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攻略中

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 気合を入れて臨んだ地下21階だったが……その気合は数分で霧散した。だって、ねえ? 確かにモンスターはオーク系やオーガが出てくるし、罠が仕掛けられていることも多くなっているから難易度は間違いなく上昇している筈なのに……罠は自分が対処できるし、モンスターの数が多ければエミューさんの魔曲で同士討ち。数がそこそこならばグラッドが一番最初に前に出てモンスター達の連携を分断して、そこにツヴァイとライナさんが加わってぶっ飛ばす。実に楽勝です、ハイ。

 戦闘中以外では、グラッドがライナさんとエミューさんに話しかけていることが多かった。ナンパ等ではなく、純粋に二人の戦い方を見た上での質問を投げかけているようだ。今後ライナさんやエミューさんのような攻撃方法を持つプレイヤーやモンスターが出てこないとも限らないから、ここで少しでも情報を仕入れておきたいといった感じだな。その辺はさすがトッププレイヤー、こういった機会を逃がさない。

「あ、エレベーターがあるな」

 そんな感じで苦戦といっていい状況には一度も陥らずに地下21階を進んでいたが、これまたあっさりとエレベーターが見つかった。一応念のためにエレベーターを調査し、問題なしと判断する。

「トラップ、ならびに違和感もなし。地下22階に下りよう」

 自分の確認が終わった所で周囲で待機、警戒してもらっていた全員を呼んでエレベーターに乗り込み、無事に地下22階へ。降りたとたんに危険察知がモンスターの接近を告げる。

「降りた直後で悪いが、いきなりお客さんだ。数はオーク7、オーガ2、マッドゴーレム1といった所か」

 ここまで言えばPTメンバーは別段声を出さずとも最適な行動を始める。エミューさんが弱い魔曲でモンスターの動きを鈍らせ、グラッドは盾を構えていつでも突撃できる体制をとる。そのグラッドの後ろにはツヴァイとライナさんが並んで戦闘準備は完了だ。当然自分も弓を構える。

「来ます、お願いしますね」

 魔曲を弾いていたエミューさんの声が聞こえた所で、グラッドが姿を見せたモンスター集団に突撃、広範囲挑発アーツの《エリアタウント》でモンスターを一手に引き受け、更に片手剣範囲攻撃アーツの《ダストレイン》で周囲のモンスターを斬る事でさらにモンスターの意識を自分だけに向けさせる。並みのプレイヤーが同じ事をやれば自殺行為だが……。

「ぬるいな」

 モンスターに囲まれていると言うのに、そんな一言しか言わないグラッド。モンスターの攻撃をことごとく盾で弾き返し、片手剣で反らしながら反撃まで入れる。そしてグラッドの驚くべき事は、それらの行動の8割が自力という所にある。アーツにあまり頼らず、自力で殺陣たてをやれるからこその敵陣突撃、包囲状態をわざと作るのだろう。そうしてグラッドが殺陣を演じていれば、モンスター達はこちらに居る他のメンバーの事など忘れてしまっている状況になる。そうなれば当然……

「背中が隙だらけ、いただくぜ!」
「ちょうど良い鈍器になりそうね、遠慮なく貰いましょう」

 ツヴァイとライナさんが隙だらけのモンスターに、背中から遠慮することなく襲い掛かる。一般的なタンクの役割を持つプレイヤーとグラッドの違う所は、PTの一番前で盾になるのではなく、敵のど真ん中に突っ込んでモンスターを引き付ける点だ。そのおかげで、他のPTメンバーが容易に背中から攻撃を加えやすい。背後から切られてあっさりと塵になるオーク、頭を掴まれて鈍器に早代わりするオーガ。

「戦闘になるとあまり出番が無いな……サボりたいわけではないが」
「基本的に私達は前座を勤める役割ですからね。でも、今回はマッドゴーレムが居ますから出番はありますよ」

 そして残りの自分とエミューさんは、隙を見つけたら前衛メンバーの邪魔にならないようにしつつ矢を放つ。まあ、前衛メンバーの大暴れを邪魔しないようにするため、放つ矢の数はかなり少ないが。そうしてオークとオーガが片付き、残りのモンスターはタフさで最後まで残っていたマッドゴーレム1匹だけになる。

「ツヴァイ、アース、片付けてしまえ」

 グラッドの声を聞くまでもなく、自分とツヴァイはマッドゴーレムに魔剣で攻撃を入れ始める。グラッドは持つのにしっくり来る魔剣と出会えていないらしく、魔剣を持っていないのだ。

「アース、右手を頼んだぜ!」

 ツヴァイがマッドゴーレムの左手を切り落とす。自分はツヴァイからの要請どおりに惑を伸ばしてマッドゴーレムの右手を打ち貫いてから切り裂く。自分とツヴァイの攻撃を受けて、どしゃどしゃっと音を立てて落ちるマッドゴーレムの両腕。即座に自分はマッドゴーレムの頭を打ち抜くが、手ごたえが無い。

「ツヴァイ、こいつの核は頭の中にはなさそうだ! トドメはツヴァイがやってくれ!」

 マッドゴーレムは本体が泥という性質を生かし、弱点であるコアを体内のどこかに移動させることが出来る。そして頭にコアがなければ、胴体のどこかに隠していると言う事になるのだ。

「分かったぜ! っと、あぶねえ。大人しくしろっての!」

 マッドゴーレムが反撃として泥を固めて槍の穂先を前方に作りあげてツヴァイに対して放ってきたのだが、その攻撃をツヴァイは軽く回避して……反撃とばかりに魔剣で数回マッドゴーレムの体を切りつけた。

「お、この辺で何かに当たったな。んじゃ、《フルクラッシュ》!」

 大剣アーツの《フルクラッシュ》でツヴァイがマッドゴーレムの泥を再び切ると、マッドゴーレムはべしゃりと潰れてただの泥と化し、消え去った。マッドゴーレムが消え去ったということは、ツヴァイが正確にマッドゴーレムのコアを破壊した事を証明している。

「お疲れさまー……と言うほどではないかしら? このメンバーなら」

 右手に一匹のオーガを引きずるライナさんが戦闘終了後に笑顔でそう声をかける。一方でライナさんに捕まっているオーガは時々ビクッビクッと動いてはいるが……うめき声すら上げない。もう見慣れた光景なのだが、この状態を見慣れていること事態がかなり異常だな。

「いつものメンバーとは違う面子で挑むと言うのは良い経験になる。──その約半分が、今までの常識範囲の外にあるというのは完全に想定外だがな……」

 グラッドはそんなことを言っているが、無理もないか。ライナさんの巨大化ガントレットにエミューさんの魔曲はプレイヤー側にはまだ無い技術だからな。特にライナさんの姿は目立っているようで、掲示板の一部をにぎやかにさせていたりする。

「ま、さくさく進めてストレス溜まらないのは良い事だけどな。それより、俺としちゃグラッドのタンクのやり方も常識範囲外だと思うぜ? 普通の人は絶対に真似できないって」

 ツヴァイの意見にはもろ手を上げて賛成だな。わざと敵に囲まれることで背中を向けさせ、味方に攻撃を行いやすくさせるなんてのはよっぽど自分自身のプレイヤースキルに自信がなければ出来ないことだ。そしてそれを危なげなくやってのけるプレイヤースキルの高さは尋常ではない。実際グラッドのHPは戦闘直後でも5%減ったかどうかだし、それぐらいなら歩いているうちに自然回復してしまう範囲だ。

「ま、とりあえず先に進もうか。この調子で地下30階に到達したい」

 このメンバーなら、地下29階までは問題ないだろう。問題は、最後の試練だな……。
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今日の午後、新しいPCを導入します。

それにしても最新のグラボはいいお値段しますね。グラボだけで7万円オーバーでしたよ。まあ、今回買うPCの御代は合計33万超えなのですけどね。
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