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連載

ダンジョンが変貌した理由

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とあるおっさんのVRMMO活動記2ですが、本日が搬入、明日が販売日ですが……早い人は今日手に入れられるかもしれませんね。表紙で笑っていただきましょう。

また、今回もとらのあな様限定話があります。限定話はクィーン関連です。そして巻末にはアースが製作したトンでも武器イラストがおまけで付いています。
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 気まずい空気の中、動いたのはミミック? の女の子だった。と言ってもこちらに向かって話しかけてきた訳ではない。体を宝箱の中に沈めて、パタンと宝箱の蓋を閉じてしまったのである。

「──えーっと、あの子は一体……誰かしら」

 困惑気味のライナさん。エミューさんも困り顔だ。そして《百里眼》を持っているから分かるのだが、先ほどのミミック? の女の子も、僅かにふたを開けてこちらをちらちらと見ている。

「──少なくても敵対的には見えなかった、見なかったことにしてあげてはどうだろうか? 非常にあの子も気まずそうだったし」

 争うつもりならば、あんな風にのほほんと欠伸をしたりはしていないだろう。実際、戦意や殺気といった感じの威圧感も一切感じなかったから間違いない。ワンモアの世界で戦う事になったモンスター達は、表現するならば戦意とか殺気とか、そういうものをこちらにきちんと向けてくるからな。どういうシステムになっているのか、開発者の人にぜひ聞いてみたい部分の1つだな。

「そう、ですね。私もあの子からは殺気を感じませんでしたし、そっとしておいてあげた方がいいかもしれません」

 エミューさんが自分の意見に同意してくれる。じゃあ、先に進みましょうかと言う事で宝物庫の奥にあるエレベーターに向かおうとすると、近くの宝箱がガタガタと揺れ始める。様子を伺っていると、先ほど宝箱の中に隠れたミミック? の女の子がそーっと宝箱の中から出て来た。容姿は黄色い髪の毛に黄色い目、緑色のワンピースを着た、人間で言うなら10歳ぐらいの可愛らしい女の子だ。紳士と言う人達が居たら。『YESロリータ、NOタッチ!』の合唱が起きそうである。

「あ、あの。私を攻撃しないのですか?」

 びくびくしている小動物さながらの動きで、おそるおそる声をかけてくるミミック? の女の子。自分達はミミック? の女の子を驚かせないように、しゃがんで目線をほぼ同じ高さにしてから頷く。

「大丈夫。自分も、後ろに居る2人のお姉さんも君が変な事をしなければ攻撃なんかしないよ」

 この言葉を聞いて、ミミック? の女の子の震えがやや収まる。

「わ、分かりました。私も何もしません。隠れたのは、モンスターと見れば無差別に襲いかかる人が居るってお姉ちゃんに言われているからなんです……私はククって言います。このダンジョンを住処とするミミック3姉妹の末っ子です」

 ミミック3姉妹ですか。3と言う数字は何かとグループとかでよく出てくる数字だなぁ。

「ここに私が居たのは、この部屋の宝箱の中身を補充するためなんですぅ。お姉ちゃんが『冒険や探索には、しかるべき報酬があってこそ人が来るのよ!』と主張していますから……」

 まあ、それはそうだろう。モンスターを倒す、宝箱を開けるってのはそこにあるものを求めて行うんだから。モンスターを倒せば経験を得られるし、宝箱は当然財宝や希少な武具が入っている可能性があるからこそ追い求めるわけだしな。

「えーっと、じゃあ……このダンジョンの宝箱の中身が尽きないのって……貴女が補充していたからなの?」

 ライナさんからの問いかけに、ククちゃんは「はい、そうです。私が補充しているんです」と返答。ダンジョンの変な裏事情を知ってしまったな。運営がシステムを操作して中身を入れているわけじゃないのね。

「大体この時間は人が来ないって時を見計らって補充しているんです。ですが、今日はその……見つかってしまいました」

 てへへ、とククちゃん。どうやらククちゃんもこちらに脅える様子はなくなったようだな。

「まさかこちらとしても、こんな風に鉢合わせるとは思わなかったよ」

 ほほをぽりぽりとかきながら、自分もククちゃんに話を合わせる。

「所で質問なのですが、ミミックの皆さんはククちゃんのような姿をしているんですか?」

 エミューさんの質問に、ククちゃんはしばらく考えた後に首を振る。

「それは分からないです。たまたま私達3姉妹がミミックとしてはおかしい方なのかもしれません。私はこのダンジョンの外の世界を全く知りませんから、ミミック族が全て私達みたいな人の姿っぽいかっこうをしているとは思わないほうがいいと思います」

 そうですかー、と何故かややがっかりしているエミューさん。

「エミューさん、まさかミミック族が皆可愛い女の子だったら、1人ぐらいお持ち帰りしたいなーとか考えていませんよね?」

 自分の質問に、ビクッとするエミューさん。をい。エミューさんの反応を見て、反射的に宝箱の中へと身を隠すククちゃん。エミューさんにも変な部分があったか……。って、ここまでの話を纏めると、ひとつの結論が浮かび上がってこないか?

「ククちゃん、もしかしてここのダンジョンが以前の姿から大きく変わったのって……ククちゃんのお姉さんが原因?」

 わざわざ宝物庫を用意した上に中身もいちいち補充する。そしてククちゃんのお姉さんは人が来るのよ! と力説している所から、このダンジョンに人を呼びたがっているのは間違いないだろう。そして人を呼ぶためには死者が量産されては困るので、瀕死になったらダンジョンの出口へと送り返す。

 お金が手に入りやすく、死ぬ事がないとなればプレイヤーじゃなくても人はやってくる。ダンジョン側に何のメリットがあるのかは分からないが、少なくとも人は大勢集まってくるだろう。実際そうなっているし。

「はい……一番上のお姉ちゃんはこう言っていました。『ミミックに生まれちゃった以上、移動できるのはダンジョンの宝箱の間だけ。でも、このダンジョンに人は来ないし、魔物連中も会話が出来るような脳みそが無い連中ばっかりで退屈だし、寂しいなぁ』って。それからお姉ちゃんは溜めに溜め込んだ魔力を使ってここのダンジョンに元から居た支配者に対して戦いを挑み、倒してしまったんです」

 はい!? ミミックがダンジョンボスを倒した!?

「そうして支配者を倒したお姉ちゃんは、自分が新しい支配者になってダンジョンを作り変え始めました。毒々しい壁は綺麗に、極端かつ理不尽なデストラップは全部なくして、きちんと罠を見破れば奥に進めるように。そして10階ごとに宝物庫を配置して、魔物に襲われることなく休憩とが出来たり、ある程度の報酬を極端に欲張らなければ必ず得られるように……」

 つまり、ククちゃんのお姉さんがダンジョンを乗っ取っちゃったのね。そしてククちゃんのお姉さんがいいと思われる形にダンジョンを作り変えた、と。

「じゃあ、何でこんなダンジョンを作ったのかを知りたいのなら、ククちゃんのお姉さんに会わないとだめってこと?」

 自分の問いかけに、はい。と答えるククちゃん。

「お姉ちゃんが本当に退屈かつ寂しいからという理由で人を呼べるダンジョンを作ったのかどうかは、私も1つ上のお姉ちゃんも知りません。それを聞きたいのなら、やっぱり直接一番上のお姉ちゃんである『ミーク』お姉ちゃんに直接会って貰うしかないです」

 なんだかなぁ。つまり、クィーンの依頼ということになっているこのダンジョンの調査を完了するには、その一番上のお姉さんに会って、直接話を聞きだすしかないのか。

「もし、皆さんがここから先に進んでミークおねえちゃんを探すつもりなら、お姉ちゃんに話を通しておく事はできます。お姉ちゃんに話が通っていれば、話がしやすいと思いますけど……どうしましょうか?」

 チラッとライナさんとエミューさんを見ると、頷きで返答を返してくる。

「わかった、じゃあすまないけどお願いできないかな。自分はアースって言うんだ」
「私はライナ。ダークエルフよ」
「私はエミューと申します。魔族です」

 ククちゃんは小さなメモ帳を取り出して、小さな手でメモを取っている。

「はい、アースお兄ちゃんにライナお姉ちゃん、そしてエミューお姉ちゃんですね。ミークお姉ちゃんにはちゃんとお話しておきます。そして肝心のミークお姉ちゃんですが、恐らく一番奥の宝物庫まで行かないと出てきてくれないと思います。そこにたどり着くまでのお手伝いは、私には許されてないんです。ごめんなさい」

 そういってぺこりと頭を下げるククちゃん。まあそれを許してしまったらダメだよな。ミミックによる道案内なんてしてもらったら、ダンジョンの迷路が意味の無い物になってしまう。

「気にしなくていいよ。それはこっちで頑張るべき事だから」

 ククちゃんにそう伝える。こんな小さな子に気に病まれても嫌だしね。実際の歳は分からんけど。

「そろそろ私も地下20階にある宝物庫の補充に行かないといけないんです。本来私は裏方なのでこうやって話をする事自体よくないことなのですけど……お兄ちゃんやお姉ちゃんとはまた会える事を祈ってます」

 そういい残してからククちゃんは宝箱の中に入り込み、蓋を閉めた。恐らく目の前の宝箱を開けても、ククちゃんはもう居ないだろう。

「これは、頑張って奥を目指さないといけないわね!」

 ライナさんはそういいながら立ち上がる。そうだな、奥を目指す明確な理由も出来たからな。そうして自分、ライナさん、エミューさんは地下11階に降りるエレベーターに乗り込んだのである。
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ミミック3姉妹の名前は、予想できるかもしれませんがミミックから取っています。長女がミーク(一番前と最後)、次女??(まだ内緒)、三女クク(一番最後のク)ですね。これで次女の名前は大体予想できるかと。
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