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連載

街の中に戻ってのあれこれ

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「おかえりなさい! どうでしたか?」

 街に帰還し、早速ハーピーの子供達がいる場所へ急いだ。主にカナさんが。自分を含めた残りのメンバーはそんなカナさんに半ば引きずられるような感じでついてきただけである。

「ただいまー! ああ〜可愛い〜♪ 癒されます〜」

 カナさんはそんな獣人お姉さんの言葉など耳に全く入れず、ハーピーの子供に向かってダッシュ&がっちりキャッチ。早速頬ずりを始めていらっしゃる……使い物になりそうにないので自分が口を開く。

「ただいま戻りました。今日は心強い知り合いが一緒だったので、多くのお肉を得る事が出来ました。お渡ししたいのですが準備はよろしいでしょうか?」

 自分の言葉を聞いて、獣人お姉さんは他の人を呼び寄せて運搬に使う道具の準備を整えた。そこにカナさん以外の4人で取ってきたお肉を乗せていく。ドンドン運搬具の上に重なっていく肉の量を見て、ハーピーの子供達は喜び、獣人お姉さんは驚きの表情を見せていた。

「これはすごいですね〜、一回保冷庫に運んじゃいます」

 とのことで、一度運搬してもらってからもう一回空になった運搬具の上にお肉を積み上げた。こうやって積み上げてみると、今日一日で相当な数のバッファローがカナさんの刃の下に倒れてお肉になってたんだな……中盤まではツヴァイやカザミネが活躍していたのは覚えているんだけど、後半はカナさんが覚醒したのか何なのか……

「さあ、バッファローさん。あの子達のためにこれからすぐにお肉になりなさい……拒否権はございませんので」

 と言い出だしてからは色々とひどいものだった。斬る、殴ると言った攻撃を猛然と振るい、血に飢えた悪鬼羅刹となったような活躍と言っていいのかは微妙だが、ともかく大量のバッファローがお肉になった訳で。

 ツヴァイがそろそろ食事を取ろうというまでは、そんな勢いでバッファローを倒しまくっていたからなあ。カナさんの恐ろしい一面を見た。ブルーカラーのメンバーでは、カザミネが一番青い顔をしていたが……何かあったのかね?

「これだけあれば、いくらなんでも当分は持つだろ?」

 ツヴァイが獣人のお姉さんに確認を取り、お姉さんが「そうですね、ありがとうございます〜」と返答を返していた。ツヴァイの視線がやや斜め下の方に向いていたような気がしたが……あえて突っ込むまい。女性であるノーラにはバレバレの様だしな。

「さてと、ツヴァイ。ちょっといいか?」

 自分の声を聴いて、ん? と声を出して自分の方を向くツヴァイ。

「今日付き合ってもらって分かったと思うが、今の自分はこのクエストが完了するまではここを動けない。しかし、一人では狩れるバッファローの数は少ない。だから、ツヴァイ達の手が空いているのならば、バッファローの肉を集めるのを手伝ってほしいんだがいいだろうか? 期限はこのハーピーの子供たちの親が戻ってくるまで。どうだろう?」

 との自分のお願いに、返答を返したのはツヴァイではなくカナさんだった。

「もちろんです、お受けしますわ」

 いや、いやいやいや。ギルドマスターはツヴァイでしょうが。だが、ツヴァイの方も「そうだな、こんな子達を飢えさせるってのは恰好が悪りいし、それにアースからの要請なら断る理由もないからな」という事で、自分の要望はすんなり通った。あとでギルドメンバーに連絡を入れて、変身クエストを終わらせたメンバーはこっちに来るように手を回してくれるらしい。ありがたい事だ。

「アースさん、ちょっと私からも確認をしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

 今度はカザミネから声をかけられた。何だろうか?

「今回の話を、掲示板にあげてもよろしいでしょうか? こう言っては何ですが、大抵のゲームではハーピーは敵対するモンスターです。そうなるとその知識のままハーピーを見つけた人が倒そうとする可能性は十分にあります。

 ですので、少なくとも獣人連合南街近辺に居るハーピーは地元の獣人さん達と共存共栄しており、戦うべきではないという情報を流しておくべきです。幸いこの南街に来る人はまだごくわずかだと思われますので、今掲示板に情報を出しておけば余計なもめ事を回避できると思うのです」

 ──失念していた。そうだ、冷静になってみればカザミネの言う通りじゃないか。可愛い可愛くないは別にして、ハーピーは大抵の場合戦う事になるモンスターの一角だ。空を飛べる事と、かぎ爪による攻撃が厄介なことになる存在だ。だからこそ、その考えでハーピーを見つけたら戦闘を始める人がいると考える方が自然だ。

「カザミネ、言ってくれて助かった。お肉集めで頭がいっぱいになっていたから、その可能性を完全に失念していた。そして申し訳ないのだが、そのあげる作業をお願いしてもいいだろうか?」

 自分のお願いに、カザミネは「任されました、やっておきます」と返答。ありがたい。掲示板は基本的に見る専門だから書き込むのがちょっと怖いんだよな。そんな話をカザミネとしているうちに、ノーラもハーピーの子供達と戯れていた。アクアも自分の頭から降りて、ハーピーの一番上のお姉ちゃんと羽を繕いあっている。そんな光景を少しの間見ていたが、ふと頭の中にひとつ浮かび上がってきたことがあった。

「ちょっとすみません、お聞きしたい事がありまして」

 獣人のお姉さんに声をかける。

「はい、何でしょうか〜?」

 獣人のお姉さんが聞く体勢に入ったことを確認してから、自分はゆっくりと口を開いた。

「この街の近辺に、もしかしてケンタウロスの皆さんの集落があったり……しますか?」

 実は数日前……ピカーシャことアクアが帰ってきた時にやらかしたこと……つまりはバッファローを恐慌状態に追い込んで大逃走劇を引き起こした事に対して漠然とした不安を抱えていたのだが、やっとここでその不安の元が分かった。

 ハーピー達と共存共栄しているという事もそうだが、ケンタウロス族の存在は東街で馬を借りたときに明かされていた。つまりはケンタウロス族と獣人連合の人達は共存共栄をしているはずだ。あくまで街中には住まず、周辺に集落を作って住んでいるというだけで。

 そうなると、あの日アクアが引き越したバッファロー大恐慌で迷惑をかけてしまっていた可能性が浮上してくる。故意に引き起こした事ではないが……まずいな。何とかして謝りにいかないと。

「近辺にはないですね〜。かなり離れた場所にはありますが、ケンタウロスさん達は詳しい場所を言いませんから。なんでそんなことを気にするんですか〜?」

 獣人お姉さんにそう聞かれてしまったので、小さい声で包み隠さず自分が悩んでいることを話した。

「う〜ん、たぶん大丈夫だと思いますよ。ケンタウロスの皆さんは基本的に全員が騎士ですから。それにバッファロー達はその時一か所に向かって逃げたのではなく、ばらばらに逃げたんですよね? それならば後れを取ったとは思えませんし……それでも気になるのでしたら、貴方が申し訳ないと思っていたことを伝言で伝えても構いませんよ?」

 この提案に、自分は即座にのった。こういうことはきちんとしておかないといけない。たとえ被害が出なかったとしても、混乱を呼んでしまったことは間違いない。ケンタウロスの皆さんに必ず会える伝手が今のところはないので、ここは伝言をお願いしておく方がいいだろうと判断した。

「申し訳ありませんが伝言をお願いします。できれば一度直接会ってお詫びをしたい所ですが、それが難しいこともあり得ますから」

 会えない可能性の方が高いのだから、確実に伝わるようにしておく方がいいだろう。獣人お姉さんは「はい、確かに承りましたよ〜。ケンタウロスの皆さんが街にやってきた時に、きちんと伝えておきますね〜」と言ってくれたので、後は任せるしかないな。

「あ、それとですね。一応念のために、ケンタウロスの皆さんとお話をする時に気を付けておいてほしいことも教えますね〜」

 獣人お姉さんから注意事項が飛んできた。その内容は……

1、ケンタウロスさんは誇りを大事にしています。ですから貶すような言葉は厳禁です。特にただの馬扱いは即座に敵とみなされます。
2、ケンタウロスさんは、背中に人を乗せたがりません。例外はケンタウロスさんが認めた人か、人命救助の時ですね。
3、ケンタウロスさんの住処を聞き出すようなことはしてはいけません。案内された場合は例外ですけど……めったにないです。

 この3つは絶対に忘れないでくださいねと念を押された。この情報はツヴァイ達にもきちんと伝えて、今日はログアウトした。まずいことにならなきゃいいけど。
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以前の感想にあった「このハーピー情報を、情報系掲示板にあげなくて大丈夫か?」と言う点に、ようやくアースがここで気がつきました。一人でいると素ポーンと抜け落ちているという事は結構ありますからねえ。
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