だから、変な事は言えないけど。とりあえずここは頷いておこう。ミリーとは付き合いも長いし。その時だった。

「やっぱりアースさんだったんですね! お久しぶりです」

 ミリーや人族の男性とPTを組んでいた妖精が自分の所にやってくる。えーっと、ダレだっけか……。思い出せない自分の様子を察した妖精は、自分の名前を告げてきた。

「本当にお久しぶりですから、お忘れになっているかもしれないですけど……以前、ゼタン様を頼ってやってきたときに、貴方に教えを受けたリリティです。あの時の教えのおかげで私は今、こうして生きてます」

 このセリフで思い出した。そういえばかなり前に、妖精国で宿屋の主人に頼まれて一日だけ面倒を見たPTがあったな。そこに魔法使いのこの子、リリティがいた。あの時は危なっかしい様子ばかり見せていたが、今の彼女にはそんな感じは見受けられない。

「思い出した、あの時の子か。そうか、あれからずっと頑張っていたんだな」

 こうして生き残っているのならば、知識を分け与えた甲斐があるというものだ。出合った時はあまりにもひどい状態だったので、少々基本的な戦い方を仕込んだんだよな。そうか、あれから結構時間が経っているんだな。

「あの時に教えを受ける事ができなければ、私はとっくに女神様の元へと旅立っていた事でしょう。ミア、ロア、コリンの3人と今でもPTを組んで冒険が出来ているのは、あの時にいろんなことを教えてくださったアースさんのおかげです」

 なんともまあ、背中がむず痒くなる話だ。半ば勢いでやってしまった事だけになおさらだ。でも、教えた事を生かしてこうやって生き延びていてくれた事は素直にうれしいものだ。

「そうか、あの3人も健在か。それは何よりだ。が、今回は残念ながら合流できていないと言った所か」

 この自分の言葉に、はい、と頷くリリティ。このダンジョンはなかなか意地が悪いからな、別段おかしいことではない。他の3人も個別に臨時PTを組んで攻略しているかもしれないし、な。

「なんだ、こっちのPTのうち、知り合いじゃないのは俺だけだったのか。俺はシャウルだ。見た目で分かるかも知れんが、戦士をやってる」

 シャウルと名乗った男性をよく観察すると、軽鎧を着込んで右手に片手剣、左手に短剣。そして左腕にバックラーを装着していた。手数で押す二刀流戦士と言ったバトルスタイルを取っていると言った所か。

「自分はアースと言います。こちらはライさんとティカさん。見た目で分かるとは思いますが、ケンタウロスの方です」

 シャウルさんに軽く自己紹介を済ませ、ライさんとティカさんの名前も伝える。ライさんとティカさんも自分の名前を名乗り、簡単な自己紹介を向こうの3人PTに対して済ませる。

「で、だ。そちらの3名とこちらの3名でここから先を協力しあおうとこちらは話し合っていたのだが、どうだろうか?」

 ライさんからの話に、シャウルさんがやや顔をしかめる。なんだ?

「それはこちらとしてもありがたい話ですが、なぜこちらが3人だと? 話し合っていたと言っていたが、こちらとあなたたちが合流した後に話し合っている様子はなかったはずだが……? このダンジョンの中では、PT同士で話し合える能力を封じられているし、話し合える時間はないはずなのだが……」

 シャウルさんの疑問には、自分が答えておかねばならないだろう。変に疑われては困る。それに《危険察知》の能力は、教えておいた方が信頼されるかもしれない。

「それは自分の能力の1つで、ある程度の範囲にいる他人やモンスターの数と場所を感知できる《危険察知》を用いることで、前もって貴方達がこっちに接近してくる事を知っていたからです。お疑いなら、ミリーやリリティに確認を取ってもらっても構いません」

 この自分の発言に、シャウルさんがミリーとリリティに確認を求める視線を投げかけるが、ミリーは「本当ですよ〜、私達も何度か助けてもらっていますから」と返答していた。リリティも「アースさんの感知能力がなければ、今私はここに居ません」とシャウルさんに報告している。

「なるほど、そういった能力を持っているのであればこちらから頼みたい。必死で注意を払っていても何度か不意打ちに近い形で襲われたり、お互いに気が付いていない状況で魔物と鉢合わせてしまったりとトラブルが数回あったからな」

 だろうね、壁の向こうに何が居るか分からないと言うのはかなり怖い。こればっかりはいくら注意をしていても完全に回避する事は難しいからなぁ。

「じゃ、ここからとりあえず地下の10階まで協力し合うと言う事でいいですか?」

 自分の確認する声に、5人が頷く。これでとりあえず前衛3枚、後衛3枚の基本的なPTが出来上がったな。リリティは確か攻撃魔法を得意としていた筈だから、PTバランスはかなりいいだろう。合流は運に頼る事になるこのダンジョンでこれ以上の編成を望むことはまず出来まい。

「もしかして、ツヴァイ達も来てるんですか?」

 休憩も終えて、8階に降りるエレベーターに乗り込み8階への到着を待っている間、ミリーにそう聞いてみた。

「ええ、来てますよ〜。ブルーカラーのメンバーは殆ど来てますね〜。やっぱり新しい場所には積極的に挑みませんとおもしろくないですからね〜」

 そうか、ミリーが居るからもしかしてと思ったが……じゃあ何回も挑んでいれば、そのうち他のブルーカラーメンバーと出会うこともあるだろうな、その時を楽しみにしておこうか。

 そんな事を考えているうちに地下8階に到着。ひんやりとした空気が頬をなでる。そして地下7階までと違ってやや薄暗くなっており、少々不気味に感じる。

「雰囲気がまた変わったな……これは大物が居るかも知れんぞ」

 そんな事をライさんが口にする。ひんやりとした空気が、そのライさんの言葉を裏付けるかのようだ。

「油断は禁物ですね〜、なんとな〜くいやな予感もします〜。アースさん、《危険察知》に期待していますよ〜」

 ミリーもそんな事を言う。変にプレッシャーを掛けないで欲しい所なんだが……。とりあえず、《危険察知》の範囲内にはモンスターの反応はない。

「やっとここまで降りてきたんですし、焦らず慎重に行きましょう」

 リリティの言葉に、無言で頷く自分を含めた5名。そうだな、ここまで降りてくるにも時間がかなりかかっているし、意味の無い無謀な行動をとって台無しにしてしまう事はなんとしても避けたい所だ。

「とりあえず、歩き始めましょうか。この付近にはモンスターの反応もないし、罠も見当たらない。この部屋を出る通路も一本だけのようですし、ね」

 自分がそう喋りつつ通路を指差した事をきっかけにして、行動を始めるPT。この先は何があるのやら……先ほどまでと違い、薄暗くなっただけで不気味さを格段に増したダンジョンを自分達は進む……。
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事前の報告どおり、2巻の範囲は消去いたしました。活動報告にも新しい情報を上げました。よろしければご確認を。
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