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連載

復帰

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お待たせしました。
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(さーてさて、ここからどうした物かな)

 南街を後にしてバッファローを狩りに来たわけだが……1匹目と2匹目は問題なく狩れた。1匹目は〈妖精招来〉を駆使して倒し、2匹目は《プリズム・ノヴァ》を不意打ちで仕掛けて状態異常にし、倒した。

 因みに今回の《プリズム・ノヴァ》でかかった状態異常は盲目と混乱だったらしく、その場をぐるぐると回り続けるだけになってしまったので遠距離から弓矢で多少弱らせてから接近し、蹴り技で足元を払った後に背中を遠慮なく惑のソードモードで貫いた。

 と、ここまでは順調だったのだが……そこから先が行き詰った。《危険察知》にてバッファローの位置を探っているのだが、どいつもこいつも2匹、3匹と固まって行動しているのである。

 こちらがソロである以上、できる限りモンスターとの戦いはよほどの差が無い限りはタイマンに持って行きたい。複数を一人で相手にするというのはリスクが大きく高まる。〈妖精招来〉や《プリズム・ノヴァ》による範囲攻撃はできるが……バッファローのタフさを考えると出来る限りやりたくないな。

 一応 《プリズム・ノヴァ》を妖精詠唱を行う事で《エルダー・プリズム・ノヴァ》にランクを引き上げて放ち、〈妖精招来〉で落とし穴を設置してハメ倒せるかもしれないが……確実性に欠ける。

 極端な話をすれば、《プリズム・ノヴァ》の中でも上位の状態異常、石化が決まってしまえばその時点でこちらの勝利が確定する。だがその石化の発生率は低いし……他の状態異常では時間こそ稼げるが、速攻で倒せるだけの火力は自分には無いので難しい所だ。強化オイルはあまり乱用しすぎていざってときに使えないと困るからな。

 とりあえず少し待てばもしかしたらバッファローたちが距離を取ってくれるかもしれないと考え、アイテムボックスから以前に作ったドラゴン丼を取りだし、食事をとる。《危険察知》で十分にバッファローから距離を取っている事を確認しているから、襲われる心配もない。お米の補充をするために、いったん龍の国に行かないといけないかな……。

 この獣人連合の食材店には、ついに今までなかった食材が陳列されていたからな。それは……厳密には食材とは言えないのだが、香辛料である。そう、つまりは日本の国民食であるカレーをこちらの世界でも作ることができるのだ。香辛料の調合量などは詳しく調べないといけないだろうが、やる価値はある。

 そんな休息とこれから作りたい料理を考える時間を兼ねた食事タイムを終えて、もう一度《危険察知》によるモンスターの位置を確認してみた。残念なことに、こちらの希望は通らなかったようだな。むしろ集団を作るバッファローが増えただけの様な気がする。

 より詳しく見てみると、単独行動をしているバッファローが見当たらないどころか、ウォーバッファローとかドリルホーンバッファローなどの強めなバッファローの近くに固まっている。昨日と今日、同族が何度か狩られたことで油断できない奴が近くにいると考えられてしまったのだろうか。これは困ったことになったぞ。

(こういう所が、ソロの限界を感じる所だよな……せめてあと1人か2人いれば、2匹相手でもなんとかできる可能性は十分にあるのにな)

 先の《プリズム・ノヴァ》に〈妖精招来〉のコンボも半分は運頼みになってしまう面がある為、積極的にやりたいとは思えない。状態異常の混乱でも引き起こして同士討ちしてくれれば良いのだが、そんな都合よくいかないだろうし。

(後手後手にまわっているなぁ。かといって、やっぱり2匹同時って時点でこちらにリスクが高すぎるしなぁ)

 1匹目の突進を避けた先に、もう1匹が突っ込んでこられたらかなり厳しい。それだけではなく、前後挟み撃ちにされたら一方的に自分が潰されてしまうし……手数の多さで負ける事になる以上、一方的に押し込まれてもおかしくはない。〈妖精招来〉も妖精に与えるMPをケチったら効果が大幅に落ちるので、それなりの量を捧げなければならない。

 1匹倒したら、しばらく休憩してMPを回復する様にしないと息切れする今の自分では、やはり2匹同時にこの周辺にいるモンスターを相手取るのは無理だ。

(かといって、最低でもあと一匹は狩らないとハーピー達のごはんがログアウトしている時間中に足りなくなるんだよなぁ。それが無ければ引き上げても良いんだが、今は引くわけにもいかないし。本当にどうした物だろうか)

 人は1人では大したことはできないが、2人になるとできる事が数倍に増える。だからこそ人との縁を大事にしなさい。たとえ裏切りにあったとしても、苦しい思いをすることになっても、貴方が結んだ縁はいつかあなたが苦しい時に助けに来てくれるかもしれないのだから。とはだれの言葉だっただろうか?

 だが、今はプレイヤーの援軍は望めない。掲示板でちらっと見たのだが、サーズにいる人から受けれるワーウルフ系統の変身能力をさらに強化できる覚醒クエストがあるらしく、そっちを探す為に東街を走り回っている人が大半らしい。自分の黄龍もさらに上がある……のかねえ?

 それに、南街の住人の皆さんの援護も望めないのは言うまでもなく。指輪に宿るクィーンの分身は、窮地に陥った時のためにこんなところで呼び出す訳には行かない。ちらっと指輪を見ると、指輪の色がうっすらと桃色に変わる。あーうん、両手を頬に当てて、顔を赤く染めながら「そんなに見つめちゃいやん♪」とでも指輪にいるクィーンの分身が考えたんだろう。こういう時はしばらく放って置くのが一番だ。

 さて、そういったことを考えると色々手詰まりだな。かといってこのまま動かなければ時間だけが経っていくだけ。ここはもうデスペナルティを受ける覚悟を決めて動くしかないのだろうか。そんなことを考えて、《気配察知》によって確認できる中で一番小さな集団に向けて歩き出そうとした時である。

「ぴゅいぴゅいいいい〜〜〜♪」

 そんな懐かしい鳴き声が上空から聞こえてきた。その鳴き声の主はゆっくりと自分の前に着陸し、こちら側をむいた。

「ぴゅい!」

 声の主は、ピカーシャだった。懐かしい鳴き声でもしやとは思ったが……だが、毛並が以前とは違って全体的に荒々しくなっている。特に翼の先や体の側面の毛がかなり長くなっている上に、逆立っている為により荒々しく見える。以前のピカーシャが可愛い女の子と表現するならば、今の姿は厳しい訓練と実戦を超えてきた女傑と言った所か。ピカーシャの性別はどっちだったかは忘れてしまったが、表現としてはそんな感じだろうか。

「ずいぶんと姿が変わったけど……あの戦争で受けたダメージは相当なものだったはずだ。体は大丈夫なのか?」

 あのゲヘナクロスとの戦いで受けたダメージは、ピカーシャを瀕死状態にまで追い込んでいたはずだ。それにその後の弱弱しい姿も見ている自分としては、心配で仕方がないのだが。

「ぴゅいぴゅい!」

 もう大丈夫! と言わんばかりに元気よく鳴き声を上げ、首を上下に振るピカーシャ。確かに飛んできた姿や今の立っている姿からは、以前の弱弱しく動かないでいたあの時のような不安を誘う気配は感じられない。

「そうか、お前がそう言うのならそれを信じるよ。じゃ、とりあえずちょっと待ってね。ここにいるバッファローを最低でも後2匹ほど狩って、お肉を取らないとならないんだ」

 自分の言葉に、ぴゅい? と首をかしげるピカーシャ。なので、獣人の人達とハーピーの一件をピカーシャに説明。お肉が必要となっている事情を、ピカーシャもすぐに理解してくれたようで、自分が最後に「分かったかな?」と確認すると、ぴゅいぴゅいと鳴いて頷くように頭を上下に振った。

「そういう訳で、話は後に。まずはお肉を確実に確保……」

 と、ここまで自分が声を出した直後、《危険察知》の探索範囲内にいたバッファロー達が一斉に自分のいる場所から離れるように走り出した。一体何故!? と自分は突然の状況変化に対応できていなかったが、ピカーシャはそうではなかった。「ピュウウウウウイイイイイイィィィィ!」と、今までのピカーシャでは出さなかった鳴き声を上げながら、こちらから離れるように走っていくバッファロー集団の一つに突っ込んでいった。

 ──つまりバッファローが突如走り出した……いや、逃げ始めた原因はピカーシャが戦闘態勢に入ったことによる殺気が原因か!

 必死で自分もピカーシャが飛んでいった方向に向けて走るが、機動力の差があまりにもありすぎる。〈ウィンドブースター〉や風の妖精を〈妖精招来〉で呼び出して走る速度を上げて必死に走り、自分がピカーシャに追いついたときには、両足で一匹づつバッファローの背中を掴んで浮かび上がっており、息も絶え絶えのドリルホーンバッファロー目がけて空中から嘴の一撃をお見舞いするところであった。

「ぴゅい!」

「グモオオオオオオオ!!」

 ピカーシャの嘴による一撃は、ドリルホーンバッファローの脳天を貫き止めを刺す。さらに両足で掴んでいたバッファロー2匹を勢いよく着地することで自分の体重と地面のサンドイッチ状態にして押しつぶした。そしてなぜか自分に届くバッファロー達の角とお肉のドロップ。

「ぴゅい?」

 まるで、これでい〜い? と言わんばかりの目を自分に見せるピカーシャ。どうやらここにやってくるまでに、自分自身の戦闘能力を爆上げして来たらしい。以前の状態でもベアを空中に蹴り上げるだけの巨力を持っていたピカーシャだが、今のピカーシャはそれすら生ぬるいように思える。何せバッファロー2匹を掴んでいたというのに、悠々と空を飛んでいたのである。それだけでも大幅に強くなっているという事は分かると言う物。

「あ、ああ、十分だよ。何も乱獲をしたいわけじゃないからな。じゃ、さっさと戻ってお肉を届けようか……」

「ぴゅい♪」

 ピカーシャと再会できたこと自体はとても嬉しいけど……今のピカーシャに逆らったら、間違いなく自分が死ぬな……。
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という訳で、ピカーシャがここで復帰です。
全体的に戦闘能力を上げて、姿も訓練の影響でやや荒っぽくなりましたが……モフモフなのは変わりないです。
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