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連載

和やかな街の裏で進行していた狂気

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今後の更新速度は、大体こんな感じになると思ってください。

自分自身で無理せず、その上で読者の皆様を極端に待たせるようなことがないようにするためのペースとしてはこんなぐらいかな、と。
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「あっしの話は、あくまで手に入れた情報をまとめた物でやすからね、すべてが正しいとは言い切れやせん。ですがそれでも親分には出来る限り報告すべきですんで……話を続けやす」

 リーダーの言葉に、自分は静かに頷いて話の先を促す。

「病気の猛威が下火になり、亡くなった人達の葬儀が一通り済んだ頃にラウガは動き出したようで……偽薬売りの詐欺師を探し出すために、ひたすら病気の流行に耐えて生き延びた人達に話を聞いて回り、似顔絵などを作って目星をつけていったようでやす。 また、そんなラウガに同調して夫や妻、子供を失った人達がラウガの行動に積極的に加わり始めやした。そうして街の再建の裏側で、偽薬を売って金儲けを働いた詐欺師たちのあぶり出しが行われていたことは間違いないようで、へえ」

 ふむ。確かに詐欺師の被害者が結託して、薬と言う命に係わる事に直結する内容で詐欺師を追い詰めていこうという流れは理解できる。病気の流行後では、警察みたいなものがこの街にあったとしても、まともには機能していない可能性も高いだろうからな。

「──その結果、当時の偽薬詐欺師一人、また一人と捕まり……私刑により殺されたようでさ。確かにその当時、国の方も病気の対策に振り回されていたようで、詐欺師の手配や捕縛まではあまり手が行き届いていなかったようですがね……

 それに、偽の薬に大枚はたかされた上に家族の命を救えなかったことによる恨みが、国に判断を任せるよりも今ここで確実に……という思考になってしまう事が当時強かったのも否定できやせんね」

 流行り病と言う不運に加えて、偽薬による詐欺行為が重なれば……悲しみと家族を失った苦しみ、そして大金を支払ったことによる貧困が重なったはずだ。それでも病にかかって倒れた家族が、買った薬によって助かっていればまだやり直せたんだろうが……

 偽薬によって命が消え、これで助かるという希望から絶望に叩き落され……そして薬が偽物であったと知れば、殺意が詐欺師に向かうのは当然か……こんなところまで、生々しく作る必要があったのかと問いかけたい。

「そんなわけで、詐欺師は物理的な意味で一人一人が消されていったんですがね……やはり捕まえる事が出来なかった奴もいたんでさ。また、その詐欺師側から反撃を受けて命を落とした者もかなりいたようでやす。ラウガの同士も徐々に少なくなり、流行り病の傷も表面上は一応癒え始めたころには10年以上の月日が経っていたようで」

 やりきれんな。私刑が正しいと言うつもりはもちろんないが、何ともやりきれない。だが、話はまだここで終わってはくれないのだろうな。

「それからさらに数年が過ぎ、さすがにラウガの怒りも時の薬によって収まりかけてきたころ……ラウガは特に大物だったが、当時同士が返り討ちにされて逃げられてしまった詐欺師の一人を見つけてしまったんで。その詐欺師は、あの流行り病による混乱の後に店を大きくした薬屋の大旦那に収まっていたって話でさ。ここで再びラウガの怒りが再燃してしまった様子が伺えやす」

 店が大きくなったのは、詐欺行為をして手に入れたお金を……か。

「ラウガは必死に調べたようでさ。ですがね……そいつをしょっ引ける証拠は何一つ見つける事が出来なかったようで。商売自体はまっとうな行為しかして居りやせんし、十数年昔の話だけでは証拠としては不十分すぎやす。似顔絵も当然時間が全体の雰囲気を変えちまっていやしたからこれまた弱い。 それでもラウガが気が付いたのは、変わっていなかった目元などの部分などに気が付いたのかも知れやせん。一応あっしらも例の店を調べやしたが、商いはまっとうなやり取りしかありやせんでした」

 リーダー達が調べても埃が出ないって事は、少なくともそいつの店は後ろ暗い行為をしていないってことか。その店の基礎には詐欺で得た黒い大金があるとしても……。

「当然それだけの時間が流れていやすからね、ラウガの同士も寿命で退場していたり疲れ果てた末に寝たきりになってしまったりしていやす。ラウガ本人も歳を食って体の方も弱ってしまってますからね、直接行為による復讐はすでにできなくなっておりやした。そもそも表向きでまっとうな商いをしている店に殴り込んだ時点で、世間的に悪党側という事になっちまいますがね……」

 資本金を探る事なんて一般の人には絶対にできないだろう。何とも歯がゆいが……どうしようもないだろう。

「ラウガはここではっとしたんでしょうな、南の街を駆けずり回っている姿を多くの人に見られておりやす。ラウガが予想したことは『当時の俺達から逃げ切った詐欺師達の中で、あの店のように何食わぬ顔をして商いをしている輩がいるのではないか』と……そしてその予想は当たっちまいやした。 ラウガが探し出しただけでも3つ、年老いた体に鞭を打ってまだ動くことができたラウガの同士が見つけた数は2つ……あったようでやす」

 ギリッ、と誰かの歯ぎしりの音がした。部下の誰かがついやってしまったのだろう。自分としてもそれを咎めるつもりはない。

「普通はここでもうどうしようもない、と諦めるんでしょうが……ラウガの心に灯った怒りと憎しみの炎がそれを許しやせんでした。知恵を絞った結果、国の上層部に食いこみ、立場を利用して過去の詐欺師達にぼろを出させることを狙う策が打ち出されやして、ラウガがこの国の議員に立候補したんで。生活していくうえで不満があった所を街の人達に訴え、議員になったら少しずつ改善を行う事をやりたい事として前面に打ち出したんですな」

 ──最初の動機はともかく、この時点ではまだラウガの事が問題にはなりそうもないが。

「かくして、同士の協力もあり……ラウガは議員に当選し、活動を始めました。時間は限られているが、いきなり詐欺師たちの店の告発を行える立場でもなく、証拠もなかったためにぐっとこらえて議員としての仕事を行い信頼を高めるのに数年。
 さらにその裏でラウガとその同士が見つけた店の洗い出しを行うのにさらに数年……議員としての信頼を高める方は上手く行っていたようでやすが、店の裏を洗い出して尻尾を掴み、詐欺の行為で家族を失わせた罪を償わせる目的は一向に進まなかったようで……このあたりからラウガが徐々に狂いだしやす」

 ──来たか。

「表向きは議員としての仕事をこなしつつ、裏でラウガは徐々に狂気に蝕まれた行為を行い始めやした。色々な薬を取り寄せたり、複数の薬師に薬を作らせたりと言った行為をやり始めやした。表向きでは病気で苦しむ者に、安くて効果の高い薬を提供したいと発表しておりやして、ラウガが時間をかけて積み重ねてきた信頼の高さもありやして、疑いをもたれる事がなかったようで……」

 何とも……静かな狂気は気が付かれないことも多いからな。それがラウガの行為に妨害が入らずに進むことになってしまったのか。

「そうしてラウガは薬も過ぎれば毒となるの言葉通り、一般的には薬でありながら、特定の薬同士を組み合わせると猛毒になる物の開発にのめりこみ始めやす。取り寄せた薬や薬師に作らせた新しい薬を混ぜ合わせて、毒になる組み合わせを作り上げていきやす。

 そしてつい最近の事ですがね、とうとうラウガは素人の偶然と執念が重なった結果……『意図的に血華病を引き起こすことができる』薬を完成させてしまいやした」

 なんだと!? つい自分はがたっと椅子から立ち宇上がってリーダーを半ば睨めつけるような形で凝視する。

「──親分、残念ながらこれは事実でありやす。あっしらがラウガ周辺を探った結果、間違いなしという事がはっきりしたからこそ報告しているんで。ラウガの狂気を止めようとも試みたんでやすがね、ラウガの護衛とやりあう羽目になっちやいして……部下が怪我しているのはそれが原因なんでさ……誠に申し訳ねえです」

 リーダーが頭を下げる姿を見て、自分は無言で椅子に座りなおす。少し考えた後に、確認すべきことを聞くために口を開くことにした。

「確認を取りたい。その薬をラウガはいつごろ使うのか予想は立てられるか? もう使うのか、より改良するのか。もう一つは、その意図的に流行り病である『血華病を引き起こす毒薬』がばら撒かれたらこの街はどうなる?」

 自分の質問に、リーダーはしばし考え……返答を応え始めた。

「薬は近く使われることになるとあっしは見ておりやす。実はラウガは近く老化を理由として議員を辞職すると発表しておりやす。自分に残された時間がほぼ無いことから、死なばもろともで薬を一気にばら撒く可能性は否定できやせん。そしてもう一つの質問の答えですがね……この南町に住む獣人が全滅してもおかしくねえなと思いやす。

 ラウガが作り上げてしまったその毒は、今ある血華病の薬では治せないほどの強さを持たせていると部下からの報告にありやす。ラウガ自身は過去の詐欺行為で大きくなった店の中か、その周りで毒薬を開放するつもりかもしれませんがね……この店はほどほどに離れておりやして、すべてにばら撒かれたら……この南街全体に血華病が蔓延しやす」

 これはもう、義賊が解決できる範疇をとっくに超えている。だが、それでも動かねばならない。この世界の住人は一度死んだらそれっきりだ。エルの時のような悲劇がこのまま状況を放置していればもっと大規模な形で確実に起きる。あののんびりと世間話をしていた人達が、街を元気に走り回っている子供が、みんな死ぬ。

 ──ソレハダメダ──それは駄目だ。

「満足に動けるメンツは少ないが、それでも動くしかないな。この街を病気が吹き荒れる死の街にするわけにはいかん。それに、ラウガ自身に大悪党の烙印が押されれば、亡くなった奴の家族が悲しむだろう。状況はかなり厳しいのは承知しているが、やるぞ」

 リーダーを始めとした部下たちが一斉に頷いた。唐突に降ってわいた話だが、それでもこれを放置してはおけない。

「そして親分、ここからいい話に繋がるんですがね……獣人の北の街に住む国の隠密に当たる精鋭があっしらの届けた話を信用してくださって、一緒に動いてくれることを約束してくださってるんですよ」
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今回はさすがにアース達義賊だけでは解決に持っていくことは不可能です。
ですので獣人側からの援軍が来ます。
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