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連載

獣人連合・東街の長い一日 その一

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 ログインし、アクアの背中で目を覚ます。アクアには騎乗状態になる程度の大きさに縮んでもらい、街の近くにあった林の中からごそごそと抜け出す。時間を確認すると、ワンモアの世界は夜明けの直前と言った所だった。アクアに乗ったまま東街に入るために近づくと、すでに街全体が目覚めていて、自分はまだ街の外に居るというのに街のあちこちから怒号が聞こえてくる。

「拒牛槍がたりねーぞ!」「おそらく奴らは今日来るぞ! 飯を食うなら今食っておけ!」「今まで調子ぶっこいてきたバッファロー達をここで叩く! バッファローの王も潰す! いいな!」

 などなど。声が入り混じっているので、プレイヤーの声なのかワンモアの住人である獣人さん達の声なのかはちょっとわからないが。とにかく街の中に入ろうとして東街の南門に近寄ると、そこにはでかい杭がいくつも並んでいた。土台は重そうな石が使われており、ちょっとやそっとではびくともしそうにない。さっきちらっと聞こえてきた拒牛槍とはこれの事だろうか? 拒馬槍と言う物はリアルにもあった気がするが、それのバッファロー対策版と言った所か。そして門も固く締められている。

 配置がもう完成している物を動かしたくなかったし、門が締められているのでので街の中に入るのにはどうした物かと悩んでいると……固く締められていた門の横から、隠されていた跳ね橋が下りてきた。

「そこのでかい鳥に乗っている奴、街の防衛のために来てくれた勇士ならば中に入れ! 違うのならばこの街から離れろ! この街は今日戦場になる!」

 跳ね橋の奥に居る狼の獣人さんがそう指示してくれたので、アクアに乗ったまま東街の中に跳ね橋を渡って入る。自分とアクアが入った途端跳ね橋が上げられて外から見ればただの壁に戻る。この跳ね橋は明らかに籠城から攻めに転じるための仕掛けだな。街の中に入れば、プレイヤー、妖精、龍人、エルフ、ダークエルフ、ケンタウロス、獣人と言った数多くの人種がひしめき合っていた。ゲヘナクロスとの戦争の時も複数の種族が集まっていたな。

「勇士よ、参戦を歓迎する。そして申し訳ないが戦闘の大まかな予定が向こうに張り出されている。その確認をしてきてほしい」

 自分を街の中に入れてくれた狼の獣人さんが、ある方向を指し示しながらそう指示を飛ばしてきた。自分はそれに従い、戦闘の予定が書かれている紙に目を通しに行く。そこにはこう書かれていた。


 ──斥候の働きにより、バッファロー達が集結しているのは西側にある森の中だと判明している。故に最初は西門が激戦地区になると思われる。西門は門を固く閉じ、拒牛槍を多く配置したうえで弓や魔法と言った遠距離攻撃を主体とした籠城作戦を取る。西門でしばらく戦い、バッファロー達の勢いがそがれてきたら跳ね橋をおろして近接攻撃を得意とする戦士たちに突撃攻撃を行ってもらう。それと同時に騎乗攻撃ができる者やケンタウロス族の勇士達に北門と南門の跳ね橋から出撃してもらい、走り回りながらの遊撃も同時に行ってもらう。

 だが、バッファロー達も今回は王に率いられている故、普段とは違った動きをする可能性は十分にありうる。故にどの門にも最低限の兵力は残しておき、回り込んできた場合の迎撃戦闘に加え、鐘の音でどの門にバッファロー達が攻撃を仕掛けてきているかを知らせる。北はゴーンゴーンと鳴る鐘を、東はガラーンガラーンと鳴る鐘を、南はガランゴローンガランゴローンとなる鐘を配置している。鐘が鳴り響いたときには、街の中で待機している予備兵力の者に動いてもらう事になる。


 ふむ、なるほど。西門がメインで、他の門は警戒状態でスタート。あとは臨機応変にか……予備兵力も用意してあるようだから備えはそれなりにしてあると見ていいのかも知れないな。そうなると自分の仕事は、アクアの脚力を生かした遊撃だな。早速昨日受けた指導を生かす機会がやってきた……という事にしておこうか。自分はそんな考え事を行い、その一方ではてこてことアクアに歩いてもらって南門付近に戻ってきた。そして先程自分に指示をくれた狼の獣人さんに「遊撃として参加します」と告げた。

「そうか、戦果を期待するぞ。襲ってくるバッファロー達はこっちにちょくちょくちょっかいを出してきたくせに、いざやられる側になったらこんなことをやってくる連中だ。何の情けもかける必要はねえから、遠慮なく狩っちまってくれよ。俺は戦士だから、ここにもしバッファロー達がやってきた場合の予備兵力として参加だ。お互い生き残ってバッファロー達を殲滅しような」

 そう言いながら、手を出してきたので握手に応じる。毛がふさふさなのでモフモフっとしたおててでした。そして狼の獣人さんと別れて、跳ね橋の前に移動する。いつ出撃の指示が出てもいいようにである。周りをちらっと見ると、大半がケンタウロス族の皆さん。そして自分のように何かしらの乗り物……つまりは馬、機動力のある契約妖精に乗ったプレイヤー。グリフォンの外見をした妖精。ハーピー。これが遊撃隊メンバーの顔ぶれである。ケンタウロス族の皆さんはランス持ちが4割、弓持ちが6割と言った所。プレイヤーは逆に近接武器持ちが7割で弓が3割。グリフォンやハーピーは空からの強襲をメインにするのだろう。

 配置についたので、今のうちにバッファローの肉を焼いたステーキを取り出して口にする。満腹度を満たすだけではなく、バッファローを平らげるという願掛けでもある。さっさと口の中にすべての肉を収め、水を飲んで準備完了。伏虎の弓を左手に持ち、くぃくぃっと右手で弦を引いて感触を確かめる。特に問題は無いようである。そんなことをしているうちに太陽は空に昇り、朝を迎えた。そして……ドドドドドドドド!!!! という音が聞こえてきた。

「きたぞー! バッファローの団体様だ! 全員戦闘態勢に移行し、指示に従って戦闘行為を始めろ! この街を守り抜くぞ!」

 そんな指示を出す声が上がる。いよいよ戦闘開始か……そう考えていた自分の耳に、ドカーン! とか、チュドーン! と言った音が聞こえてくる。これは明らかに爆発物の爆発音だ。

「お、どうやらあの爆弾魔ギルドが先陣を切ったらしいな……相変わらず派手だぜ」

 そんなことを、近くにいたプレイヤーの一人が呟く。なので、

「なに、その物騒なギルドは……」

 とつい声を漏らしてしまった。その声が聞こえたのだろう、そのプレイヤーは自分に情報を教えるべく口を開いてくれた。

「ああ、お前はさっき来たんだっけな。じゃあ知らなくても無理ねえわ。正式なギルドネームは知らねえけど、鍛冶仕事をする傍ら爆弾製作に愛を注ぐ連中が集まったギルドがあるんだよ」

 とのこと。さらに話を聞くと、手投げの爆弾……まあ所謂手榴弾に始まり、地雷、爆発するように作った投擲武器などを製作しているらしい。そしてさっきのドカーン! という音は投擲武器である炸裂手裏剣がバッファローに刺さったか地面に刺さったかで起きた爆発であり、チュドーン! は前もって西門限定で埋めており、バッファロー系にだけ反応するように調整した地雷が爆発した音だろうと教えてくれた。

「それはまた、えぐいな……」

 投擲武器はまだ分かるが、まさか地雷とは。防衛するためには向いている兵器だろうが……よくもまあ作り上げたものだ。どの世界にも限界に挑む人ってのはいるんだな……他人事のようには言えないけど。

「あの炸裂音からして、相当数のバッファローが空を舞ったんじゃね? おそらくこっちの遊撃戦闘開始指示もそう遠くないうちに来ると思うぜ、畳み掛けろって感じでな」

 こんな話をしている間にも、ドカーンチュドーンチョドーン! と爆発音が聞こえてくる。──経費は大丈夫なんだろうか? 原料になっていると思われる爆裂鉱石を派手に消費していると思われるんだが……逆に、こういう時のために溜め込んでいたのかも知れない。ゲヘナクロスとの戦争に加え、街に大量のオーガによる侵略と2回も前例があったからな。備えあれば患いなし、ついでに派手に爆発させる機会があればなおよし! というノリもあるのかも知れない。

「西門のバッファロー達の数は相変わらず多いが、拒牛槍に加えて人族が持ち込んだ爆発物による攻撃、エルフの弓による攻撃でバッファロー達の突進力が鈍ってきている! 遊撃部隊は浮足立ったバッファロー達の側面を突き、バッファローの数を減らせ!」

 そして5分後ぐらいに、そんな指示が下り、南門の横に隠してある4つの跳ね橋が下りた。その跳ね橋から機動力重視の面子で作られている遊撃部隊が次々と飛び出す。空を飛べるグリフォンやハーピーは空を飛んで飛び出していく。もちろん自分もその流れに乗ってアクアを走らせる。さすがに鳥に乗っているのは自分位だったので少々目立つが、そこはまあいい。スピードを上げながら西門付近を他の遊撃部隊の人達と一緒に目指す。

「見えたぞ、各自攻撃開始! スピードを殺さないようにしろ! 一匹相手に執着するな! 一発攻撃を当てたら走り去るぐらいの考えで良い! 足を止めたらバッファローの集団に飲み込まれて終わりだからな!」

 先頭に立ち、ランスを構えるケンタウロスの男性の指示が飛ぶ。西門の上からはいくつもの矢と手裏剣が投げられており、矢がバッファローの頭や背中に刺さり、手裏剣は爆発を起こす。そんな状態で得意の突進がうまく振るえない状態に陥っているバッファロー達目がけて自分たち遊撃部隊は突っ込んだ。

「おっしゃあ!」

 ランスを構えて最初に突進したケンタウロス族の男性が、バッファローの薄いラインを的確に見抜いて突き破る。そのこじ開けられた一本の通路を後続が駆け抜けつつ矢を放ったり、剣などの近接武器ですれ違いざまに一発切りつけて離脱する。最初に言われたとおりに執着しない。一発当てたら即座に離脱を心がける。もちろん無理せずに矢を打てる角度になったら遠慮なく《風塵の矢》で風属性を纏わせた矢をバッファロー達に向けて放つ。

 だがバッファロー達もやられっぱなしではなく、遊撃部隊に狙いを変えて突進してくる奴もいるし、拒牛槍に向って突進し自分の体を貫かれてもお構いなしにぶつかってくる奴もある。決して防衛側に余裕があるという訳ではないのだ。いくつかの拒牛槍にはすでにひびが入りつつあることも、遊撃部隊ゆえに近くから確認できるチャンスがある自分の目に見えてしまっているのだから……。
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スマブラ3DSやってると、ああいう風に人をブッ飛ばす&ブッ飛ばされればストレスは減るのかもなーと思ってしまう自分がいます。名前がシイナでパルテナ様を使っている奴がいたら、おそらくそれは自分です。
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