トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
60 / 371
連載

ライナさんと合流・・・したが

しおりを挟む

「次は地下5階ですね。やはり他の人に協力していただけると、はるかに楽になりますね」

 エミューさんの言うとおり、今自分達が乗っているのは地下5階に降りるエレベーターだ。地下3階、4階はエミューさんの音楽が猛威を振い、非常に楽が出来た。エミューさんはエミューさんでかなり楽をする事が出来たようだが。

 戦闘方法はシンプル。自分が《危険察知》でモンスターを発見し、モンスターにばれないようにエミューさんを守りつつ近寄る。一定距離までそろそろと近寄ってから、エミューさんがハープボウを用いて音楽を奏で始めればその時点で決着。

 後はモンスターが音楽による催眠効果で同士討ちを始めるので、残り一匹になるまで待機して最後に残った一匹を自分が弓矢でパスッと撃ち抜けばいいだけ。

 一見万能に見えるこのエミューさんの音楽による催眠だが、エミューさんから言わせるとなかなか扱いにくいらしい。まず、耳が無いゴーレムなどのモンスターには意味が無い。アンデットにも一部の曲を除いて効果が無い(レクイエムにより、追い払ったり消し去る事は一応可能らしいがかなり難しいらしい)。

 そして、モンスターが興奮状態になっていると通用しない。興奮状態とは何を指すんですか? と質問をしてみた所、戦闘状態の事を言いますという返答が返ってきた。

 また、仲間に効果がある曲もあるらしいが、これまた戦闘中には効果が出ないとの事。なので、他のゲームに居る吟遊詩人のように、戦闘中にPTへ支援効果のある曲でバックアップを計ると言う手段は取れない。そのため、曲が届く範囲にまでモンスターに気が付かれないように近寄らなければならない。

 だが、これは自分の〈義賊頭〉のスキルでカバーが効く事でもある。モンスターの位置をサーチして、ばれない様にエミューさんをエスコート。エミューさんは曲が届く範囲にまで到達できれば、モンスターに催眠効果がある曲で同士討ちをさせる。

 後は自分はモンスターが最後の一匹になるまで見ていればいい。同士討ち中に攻撃を仕掛けないのは、こちらが攻撃を仕掛けると仕掛けられたモンスターの催眠状態が解除されてしまって、こちらへと襲い掛かってくるからである。

 ダンジョンの内容は罠多め&モンスター多めのパターンになっている。罠は自分がいるから、モンスターはエミューさんが居るからだな。いかにエミューさんの音楽で同士討ちさせてモンスターを減らし、罠などで事故が起きないように自分がサポートできるかを試されていると言えよう。

 だが、かみ合えばこれ以上無慈悲な組み合わせも無い。モンスターにとっては、何処からともなく音楽が聞こえてきたと思ったら、突然隣に敵が現れたように感じて戦闘に突入。生き残った時には一人ぼっちで、飛んでくる矢に殺されるのだから。

「この階も、基本は今までと同じでいきましょう」

 エレベーターが地下5階に到着したので、自分とエミューさんはエレベーターを降りて行動を開始する。ダンジョンを歩き回り、出会ったモンスターはエミューさんの曲で同士討ちさせ、見つけた罠は回避するか解除して進む。

 探索の途中で珍しい事に木の宝箱が1つぽつんとあったので調べてみたが……中身はモンスターである事が判明したのでスルー。こういう俗に言うミミックタイプのモンスターにも、曲が通じないとエミューさんが教えてくれた。

 そんな感じで順調にダンジョン内部をめぐっていたが、ここでようやく《危険察知》にライナさんの反応が引っかかった。エミューさんに、PTメンバーが近くに居るようなので合流したいと提案を持ちかけて許可を貰う。近寄ることでライナさんの状況も分かってくる。

 どうやらライナさんも他の人と一緒に同行しているようだ。モンスターの反応は近くに無いし、戦闘中ではないな。そうして歩く事数分、やっとダンジョン内でライナさんと合流する事に成功した。

「やっと会えましたね」

 自分はそう言いながらライナさんに近寄ろうとしたのだが……ライナさんの後ろに居た同行者と思われる重鎧を着た男性プレイヤーがヌッと自分とライナさんの間に大剣を抜きながら立ちはだかった。

「待てよ、馴れ馴れしく姐さんに近寄るんじゃねえよ!」

 姐さん? もしかして、ライナさんに惚れたのかこいつは? 明らかに自分に向けて敵意むき出しの視線を送ってくる男性プレイヤーだが、その男性プレイヤーの胴体を鷲掴みするでかい手が彼の背後から現れた。

「待ちなさい、誰が姐さんなのよ? そしてそこにいるアース君は私のPTメンバーなのよ? 貴方こそいきなり剣を抜いて他の人を威嚇するとか何を考えているの? ここで貴方を放り出しても私は一向に構わないんだけど?」

 そんな言葉を片手で掴み上げた男性プレイヤーに向かって言いながら、開いている左手で自分に手を振ってくるライナさん。やっぱりあのガントレットは怖いな。重鎧を着込んでいる男性ってだけでも相当な重量があるはずなのに、そんな人を右手一本で持ち上げてしまっているんだから。

「あ、姐さん、すいません! まさか姐さんの身内だとは知らずに……!」

 男性プレイヤーはそんな事をライナさんに言うが、ライナさんがその言葉を聞いたとたんに男性プレイヤーを握る手に力をこめたのが分かる。

「ねえ、私の身内じゃなかったら威圧してもいいなんて思ってるの? ねえ、何でそんな事を考えるのかを教えてちょうだい?」

 これ以上はまずいな。下手したらライナさんが男性プレイヤーを殺しかねない。急いでライナさんに近寄り「そこまでだ」と制する。自分に制止されたライナさんは、渋々ながらも男性プレイヤーを解放する。

 やれやれ、もしかしたらこの男性プレイヤーは本当にライナさんに惚れたのかもな。だから近寄ってきた自分を敵とみなしたのかもしれない。一応ここはダンジョンの中なのだが、それを忘れるぐらいだったのかもな。

 うずくまっている男性プレイヤーに、ポーションを飲ませてHPを回復させた後、小声でこうつぶやく。

「ライナさんに惚れたのなら、邪魔はしない。あくまで自分はPTメンバーであって恋人でもなんでもないからな。だが、強引に迫ってもどうにもならんよ。彼女とそれなりのお付き合いをしたいのであれば、段階を踏んでくれよ?」

 自分の言葉に、かなり敵意を薄まった視線で男性プレイヤーはこくこくと頷く。とはいっても、かなり厳しいとは思うけどな。まあ、彼の恋路? を邪魔をするつもりは全くないし、彼なりに頑張っていただこう。

「はぁ。苦戦していた所を助けたのは良かったんだけどね……それから姐さん姐さんとしつこいのよね」

 ライナさんが小声で教えてくれた。なんでも地下4階で複数のモンスターに苦戦していた所に乱入して救い出したまでは良かったが、そこから立ち去ろうとしたライナさんに半ば強引に引っ付いてきたらしい。

「それはそうと、貴方は貴方でまた変わった人と同行してるのね。魔族の方がこんな所まではるばるやってきてるなんてね」

 ここからライナさんは声のボリュームを通常に戻してエミューさんを見る。エミューさんはライナさんに軽く会釈をする。

「初めまして、私はエミューと申します。魔族でありながら魔法の扱いが下手なので、魔曲弾きの放浪者として活動しております」

 あ、エミューさんの肩書きは魔曲弾きになるのね。

「その武器を見て、もしかしたらと思ったけど……魔曲弾きなんて久しぶりに見るわ。よろしくね」

 ふむ、どうやら詳しい説明を聞かなくても、ライナさんは知っているらしいな。会話内容からしても、以前に一度同じ技術を使う人に会ったことがあるようだし。久しぶりに見るって事で、エミューさんの戦闘方法はかなりのレアな方法になるんだろう。

「よろしくお願いします。ところで、先ほどの男性はよろしいのですか?」

 そこでふと視線を向けると、そこには見事な土下座をしている男性プレイヤーがいらっしゃいました。

「大変失礼な事をしました! 俺はキッドといいます! どうか、ここで見捨てないでください!」

 さいですか。ライナさんをみると顔に手を当てているし、エミューさんも苦笑いをしていた。自分は視線と頷きで、ライナさんに判断を任せる意思を伝える。ライナさんは『えー』と言うような表情を自分に向けていたが、やがて諦めたかのように口を開いた。

「次、同じ事をやったらその時点で容赦なく放り出すわよ。返事は?」

 キッドという男性プレイヤーは元気良くハイ! と大声で返答を返してきたが……あのさ、ここダンジョンなんだよね……

「言いたくないんだが、先ほどからの大声に反応したのかモンスターがこっちに向かってきてる。数は10以上居るぞ」

 やれやれ、こんな事でこの先大丈夫かね?
************************************************
そんなにーの方もこつこつ書いてますのでお待ちを。
しおりを挟む