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遅れてやってきた褒賞

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 ブルーカラーの一部女性陣の土下座、その土下座している女性陣にチクチクと反撃をした後に『今回だけは許す』と言った感じの契約妖精の姿を見た翌日。ログインしてベッドから身を起こして背伸びをした所でアクアからつんつんと手を軽くつつかれた。当然ながら痛みは無い。

「おはよ、どうした?」

 アクアの視線が向いている方向を見てみると、そこには一つの箱が宿屋の部屋に備え付けられているテーブルの上に乗せされていた。それはラッピングされた赤い箱で、一目見ればプレゼント箱であると分かる。さらにその箱の下には、一枚の紙が挟んであることにも気がついた。その紙を見てみると、手紙であることが判明……目を通す。

『アース様、お久しぶりです。覚えておいででしょうか、かつてアース様と話し合いを行ったダンジョンの主、ミークでございます。さて、今回は不躾ではありますが……アース様が関わったダンジョンの一件について、アース様は知る権利があると判断いたしましたのでご連絡させていただくことにいたしました。お蔭さまで妖精族の女王と繋ぎを取る事が出来まして、私達のダンジョンは王室認可の特殊ダンジョンとして存続することが決定しました』

 あのダンジョンか。ええっと手紙の続きは……

『お蔭で我が妹の2人も元気にやっております。最近特に食い意地を張るようになって来たのが困りものでございますが……あの二人共々、これからもダンジョンの管理と発展を行います。アース様もぜひまた訪れていただきたく存じます。さて、現状報告ともう一つ用事がございます。それは、あの時最下層までやってきたアース様にそれ相応の褒賞をお渡ししていない事を失念しておりましたので、今更ではございますが、その褒賞をアース様の元へお届けさせていただきました。送り届けた方法は秘密でございます』

 そうすると、このテーブルの上にあるこの箱にはその褒賞が詰まっているという事か。手紙にはまだ続きがあるな。

『箱の中身には、ダンジョン最下層までやってきたことによる褒賞に加えまして……妖精国の上層部と繋ぎを取れるようになったきっかけをいただいたお礼も入っております。遠慮せずに箱の中身をすべてお受け取りくださいませ。今回は私の不手際により、褒賞を手渡しすることが大幅に遅れたことを心からお詫びいたします』

 ──手紙はここまでか。褒賞ねえ、あのおっかないミミックのお姉さんは何を送ってきたんだか。ラッピングを取り箱を開けると……まずはお金。10万グローが入っていたので遠慮なく取り出してアイテムボックスに投入する。次に入っていたのはHPやMPを回復するポーションのハイレア等級に加えて、何とプレイヤー用の蘇生薬が5個入っていた。今の自分のポーション制作能力ではレア等級が限界なので、その一歩先になるハイレア等級のポーションはありがたい。HP、MP回復共に50個あるようだ。そしてプレイヤー用の蘇生薬は現時点でも貴重品である。これ一つをプレイヤーのオークションに出すだけでかなりの大金が懐に入ってくるだろうな。

(かなりの大盤振る舞いだな、それだけ妖精国の上層部と繋ぎが取れたことに感謝しているのかも知れないが……まだ箱の中には何か入っているな)

 レッサードラゴンの鱗や骨、皮なんかも少量ではあるが入っていた。これは鍛冶をする時の材料として使える。ここいらでいったんファストに帰って倉庫にいったんすぐには使わない物を預けてきた方がいいな。倉庫がファストにしかないというのがかなり面倒なんだけど、そこはアクアによる空中高速移動でやってもらう事にしよう。ついでに龍の国に言ってお米を買ってこないと。ようやくリアルのお店で売っているカレー粉の固形状態が完成させることが出来そうだし、カレーライスを十二分に食うためにもお米の補充は必要だ。

(そしてこれが最後か……これは、矢筒だな。性能の方は……っと)


 魔弾の相棒

 この矢筒に納められた矢は射程と威力が上昇し、さらに矢に属性を纏わせた時の威力が強力になる。属性によって強化される効果は別で、火は射られた相手を炎上させる。水は氷となって相手を凍結させる。風は相手を衝撃で弾き飛ばす。土はより相手を深くえぐる様になる。光は視界を奪う。闇は生命力を奪い主人に還元する。また、属性を矢に纏わせるための消費MPを軽減する。

 種類:矢筒 レジェンド

 効果:矢の射程と威力を1.25倍強化 矢の属性攻撃によるダメージを強化する 属性による特殊効果を個別に発生させる 矢が属性を纏う弓アーツのMPコスト20%軽減


(ふむ、どうやらこれが本命の一品か? それにしても矢筒か……自分がほとんど気を使わなかった部分を、あのお姉さんは見抜いたのか?)

 基本的に矢筒は使えればいいレベルでしか考えていなかった。もちろん矢を取り出すときにやりやすいものを選ぶぐらいはしたが……矢筒に対する考えはその程度であって、特殊な効果が矢筒にも乗るという事は考えの範囲外出会った事は事実だ。だがこの矢筒はそのことを真っ向から否定して来た。早速矢を入れてから装備し、実戦で使うように矢を矢筒から取り出してみる。外套を纏っているので、矢を取り出すのはそれ専用に空けてある隠し穴から取り出すことになるのだが……スムーズに取り出せる。何回か体勢を変えて取り出してみるが、違和感はない。

(問題はなさそうだな。早速実戦投入させてもらうか。それにしても矢筒とは盲点だったな)

 あとは実戦で試してみよう……という事で、早速アクアと一緒に街の外へ出てバッファローを探す。今回アクアは街の外に出てから騎乗できる大きさになってもらい、久々に騎馬? 騎鳥? 状態で戦う事にした。

「ぴゅいぴゅいぴゅ〜い!」

 ここ最近ずっと小さい状態だったので、久々に走り回るアクアのテンションが高い。だかだかだかだっ! と草原を走る走る。コントロールが大変だ。

「アクア、ここからちょっと右にバッファローが2匹いる。アクアにはその周りを走り回ってもらって、基本的にはバッファローの攻撃間合いの少し外から弓矢による攻撃で戦う事にするからね? ある程度弱ったら、アクアにも蹴り攻撃とかをお願いするよ!」

「ぴゅい!」

 そんな話し合いを済ませれば、狩りの対象であるバッファローは目の前。さすがにアクアの走る音でこちらには気がついていたようで、警戒態勢を取っているように見える。自分は弓を構えて矢を番えて……矢が属性を纏うアーツの中でも一番MP消費コストが安い《風塵の矢》発動。バッファローに向かって打ち出す。さてどうなりますか。伏虎の弓から放たれた矢は、最初の一射のため風と一緒に虎のオーラを纏ってバッファロー目がけて飛んでいく。

「ブモッ!」

 矢を射かけられたバッファローはすばやく反応し、矢を自慢の角で弾こうとした……のだと思う。だが、矢がバッファローの角に接触したと思われた瞬間、ドンッ! という炸裂音が周囲に響き渡ってバッファローがのけぞった。のけぞった所に虎のオーラが食らいつく事でさらにバッファローに対して追加のダメージを与えた。

(うわ、これは圧縮された風による一種の爆弾だな。他の属性の効果も見てみたいが、自分の打てるのは風属性だけだから仕方がない。どっちにしろ、矢筒はまず消耗しないからこれはありがたい。弓が変わって威力が減ったが、この矢筒でその威力が減った分をある程度取り戻せるかもしれないな)

 属性を纏わせない通常状態の矢による攻撃でも、ダメージの通りがいい。機動力はアクアが上手く走り回ってくれるので問題ない。回るをぐるぐる回りながら何度も何度も自分の弓矢による攻撃で、バッファローの2匹組は徐々に弱り出した。

「よし、アクア! そろそろいいぞ!」

 矢筒の効果も、使った時の感覚もだいたい把握できた。後は一気に倒してしまっていい。

「ぴゅい!」

 自分の声を聴いたアクアはぴょーんとジャンプして……でん! と、バッファローの背中に直接ストンプするように着地。当然アクアの体重+自分の体重が圧し掛かられたバッファローぐしゃりと押しつぶされる。バッファローも普段ならば回避することもできただろうが……アクアが周囲をぐるぐる回って、騎乗している自分が矢を射る事で攻撃するというパターンから突如動きが変わった事で対応できなかったんだろう。それに加えて新しい矢筒の特殊能力が発動することで強化された《風塵の矢》で受けるダメージも蓄積していただろうから、足にもある程度来ていただろうし。

「ぴゅい!!」

 アクアは押しつぶしたバッファローの頭めがけて、鋭い嘴を振り下ろす事で止めを刺す。長く苦しめる理由もないからな、とっとと止めを刺してくれるのはありがたい。生き残っているもう片方のバッファローには、突進されないように自分が矢筒効果で強化されている《風塵の矢》による攻撃でのけ反らせて足止めをしておく。あとは止めを刺し終えたアクアが、その足止めを食らってのけ反り動けないバッファローに向かって突撃、嘴を深々と突き刺してバッファローの頭を貫く。うーむ、アクアも攻撃力が大きく上がってるなぁ。

「お疲れ様、問題は特になさそうだな……」

 新しい矢筒の性能も、アクアの動き……両方ともに良好と言って良い。さて、もう少し狩ろうかと考えた所で、かっぽかっぽと言う馬の足音と共に自分は声をかけられた。

「ほうほう、なかなかやるな。だがもう少し腕力を鍛えた方がいいかもしれんぞ?」

 声のした方向を振り向くとそこにはケンタウロスの男性が一人いて、左手には弓を持ち、上半身には鎧を着て武装していた。
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ここでやっと以前のダンジョン最下層到着褒賞がアースの手元に。時間がかかった事に加えて色々と繋ぎに貢献したことで内容が豪華になってますが。
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