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連載

街に帰還

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 注意を払って無事に南街へと帰還。早速ハーピーの子供達と最初に出会った場所へと向かった。到着した時、すでに母親ハーピーの姿は無かった。おそらく西街の医者の元に向かったのだろう。あくまで一時的な処置しか、この街では受けれなかったらしいからな。

「おお、帰ってきたか。それで肉の方はどうだ? 何とかとれたのか?」

 その場にいた獣人さんの一人が、自分の姿を見つけて早速狩りの成果を聞いてきた。

「何とか狩ることは成功しました。ですが、一度直接戦って分かりました。ここの周辺にいるモンスターはかなり強く、一匹倒すだけでもかなり苦労しますね……」

 ふつうは〈妖精招来〉とか、不意打ちからの《プリズム・ノヴァ》で状態異常を狙うなんて戦法は取れないからな。普通の6人PTがバッファローを狩るとなると……できるだけばれずに接近し、強襲をかけて距離を潰す形になるだろうな。

 遠距離から変に手を出すと突撃がくるから、被害が大きくなってしまう。接近戦に持ち込めれば突進攻撃は来ないだろうから、あとは前衛がじわじわと削って魔法使いが上から攻撃できる魔法で攻撃すれば弱点である背中を攻撃できるだろう。

「で、とれたのがこの肉なんですが……生で良いのですか? それともある程度手を入れた方がいいのでしょうか?」

 自分は獣人さん達の前にバッファローの肉を取り出しながら聞いてみる。この辺もしっかりと確認をしておかなければならないからな。

「生で良いぜ。と言うより生じゃないと駄目だ。ハーピー達はある程度大きくなるまでは、基本的に肉や野菜等は全部生で食うからな」

 と言うお返事が。あぶな、変に気を回して料理してしまったらもう一回取りに行くハメになっていたな。自分から肉を受け取った獣人の女性がハーピーの子供達の前に肉を差し出すと、翼と一体化している手の先で肉を掴み笑顔でバッファローの生肉を食べ始めた。しかし、顔は可愛い女の子だというのに……生肉を直接口につけてもっきゅもっきゅ食べる姿は何とも言えない。

 とりあえずハーピーの子供達には満足するまでお肉を食べてもらったが、体躯が小さいためか食べた量はそんなでもなかった。これなら今日狩ってきたバッファローの肉を全て獣人の皆さんに預けておけば、少しの間ハーピー達のごはんが足りなくなるということは無いだろう。後は、今度も継続的にバッファローを狩って、肉を提供することにしようかな?

「ぴいぴい」

 今後の活動内容を考えていると、食事を終えたハーピーの子供の一人が自分に向かって歩いてきた。さっき食べた肉を持ってきたのが自分と分かっているようで、ぺこりと頭を下げてきた。もしかすると、この子が子供たちの中で一番のおねーさんなのかもしれない。軽く頭を撫でてみると、目を閉じて気持ちよさそうな笑顔を見せてくれる。

「ちょっとごめんね」

 せっかくなので、そっとハーピーを抱き上げてみた。──女の子にこんなことを言うのもなんだが、かなり重い。20……いや30kgはあるだろう。これではハーピーの母親が全員を西街に連れて行かないのも無理はない。こんな重さがある子を5人も背中に乗せてしまったら、魔法のバックアップがあっても空を飛ぶどころか重量で潰されかねない。

「ぴー♪」

 自分の腕の中に抱き上げられたハーピーは一鳴きした後に、自分の胸に顔をすり寄せてきていた。ふと他のハーピーの子の様子を伺うと、他の獣人さん達に自分と同じように抱き上げられていた。ハーピーの頭や背中をなでてあげている獣人さんもいたので、それを真似して抱き上げている子を同じように撫でてあげると「ぴゅ〜♪」と気持ちよさそうな、眠たそうな声を上げる。

(そのまま優しく撫でてあげてください。そのうち眠りますから、眠ったらあなたが狩りに行っている間に作った簡易の寝床にこの子達を寝かせましょう)

 自分の横からそっとやってきた獣人のお姉さんがそう教えてくれたので、そっと撫で続けること数分。自分の腕の中でハーピーはすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てていた。そこから先は獣人のお姉さんにハーピーをそっと渡し、寝床に運んでもらった。眠りについたハーピーの子供たちが運ばれていく姿を見届けた後、少し疑問に思ったことを獣人の皆さんに聞いてみる事にした。

「どうしてここまでハーピーの子供の面倒を見るんでしょうか? いや、それに不満があるわけではないのですが、ここまで親身になるのは何かの理由があるのかな、と」

 今回のハーピーの母親が置かれた状況は厳しいものがあったし、助けてあげたくもなった。とは言えこんなに大勢の獣人の皆さんが集まって協力するのには相応の理由がある、と考えた方が自然だと感じた。

「あーうん、そりゃそうか。お前さんは外からきてるんだからそういう疑問を持つのは当然か。別段隠すような理由があるわけではないから話しておこうか。まあとりあえず適当に座ってくれ」

 と言われたので、近くにあった適当な大きさで座りやすそうな石に腰掛け、話を聞くことにした。

「そんな難しい話じゃない。俺たち獣人は確かに身体能力は高いんだが、基本的にこの南街に住む人は戦いを苦手としている奴が多い。どうしようもないときはやむを得ず武器を手に取るが、それはできるだけ避けたい。

 だが、街の外に住処を構えているハーピー達は俺達が人数を集めないと戦えない魔物と化した動物を食べるために狩ってくれる。その点ではケンタウロス族も同じか……そういう外の魔物を間引いて、この街に魔物が大量に攻め込んでくるという可能性を潰してくれているんだよ。だからこそ、ハーピーやケンタウロス族に問題が発生した時には、俺達が出来る範囲で協力するんだ」

 ふむ、そういう協力関係が築かれているという事か。むやみやたらと争うよりはよっぽどましか。それにこれは適所適材とも言えるな。戦いが苦手なら、それを得意とするハーピーやケンタウロス族? に任せて、その二種族が解決できない問題が発生した時にはこの街に住む獣人たちが協力するという形を取る方が確かに効率がいい。

「なるほど、だからこそ今回の様な問題が発生した時には、何とか助けようとする訳なんですね」

 自分が納得したように頷く。その一方で、話をしてくれた獣人さんは一息ついた後に話をさらに続けた。

「それだけに今回は困っていたんだ。肉を得るには魔物を倒さなきゃいけない。しかし俺達にはあまり戦える力が無い。お前さんが来てくれなかったらどうなった事か。ハーピーの母親が戻って、今回の問題が大体解決したら俺達から相応の報酬を出させてもらう。だから、ぜひハーピーが食べる為の肉をもうしばらくの間こちらに提供してほしい」

 そう言い終えた獣人さんが深々と頭を下げる。

「構いませんよ、とりあえず今日取った肉はそちらにすべて預けます。これからしばらくの間は、自分が活動できる時間はバッファローを狩って肉を得る事を最優先します。それでいいんですよね?」

 自分の確認に獣人さんは「よろしく頼む」と頭をもう一度下げた。まあハーピーの子供達を空腹で苦しめたくはないし、今回は積極的に助けるために動くことにしよう。報酬も出る事だしね。そういえば、鳥と言えばピカーシャは元気になったのだろうか? あの姿から立ち直ってくれていると良いのだが。

 とりあえず今日はここまでだな。あとはLv50になったスネーク・ソードを宿屋に帰ってから進化させて、ログアウトすることにしようか。
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