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連載

ダンジョン進行中、その5

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 嫌な予感は悲しいほどに的中した。地下8階の構造は実にシンプルだった……何せ、通路の一本道だったのだから。薄暗いダンジョン内で、罠も無い、トラップも無い一本道なんて物があったらだれだっておかしいと思うだろう。

「不気味すぎるな。魔物の反応は未だ無いのか?」

 どうにも気持ち悪い……そんな事を思っているのは先ほどの発言をしたライさんだけではないだろう。だが、このライさんの問いかけには「今だ反応は一切無い」としか、自分は答える事ができない。そんな一本道を数分ほど歩いただろうか。ようやくたどり着いた1つの部屋には、6つの宝箱が置かれていた。

『ほうほう、まさかここにやってくる者どもが居るとはのう。なかなかに不幸じゃな』

 宝箱のある部屋に全員が入ったと思われるタイミングで、そんな声が聞こえてくる。

「だれだ? 姿を見せろ!」

 シャウルさんが怒声をあげるが、声の主はふえふえふえと笑い声? をこちらに対して聞かせるだけ。

『そう焦るでない。ここはゲームをする部屋じゃぞ。もちろんルールは教えよう。質問にも答えよう。そしてそのゲームを突破できれば、次の階に降りれる装置を解放する事を約束しようぞ』

 PTメンバー全員が無言になる。全員の表情には『ゲームだと?』と疑問に思う感情が浮かび上がっている。恐らく自分も、そんな風に怪訝に思う表情をPTメンバーに見せているだろう……外套のフードははずしているのだから。

『ルールはシンプルじゃ。6つの宝箱がそこにあるじゃろう? その宝箱の中に、1つだけハズレの箱がある。そのハズレを引くことなく5つの宝箱を開けることができればお主らの勝ちじゃ。もしハズレを引いてしまった場合は……選択肢が2つあるぞ。1つ目はハズレを引いた者を見捨てて先に進む。もう1つはワシと戦って取り返すと言う選択肢じゃなあ』

 一種の運試しって事か……これは『人災の相』を持つ自分への嫌味か!?

「ハズレを引いてしまった人を見捨てた場合はどうなるんです?」

 ティカさんが質問を投げかけた。

『当然その者はダンジョンにて力尽きた扱いになるぞ。処置としてはダンジョンの外へ強制帰還じゃな。帰還させるときにへんな苦痛を与えることはせぬと誓ってもよい』

 その誓いが本当かどうか分からんけどなあ。ほじくり返してやぶへびになったら色々と困るから言わないけど。

「もしかして〜、これは一人が開けられる回数は一個限定ですか〜?』

 む、それはありえるなとミリーの質問を聞いた自分は、ついピクッと体が反応してしまった。

『そこに気が付いたかの、まあそれは気が付かぬようなら開ける前に説明はするつもりだったがのう。そうしなければPTで誰が抜けるか、誰を生贄にするかでもめてゲーム所ではなくなるからの』

 そもそもこんなゲームを一方的に吹っかけてきている時点で十分すぎるほどに厄介なんだが。上の階に戻れないタイプのダンジョンだから進むしかないわけで……運営は何でこんなものを作ったんだ。

『そうそう、宝箱には全て1つ共通の罠がかかっておる。魔法によって宝箱が攻撃された場合は、お主らの居るエリアにお主ら全員が力尽きるまで猛吹雪が吹き荒れるようになっているからの。全ての宝箱を吹き飛ばせば解決するのでは、なんていう考えは捨てておくのじゃぞ?』

 とにかく、ここから先に進むためには目の前にある6つの宝箱を開けるしかないと言う事ね。目の前の宝箱は全て銀細工で作られており、大きさなども全て同じだ。宝箱には一切触らず前後左右に上からも確認したが、デザインにも違いは無い。手がかりは全くないな……これはちょっと質問して聞いてみるか。

「質問ですが、宝箱は最初に触った人が絶対に開けなければいけないのですか?」

 自分からの質問にふえふえという笑い声を上げた声は、こう返答を返してきた。

『そうか、お主は盗賊じゃな? 人から物を奪う賊ではなく、ダンジョンの罠をはずしたり鍵をはずしたりする方の盗賊のようじゃが。その質問にはこう答えておこうかの、箱の蓋を2センチまで開けたらその者が必ず開けねばならぬとな』

 つまり、それ未満ならば宝箱の蓋を持ち上げても良いということか。

『お主が宝箱の仕組みを見破れば、2分の1までは持っていけよう。そこからは純粋な運じゃの。さて、そろそろ始めてもらおうかのう』

 2分の1ね……つまり、6個のうち4個は開けても安全な宝箱であると見破れるようになっていると言うわけか。やるしかあるまい。覚悟を決めて、自分はPTメンバーに宝箱を調べ始めるのでしばらく待っていて欲しいとお願いした。


(これは……開けても大丈夫そうだな、こっちも……多分問題ない。そうなると、これとこれがどうにも怪しい)

 10分ほど掛けて宝箱の周りを確認したり鍵穴を確かめたり、そして宝箱をほんの少しだけ開けて中の様子を伺ったりと盗賊の仕事を必死になって行った。あの声の言うとおり、宝箱には普通に空ける分には問題ないが、魔法に反応する薬品と思われるものが中に仕込まれていたことも確認。あの警告は単なる脅しではなかったのだ。

 宝箱の罠などを確認し終わった自分は、PTメンバーの所に近寄って腰を下ろす。ライさんが飲み物を差し出してくれたのでありがたく頂戴してから報告を始めた。

「6つのうち、開けても問題ないと思われる箱は4つ。中央の二つと、右の前方の箱、左の後方の箱。これは罠が1つしかかかっていないことを確認した。かかっている罠も、普通に宝箱を開けるだけなら絶対に作動しないからこれは問題ない。ただ、後の2個は……悔しいが、あの声の言うとおり運次第だ」

 とりあえず、ここで箱を開けるメンバーを選ばなくてはならない。まずは女性陣3名は自分が調べて間違いなく大丈夫だと思われる箱を開けさせようと決まった。こういうときに貧乏くじを引くのは男が相場だろうと言う事を自分を含めた男性陣が主張。女性陣の3名は申し訳なさそうにしていたが、それを受け入れた。

 そうして、更に絶対残すべきメンバーと言う事で、足の速さと一撃の重さをもつケンタウロスのライさんを残すことにした。ティカさんと同じように、必要になれば弓による遠距離攻撃もこなせることが大きい。この4人に早速宝箱を開けてもらう……自分の見立ては正しかったようで、罠が発動することなく4つの宝箱は無事に開いた。

「こんなに緊張させて……中身は実にふざけてるな。みてみろ、1グロー硬貨1枚だけだぞ?」

 宝箱の蓋を開けたライさんの言葉を聞いて宝箱の中を見せてもらうと、確かに中身は1グロー硬貨1枚が転がっているだけであった。

「こっちは〜、ポーションの瓶ですね〜」「こっちは、薬草が一枚だけよ」「石ころとか、流石にふざけていますね」

 どうやら、ミリーの方にも、ティカさんの方も、リリティにもろくなものは入っていなかったらしい。宝箱自体の方が価値があるのではないだろうか? こういうのを財布の方が重いとかいうんだっけか? 言い回しが思い出せないな。

 さて、これで4人の生き残りが確定したわけだが……5つ目の箱、つまり2分の1でハズレを引かされる状況下になった。箱を開けていないのは自分とシャウルさんだけだ。ここで自分が次に宝箱を開ける事を宣言したのだが、シャウルさんがストップを掛けた。

「まてまて、《危険察知》持ちがPTから脱落したらまずいだろうが!」

 その意見はもっともなのだが……

「とはいえ、こういう宝箱関連は責任を取るのが盗賊だってのが1つのお約束だしなぁ」

 と言う自分なりの譲れない一線もある。

「それに、ハズレを引いてボス戦を貴方達が選択した場合は、孤立した方は一人である程度何でも出来ないと厳しいですよ? 自分は遠近両方ある程度こなせるが、シャウルさんは近接専門でしょう?」

 この一言が決め手となって、5つ目の宝箱は自分が開けることになり……お約束どおりにハズレを引くことになるのだった。宝箱を開けた瞬間、自分は出口の無い小さな小部屋へと飛ばされてしまった。自力での脱出は無理……か。

『何とも不幸よのう。とはいえルールはルールじゃ。では生き残った5人に聞くぞ? おぬしらはどうするのかの? 見捨てて先に進むのか、それとも取り返すためにワシと戦うのか? 好きな方を選ぶが良いぞ』

 そんな声が聞こえていた。
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はい、主人公が罠に引っかかった事については、ダイスの神様に文句言ってくださいね(苦笑)。クィーンの時といい、ダイスがおかしいよ! MUGENのランセレ神と良い勝負だ。
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