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連載

1回目のダンジョン終了

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 地下9階に下りて、しばらく歩き回る事で探索を行い……数回目となるモンスターの集団を皆で殲滅した後に、一息入れるタイミングを得ることができたので今は一休みを行っている。

「普通だな……実に普通だ」

 ライさんが安心したようにそうつぶやく。確かに地下8階での出来事に比べれば地下9階は普通だった。モンスターもいるし、罠もあるし……実に普通のダンジョンである。

「さすがに〜2連続でへんてこな内容のダンジョンだったら私だって嫌ですよ〜」

 ミリーもライさんの意見に同意している。まあ、内心では誰もがそう思っているだろうけど。マスターリッチという大物との戦闘というだけならまだしも、戦闘の途中から色々とおかしくなってしまって……ここでおかわり! とばかりに変な仕掛けが待っていたらやる気をなくしていたかもしれない。それだったらまだ、大部屋モンスターハウスを攻略したら次の階も大部屋モンスターハウスだった! などのほうがまだましと言う物である。

「うーん、今まで歩き回った範囲だと、この階層の大体6割ぐらいは攻略したのかな? もうひとふんばりすれば地下10階へと降りるエレベーターは見つかりそうだな」

 マッピングの進み具合を見ながら、自分はPTメンバーにそう告げる。ここまで歩いた事で出来上がってきたマップの出来上がり具合から、それぐらいの進行状況かなと踏んだ。現時点では異様に警戒しなければならないような危険な反応はないから、このままこの階層をスムーズに抜ける事ができれば良いのだが……。

「そうか、ペースとしては悪くないな。休憩も出来た事だし、そろそろ探索を再開しようぜ?」

 シャウルさんの言葉で、皆が腰を上げる。腰をおろして休めるのも自分が《危険察知》と《百里眼》による警戒を行っているからこそだが。まあ自分はそれが仕事なので文句を言うつもりは全く無い。戦闘になれば他の5人が自分以上に頑張るんだから……。

 そうして探索を再開したが、地下10階へと降りるエレベーターはモンスターと戦いながらダンジョンを進み、マッピングが8割ぐらい埋まった所で見つかった。ボスモンスターらしき反応も近くに無いし、罠の反応も全く無い。念のためにエレベーター周辺を念入りに調べたが、偽物のエレベータートラップという線もなさそうだ。

「8階の影響で、色々と疑い深くなりますよね……」

 リリティの意見に、皆が同意する。それでも念入りに自分が調べても罠の反応が一切出ないのだから、ここを進むしかないだろう。PTメンバー全員がエレベーターに乗れば、エレベーターは静かに下に降り始める。そしてエレベーターが地下10階へと自分達を導き終えると、またしても一本道が自分達の前にあった。

「またなの!? いえ、地下10階は宝物庫のはずですよね。だからシンプルなのかしら……」

 ティカさんの心境も分かる。地下8階のスタート時と状況が同じなのだから色々と疑いたくなる。それでも後退できないダンジョンなので進むしかないのが現実なのだがな。今回は歩いているとすぐに扉が見えてきた。扉は銀細工で作られているようだ。

「ほう。これは宝物庫っぽい扉だな」

 ライさんがそう言いながら、自分に視線を向けてくる。言いたい事は分かる、『罠は無いのか?』と言う事の確認だろう。自分は静かに頷く。ライさんはその自分の行動で察してくれたようで、扉を押す。ライさんに押された扉はあっけなく開いた。部屋の中に入ると周り一面の壁が金細工風になっているせいで少々まぶしい。

「いかにも、宝物庫ですよって感じの部屋だな。やれやれ、やっとここに到着できたんだな」

 シャウルさんがそういうのも無理は無い。本当にやっと到着したと言う心境になる。宝物庫には宝箱がざっとみて20個ほど置かれており、中央の立て札にはこんな事が書いてあった。

『ここにたどり着いた者よ、汝らには二つの道がある。1つはここにある宝箱を開けて地上へと帰還する道。もう1つは箱に触れずにこの先へと進む道である。だが、ここから先は更に厳しい道のりが待っている。体調が万全でないのなら、ここで帰ることを薦める』

 当然と言うかなんと言うか、PTメンバーは自分を含めて全員が宝箱を開けて帰還する選択を選んだ。地下8階の戦闘による脱力感がひどかったのだから無理も無い話だ。あれがなければ、ここから先に進む人も居ただろうになぁ。

「さて〜、中身に期待したいところですね〜」

 あんな苦労をしたのだから、中にはいいものが入っている……なんて保証は何処にも無いのだが、それでも期待してしまうのは悲しい性か。悩んでもしょうがないので、自分が適当に選んだ箱を開けてみると中には4万グローが入った袋が1つ。苦労に見合うかどうかは微妙すぎる感じがするのだが……まぁ仕方がないか。箱から4万グローを取り出した瞬間、地上へと帰還するまでのカウントダウンが発動した。後30カウント後に地上に飛ばされるようだ。

「皆、おつかれさま。もし出会えたときは、またよろしく頼む!」

 自分の声に、手を挙げて答えてくれるケンタウロスの兄妹。おうよ、と返答を返してくれたシャウルさん。こちらこそ〜と、のんびり口調なミリー。また会えるといいですね、とリリティ。こうして自分のダンジョンアタックは非常に疲れはしたが、何とか無事に達成できたのである。


「──と言う感じだった」

 地上に戻り、宿屋の個室の中でライナさんにダンジョンでの探索状況を報告する。自分が地上に戻ってきた時には、既に彼女は地上で自分を待っていた。ライナさんも無事に地下10階まで到達し、宝物庫から宝物を手に入れて帰ってきたらしい。ちなみにライナさんの宝箱の中身は、宝石数個だったらしい。

「ずいぶんとまた、変な事をやってきたわね。そんな話の前じゃ、私の探索なんて普通すぎて何も言う事はないわよ。罠も少なかったし、少なかった罠さえ大した物じゃなかったわ。私の方のPTは4人全員が戦士という極端なPTだったわね。だからとにかくモンスターを発見したら、盾持ちの人を先頭にしてモンスターに突撃。あとはガンガン暴れるだけという大雑把な戦闘だったし」

 モンスター一匹一匹の強さはウォーゴブリンレベルだからな、ライナさんの実力であれば数匹同時に相手取っても、不覚は取らないだろう。むしろ、ライナさんの小手の巨大化を生かして、ゴブリンをキャッチ。後はゴブリンを武器に振り回せばそれで終了しそうだ。

「こちらとしては、そんな普通の探索が出来たライナさんがうらやましいよ。まあ、あのマスターリッチの言葉を信用するのなら、もうあのゲームには呼び出されることもないはずだからな。次からは普通の探索が出来るだろう……と信じたい」

 ──まあ、多分大丈夫だろうとは思うけどな。マスターリッチも色々と憔悴していたように見受けられたし、ドMじゃなさそうだからもう一回ちょっかいをかけてくるという心配は無いだろう。

(出来る事なら、この子がぽんぽん出てくるような状況には陥りたくないんだがな)

 ついチラッと指輪を見てしまう。今は沈黙しているが、喋りだすと丁寧の中に怖い言葉が混じってる子だからなぁ。変に刺激を与えたくない。カースユニークだから、指から抜き取る事もできないし。

「まあ、今日はもう休みましょ。しっかりと休息を取る事も冒険には大事な事だものね」

 それはその通りだな。遊びでも仕事でも、休息を取らずにやり続けるとかえってよろしくない。今日はもうログアウトしてじっくりと休息を取るべきだろう。

「その通りだな。じゃ、おやすみ」

 自分は部屋を出て行くライナさんに手を振って分かれた後、装備を解除してベッドの中に入る。ああ、妙に疲れた。

(アース様、お疲れ様でした)

 指輪からそんな声が聞こえてくる。その声に自分は軽く指輪をなでることで応えた後にログアウトした。
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昨日の自分

午前、なんだか体が重くてネタが浮かばないのでお休みを宣言。
        ↓
午後、くしゃみが止まらず、鼻水も出てきてボーっとしてくる。
        ↓
夜、ようやく収まってくる。とてもじゃないがネタだしする余裕無し。

本当に吸い取られたかのような疲弊っぷりでした。
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