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連載

ダンジョンマスター登場

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タイトルだとボス戦っぽいのに、自分の作品には当てはまらない。
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 何はともあれ、何とか地下30階に到着した。これでやっとここに入った目的が達成できる。目の前にあるのはプラチナ製? のような輝きを放つ扉。さて、どんなところで話し合うのだろうか。

 一応念のために惑や両手の盾、そして靴の強化パーツなどはアイテムボックスの中にしまう。武装をしていない方が余計なプレッシャーを与えないだろうし、ここまで来て不意打ちもないだろう。そう考えて武装を解除した後に扉を開けた。

 ──はい、不意打ちはありました。だがそれは罠などの危険な不意打ちでは無く、なんでダンジョンの最下層にアニメなんかでよく出てくる金持ちが所有していそうな庭付き別荘があるんだよ!? という方向で。泉があり、花が咲き乱れ、緑の木々が別荘を囲むその光景は、一枚の絵画のようだ。

「よ、ようこそ、い、いらっしゃいました……」

 その声が聞こえてきた方向に顔を向けると、一人の紺色のロングスカートにエプロン姿のメイドさんが別荘らしき家からこちらにやってくるところだった。だが、そのメイドさんの顔を見た自分はあっけにとられた。

「──何してるんですか」

 そう、そのメイドさんは、先程自分と拳や剣を交し合った試験役の女性だったからだ。試験中の凛とした表情はどこにもなく、顔を羞恥の感情のためか真っ赤にして湯気が出てきそうな感じですらある。

「ご、ご、ご主人様がお待ちです。こ、こちらへどうぞ。あと、この姿に対しては何も言わないでください……足がスースーしますし、し、下着もこんな小さな薄い布なんてお、落ち着きません……」

 何も言うまい。まあ、これが一種の罰なんだろうとあたりをつけた。確かにこの手の人? には、肉体的苦痛よりも精神的な苦痛の方が効きそうではある。下着云々は、おそらくさらしに褌という状態から、一般的なブラやパンツになったから落ち着かないのだろう。先導するその姿もそわそわと落ち着かないのが丸分かりだしなぁ。

 さて、そんな罰を受けていると思われる女性の案内で、別荘らしき家の中に入る。靴を脱いで室内用のスリッパに履き替えてくださいという指示に従い、履き替えた後に大きな部屋の一つに通された。

「で、ではでは、主人を呼んでまいります……」

 自分を椅子に案内し、紅茶と軽いお茶菓子を置いてからそそくさと立ち去る女性。命のやり取り……と言って良いのかどうかは微妙だが、本気でお互いを斬り、殴り合った直後の再会としてはあんまりだろうな、特に向こう側が。逆にそれだからこそ罰になるんだろうが。出されたお茶を軽く口に含み、お茶菓子を少し食べたところで、とうとう本命が登場した。

「お待たせしました。私がこのダンジョンのマスターを務めておりますミークと申します。まずは話をする前に改めて謝罪を。試験を担当した脳味噌筋肉のおバカが、貴方様に対して正当な試験を行わなかったことをお詫び致します」

 整った漆黒のロングヘアーを持ち、マリンブルーのドレスを着た女性が、そういいながら深く頭を自分に対して下げてきた。そうか、彼女がミミック3姉妹の長女でダンジョンマスターのミークさんか。

「彼女には当分の間罰として、メイド服にて作業を行わせます。肉体労働などは彼女の得意分野ですので、そちらの罰では罰になりません。ですので、本人が羞恥にまみれて茹蛸のようになる罰を与えております」

 あ、やっぱりあの姿は罰なのか。そうだな、確かにその方が罰になるかもな。ミークさんは対面に用意されていたもう一つの椅子に座る。ドレスがぐちゃぐちゃにならないか? とも思ったが、そこはゲームらしく問題はなさそうだ。

「それとも、罰としてあの子に着せる服に何かリクエストがございますか? 私のわかる範囲の服であればご用意させていただきますが。もちろん、あまりにも問題がある格好はお断りさせていただきます。たとえば全裸で歩き回らせろ、などですね」

 罰として着せる服ねえ。こういう場合はバニーガールとか、どこぞの高校生っぽい制服とかが上げられるんだろうけど。下手なことをここで言って、後々このダンジョンにまた用事ができたときにサーチ&デストロイされたら嫌だなぁ。

 さらに付け加えるなら、その時に泣きじゃくりながら襲ってこられたら、その時に同行していたPTメンバーからは絶対いらぬ誤解を受ける。『人災の相』称号を舐めたらあかん。

「これといってすぐには思いつきませんね。何せ基本的に冒険ばかりで色事には疎いので」

 と言っておくのが無難だろうな。いらぬ藪をつつくこともあるまい。

「そうですか? 面白くない……いえいえ、それならばこのままメイド服で通させましょう。そうだわ、あの子の着ている下着を薄い紐のような物にしてしまいましょう。ふふ、最後の砦が一番頼りないというのも面白いですからね」

 うっわあ……えぐい。戦った相手とはいえ、彼女に対して心の中で黙祷を捧げざるを得ない。しばらくして、どこからか「キャー!?」という悲鳴が聞こえてきたが、追及はよそう。そうなった原因は彼女にあるのだから、罰を受けるのも仕方がないだろう。

「さて、お遊びはこのぐらいにして。私に伺いたい事があるために訪れたそうですが。先に妹のミーツから聞いている通り、『このダンジョンがなぜここまで大きく変化を遂げたのか?』というご質問でよろしいのですか?」

 ミークさんの問いかけに、自分は頷く。ミーツさんを信じていないわけではないが、やっぱりこういう肝心な事は一番上にいる存在に直接聞いてから報告すべきだと自分は考える。そのために試練を受けてきたんだからな。

「では、それに対する返答を。ミーツからも聞いていたでしょうが、以前のダンジョンのままでは誰も来ないからと言うのが一番の本音ですね。前のダンジョンマスターはただただ即死罠ばかりを仕掛け、そこに掛った放浪妖精の姿を下品な笑顔で眺めることを良しとする奴でした。そんなダンジョンですから、訪れる妖精は当然減少する一途でした。これによりまずいことが発生する可能性があるのですが、それは後でお話しします」

 即死罠しかないダンジョンねえ。ある意味芸がないな。

「即死罠しかないダンジョンだった影響なのか、私を初めとしたダンジョンにいた古株の者たちは放浪妖精達を見つけた場合、戦って倒しはしましたが殺す事はせず、ダンジョンの外に追い出していました。あなた方から見て魔物である私達がそんなことをするのはおかしいのでしょうが、どうにも即死罠で散った妖精達の姿を思い出すと、それと同じことをするのは気が引けると言うかなんというか……ですので、以前のダンジョンで死亡した妖精達の死因はほとんどが即死罠によるものです」

 いや、あの。モンスターの中に慈愛の心を生み出させるほどの罠って何なのですか。前任者はいったいどんな物をダンジョンの中に置いていたんだか。

「そんな私達古株魔物達の行動を、当然前任者は何をやっているんだと怒りました。あらゆる暴言をまき散らし、私達を激しく打ち据えたのです。皮肉なことに、それが私達古株魔物が決起するきっかけになりました。とはいえ、相手はダンジョンマスターです。私達が束になってかかっても普通は勝てません。ですので、私達は融合にかける事にしたのです。融合とは、他者の力を完全に取り込み自身を大きく強化することを指します。これもまた、前任者が私達に付与していた能力でした」

 なんだか、話がおかしい方向に。

「前任者をおびき寄せるために古株のオーガとゴブリンだけを除いて、残りの古株魔物達全員が融合しました。誰が最終的に残るのかはわかりませんでしたが、融合の器となった者が前任者を討ち、ここをもっとまともなダンジョンにしようという事がかわした約束でした。その融合を行った結果、器役となって残ったのがミミックである私でした。あとは前任者をなんとか仕留めて、私が新しいダンジョンマスターとして成り上がったのです。その戦いの中で、前任者を私の元までおびき寄せる役を担った古株のオーガとゴブリンは両方とも死亡しています」

 えーっと、合いの手を入れようがないな。

「そして私は、ある程度財宝を自由に生み出せるミミックの力を生かせることから、財宝が尽きないこのダンジョンを作り出しました。ただしいつも同じルートで簡単に財宝を得られるのではまともなダンジョンではなく、ただの稼ぎ場に堕してしまうので今のように入るたびに地形も仲間も変わってしまう形にしたのです」

 力尽きた人を死なずに外に送り出すというのは、過去で身に着けた力の応用なのかな。

「おかげで今は妖精だけではなく、貴方の様なほかの種族の人も来るようになり、ダンジョンに活気が戻りました。これはあまり知られていないことなのですが、ダンジョンに訪れる人があまりにも少ないとダンジョンが何の前触れもなく消滅してしまうことがあるのです。前任者はそういう部分に対する知識が全くなかったのかどうかは、今となっては知る由もありませんが……前に言った訪れる方々がいなくなるとまずいことが起きるというのは、これの事ですね」

 ダンジョンも出来高制!? 来場人数が少ないとつぶれるとか、どこの遊園地だよ! 世知辛いにもほどがあるだろう、ワンモア。

「これがダンジョンが大きく姿を変えた理由になりますね。さて、ご質問があれば受け付けます。それにしても、あの子は紅茶のお変わりすら持ってこないつもりなのかしら? 少し失礼しますね」

 そういって、何かを目の前でいじり始めるミークさん。さて、質問か……何を聞くことにしようか。
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お仕置き方法を考えるのが難しいです。そういう部分の才能が足りない。
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