トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
121 / 390
連載

弓の指導

しおりを挟む

「腕力、ですか?」

 ケンタウロスの男性からの言葉を聞いて、自分はついオウム返しをしてしまった。

「うむ。先ほどの戦いを少し見せてもらったが、攻撃力は技術力も伴っているようでなかなかのものだった。だが、照準を合わせるのに手間取っているようにも見えた。おそらくだが、腕力が足りないせいで細かいブレを抑えるのに苦労していたのではないかな?」

 痛い所を突かれた。普段なら問題は特にないのだが、騎乗状態だとどうしても普段以上に揺れる以上、どうしても照準がぶれてしまって矢を放つまでの時間がかかってしまうのだ。もちろんアクアは揺れが少なくなるようにサポートしてくれてはいる。それでもゼロにはできないし、できるはずがない。これはアクアの責任ではなく、自分の責任なのだから。

「そのご意見は否定できませんね……とはいっても、短期間で筋力をつけるのは難しい一面もありますので……」

 方法は無いわけではない。肉体強化の特化版を取って、不足している腕力を補う事は可能ではある。しかしそれを取ると、今のスキル構成を崩さなくてはならなくなる。そうなると自分は一気に弱体化する可能性が高い。〈技術の指〉を外せば弓の腕は落ちるだろうし、全体的な能力の底上げをしてくれている〈武術身体能力強化〉を外すという選択肢はあり得ない。〈剛蹴〉を外せばこれまた弓の方に響く。〈ダーク・チェイン〉を外したら腰に下げている惑や盾に仕込んである隠しスネーク・ソードもただの重りに変わってしまうだけだ。

「まあそれはそうだな。地道に弓を使ってあげていくしかないだろうな。あとは、経験不足もあるんだろうがな……お前さん、そういう騎乗状態で矢を射た事があまりないな?」

 どうしてこうもズバズバと言い当てられるかな……とはいえそれは事実なので大人しくうなずく。

「やはりそうか。逆に経験不足な状態であそこまで戦えるんだから大したものだ。訓練を積めばそこそこいいところまで行くんじゃないか?」

 そこそこ〜という点も的確な評価だろう。おそらく一点集中のスペシャリストというスキルの取り方をしている人ならば、相当良い所まで行くと言って貰えたんだろうが……

「それはそうと……せっかくケンタウロス族の方に会えたのですから、少しお話をしておかなければならないことがあります。お時間よろしいでしょうか?」

「ん? なんだ? 時間なら別に今日は急いでいないから問題ないぞ。どうした?」

 ケンタウロスの男性がそう言ったので、例のバッファロー大暴走を引き起こしてしまったのは自分である事、それによってもしかしたらケンタウロス族の皆様に迷惑をかけた可能性があることを述べ、頭を下げて詫びた。この一件については激しく糾弾されても仕方がないと覚悟を決めていたのだが。

「ああ、あの日の事か。妙にバッファローが大慌てと言った感じで走ってきたな。統制も何もなかったからな、普段の狩りよりもはるかに楽だったぞ。あの日怪我をした仲間もいなかったことだし気にするな。その謝罪の意思も確かに受け取った、お前さんが気に病む必要はない」

 とまあ、実にあっさりとしたものだった。だが、被害も受けておらず、怪我人……最悪の場合は死者になるが……それらも出ていないとわかれば一安心だ。肩に乗っかっていた少し重いものが取れた気分になる。

「ありがとうございます、そう言って頂けるのは非常にありがたいです」

 そうしてもう一度頭を下げる。ケンタウロス族の皆さんは誇りや礼儀を大事にすると聞いているし、丁寧なやり取りこそが重要だ。とはいえ、これは一般社会でもめ事を起こさずに過ごすための必要な事でもあるので、別段苦痛という訳ではないが。

「さて、では次はこちらからだな。声をかけた理由は先程の助言をするためと、お前さんさえよければ少し弓の指導をしようかと考えていたのだが。どうだ?」

 騎乗状態は今度増えるかもしれない。アクアを極端に小さい状態で押し込めておき続けるのもよろしくないし、弓の指導は龍の国にて雨龍さんから受けたのが最後だったはず。ここいらで改めてみてもらうというは悪い話ではない。それにケンタウロスって、確か弓の名手も多かったはずだからな……この申し出を受けるか。

「解りました、弓の名手が多いケンタウロスの方から直々に指導を受けれるのはありがたいです。よろしくお願いします」

 こうしてしばらくの間みっちりと弓の指導を受けた。自分の気がついていなかった細かい部分等も実践を交えながらの指導を受けたため、この指導の事を事を細かく書き残そうとすると文字がいくらあっても足りないぐらいだ。だが、この指導のおかげでアクアに乗りながらの射撃能力は確実に上がったのは間違いない。指導を受け始めた最初と最後では、矢の射易さがかなり違うと実感できたほどだったのだから間違いはない。スキルの数値の方も数種類、レベルが上がっていた。

「日も暮れ始めた。今日はこのぐらいにしておこうか。だが、言うまでもないが日々の修練こそが一番大切だ。今日教えたことを何回も反復練習した方がいいぞ」

 自分に指導をしてくれたケンタウロス族の男性はそう最後に話を締めて話を終わりにした。そして別れてお互いの帰る場所……自分は南街の宿屋へ、ケンタウロスの男性は集落へと帰る……はずだったのだが、そうはならなかった。

「ケルディ、ケルディ! どこに居るんだ!!」

 突如、そんな叫び声がドカッドカッと言う荒々しく走る馬の足音と共に聞こえてきた。

「俺はここに居るぞ、どうした!」

 どうやら目の前に居るケンタウロスの男性は、ケルディというお名前らしい。走ってきたもう一人のケンタウロスの男性がケルディさんに近寄り、はあっはあっと荒い息を必死で落ち着けている。自分も何事かと思い、この場から動いていない。

「東の集落に居るケンタウロスからこちらに報告があった! どうやらバッファロー達の東に住む王に動く気配があると!」

 バッファローの王? ふむ、もしかしてプレイヤーがいっぱいやってきて、東街周辺のバッファローを狩りまくったから王が出て来るとか、そういう流れかな?

「む、それは本当か? とはいえ、戦いを不得手とする獣人達に今までに色々とちょっかいを出して苦しめる様な事もしてきた連中だ。戦いを得意とする獣人族に加えて、人族の流入で狩られる側に回った途端に焦り出したか?」

 ふむ、バッファロー達はそんな一面があったのか。そういえばサーズから獣人連合の東街に向かっていた時、であったバッファロー達はアクティブ……好戦的だったな。バッファローのすべてがそうなのかは分からないが、少なくともこうやってフィールドに居るバッファロー達は皆好戦的だ。だからお肉を得るために倒しても、極端に気に病むと言った事も無かった。

「ああ、それで連中は徒党を組んで獣人が多く住む東街を攻める気配を見せている。おそらく数日後には襲い掛かってくるだろうな」

 ふむ、これは以前人族の街であるファスト、ネクシア、サーズであった街への襲撃があると考えていいか。今回はバッファロー系統が来る、と……以前はオーガの人海戦術で危うくネクシアが落ちかけたんだっけな。その時はグラッド達のPTと黄龍変身で凌げたが……バッファロー達が総出で突進して来たら城壁でも貫かれそうだな。馬防壁の様な物を作ってもバッファロー達の身体能力を考えるとあまり効果は無いかもしれない。面倒な話である。

「で、こっちからも援軍を出せれば出してほしい、そんなところか?」

 ケルディさんの言葉に、もう一人のケンタウロスの男性は頷く。

「ああ、腕利きにとにかく声をかけている状況だ。そちらの人族の者も、腕にある程度覚えがあるのならぜひ助太刀に行ってあげてほしい。では、俺は他の奴にも声かけに行かなければならんから失礼するぞ」

 そうして再びドカッドカッと音を立てながらかなりのスピードで情報を伝えてくれたケンタウロスの男性は走り去っていく。

「これは、行くしかないでしょうね」

 自分がそうつぶやくと、ケルディさんも反応する。

「そうだな、頭数は多いほどいいだろう。俺はこれから準備を整えて向かうが、お前はどうする?」

 ケルディさんの言葉に少し自分は考える。もしかしたらツヴァイ達には情報が行っていないかもしれない。

「街に知り合いがいるんですが、そっちに声をかけてきます。その後で東街の方に向かう事にします。向こうで会えたら会いましょう」

 そういってケルディさんと分かれ、南街の中に戻ってきた。ツヴァイにウィスパーを飛ばし、連絡を取り合う。

【アース、それは本当なのか!?】

【ああ、外で出会ったケンタウロスさん達からの情報だが、嘘をつく理由は無いはずだ。東街に居るブルーカラーのメンバーに確認を取って貰えばより確実だろ?】

 そうしてツヴァイが確認を取った結果、間違いないという事が判明する。東街に居たブルーカラーのメンバーも、ツヴァイ達に連絡を取る直前だったらしい。

【アースも行くんだろ?】

【もちろんだ、今から東街に向かうつもりだ。おそらく明日のこの時間には戦闘が始まってるだろうし……今日中に移動しておかないと不味いだろうからな】

 自分の言葉を聞いたツヴァイ達も、今日中に東街に向かうようだ。自分はアクアに乗ったまま全力で走ってもらい、ログアウト直前に東街の近くまで到着することに成功した。今日は宿屋には泊まらず、アクアの本来の大きさに戻ってもらってその中に包まれて寝る事でログアウトした。
************************************************
スキル

風迅狩弓Lv36 ↑3UP 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv29 技量の指Lv37 ↑2UP 小盾Lv28 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv70 ↑2UP ダーク・チェインLv3 ↑2UP 義賊頭Lv27 ↑1UP 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.78 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 ↑1UP 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 19

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
しおりを挟む