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連載

休憩タイム

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 そしてダンジョン攻略が順調に進んで今は地下26階。地下27階に降りるためのエレベーター前にて、自分はハイ・ラビットの肉を焼いていた。

「なあ、アース。ちょっといいか?」

 半ば呆れたような心境を匂わせつつ、グラッドが調理中の自分に声をかけてきたので対応する。

「ん? どうしたグラッド」

 声をかけてきたグラッドに、自分は返答を返す。何か問題でも発生したのか?

「お前はいつもこんな感じなのか?」

 ジュウジュウとお肉が焼けているフライパンを指さしつつ、グラッドが質問を投げかけてきた。まあ、ダンジョンの中で料理をするというのは、少々常識はずれかもしれない。だがな。

「そんな事を言いながらも、グラッドだってしっかり自分が焼いたハイ・ラビットのステーキ(ガーリックソース)を食べているじゃないか。こちらとしては提供は行うが、だからと言って無理に食えとは強要しないぞ?」

 料理中であっても、きちんと《危険察知》による周辺への警戒行為は継続している。それに、周りのモンスターはグラッド、ツヴァイ、ライナさんの3人によって根こそぎ蹂躙されていたりするんだよな。

 そんな彼らの活躍で休憩時間を活かして料理をしても問題はない状況が生み出されたのだから、それを最大限に利用したいだけなのだが。指摘を受けたグラッドは、うっとうなった後に黙り込む。

「アースと組むと、これがあるからいいんだよな。あ、こっちにステーキをもう1枚頼むぜ!」

 その一方で、ツヴァイは遠慮のかけらもなくハイ・ラビットのステーキを口に運んでいる。まあツヴァイは付き合いが長いから、こういった自分の行動にも慣れている面がある。

 逆に遠慮がなさ過ぎて、少しは食う量を自重しろと言いたくなってきているが、ここまで頑張ってもらった事を考えると言い出しにくい。材料はまだそれなりにあるしな。

「そういえば、こういった食事ができるのはアースさんと組んでいるとき限定なんですよね。アースさんと別れたら、また外ではパンと水だけの食生活に戻ってしまいます……自分のトラウマを本気で克服しないといけないかも知れないですね……」

 こちらはエミューさんだ。そういや、エミューさんともお別れの時が近いんだな。あくまでPTを組むのはこのダンジョンの中だけという話だったし、それ以降の自分は獣人連合が実装され次第、南地区にできるだけ早く向かわなければならない。

 向こうに行ったら〈義賊頭〉としての仕事が待っているからな。あいつらが集めてくれた情報を元に、上手く解決できるように立ち回らねば。その仕事のためにPTを組み続ける事はできない。

「うーん、私も料理をもっとちゃんとした形で身に着けようかしら。お弁当を持ってくるのは当然だけど、現地で取れた食材を現地で調理して食べることができるのはかなりポイント高いわよね……」

 ライナさんもそんなことを呟いている。ワンモアでは食わなきゃ餓死が待っているし、アーツも撃てないからな。何かしらの方法で空腹を満たすことができる技能はあると心強い。

 一番簡単なのは言うまでもなく街で料理を買い込んでくることだが、それでもアーツを乱発したり街の外で長時間戦っていれば、食料の残りが心もとなくなる事も十分にありうる。

 もし、町に戻る前に食料が尽きてしまった場合は生肉を直接食うという方法もあるらしいが、これは当たると悲惨らしい。腹痛こそしないが、ステータスが一定時間大幅に低下してしまうそうだ。疑似的な食料を生み出す魔法もあるらしいが……これも非効率すぎるので、緊急時にやむなくという感じらしい。だから現場で料理ができると便利なのだ。

「いや、俺としてはアースを非難するつもりではない。だが、こうやってダンジョンの中で料理をするという度胸がよくあるなと思っただけでな……」

 しばらく黙り込んだままステーキを3枚ほど平らげたグラッドが、戦闘準備を整えつつそうつぶやく。

「度胸があるわけではないさ。〈盗賊〉系のスキルを持っているからモンスターの接近を感じ取れるから出来るんだ。現に今は《危険察知》の有効範囲には何も引っかかっていない。何かが引っ掛かったら即座に料理を中断すれば十分に間に合うという計算の元にやっているだけでな」

 暗にグラッドに対してモンスターの接近はないからまだ休んでいていいと言う事を告げつつ、料理をし終わった後の後片づけを行う。自分用のステーキを口にするのは、片付けが終わった後でだ。

 食べた量はグラッドが3枚、ツヴァイが6枚、ライナさんが4枚、エミューさんが2枚、これから食べる自分用に2枚ってところだ。まあ1枚の大きさがリアルステーキの7割ぐらいの大きさしかないから、枚数が増えるのは仕方がない。それを考慮しても、ツヴァイは明らかに食い過ぎだがな。

 ともかく、ようやく料理が終わって自分の作ったステーキを口にできた。素早く、手軽に作れるとなるとどうしても焼く系統の料理が多くなってしまうんだよな。さて、今回の料理の味だが……まあ、スピード重視で評価6か7ならこんなものか。それなりにおいしいし、不満はないな。


 ハイ・ラビットステーキ(ガーリックソース)

ハイ・ラビットの肉を焼き、ガーリックを多く加えたソースをかけたステーキ。ガーリックの風味や香りが好きな人には喜ばれるだろう

制作評価 7


 こういうダンジョン内ならいいが、街の露店ではもう見向きもされない料理だろう。露店で売られている料理は最低でも品質が8以上で何らかの追加効果付でないと、もう買う人がいない状況になっていると聞いている。

 それから料理コンテストもプレイヤー主催で積極的に行われており、そこでは品質10が最低ライン。その上でいかに美味しく、追加効果が優秀であるかが競われているらしい。料理メインのプレイヤーにとっては、メンツをかけた熱い戦いが展開されているとかなんとか。

「うっし、腹いっぱい食って元気になったぜ! そろそろ地下27階に降りてもいいんじゃないか?」

 ツヴァイの言葉を聞いて、自分はちらりと時計を見る。休憩を始めてから20分は過ぎたか。確かにそろそろ行動を再開してもいい頃合いだな。

「みんな、そろそろ行動を再開しようか?」

 自分の呼びかけに、グラッドもライナさんもエミューさんもうなずいて立ち上がる。

「あとは地下30階まで休憩は必要ないだろう。一気に突き進むぞ」

 グラッドの意見に、自分を含めたPTメンバーがうなずく。ここで十分な休息と食事をしたのだから、あとはゴールまで休息はよっぽどのことがない限りは不要だろう。そしてそのよっぽどの事は、この面子ならまず起きることはないだろう……たぶんだが。

「よっし、行こうぜ」

 ツヴァイの声をきっかけに、全員が地下27階へと降りるエレベーターに乗り込む。エレベーターは自分が事前に調べており、おかしなところはないとの確認は済んでいる。エレベーターは静かに動き出し、自分達を地下27階へと運ぶ。そして到着した地下27階は静かなものだった。

「ふむ、近くにモンスターの反応なし、罠もなし。この階層はすんなり通過できそうかな?」

 地下27階に到着した直後に、お約束となっている周辺の状況報告を行う。

「油断だけはだめだけどね。さて、おなかも膨れさせてもらったことだし……暴れるわよー♪」

 そうして自分達は地下27階へと踏み出した。ダンジョンの残り階層も僅かとなったが、このまま無事に踏破できるだろうか?
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新しいキーボードなので、ブラインドタッチがミス多い……。
早くなれないとな。

あと、日曜に休んだのはPCの疲れが原因ではなく、純粋にいろんなことが重なって疲れたので休んだだけです。体調不良とかではありませんのでご安心を。
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