トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
51 / 349
連載

作戦開始

しおりを挟む
8月1日に重要な告知を行いします。
********************************************

 翌日。リアルの仕事が忙しい時期ではないので、有給休暇を会社に申請した所あっさりと受理された。むしろ有休をもっと積極的に消化しなさいと言われてしまったが。とにかくこれで、今夜は夜更かしをしても問題ない。その後は仕事をきっちりとこなして定時で上がる。今日のワンモアは長い戦いになりそうなので、休暇が取れてよかった。

 そしてワンモアの世界にログインして、レア・ポーションなどの回復アイテムや強化オイルの製作を行っておく。持てる量ぎりぎりまで生産を行ったおかげで〈上級薬剤〉スキルが3も上昇した。

 それからはのんびりとMPを回復させた後に、義賊の子分と宿屋の部屋の中で合流してから集合場所へと向かう。今回合流できた子分の人数は8人にとどまった。残りは負傷を完治させる事ができなかったようだ……が、今回の仕事はより厳しい内容だ。中途半端な状態ならば来ない方がいい。

「親分、今回はとてもじゃねえですが一筋縄じゃ行きやせんね。ラウガの野郎を守っているのは間違いなく獣人連合における正規の護衛様でやしたがね……ラウガに何かされたのか、あっしらと戦った時に何かしらの狂気を感じやした。これはもちろん情報として今回の協力者全員に伝えてありやすが……最悪、今回の戦いでは相手を皆殺しをせざるを得ない展開になる可能性が僅かにあることは否定できやせん」

 リーダーがそんな事を自分にだけ聞こえる声で伝えてくる。嫌な話だが、大事な事だ。ここで躊躇して失敗すると、ラウガはほぼ間違いなく作った毒薬をばら撒くだろう。そうなってしまえば、もうこの南街に『血華病』が蔓延し、住民が倒れていく姿を見ている事しかできなくなる。

 今は100を助けるために1を切り捨てるしかない状況という訳か。残酷だが、この南街を流行り病によって崩壊させる訳には行かないから、最悪の状況になった場合はそれもやむを得ない。

「そうなっても仕方がない、か。無用な殺生はもちろんしたくないが、だからと言って狂気に走る者を放置できんからな……ラウガの憎しみは分からんでもないが、その矛先がもう明らかにおかしい方向に狂い出しているからな……」

 その狂った矛先に、関係のない人々の血をつけるわけにはいかない。ラウガを始めとしたメンツを捕縛することが難しいのであれば、討つしかない。そんな結末を迎えないで欲しい所だが、可能性がある以上は切り捨てるわけにもいかないだろう。そんな暗い結末を迎える可能性を考えながらも合流地点に到着すると、すでにそこには大半のメンバーが揃っていた。皆、作戦開始前の最終チェックに余念がない様子だ。

「来たでござるな。今日はよろしく頼むでござる」

 到着した自分に声をかけてきたのは、前日の忍者さんだ。その忍者さんの後ろには、数人ほどの忍び装束を着た男女がいる。おそらく彼が昨日言っていた忍びの里からやってきた援軍なのだろう。

「こちらこそよろしくお願いしやす。失礼ながら親分は人前では声を出さないようにしておりやすので、昨日に引き続きあっしが代理で喋らせていただいておりやす。どうかご理解下せえ」

 リーダーが自分の代わりに挨拶をしてくれる。忍者さんがそうなのでござるか? と言った質問するようなまなざしを向けてきたので、自分はそっと頷いておく。頼りになる部下がいるからこそできる芸当だな。

「昨日はそんな外套をかぶっている上に一言も喋らなかった故、何かはあるとは思っていたでござるが徹底しているでござるな。了解でござる。それと、ひとまず今回の作戦を行っているカリーネ殿に挨拶をしてきた方が良いでござる」

 そんな忍者さんの言葉に従い、頭を下げてからカリーネさんのいる場所に向かう。居場所は忍者さんがきちんと教えてくれたので、カリーネさんはすぐに見つかった。

「おお、義賊の頭も時間前に集合してくれたか。一応確認だが、先日の打ち合わせ通り義賊の一団には陽動を頼むことになる。問題はないな?」

 カリーネさんからの最終確認に自分は頷く。手下も8人になったから、陽動作戦に参加する分には問題ないだろう。陽動ならば直接剣などを交えて戦う必要はなく、一歩引いたところで敵を引っ掻き回せばいい。とにかく自分達は怪盗が毒薬を盗み、忍者達がラウガを確保するまでの時間稼ぎと、敵を多く引き付けて他のチームに邪魔が入る確率を少しでも下げるのが目的なのだから。

「カリーネの姐さんにすまねえが質問でさ。陽動時にはどれぐらいなら、ラウガのいる議員邸宅にある物を破壊しても目をつぶってくださるんで?」

 ああ、そうか。今回はどうしても家を始めとした物品の破壊はどうしても起こるからな。その辺は確認をしておかないといけないか。

「そのことだが……極端な話、ラウガの確保か殺害、毒薬の確保が成ればすべてにおいて目をつぶる。極端な例えを出すのであれば、ラウガが現在使用している議員専用の邸宅が全壊してしまったとしても、目的さえ達成されるなら問題はない。そんな事よりもラウガ本人の確保と、生み出されてしまった毒薬の回収が最優先だからな」

 それなら最初からぶっ壊せばいいじゃないか……と考える人もいるかもしれないが、そうなると毒薬が入っている容器がおそらく割れてしまう。幸運にも容器が割れなかったとしても、回収がかなり難しくなる可能性が高まる。とにかく毒がばら撒かれてしまったり、ラウガに逃げられてしまって毒薬を別の所で作りだされてしまったりしたらこちらの負けだ。ここで確実にラウガの狂気を止めなければならない。

「分かりやした。あっしらにできる限りの事はさせていただきやす」

 リーダーとともに、カリーネさんに頭を下げてその場から立ち去る。あとは全体の準備が整って作戦開始時間が来るのを待つだけだ。作戦開始までの少しの間に怪盗があわただしく到着し、カリーネさんからもう少し時間に余裕をもって来い、だから貴様は……などとお仕置きをされていた。なんだかなぁ……

 そんなコミカル? なやり取りも少しだけあったが、さすがに作戦実行の時が迫って来ると緊張感のある雰囲気が漂う。各自の準備も完了し、静かに行動を開始する。目的地はラウガがいる議員邸宅。

 複数の班に分かれ、少人数で目的地を目指す。そして今回の作戦に参加するメンバーは次々と決められていた場所に待機し、カリーネさんの作戦開始の指示を待つ。開始の指示は、移動開始前に配られた赤いビー玉みたいなもので伝えられることになっていた。このビー玉みたいなものが割れたら作戦開始という事らしい。

 そして数分後、ついに自分の手元にあったビー玉もどきが割れる。割れた直後、まず動いたのは怪盗チーム。一番奥まで潜り込んで、毒薬を盗んでこなければならない怪盗チームは一番最初に動き出し、ラウガのいる議員邸宅の中にするするっと潜り込んだ。

 それから少し後に動いたのが忍者チーム。こちらも怪盗チームほどではないにしろ、ラウガの寝室まで向かわねばならないので二番目に動き出す。そして忍者チームが議員邸宅の中に潜り込んでから十分後に陽動チームが議員邸宅の前で騒ぎを起こし、邸宅を守る護衛者たちをおびき寄せて足止めする手はずとなっている。

 そして10分後。いよいよ自分たちの出番がやってきた。わざと陽動班参加者全員が足音を立てて議員邸宅に近寄る。当然そんな多人数の足音を聞いた護衛者達は、いったい何事だとばかりに邸宅の玄関前にへと集まってくる。

「貴様ら、こんな深夜に何をしに来た! ここは獣人連合南区の議員様がお休みになられている邸宅だぞ! それを知っての事か!?」

 護衛者の一人がそう叫ぶが……覆面をつけたカリーネさん……と思われる女性が、容赦なくその護衛者にこれが答えだとばかりに無言で剣を振り下ろす。その剣による攻撃を、護衛者はとっさに盾を構えて受け止めた。すぐさま後ろに飛び跳ね、距離を取るカリーネさんと思われる女性。

「貴様! 貴様らの考えは良くわかった! 総員、こいつらを一人残らず切り伏せろ! 議員様を殺しに来た賊どもだ! 議員様を近くで護衛している連中にも敵襲だとすぐに伝えろ!」

 すでにそれなりの人数が集まりつつあった護衛者達だが、さらに家の色々な場所から出て来る出て来る……何人いるんだ、と言うかどうやってそんな人数が隠れていたのだと突っ込みたくなった。

「緊急時故、隠し門の使用を許可する! この賊集団を絶対に逃がすな!!」

 さらに玄関前にて最初に声を上げた護衛者……おそらくはリーダー格がそう声を張り上げる。その直後、壁などからゴゴゴゴッと音がすると同時に、複数の隠されていた出入口が解放され、護衛者たちがこちらに向かってきた。

 だが、この門の存在はすでにこちら側は知っていた。先日の作戦を聞いた時に、カリーネさんから情報として伝えられていたからな。ここに、ラウガのいる議員邸宅を舞台とした長い一夜が幕を開けた。
************************************************
スキル

風迅狩弓Lv29 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv28 技量の指Lv33 小盾Lv28 隠蔽・改Lv1 武術身体能力強化Lv66 スネークソードLv49 義賊頭Lv26 妖精招来Lv12 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.76

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv26 ↑3UP  釣り LOST!  料理の経験者Lv16 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 17

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
しおりを挟む