トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
65 / 372
連載

地下11階

しおりを挟む
早速お買い上げくださった皆様、ありがとうございます。
おかげさまで、とあるおっさんの執筆活動が出来ます。
********************************************

「ここが地下11階ね。ふうん、なんとなくだけどさっきまでとは空気が違うのが分かるわ……気を付けていかないとだめね」

 エレベーターから真っ先に降りたライナさんが、自分とエミューさんにそう警告をを飛ばしてきた。確かに、なんとなくダンジョンの空気がひんやりとしているような気がする。こういう見た目の変化じゃない部分で変化を付けれると言うのは良いな。

「私の魔曲が、ここでも通じると良いのですが」

 ハープボウを構えなおしつつ、エミューさんがつぶやく。

「モンスターと罠がこの階層からはどうなっているか……最低でも罠が原因で全滅と言う事だけは何が何でも回避しないと」

 自分自身にそう言い聞かせる。部屋の隅っこに1つだけだが地雷も見えているし、罠の凶悪さは増しているようだから引き続き油断をせずに進まないと。

 地下10階よりも、少しゆっくり目に進む自分達のPT。その理由は罠にある。新しく出てきた罠の中に壁がせり出してきて罠を踏んだ人を突き飛ばす物と、落とし穴が登場してきたからだ。落とし穴を一回わざと作動させてみた所、落とし穴の先はかなり深く、よじ登る事は不可能だと考えた方がいいだろう。つまり、落ちたらPTからは強制離脱となってしまう。

(しかも、罠の解除難易度も跳ね上がってきている……罠の解除回数を最小限にしないと、いつまでたっても前に進めないな)

 ソロだったら良い経験だと割り切って罠を解除しまくるのも良いだろうが、PTではそうは行かない。メンバーが通れるだけのすきまがあるのなら、無理に罠を解除する必要は無い……時間を食ってしまう。

「──っと、モンスターの反応あり。数は……6匹ほど」

 罠を解除しながら先頭を歩く自分からモンスターの反応ありと聞いたライナさんとエミューさんが、戦闘態勢に入る。

「さて、何が来るのかしらね? 少なくとも地下10階までよりは強いのが来るんでしょうし」

 ガントレットを巨大化させながら、ライナさんがそうつぶやく。

「アースさん、魔物は前方から接近してきていますか?」

 エミューさんは魔曲の演奏準備に入りつつ、自分にモンスターの位置情報を聞いてくる。

「今回は前方から。反応的にゴブリンが4、未確認が2って所です」

 自分からの返答を聞いたエミューさんは、分かりましたと小声で返事を返してから演奏体勢をとった。

「今回は向こうから近寄ってきていますから、こちらから接近する必要は無いですからね。幸い、向こうはまだこちらに気が付いていないようです」

 エミューさんが知りたいであろう情報を積極的に流す。魔曲はモンスターと戦闘状態になっていた場合は効果がないからな。モンスターの状態を知る事は、とても大事な事だ。

「分かりました……はい、私の目でも見えました。仕掛けますね」

 エミューさんが、ハープボウを使ってポロロン♪ と音を奏でてから演奏を始める。最初はこちらに歩いてきていたモンスターの集団は、徐々に足取りがおかしくなり、同士討ちを始めた。今回のモンスターの集団は、ウォーゴブリンの戦士、双剣使い、弓使い、アサシン。残り2匹の未確認固体はオークだった。妖精国の地上にはオークは生息していない筈だが……こっちには居るようだな。

「あら、オークね。頭の中身は少ないけど、戦士としてはなかなかのパワーファイターだから侮るわけには行かないわね」

 オークの全てがそういうわけではないんだろうが……数は多くないがオークマジシャンとかも居るわけだし。それは横においておくにしても、純粋な力比べだったら自分は押されるな。オーガほどではないにしろ、オークの持つ腕力もかなりのものだ。ただ、今回はエミューさんの魔曲によって、その腕力を同士討ちに利用されているんだがな。ゴブリンにとっては災難もいいところだろう。

「さてと、敵ながら粘り強く戦っているあのゴブリンのアサシンが倒れたら私も前に出るわね」

 ライナさんが突撃体制を取りつつ、エミューさんによって同士討ちさせられているモンスターの様子を伺う。オークの腕力によって真っ先にぷちっと押しつぶされた形で双剣使いと弓使いが早々に退場し、今はオーク2匹とゴブリンの戦士、アサシンが戦っている。

 オークの腕力をゴブリンの戦士は盾を使っていなしつつ反撃、アサシンはひたすら回避してちくちくとカウンターを取っているが……このまま戦いが続けば、ゴブリン達の方が先に倒れるだろう。ゴブリンアサシンは毒を使っているようだが、それでもオークの体に毒が回りきるまではもうしばらくかかりそうだ。

 っと、そこまで自分が考えていた所でゴブリンアサシンがとうとうオークに捕まった。回避し損ねた所を、オークが持つメイス……というよりは鉄の塊に棒を付けたような鈍器で、ぐしゃっと足を潰された。足がつぶされてしまっては回避行動を取る事も出来ず……そのまま頭を潰されてご退場。

 オークは次の獲物をもう一匹のオークが戦っているゴブリンの戦士に定めたようで、そちらに近寄っていくが……オークのメイスもどきがゴブリンの戦士に振り下ろされる事はなかった。なぜなら……

「うん、大きさといい頑丈さといい……武器にするにはもってこいかしら」

 一気に接近したライナさんのガントレットに頭を鷲掴みされてしまったからである。頭を掴まれて握られたことによりダメージが入った様で、エミューさんの魔曲による催眠が解除されたらしく……とたんに『ウガッ、ウガガッ!?』と暴れだすオーク。だが時既に遅し。同士討ちによるダメージが蓄積していた上に、ゴブリンアサシンに毒を盛られていたオークには逃げ出す術は既に残されていなかった。

 そんな哀れな? オークを右手で掴んだライナさんは、オークの体を鈍器扱いにしてもう一匹のオークに遠慮することなく殴りつけた。オークの体が宙を軽々と舞い、鈍器扱いされる一瞬はギャグマンガの様だ。

『グガッ!?』

 ライナさんのオーク鈍器に殴りつけられた事により、ここでもう一匹のオークの催眠も解ける。だが、催眠が解けた状況の方が地獄だったかもしれない。何せライナさんの右手に頭をつかまれた仲間の体を何度もたたきつけられる羽目になっている上に、まだ催眠が解けていないゴブリンの戦士が、オークの攻撃が止んだ事で攻勢に出てきているので、挟み撃ち状態だ。

「はい、もう1つの武器もゲット〜♪」

 そうしてある程度オークが弱った所で、ライナさんが開いていた左手で2匹目のオークをキャッチ。後は最後まで残ったゴブリンの戦士を、ライナさんが捕獲直後のオークの体を遠慮なく振り回して殴りつける事であっという間に撲殺した。やっぱりあのガントレット、色々とオカシイ。

「これで終了ですね、おつかれさまです」

 エミューさんがハープボウをおろす。今回は全く自分の出番がなかったな……まあいいか。変に手を出して邪魔になってはいけないし。だが、オーク2匹を引きずってこちらに戻ってくるライナさんを見て、軽く引いてしまった事だけは仕方が無いだろう……と思いたい。

 ま、まあ、あまり苦戦せずに戦えるってことはいいことだよな、うん。あまり深く考えてもしょうがない。自分はそういう星の元に居るんだから割り切らないと。
************************************************
書いている本人も思いますけど、ライナさんのガントレットがえげつない凶器になってますよね……こんな武器、プレイヤーが持っちゃダメだ。
しおりを挟む