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連載

地下12〜13階

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本日の作業中BGM

ロックマンDASH ED あなたの風が吹くから
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 しばらく探索した後にエレベーターを発見し、地下12階へと降りることに成功した。地下12階に生息しているモンスターは地下11階と大差なく、ゴブリンとオークのPTがメインだった。地下9階まではよく見かけたハイ・ラビットが出てくることはほぼなくなってきており、ゴブリン達もしっかりとした装備をしているウォーゴブリンズがメインになってきている。

「ほらほら、もう一発行くわよ!」

 だが、ライナさんのオークボディハンマー(と言う名の、オークの体を振り回して殴りつけている行為)や、エミューさんの魔曲が冴え渡っているおかげで苦戦と言う文字は無い。戦闘と言う意味では自分の出番も無い。モンスターに出会うまでの安全確保が自分の役目、戦闘になったらライナさんとエミューさんの役目となりつつある。

「終わりましたね、おつかれさまです」

 ハープボウを下ろすエミューさん。ライナさんがオークのでかい体を振り回しているので、矢を放ってもライナさんの手に掴まれて鈍器と化しているオークにあたってしまう事の方が多い。なので矢を放たないようにしている。

「私達の谷に居る魔物と比べると、まだ物足りないわねー。その分罠が厄介なんだけど」

 ズルズルと武器代わりのオークを引きずりながらこちらへと戻ってくるライナさん。オークの体はもうずたぼろであり、掴まれている頭がもぎ取れずにくっついたままなのが不思議なぐらいである。知り合いじゃなかったらこの光景を見たら即座に逃げ出すぞ。

「まあ、早速次に行こうか……これと言ったダメージも受けていない事だしな」

 そう、エミューさんの魔曲によるモンスター同士の同士討ちのおかげで、こちらへの被害はほぼゼロと言っていい。なので、エミューさんが軽い疲労を感じた時だけ休息し、後はどんどん攻略を進めるということができている。この3人PTでは瞬時に大きくHPを回復する術がないので、ダメージを受けずに進めると言うのは非常にありがたい話なのである。

「本当に魔曲使いさまさまよね……私もあこがれて音楽の勉強も必死でしたけど、才が足りなくて断念したわ」

 そういえば、ライナさんは歌や演奏技術をもっていたっけな。初対面の時は歌を歌っていたし。しかし、そんな歌うダークエルフが、巨大化したガントレットを腕にはめて片手でオークを掴んで引きずり、武器にするとは予想できるわけもなく。間違いなくライナさんの才はこっち方面だったんだろう。

「──私としては、そのガントレットを使いこなしてオークの体を軽々と振り回すライナさんの方がものすごいと思いますが」

 エミューさんが、ライナさんにそう返す。そのエミューさんからの返答に、ライナさんは「あはは……」と苦笑い。そんな談笑をしているうちに、1つの部屋が見えてきた。部屋に入ろうと3人で近づくが、自分はとっさに手を出して『止まれ』のジェスチャーを出す。

「罠があるのね?」

 ライナさんの言葉に自分は頷く。ただ、少々風変わりな罠なので、今回はわざと発動させてみる事にする。

「ライナさん、掴んでいる左右のオークのうち、どちらかをここから部屋の中に入らずに部屋の中央までぽいっと投げてもらえないか? この部屋の中にある罠をわざと起動させてしまいたい」

 ライナさんは頷き、左手に掴んでいるオークを自分のリクエスト通りに部屋の中央に投げ捨てる。どしゃっと音を立てて部屋の中央部分に落ちるオーク。その直後、ぽいいいいぃぃぃぃん♪ と、気の抜ける音と共にオークが床から跳ね上げられた。

「え?」

 エミューさんの声がしたが、部屋の中に仕掛けられている罠は弾き飛ばされたオークに対して次々と発動する。ぽいいいいん♪ ぽいいぃぃぃんん♪ と擬音付きで部屋から飛び出してくる無数に仕掛けられた突き飛ばしの罠でピンボールの玉の様に弾き飛ばされ続けるオーク。

 その状況が40秒ほど続いた所で部屋の隅っこまで突き飛ばされ、そこに仕掛けられていた落とし穴にダンクシュートされて消失。こんなふざけた罠は、間違いなくここのダンジョンマスターであるミミックのミークお姉さんの仕業だろう。

「よし、罠の解除を確認。今のうちに進んでしまおう」

 自分はそう促すが、ライナさんとエミューさんはまだ少し呆然としている。

「私があんまり言える立場じゃないのは分かっているけど……流石にちょっと今のオークには同情したわ……」
「奇遇ですね、私もです。あんな死亡の仕方はちょっと……受け入れられないでしょうね、今のオークは」

 なんてことを話し合っている。いやまあ、その意見は十分理解できるんだが……わざと発動させるのが一番の解除方法と言う罠だったので使える物を使っただけなんだがねえ。まあ、あのオークの運命はこういうものだったということで納得してもらおう。納得できないとしても、もう変更は出来ないし。

 そんな変な罠の部屋などもあったが、攻略自体は順調であったと言っていいだろう。ボスに会うことも無く、罠は自分が対処する事で被害を出さずに済み、戦闘となればライナさん&エミューさんの2人で対処できる。でもこうなると、ぱっと見ただけでは美人のお姉さん2人に守られている情けない男って構図だよな……うん、その辺は気にしたら負けだ。

「だいぶ歩いたわね。そろそろ地下13階のエレベーターが見つかってもいい頃合いなんだけど……どこかしらね」

 ライナさんの言うとおり、そろそろ見つかってもいいんだがな。そんな時、くぅ〜〜っと可愛いけど変な音が聞こえてきた。音が聞こえてきた方を見ると、エミューさんが顔を真っ赤にしていた。青い肌をしている魔族だからこそ、顔を赤らめるとより赤くなっている部分が強調される。

「エミューさん、もしかしてお腹すいたの?」

 ライナさんの問いかけに、こくんと頷くエミューさん。そういや演奏や歌って、リアルでもかなりのパワーを使うものだったな。なら罠の解除などをしている自分よりも早く空腹になるのも無理は無い。ワンモア的に考えるのならば魔曲は一種のアーツ扱いで、腹の減りが早くなるタイプだったんだな。

「休憩にしようか。急ぐ理由も無いし」

 自分の提案に、すぐに乗っかるエミューさん。《危険察知》にも、モンスターの反応は引っかかっていないから大丈夫だろう。そうしてエミューさんだけでなく、自分やライナさんも持ってきた料理で軽く食事を始めたのだが……エミューさんは普通の店売りされているパンと水だけを取り出している。

「ちょ、ちょっとエミューさん、貴方そんな食事で大丈夫なの?」

 ライナさんが心配するのも無理はないな……本当にパンと水だけで済ませようとしているエミューさんの食生活は余りにも貧相すぎる。それを見たライナさんはエミューさんの心配をしつつ、こちらをちらちらと見てくる。分かってる、皆まで言うな。

「エミューさん、そのパンを2枚ください。ささっと一品作っちゃうんで」

 最小限の調理器具をアイテムボックスから取り出し、ここに来るまでに狩ったハイ・ラビットからとれた肉、塩コショウ、玉ネギを用意する。玉ネギを最初に薄くスライスした後に、ハイ・ラビットの肉を焼き始め、途中で塩コショウによる簡単な味付けを行い、スライスしておいた玉ネギを途中からフライパンに投入して炒めつつハイ・ラビットの肉汁を玉ネギに吸わせる。

 エミューさんから強引にもらったパンに焼きあがったハイ・ラビットの肉と炒めた玉ネギを載せ、フライパンに残った肉汁を利用して調味料を追加し、簡単なソースを作成。そのソースをハイ・ラビットの肉の上からかけて上にもパンを置く事で挟み込む。

「はい、これをどうぞ」

 そうして即興で作ったハンバーガーもどきをエミューさんに差し出す。


 ハイ・ラビット肉のパン挟み

 パンの間に焼いたハイラビットの肉と、その肉汁をすった玉ネギをはさんだ物。パンとの相性があまり考えられていないが、パン単体で食べるよりははるかに美味しいだろう。

 製作評価6


「え? え!? アースさんって、料理できるんですか!?」

 驚くのはそこなんですか。まあそれは別にいいけど。

「とにかく、食べてください。腹ペコでは苦しいでしょう? 美味しい食事は活力の源ですから」

 自分に勧められて、食べ始めるエミューさん。最初はゆっくりだったが、徐々に食べるスピードが上がっている。

「こんな美味しい料理をダンジョン内で食べられるなんて……」

 そんな事をエミューさんは言っているが……流石にもうちょっと何とかならんのか? とこちらとしては言いたい。魔曲使いならそこそこ資金は稼げるだろうし、街で持ち運びがしやすい料理を買うことは十分に可能だろうに……そんなエミューさんの食生活がちょっと気になった休憩時間だった。
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1つの部屋そのものが罠と言うパターンはお約束ですね。可愛い罠レベルで止めて置きましたけど。
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