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 PvPを使った訓練に付き合ってもらう日々が数日経過した。ブルーカラーのメンバーのメンツの実力を直接戦う事によってじわじわと思い知らされると同時に、新しいバトルスタイルの問題点も浮かび上がって来ていた。

 まずひとつはどうしても左手から弓を手ばさないので、その弓を狙った攻撃を受けやすい事。もっともこれは、ブルーカラーメンバーがそう言った武器を狙った攻撃に慣れて対処できるように、あえて集中的に行ってきている節がある。ツヴァイやカザミネの武器に自分が攻撃しても、彼らはするするとこちらの攻撃を流してしまう。つまりそういう動きがお前もいつかはできるようになれ、というメッセージだろうな。

 そして、肝心な弓の攻撃命中率がボロボロなのも問題だ。ある程度の間合いが広がったら積極的に弓に矢を番えているのだが、そこから狙いをつけて打つという動作に入る前に当然ながら近接戦闘がメインのツヴァイやカザミネ、レイジは距離を一気に潰してくる。そこでどうしても動揺してしまい矢が明後日の方向に飛んだり、放つこと自体が出来ず矢を取り落してしまったりと今はまだ弓がただのお荷物にしかなっていない。

 大きな問題はその二つだが、細かい問題点を挙げればきりがない。ブルーカラーのメンバーに指摘してもらいつつ、少しずつではあるが修正を重ねている。回避する方向がワンパターンと言う問題や、フェイントがあっさりし過ぎているなどの問題点は、ブルーカラーメンバー同士のPvPを観戦させてもらったりする実演を交えて教えてもらった。これだけでもステータスには表れない強さと言う物が向上しているはずだ。

「やっぱり近接戦闘メインで戦ってきた人っていうのは、細かい動きやいざってときの決断力の高さがすごいな」

 自分の感想まさにこの一言に集約される。僅かな動きでこちらの動揺や判断ミスを誘い、一気に切り込んで来る。こればかりは直接味わってみないと理解できない世界だ。剣の切っ先を数センチ動かすだけで、これだけ自分の動きを制限されるとは思わなかった。切り裂いてくるのかと思えば突きに変わり、突いてくるのかと思えば斬りに変わる。この手のフェイントは、とにかく戦って見破れるように自分の目を鍛えなければいけない。

「モンスター相手でも、人相手でも一瞬の判断ミスが状況の悪化を招きますからね。特にレイジさんはタンクと言う立場上、その辺の見切りの目はすごいですよ。訓練のために今の様なPvPを行うんですが、読み負けが多いですね」

 とはカザミネからのお言葉。確かにその言葉を裏付けるように、レイジとのPvPでは読み負けが多すぎてパーフェクト負けを何度か喫している。レイジが持つ大盾による視界妨害効果もあるとはいえ、単純な読み負けによる状況悪化は数えきれない。正直に言って、勝てる気がしないな。矢もすべて大盾に防がれてしまっている。

「まあ、アースは近接専門じゃないから仕方ないぜ。実際の戦闘だったら、姿や気配を消してそろそろと忍び寄って強烈な弓矢による攻撃を離れた所から放ってくるんだろ? そうなったら俺やカザミネはちょっとキツいぜ。それに俺達だって、ゲーム開始直後から長く近接戦闘を重ねてきて漸くこんな動きができるようになったんだ。数日で近接専門で戦ってきた俺達と張り合えるようになったら、さすがにそれは落ち込むぜ」

 ツヴァイの意見ももっともな話か。ブルーカラーの初期メンバーはワンモアが始まってからスタイルを大きく崩さずにやってきているはずだ。例外は盗賊系スキルを取ったノーラかな? つまりその方面のスペシャリストなわけで、いくらそんなスペシャリストなメンバーから指導を受けているとはいえ、数日である程度動きをモノにしようと考えること自体が間違いだったか。

 むろん無意味ではなく、大いに勉強になるからありがたい。こういった戦闘方法と言うのも、本来なら自分自身で試行錯誤して覚えていくものだからな。

 時たま掲示板に戦い方を教えてほしいなんて募集がかかることがあるが、大半はスルーされる。なにせVRと言う自分の体を動かすように戦うゲームなのだから、詳しく教えるとなると今のブルーカラーの面々のようにガチすぎる内容になるからだ。

 当然教える方の手の内をある程度明かすことになるし、対処法を知られ易くなることに繋がるため、大半は基礎的な内容だけになる。特にPvPを好む人達は自分達の情報はできるだけ隠す傾向にある。アーツの内容自体はWikiなどで知られていても、放ち方をワンモアではいろいろ工夫できるのでそれを知られないようにしている様だ。

 そのため、情報を共有している集団は〜流なんてあだ名がつくことがある。自分の蹴りの流派とは違って、あくまでアーツの放ち方や戦い方の動き方などが同門と言っていいぐらい形が出来上がっている所からきている。そしてその集団に属することは、そのまま『入門』と言われる。もちろん『入門』したからと言って、すぐに教えてもらえるわけではないが……。

 これをケチすぎないか? と言った人がいたが、動きを一つの形として練り上げるのがどれだけ難しい事なのかを分かってないから言えるんだとの言葉で一蹴されているようだ。そんなにケチだと思うのであれば、新しいアーツの放ち方や動き方、新しい魔法の合成を成し遂げた後に広く公開して見せろと反論が飛んだらしい。今回ブルーカラーのメンバーにここまで詳しく戦闘方法を教えてもらえているのは、今までの付き合いの長さから言いふらさないだろうという信頼と魔剣を譲った恩があるからだと思う。

「あー、確かにツヴァイの言うとおりだな。それでも獣人連合が解放されるまでの間に、少しでも教えてもらったことを実践できるようになっておきたいからもうしばらく頼む。新しい場所が解放されたら、こんな特訓をつけてもらうなんてことは難しくなってしまう」

 貴重な機会を無駄にする訳には行かないからな。近接戦闘をメインにしている人が見ている世界は、今まで一歩引いているところで戦う事をメインにしていた自分にとっては目新しい事がいっぱいだ。ここで知識と度胸を身に着けて、弓に矢を番えている状況でも慌てず相手の眉間に矢を突き立てられるぐらいの腕を最終的には身に着けられるようになる切っ掛けを掴んでおきたい。

「こちらとしても、普段戦わないタイプであるアースさんとの戦いは楽しいですし刺激になります。《紅散華》の完成度もまだ40%をやや上回ったところですし、お付き合い願います」

 カザミネの言葉に自分は頷き、PvPを申し込む。カザミネが修得を目指している《紅散華》は、最初に比べるとはるかによくなってきていた。花弁の形も自分が覚えている記憶と遜色なくなってきているし、花弁を飛ばす順番や角度もほぼ同じになってきた。後は細かい調整を重ねて、コツコツ完成度を上げていくことになるのだろう。

「よし、じゃあさっそくもう一戦いってみようか。弓を狙われた時の対処法がほんの少しだけだが見えてきたような気がするしな」

 PvPのカウントダウンを聞きながら、いくつか見えてきた対処法を自分は試してみようと考えていた。完全に回避することが今の自分には難しい以上、できるだけ受け流すようにして耐えるしかない。あとはその受け流しをどうやれば上手く行くかを試行錯誤しなければな。

「それは楽しみですね。是非見せていただきましょう」

 カザミネも大太刀を構えてPvPの開始を待つ。そしてカウントダウンが終了した直後に思いっきりぶつかった。

 そんな日々を獣人連合実装のためのメンテナンスが始まる前日まで送った。そのおかげで自分の新しいバトルスタイルも何とかある程度形にすることに成功した。危なっかしい部分はまだまだ多いが、ここからはモンスターとの戦いを交えて練度をゆっくりと上げていくしかない。一朝一夕でできる事ではないと分かっていることだ。

 カザミネの方も、何とか《紅散華》の完成度を50%台に乗せる事に成功したようだ。ツヴァイから聞いた話では、自分とのPvPを行っていた時間以外は、ひたすらモンスターと戦いながら試行錯誤を繰りかえしていたらしい。一刻も早く完全にものにしたいと言う意思の現れだろう。

 他のツヴァイを初めとしたブルーカラーのメンバーは、獣人連合実装後の予定を話し合っていたようだ。自分にもしばらく一緒に行動しないか? とお誘いを受けたのだが、先約があると断るしかなかった。まさか《義賊頭》としての仕事が待っているなんて言えないからなぁ。ツヴァイの方も何かあるという事を酌んでくれたのか、それならしょうがないなと言うだけだった。

「メンテナンスは明日からまたも48時間だったっけ。せめて半分にできないのかなー」

 ロナがそうぼやく。その気持ちは分かるけどね……丸々二日かかるというのはメンテナンス時間としてはかなり長いほうに入る。軽いアップデートではないからこそそこまで時間がかかるのだろうが。ただ、獣人自体はすでにいろんな場所で活動しているのだから、獣人連合の場所自体はすでにあるはずで、メンテナンスは何をやっているんだろうという部分は引っかかる部分がちょこちょことあるが。

「ま、仕方ないですわ。おとなしく待つしかないですし」

 エリザの言うとおりだな。こればっかりは運営次第だから。細かい調整などで時間がどうしてもかかるのかも知れない。新しい機械を導入した直後の職場でもそうだしな。軽い雑談をブルーカラーのメンバーと交わしてログアウト。いよいよ新しく獣人連合エリアが明日からのメンテナンス終了直後に解放だな。
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スキル

風迅狩弓Lv29 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 ↑1UP 百里眼Lv28 技量の指Lv33 ↑2UP 小盾Lv28 隠蔽・改Lv1 武術身体能力強化Lv66 ↑2UP スネークソードLv49 義賊頭Lv26 妖精招来Lv12 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.76

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv23  釣り LOST!  料理の経験者Lv16 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 17

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

進化武器 護魂の弓

Atk+110 魂弓こんきゅう 所有者が変身中のみ使用可能 魂をささげた者の力が宿っている 大きさが必要に応じて変化

特殊能力 貫通力強化(中) 大雷光招来(確率低) 大砂塵招来(確率低) 矢が光状になり、命中直前に4本に分裂する 大妖精の魔薬(ランダムで状態異常を付与する、確率中)弦1本 サハギンの水膜(水による矢の威力減衰無視) エルフの魂(一部の弓技を変身中でも使用可能)
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