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連載

フラグが立った。

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 妖精の国北の砦街から妖精国を出国。ネクシアに到着したら馬車でファストを経由してサーズへ。やはり整備された街道を走る馬車は早い。それに馬車の周りには馬車を護衛するための騎兵が同行するからモンスターとかち合っても問題はない。まあモンスター側もこの馬車の走るルートにはめったに顔を出さなくなったと騎兵の方が言っていた。モンスター側も馬車に襲い掛かるのは割に合わないと学んでいるのだろうか? ワンモアならありうるな。

 もちろんそんな馬車だから運賃もそこそこするんだが、自分には以前にあったモンスターの街襲撃の一件で貢献したことによる報酬の一つで無料である。なので気軽に利用できるのだ。そうして馬車に揺られて高速移動を行い、あっという間にサーズに到着。取り決め通りにツヴァイに向けてウィスパーで連絡を取るか。

【ツヴァイ、こっちはサーズに到着したぞー】
【お、早いな。こっちもあと2分ぐらいでサーズの街に到着するってところだ】

 じゃあ入り口でノンビリ待っているとツヴァイに伝えてウィスパーを切る。そして大体2分後にツヴァイを始めとしたブルーカラーの初期メンバーがサーズの街入口に姿を見せた。こうして初期のメンバーが揃っている所を見るのは久々な気がする。

「お、アース、待たせたか?」

 自分の姿を見つけたツヴァイが手を挙げながらこちらに向かって歩いてくる。

「いや、待ったというほどでもないよ。よろしくな」

 ツヴァイやミリーとは一緒にダンジョンに潜っていたから、これといって報告するような話もない。そして折角なので獣人連合実装まで泊まる宿屋は同じにしようという事に。自分にとってもその方がいいので、二つ返事で了解した。断る理由は何もないし。

 早速宿屋の部屋を取り、獣人連合実装までの寝床を確保した後に早速自分からの要求をブルーカラーのメンバーに告げる事にした。

「──と言うわけで、獣人連合実装前に少しでも自分の戦闘スタイルを改善したい。なので実力者が多いブルーカラーのメンバーとPvPをして欲しいんだが、良いだろうか?」

 こんなことを頼めるのはブルーカラーのメンバーだけだからな。何せアップデート直前と言うのは下準備が忙しい時期だ。新しい場所の実装という事は、新しい素材が取れるようになるのでまず生産者の活動が活発になる。すでにある素材と、新素材を組み合わせた新しい商品を作るために試行錯誤する日々がやってくる。

 そしてその新商品を買うためには当然それなりのお金が必要となるので、戦闘職はお金をガッツリ稼ぐ状態に移っている。この辺は一般的なMMORPGと何ら変わりはないな。まあ自分は、《義賊頭》としてのお仕事が待っているが。今度は一体何をやることになるんだか。あれ以来あいつらからの報告がないが、あいつらがドジを踏むとは思えない。おそらく向こうに行ってから接触を図ってくるのだろう。

「なるほどなー、ボスと1VS1っていう部分がずれている気がするが、それでも確かに戦闘方法の見直しってのは大事なのはわかるな。分かった、アースの訓練の依頼を引き受けるぜ。みんなも空いている時間があったら、積極的にアースに協力してくれ。俺たちは借りがあるんだからよ」

 と、ツヴァイは自分の願いを引き受けてくれた。ああ、そうだ。カザミネに一つ聞いておかないといけない事があったな。

「あと、ちょっとカザミネに聞きたい事があるんだが良いだろうか?」

 話を振られたカザミネは、何だろう? という疑問の表情を浮かべている。

「大太刀使いのカザミネに質問なんだが、大太刀のアーツで《紅散華》と言う物はあるのかな? それをちょっと知りたい。言いたくないと言うのならもちろん無理やり聞き出すつもりはないけれど」

 ボス戦用のアーツなのか、それとも上位大太刀スキルを習得すれば手に入れられるアーツなのかを知りたい。実は事前に攻略サイトで大太刀のアーツを調べてきたのだが、《紅散華》は無かった。まだ更新されていないだけなのか、それとも持ってはいるがそれを秘匿しておきたいだけなのか。秘匿しておきたいのなら、無理に聞き出すつもりはない。

「そうですね……少なくとも私の知っている範囲という前提になりますが、大太刀のスキルを上げていくことにより習得できるアーツの中には無いですね。アースさん、その大太刀のアーツはどこで見たんですか? もしくは知ったのですか?」

 このカザミネからの逆質問には、ツヴァイと一緒に妖精国のダンジョンに入った時に地下29階で出会った女性浪人風のボスが放ってきたと伝える。

「女性浪人……レアボスですね。それで、アーツはアースさんから見てどんな動きをしていましたか?」

 と、さらに聞かれたので……5枚の花弁の形をした幻影が最初に現れ、その花びらが順番に刃となって襲ってきた事。その花びらが変化した刃により盾を構えていたにもかからわず、防御を崩されて隙だらけにされてしまった所に花の幻影の中央から大太刀の突き攻撃によって貫かれたことを伝える。

「なるほど……もしかすると、これですか?」

 と、カザミネが一つの動画を紹介してくれる。そこには浪人風の男性が、4枚の花びらの幻影を出した後に花びらを刃と変えてプレイヤーに攻撃している動画が映っていた。この浪人風の男性があの妖精国ダンジョン地下21階以降に居る人型ボスの通常バージョンなのだろう。

「あ、そうそう、こんな感じだった。ただ話でも言ったように自分が受けたのは花びらの枚数が5枚で、最後のとどめに強烈な大太刀による突き攻撃が飛んで来たって所が動画とは違うな」

 そうですか、とカザミネはつぶやいて目を閉じ、しばらく腕を組んで考え込んだ。その後に目を開けてから話を再開する。

「まず、動画にあった浪人風のボスが放っている技ですが……これは一定以上大太刀のスキルを上げた後に、このボスが落とす奥義書を手に入れるか、直接この技を受けて死なずに耐えるか、技を受けて耐えた人に直接詳しい話を聞くかで習得できるチャンスがある……らしいのです。実は今、私の方にフラグが立ちました。先ほどアースさんから詳しく話を聞いたことで、情報を聞き出すという条件を満たせたんだと思います」

 まさかそんなアーツ習得方法があるとは。話をしてみるもんだな。

「そしてここからが問題なのですが、奥義書を手に入れれば確実に覚える事が出来ます。直接受けて耐えきった場合は自分の目で見ていることになるので再現することができ、アーツを習得できる可能性は高いです。ですが、この伝聞によるフラグはいちばん弱く、直接見た人に指導を受けながら少しずつ再現をしていかないと習得できないのです」

 あ、やっぱりそこら辺は差があるんだな。だが、これは好都合ではないだろうか?

「それなら、カザミネと積極的にPvPをすればいいんじゃないだろうか? 自分とPvPで直接対峙している方が《紅散華》がどうだったかを詳しく言えるし、カザミネはこっち側の新しい戦闘スタイルをある程度モノにできるまで付き合ってもらう。お互いにメリットがある話にならないか?」

 自分に提案に、カザミネも同意した。

「そうですね、PvPを行いつつ《紅散華》を再現するように動くのが一番いいかもしれませんね。直接受けた人に見てもらうのが一番早いですし」

 あとで聞いた話になるが、このようなボス奥義を再現して習得する方法も、一種のパズルの様な物らしい。正しい動きや角度などを正しい順番で動かし、聞いた話と同じ動きができるようにしていくことで習得となるらしい。直接体を動かすVRならではの習得方法と言えるだろう。

「んじゃ、基本的にアースとPvPをするのはカザミネに任せるぜ! アース、カザミネ以外ともPvPをしたくなった場合は俺に連絡をくれよ。できる限り希望に応えるからよ」

 というツヴァイからの一言で、しばらくの間カザミネとPvPをして過ごすことが決定した。しばらくはプレイヤー本人の訓練だな。
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ただしアースではなくカザミネの方に。
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