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連載

平和な街と、新しいお手伝い

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(さーてと、今日からはやっと獣人連合の街をゆっくりと観光できそうだな)

 昨日まで続いたきな臭いというか血生臭い一件がようやく終わった事で、今日からはノンビリモードでワンモア世界を行動できる。とりあえずはこの南街を拠点として、獣人の皆さんの世界を見回ってみる事にしよう。掲示板を見た限りじゃ、大半の人はまだ東街に居るようだからな。もう少し人が分散して混雑が解消されるまでは東街にもどるつもりはない。

 装備を整え、普段使っている外套を羽織って宿屋の外に出る。とりあえず今日は積極的に狩りに出るつもりはないが、何が起こるかわからない以上装備はしっかりと整えておくに越したことは無い。今までにも街中で戦闘が発生して戦う事になってしまった経験があるからな。

 ──といっても、今日に限っては杞憂で済みそうではあるが。街中はどこもほのぼの〜とした感じで、住人の獣人さん達もノンビリ気味とはいえ働いていたり、世間話をしていたりと実に平和である。この南街の住人は圧倒的に牛の獣人さんが多い。また、よく見てみると牛の獣人さんと言っても細かい違いがある。手だけは人間と同じ五本指の手だが、足の形は人間と同じで靴を履いていたり、牛そのものの足だったりしている。尻尾は全員共通してついているが。

 毛もほとんどなくて人間の肌と変わりない人もいれば、牛の模様がしっかりとついた体毛をお持ちの人もいる。それなりの人数を見てみたが、共通点は頭に角を持っている事、牛の尻尾がついていることぐらい。あとは色々なパターンが存在した。──いや、あと一つ共通点があったか。牛獣人の女性は……例外なしに胸が非常に大きい。あまりじろじろ見るわけにはいかない部分だが、間違いはないだろう。これを天国とみるか地獄とみるかは他の人の判断に任せよう。

 まあ、こうしてのんびりとして居られるのもラウガを止めたからこそなんだがな。街の人達はあんな戦いがあったなんてことは知らされていないはずだ。聞き耳を立てても、そんな話は一切聞こえてこない。井戸端会議をしている噂話をしている耳が早そうなおねーさん達ですら知らない様子だったから、完全に情報はシャットアウトされたんだろう。知らない方がいい話だから、それでいいのだが。

 街の様子をうかがいつつのんびりと散歩をしているうちに、妙に人が集まっている場所を見つけた。何かあったのだろうか? ざっと確認してみるが、男女入り混じっている様子。そして中央には……鳥人間? いや、ハーピーと言うべきか? そんな存在がいる事が確認できた。大きさは……大雑把に2m50cm以上だが、3mはないな。羽の色は……全体的に黄色で、羽の先が赤いな。とりあえずそんなハーピーの周りに集まっている人たちから殺気などは一切感じないので、物騒な問題が起きている訳ではないのだろうが……。

(気になると言えばなる、な。ちょっと行ってみようか)

 このまま街中をめぐる散歩を続けてもいいのだが、そうすると絶対ここの事が心に引っかかって楽しめそうにない。トラブルだった場合でもまあいいかと考えて人が集まっている場所に向かい、到着したところで近くにいた狐の獣人に声をかけてみた。

「こんにちは。なんでこんなに人がここに集まっているんですか?」

 自分から声をかけられた狐の獣人さんはこちらに振り向きつつ、返答を返してくれた。

「ああ、こんにちは。いや実はね、中央にいるハーピーさんがちょっと手助けをして欲しいと街の人に対して頼みに来てるんだよ」

 詳しい話を聞いてみると、この南街のさらに南側にある森の中でハーピーさんは生活をしているらしい。そして今は5人? 5匹? の子育てを母親ハーピーさんは行っていたらしい。ところが、その子供の一人……ここからは人と呼ばせてもらう……が怪我をした。その怪我自体は母親ハーピーの手当てを受けて治癒したらしいが、怪我をした子がその後高熱を出して倒れた。そのため医者に見せるために街の中まで子供たちを連れて来たらしいのだが……

「この街の医者では応急処置しかできなかったらしくてな、そうなると獣人連合でも名医が多い西の街に行くしかねえんだが……母親のハーピーは全力で飛ばなきゃならんから、連れていけるのは病気になっている子供だけ。そうなると、この街に残される事になる4人のハーピーの子供たちをどうするか……それの話し合いがい行われてるんだよ。街の住人が協力して母親が戻るまで面倒見ること自体は別に問題ねえんだが」

 じゃあ何が問題なのか? そう質問した自分に、キツネの獣人さんはご飯の問題なんだと教えてくれる。

「この街は基本的にのんびり屋が多い。それは別に何の問題もないんだが、外でうろついている魔物と戦えるような気質じゃない。ハーピーの食事は基本的に魔物の肉が中心だ。もちろん野菜や果物も食えるんだが……ハーピー達はある程度魔物の肉を食わないと、体が弱くなっちまうらしいんだよ。話し合いの核心もそこでな。母親が戻ってくるまでの間、どうやって肉を確保しようかと言う点が問題になっているんだ。野菜とかは俺達が農業やっているから問題は全くないんだが」

 ふうむ。街の人ではあまり戦えないからモンスターから肉が取れない。しかしハーピーの子供たちは肉を食わないと弱ってしまう体質持ち。母親ハーピーは病気の子供が問題ないと医者からお墨付きが出るまで帰ってこれない、か。

「すまない、もうちょっとだけ質問良いかな? そのモンスターから取れるお肉って、この街の外周辺にいるバッファロー系のモンスターでも問題ないのか? それとも特定のモンスターから取れる肉じゃないといけないのか?」

 この近辺にいるバッファロー系統のモンスターを倒し、そのお肉でハーピーの子供たちの腹を満たせるのならば協力することは可能だろう。

「どうだろう? おーい! ちょっと質問良いかー!?」

 狐の獣人さんが自分の代理でハーピーの母親に質問をしてくれた。その返答は是。この近辺にいるバッファロー系のモンスターの肉ならば、7日に数回与えれば十分だとの返答が返された。

「なるほど、それならば自分の力でも協力できるかもしれないな」

 伏虎の弓のデビュー戦を兼ねて、バッファロー系モンスターを狩るのも悪くないだろう。自分の訓練になるし人助けにもなる。肉以外の素材は売るなりすれば無駄もない。〈サクリファイス・ボウ〉で掛かってしまった体のマイナスステータスもほぼ解消されているしな。

「俺が言うのもなんだが、戦える力がアンタにあるってんなら今回の一件、力になってやってくれねえか? 子供たちの普段の世話は俺達で十分やれるが、魔物と戦う事は荷が重すぎるんだよ」

 狐の獣人さんからそんな言葉を聞いていたときに、人だかりの中心にいた母親ハーピーがこちらにやってくる様子を確認できた。そうして自分の前までやってくるとゆっくりと頭を下げた。身長がでかいので、頭を下げられてもこちらは見上げる形になってしまうのだが。因みに顔はなかなかの美人さんである。

「もしご助力いただけるのでしたら、お願いできませんでしょうか? まだわが子供は幼く、極端な肉の量は必要ありません。ですが、長きにわたり肉を口にできないとなるとハーピーとして弱くなってしまい、その結果病弱になり短命となってしまいます。どうか、お助けを……」

 そんな母親ハーピーの影から、4匹の子供ハーピーが出て来る。身長は40cm位だろうか。自分に向かって頭を下げつつぴいぴいと鳴いている。もしかするとハーピーは、ある程度大きくならないと人語を話せないのかも知れない。その子供のうち、一番近くにいるハーピーの頭をそっと撫でてみる。サラサラの髪の毛は何とも言えない手触りだった。実に可愛いらしい。

「では、肉は自分が確保して街の人が普段の世話をする。そういう事で良いのですね?」

 こんな可愛い子達をほっとけなくなった自分は母親ハーピーに確認を取る。自分はこっちの世界の住人ではないから、四六時中様子を見ている訳には行かないからな。こっちの世界にいるときにまとまった量の肉を確保し、それを街の人に渡して適量を与え続けてもらうという流れになるだろう。

「はい、お願いします。本来であれば親である私が全て行わなければならない事のですが……今回はどうしても手が届かず、皆様のお力をお借りしたいのです」

 こうして、今度はハーピーの子供に与える肉の調達に協力することになった。まあ、こんな手伝いならば気楽に行えるからいいだろう。そうなれば早速狩りに出ないとならないな。バッファローたちの肉を得るべく、自分は街から外に出て得物となりそうなバッファローを探し始めた。
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という訳で、こっちの世界のハーピー登場。こっちの世界ではハーピーは獣人連合の人達と争わずに共存しています。
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