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連載

獣人連合への道が開く

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という訳で、獣人連合編スタートです。開幕から暗雲が漂う展開になりそうですけどね。
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 長いメンテナンスも終わり、いよいよ本日から獣人連合への道が解禁。しかし、そういう時に限って飛び入りの仕事が入る……会社の同僚と一緒に文句を言いつつも仕事を片づけて、お疲れーのあいさつを交わして家に帰り着いたときにはすでに時計の針が8時半を回っていた。

 そこから当然アップデート作業が入るので、さらにワンモアの世界に行く時間が遅れ……クライアントのアップデート作業中に翌日の準備がすべて済んでしまう。結局本日はワンモアにログインできたのは、時計の針が10時を回ったころであった。

(さて、早速獣人連合に向かいますか。〈義賊頭〉としての仕事も待っていることだし)

 ようやくワンモアの世界には入れた自分は、宿屋の個室の中で伸びをしてから装備を装着しそとにでる。とりあえず今日は移動するだけで精いっぱいだろう。本格的な獣人連合内での活動は明日以降だな、と考えていた所で、ふとゲーム内メッセージが届いていますというお知らせに気が付く。

(これは……ツヴァイからか。なになに? ──ありゃ、これは悪い事をしたな)

 メッセージには、一緒に獣人連合に行こうと考えていたが普段ログインしてくる時間になっても今日はこないので少し待ってみたが、来る気配が感じられなかったので先に向かったという事が書かれていた。こっちも仕事だったか連絡が取れなかったとはいえ、無駄な時間を使わせてしまったか。

(とりあえずメッセージを送っておくか。えーっと、今日は用事が突如入り……)

 遅くなったことを詫びるメッセージを書いて、送っておく。気が付いたときに読んでもらえればいいだろう。おそらくツヴァイ達はとっくに獣人連合入りしているだろうし、今は見物に忙しい状態だろうからウィスパーチャットで邪魔したくはない。

(とりあえずはこれで良いか。あとは目的地の確認と。公式のHPでもエルフたちの村の北側……サーズからいえば北西方面にあるんだったな)

 アップデートにかかる時間を利用して、公式HPで連合関連の情報は再確認を行っておいた。サーズを出て北西側に向かう道が追加されており、その道を進めば獣人連合の東方面の街に到着することができる、とのこと。獣人連合は東西南北に大きな街が存在し、その街からある程度の距離を置いて各種族の集落があると言う感じらしい。

 獣人連合の政治形態はリアルの日本と同じく選挙によって選ばれた代表者が、中央議会に出向いて話し合いを行って物事を決めるらしい。中央には入れるのは基本的に議員とそれに付随する仕事を持つものだけであり、獣人以外の存在は『まず』入ることができない。

 数少ない例外としては、証言が必要な時に召喚されるという形でほか種族の人が立ち入ることがある程度……とのこと。リアルの証人喚問とおなじだろう。つまり、基本的に他種族にとって、中央は縁がないものであると考えていいだろう。

 東西南北の街はそれなりに距離があり、移動手段も基本の徒歩に加えて、乗合馬車にレンタルの馬による移動方法がある。というか、ここでやっと乗り物としての馬が初登場したことになる。なお、この馬を育てているのはケンタウロス族らしい……突っ込むべきなのかが非常に悩ましい所である。

 また、それなりにお金がかかることになるが馬を購入することも可能だそうだ。当然買えば馬の食事の面倒を見ないといけない代わりに、制限なしで馬に乗ってあちこち歩き回れるのは魅力だろう。馬はきちんと教育されているので、戦闘になったら安全地帯にまで引いてもらっておくことも可能であるらしい。

 死んだら当然消滅してしまうので、そのあたりの扱いには気を使うべきだろう。ちなみにレンタル馬を死なせた場合、状況からみて過失が認められた場合は罰金が発生する。そういったものを見れる装置があるのでごまかしは効かない……とHPに乗っていた。

 さて、そんなことを思い出しつつ獣人連合への道をてくてく歩いている訳だが、この時間でも解放初日なだけあってたくさんのプレイヤーがぞろぞろと獣人連合を目指している。もちろん歩いているのはプレイヤーだけではなく、妖精やエルフの皆さんもちらほら見かける。目的地は一緒のようだな。

 当然モンスターも出て来るんだが、ここのモンスターはウォーバッファロー、バーサーカーバッファロー、ドリルホーンバッファローとバッファローばっかり。ドロップアイテムも牛の肉、毛皮、角と言うラインナップ。これはステーキをいっぱい焼きなさいってことで良いのだろうか? それともあえて牛丼と言う方面に走ってもいいかもしれないな……米が獣人連合でも確保できればだが。

(どのみち牛丼はタレが作れないと話にならない……っと、あれが獣人連合東の街かな?)

 時々出て来るモンスターが蹴散らされるのを見ながら歩くことしばし、ようやく一つの大きな街が見えてくる。街の周辺には深い堀が掘ってあり、モンスター対策の一つだと思われる。

 街を囲む壁はあまり高くないが、壁には木で出来ていると思われる杭が無数に貼り付けられており、もし堀をジャンプで飛び越えたとしても、その壁に張り巡らされた杭に突き刺さることになるだろう。街の外にいるモンスターがバッファローばっかりなので、こんな防壁になっているのかも知れない。

「ようこそ、獣人連合・東の街へ!」
「おすすめの宿などはこちらになります!」
「注意事項はこちらになります! 面倒とお考えになるかもしれませんが、どうかご確認を!」

 そして門の前では獣人の女性が、新しく訪れた人達に対して歓迎、道案内、注意事項の説明などを行っていた。歓迎は別段言うことは無いから省略、道案内は街の宿屋、武器屋に防具屋、鍛冶屋などの冒険における重要拠点の案内。そして注意事項の説明は口頭と、注意事項をまとめた大きな掲示板を用いて説明と質問に対する返答を行っていた。因みに、その注意事項の内容だが……

1つ、盗み、恐喝行為を行ってはいけない。行った場合は厳罰に処す。
1つ、獣人の耳や尻尾などを無許可で撫でてはいけない。撫でたい場合は本人から許可を必ず得るように。
1つ、他者への差別を禁ずる。多種多様な姿をしている者が居る事が当たり前のこの国に、容姿などで差別をする者は誰であっても追放する。
1つ、勝手に他者の家に入ってはいけない。行った者はたとえ何一つ盗み出さなくても泥棒として罰する。
1つ、協力を強要してはいけない。すべての人には都合が存在する。無理に協力を強要した物は恐喝を行ったとみなす。

 などである。まあ常識に行動していれば犯す心配がないものばかりだ……耳や尻尾を撫でるという行為以外は。実際、目に入るうちの数人が、手をワキワキと動かしているのが見えている。ああ、撫でたいんだろうなぁ。注意事項の案内をしているリス耳と大きなリス尻尾を持つ獣人のお姉さんが、少々びくびくしている様子がうかがえる。自分が狙われているという雰囲気を感じ取っていらっしゃる。

 そんな光景に苦笑しつつも、自分は南町に行くための馬車を探す。〈義賊頭〉としての仕事が待っているのは南街だからな。途中で数人の獣人さんに道を聞き、漸く南街に向かう馬車や馬のレンタルを行っている場所に到着した。早速移動しようと話を聞いてみる事にしたのだが。

「ありゃりゃ、まさかこんなに早く南街に行きたいと言う人が来るとはね。この東街には見るようなものがなかったのかい?」

 受付をやっているオオカミの獣人お姉さんからはそんな質問が飛んできた。

「まさか。ついさっきこっちに来たばっかりで観光なんてかけらもできていませんよ。個人的な急ぐ待ち合わせがあるってだけです」

 ちらっと見ただけだが、獣人連合にある家は石とレンガで出来ている家が大多数だった。石を積み重ねてセメント? の様な物でくっつけて壁を作っている家と、レンガを積んで作っている家の2パターン。屋根は板葺いたぶきのようだったが。

「そうなると困ったね、馬車は今さっき出ちゃったんだよ。馬ならすぐに出せるけど……どうする? よほど暴れなきゃウチの馬はいい子ばっかりだからきちんと南町まで運んでくれるよ。ただスピードはさすがに数頭で引く馬車を引くために育てられた最高峰の馬には劣るけど。それでも馬車が来るのを待つよりは早く行けるだろうけどさ」

 うーん、リアルでの乗馬経験なんてさすがにないんだが、それでも大丈夫なんだろうか? とはいえピカーシャに乗せてもらったことはあったが、また勝手が違うだろうし。とはいえ、このまま馬車が来るまでぼーっと待っているだけってのも間抜けな話になってしまう。何事もチャレンジかな?

「乗れるかどうか、挑戦してもいいですか? 乗れるようだったらレンタルさせて貰って、南街を目指しますから」

 オオカミのお姉さんにそう返答し、馬がいるところまで案内してもらう。そこで待っていた馬はサラブレッドのようにすらっとした馬ではなく、サラブレッドより少し背が小さいが体全体はがっしりとした丈夫そうな馬だった。そしてかなり毛深い。そんな馬たちがのんびりと木の柵で作られた囲いの中を歩き回っていた。

「ウチにいる馬はこの子達さ。どの子もいい子だからよっぽどのことがない限り乗れるはずさ。ただ、忠告しておくけど後ろから近寄っちゃだめだからね? 蹴り飛ばされるよ」

 その辺はリアルの馬と同じなのね。とりあえず一番近くにいた馬に前から近寄り、少し頭をなでさせてもらった後に横に移動する。馬自体の大きさがサラブレッドより小さいために、鞍の上に乗るのは意外と難しくなかった。1分ほど上に乗ったまま軽くぱっかぽっこと歩き回ってもらい、問題がない事も確認した。

「自分でも乗れそうですね。この子を貸してください」
「りょーかい。片道で4000グローだが良いかい?」

 一度馬から降りて、オオカミのお姉さんに4000グローを支払って馬と一緒に囲いの外へと出る。

「基本的には馬に任せておけば大丈夫さ。もしバッファローの連中が襲ってきてもこの子の方が速いから簡単に振り切れる。無理に手綱を使った命令なんてする必要はないから、気楽に楽しみながら行ってらっしゃい」

 そんなオオカミのお姉さんに見送られて、自分は早々に東街をあとにして南街に向かったのである。
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もうしばらくは無理のない速度で更新します。あんまりお待たせしない感覚で上げていきます。
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