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ちかごろ予約投稿ばっかりになってます。
感想の方も読むだけで精一杯な状態です。
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 更にあれから数日が経過。クリアはまだ出来ていない。だが、ようやく地下18階に到達できるようにはなってきた。慣れてきたからこそ進める様になって来たんだろうが、人間の適応する能力がちょっと怖いとも感じる。とはいえ、ここを乗り越えないと手紙の主との話が出来ないしなぁ。

 時々自分を心配してくれた虎の獣人さんとはすれ違うので、軽く腕を上げて挨拶をしている。獣人さんの方も指先は5本指だが、手の甲側や腕などは虎縞入りのもふもふな姿なので、手を上げてもらうとかなり大きく感じる。手の内側に肉球は無いけど。

 鈴の音の方は、もう気にする人はほとんどいなくなった。ダンジョン内で何かが起きる予兆を告げる物などと予想を立てている人はいるが、別段凶悪なモンスターが出てくるわけでもないので、あーまた鳴ってるという程度の考えに落ち着いているようだ。

 そんな状況なので、自分は気兼ねなくダンジョンに挑み、突き進み、そして落下する日々を送っていた。だが、それも今日までにしたい。ダンジョンを出来る限り早く進むための感覚は、もういやというほど暗い虚空へと落とされまくった事で鍛えられている。ゲートを潜る前に両手で自分の両頬を軽くパンパンと叩いてからゲートを潜った。

 ダンジョンに入った自分は、時間が惜しいから早速走り始める。この走る速度も大切で、あまり体に負担がかからぬ程度に速く走ることがこのダンジョンでは必須。この程よい速度で走るのも、この時間制限と戦うダンジョンに何度も入ることで身についてしまった技術だ。《気配察知》を時々眺めながらも、決して速度は落とさない。角などを曲がる時だけは別だが。

 モンスターとの戦闘は極力回避したいが、どうしても探索上倒さなくてはいけないやつだけは倒す。弓矢での攻撃は完全に切り捨てて、惑と両腕装着している盾に仕込んだ二本のスネーク・ソードで掻っ捌くか、強化オイルを投げつけて処理。両腕に装着している盾の中に仕込んだスネーク・ソードの方も、扱いに慣れてしまった。

 戦い方としては、仕込んでいるスネーク・ソードでモンスターの足や腕にダメージを与えて動きを鈍らせ、惑で貫くのが中距離での基本戦術になりつつある。ただ、惑を振る前には盾の中にスネーク・ソードを収納しないといけない……3本のヘビをコントロールできる世界には、自分はまだ入門できていない。それが出来れば、より戦闘時間を短縮できるのだが。

(くそっ、これでも間に合わないか)

 地下15階にて、タイムリミットを迎えてしまい、床が崩壊を始める。

(崩壊の起こってゆく方向からして……エレベーターはこっち側か)

 階層の床が崩壊し始まっても、その光景に慣れた自分は崩壊からエレベーターのある方向を割り出すことが出来るようになっていた。もちろん走っているうちに、自分が走っている速度に崩壊が追いつき始めて足元が不安定になり始めるが……今までの経験に加えて、蹴りスキルと身体強化スキルによる恩恵を受けたバランス感覚の維持でそれを乗り切ってエレベーターへと飛び乗る事に成功する。

(よし、今のところは比較的冷静だな。制限時間を迎えてしまい、床の崩壊が始まるのはしょうがないが、そうなった後に焦らず対処することが出来ているなら問題はないな。この調子で地下20階を目指そう)

 エレベーターで下に下りているこの時間で、いかに自分を冷静な気持ちに戻せるかどうかが肝心だ。上っ面だけでもいいので、とにかく冷静に考えて行動できないとこのダンジョンは突破できない。深呼吸をして更に落ち着きを取り戻す。流石に何度も経験したとはいえ、崩れ行く床を駆け抜けて飛び乗るアクションはかなりキツイ。だが、それを乗り越えてこそだ。

 幸いにしてこの後の地下16階と17階は床が崩れ落ちる前にエレベーターに到着する事ができた。モンスターの数も少ないし、罠もなくスムーズに突破できたのは非常にありがたい。ここからが魔窟だ……。

 エレベーターが自分を地下18階へと運んできた。《危険察知》を発動して、周りのモンスターの数を確認する。やはり数が17階までと比べると多い。だが、それでも進まねばならない。強化オイルをここからはばら撒きながら進む。そうしないと今までの経験上間に合わない。

(だから、時間がないんだってのに!)

 走り出した自分は、そんな悪態を心の奥でつきながらこちらを発見しだい向かってくるオークに対して、強化オイルで丸焼きにしていく。普段ならば強化オイルを使うことなく倒せる相手なんだが、今は時間の方が大切だ。出し惜しんでダンジョン攻略失敗するよりはましと割り切らないと。

「ブオオオオオ!!」

 オークはオークで声を上げながらこちらに突っ込んでくる。数が増えているからどうしても戦うことが増える。1回1回の戦闘は強化オイルを出し惜しんで居ないから大した時間ではないが、それでも回数がかさむ事で時間を取られる。そうしてまた一匹を丸焼きにしたところで、壁がほぼ灰色一色に染まっていることを確認する。

(まだエレベーターは見つかってない……いや、だからとて諦めてはいけない。モンスターの数も減った。とにかく走れ、だ!)

 一瞬諦めかけた自分に活を入れなおして走り出す。とにかく戦闘回数こそ多かったが、それでも大体の場所は歩いたことでこの階層のマップは大体埋まっている。後はいっていない場所で一番臭い場所を目指してひた走る。途中で崩壊が始まるが、それに構っている暇はない。《ウィンドブースト》も使い、崩壊から逃げた先にエレベーターが待っていた。

「うおりゃああ!!」

 《ウィンドブースト》の効果が切れる寸前に《大跳躍》で飛び上がり、エレベーターの入り口に突っ込む。崩壊から逃げるためにはそうするしかなかったのだ。その代償として……ゴワァン!! という派手な音を立てて、自分は頭を派手にエレベーターの壁にぶっつけていた。HPも3割ほど減っている。リアルだったら頭蓋骨骨折では済まないだろうな……。

(か、格好はつかないが、とにかくエレベーターには乗れた。いよいよ地下19階だな)

 エレベーターの周辺は全てが崩壊してしまっており、暗闇だけが広がっている。そんな状態を見届けた後に、自分はエレベーターを起動する。そしてエレベーターは自分を運ぶ、地下19階へと。さて、待っているのはなんだろうか? 素直に突破させる気が全くないのはもう分かっているから、大抵の事では驚かない。

「──と思っていたし、事実驚きはしないんだが、またえぐい物を……」

 到着した地下19階は一本道だった。モンスターも居ない。だが、これでもかといった感じで罠罠わなワナのてんこ盛り。つまりは一本道にいろんな罠が仕掛けられているので、制限時間内に走り抜けなさいって事なのだろう。そのかわり、その邪魔をする要素のある迷路やモンスターなどは排除しているのだろう。

「時間はない、ワナは多い。それでも頑張ってみましょうかねっ!」

 気合を入れなおした自分は、覚悟を決めて罠だらけの通路に突っ込んだ。さて、間に合うかどうかの一発勝負、しっかりと決めて見せましょう!
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ようやくこの時間制限ダンジョンも終わりが見えてきました。
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