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連載

ハーピーの子供達とのお別れ

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 さて、ブルーカラーのメンバーと一緒にバッファローの肉を集めるようになってから数日が経過した。その数日中に、ミリー、レイジ、ロナ、エリザ、ララがこちらに合流。人が増えて今まで通りに狩りをするとお肉集めが過剰供給になってしまうので、ハーピー達をかわいがる側とお肉を集める側の二手に分かれる余裕ができた。

 とはいっても、たいていお肉集めは自分を含めた男性陣が担当し、女性陣はハーピーのお世話に回っていたが。自分は時々休んで食材店を回り、各種スパイスを集めてカレー粉の作成にも挑んでいた。牛肉に近いものが手に入るのなら、カレーを作ってみたかったからな。

「一気に楽になりましたねえ、やっぱり人出が増えると助かります」

 とは獣人お姉さんの言葉だ。遊び相手が一気に増えた事でハーピー達ものびのびと運動をすることができたし、運動をすればご飯をいっぱい食べる。その影響でハーピーの子供達は元気いっぱいに。また、世話をしている女性陣になつき、女性陣の可愛がりがよりパワーアップするという変な循環も起きていた。

 掲示板で妖精ではないハーピーの存在を知って南街にやってきたプレイヤーはそれなりにいたらしいが、ハーピーの子供達の所までやってきたのはごくわずかだった。街と言うだけあってかなり広いし、その上顔を知らない人にハーピーの母親から預かっている大事な子供たちの居場所を教えたくなかったという一面もあるのだろう。

 そして今日。とうとう母親ハーピーがこの南街に戻ってきた。

「獣人の皆様。そして協力してくださった人族の皆様。まずは心よりお礼申し上げます」

 戻ってきた母親ハーピーはそう告げて深々と頭を下げた。ツヴァイ達の反応は、「おっきいな(どこが?)」「喋れるんだ」「美人〜」などなど。

「おかげさまで、窮地に陥ったわが娘の一人も体調を取り戻すことが出来ました。また、成長期に入ってしまい多くの食事を必要としたわが娘たちが満足するほどの食事と運動を与えてくださったことに重ねて感謝を。特にわが娘たちの香りがより強いそちら5名には、何とお礼を申し上げてよいのか……」

 おそらく自分、ツヴァイ、ノーラ、カザミネ、カナさんの5人の事だろうな。最初の方からハーピーの子供のためにお肉取りなどをしてきた貢献度が高いメンバーだ。

「お礼といたしまして……これをお受け取りください」

 ハーピーの母親は、鳥の部分から金の卵を5つ取りだして自分を含めた先程の5名に手渡してきた。彼女の体の中に収められていたためかほこほこと生暖かい。大きさは両手で持たないと落としてしまいそうなサイズ。

「その卵はしばらく持っていてくだされば、中から何かしらのアイテムが生まれてきます。もちろん金の卵のまま売り払えばそれなりのお金になるでしょう。私達は貴重品を集めると言った行為をしないので、差し上げられるのはそれぐらいになってしまいます。他の方は獣人の皆様から何かしらのお礼を受け取ってください」

 ──ツッコミ所が多すぎて突っ込めない。まあ、獣人の皆さんから受け取ってくれってところだけは分かる。その分戦いが苦手な南街の周りに生息しているモンスターが極端な群れを作らないように、ハーピーが自分達のお腹を満たすのを兼ねて狩りをしている訳だからな。実際獣人のお姉さんも「解ってますよー」と返答していたから、その点は全く問題は無いはずだ。

「何が生まれるんでしょうねえ。楽しみ半分、怖さ半分ってところかしら」

 ノーラがそんなことを小声でボソッとつぶやいていた。まあいつまでも手に持ち続けるのもあれなので受け取った5人全員がアイテムボックスに金の卵をしまい込む。

「それよりも大事なことがあるんじゃないかな?」

 この発言はロナだ。何事だ? と全員がロナの方に顔をむける。

「ハーピーのお母さんが帰って来たってことは、当然この子達も巣に帰るんだよね? ここはあくまで仮の住処だし」

 そりゃそうだろう。と誰もが頷く。ロナは何が言いたいのだろうか?

「という事はだよ? こんな可愛い子達をこうやって見て、抱きかかえられるのは今日が最後って事じゃない! 基本的にこういった子供は巣立ちまでは外に出ない物でしょ!」

 あっ!? と言う表情を『女性陣』が浮かべる。ロナの指摘通り、普通はそうだな。ハーピーが基本的な鳥と一緒かどうかはともかく……こうやって子供を街の中まで連れてくる可能性は、よっぽどのことがない限りはゼロだろう。つまり、ここで母親ハーピーが帰るという事は、子供ハーピー達も街からいなくなるという事になる。

「も、もう終わりですの!? 私はまだ、堪能しきっていませんのに!」

 ヲイコラそこ。煩悩まみれの思考が口に出ているぞ……一応念のためにだが、これはエリザの発言である。

「むう、惜しいな。実にかわいらしくて癒される存在だったのだが」

 レイジも真面目な顔して何を言っているんだ……レイジの契約妖精であるハリネズミをふと見ると『ぼくはとげとげだから駄目なの? なでなでできないから駄目なの!?』と目で訴えかけているような気がする。哀れに思ってしまったので、しゃがみ込んで手招きしたら一目散に走ってきた。

 背中はとげとげなので撫でてやれないが、おなかの方なら大丈夫なので撫でてあげた。気がつけば、エリザの契約妖精であるタツノオトシゴも自分の所にやってきたので、ハリネズミをいったん地面に下ろして撫でてあげた。スネなきゃいいけど。

「私の子供達をかわいがってくださったのですね。ですが、申し訳ありません。街の中においてゆく訳には行きませんので……」

 心の底から申し訳なさそうに言う母親ハーピーの言葉を聞いて、体を張った事前に仕込んだ仕掛けを発動したかのように一気に崩れ落ちる女性陣。ミリーだけは残念ですわねーと言う表情こそ浮かべてはいたが、崩れ落ちるまでには至らなかったようだ。

「しょうがねえだろ……気持ちは十分に理解できるが諦めろよ……緊急事態が解消して本来の姿に戻るのは当然の事だろ」

ツヴァイがそんなギルドメンバーの姿を見て、疲れたようにつぶやく。実に正論である。たとえ共存共栄をしていたとしても、こんな街中にハーピーの子供たちがいる事は一種の異常事態なのは間違いない。だが、世の中にはそんな正論などぶん投げてやると言う空気が発生することはよくある事? で……

「もうこのぷにぷにほっぺも、ふわふわの羽根も堪能できなくなっちゃうなんて……酷すぎます!」

 と、カナさんが崩れ落ちた状態から復活して心の叫びを吐露し、一番お気に入りになっていると思われるハーピーの子供を抱き上げて頬ずりする。そんな主の姿を見て、カナさんの契約妖精であるハリネズミは思いっきりすねていた。今後が非常に心配である。

「もうその辺であきらめなさい。ほら下ろして、バイバイしましょう」

 そんなカナさんをカザミネが抑えて、ハーピーの子供を離させる。カザミネによって物理的にハーピーの子供と離れさせられたカナさんは「あー、ピチュちゃーん!」と切なそうに声を上げていた。てか、勝手に名前を付けていたらしい……何をやっているんだ。

「収拾がつきません。とにかく子供達を巣に返してきてくださいな。お話があればまた後日に」

 仕方何自分はそう切りだし、ハーピーの母親もそうしない限りいつまでたっても帰る事が出来ないと判断したようだ。

「分かりました、その方がよさそうですね。ひとまず今日はこれにて失礼いたします」

 そうハーピーの母親はいい残し、ちょこちょこと走る子供達と一緒に街の外に消えていった。ちなみに完全に姿が見えなくなるまで、カザミネがカナさんを羽交い絞めにして押さえていたことを追記しておこう。

「あー、居なくなっちゃった。分かってはいたけど寂しいねー」

 口を開いたのは崩れ落ちた状態から二番目に復帰して来たララさん。この言葉にああそうだな、と同意する男性陣。ノーラとロナ、エリザはまだダウン中である。確かに自分が見てもハーピーの子供達は非常に可愛らしかったが、女性から見たらそれ以上何かがあったんだろうな、たぶん。

「えーっと、とにかくこれでお仕事は完了です。仕事を受けてくださったアースさん、そしてアースさんを手伝ってくださった皆さんには報奨金が出ますので〜」

 獣人お姉さんも少々言いにくそうではあったが、そうこちらに告げてきた。ようやく気持ちの切り替えが終わったらしい3人も崩れ落ちた状態から立ち直って報奨金を受け取っていた。ちなみに自分は17万グローほどを頂いた。多いか少ないかはともかく、いろいろな経験は積めたと思う。
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カナさんがおかしい方向に突っ走っていらっしゃる。
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