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連載

獣人連合・東街の長い一日 その八

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この戦い長引いてるなぁ
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 たとえ強敵が相手だったとしても、対処法が分かればそれに対応することができる、バッファローの王の前にたどり着いたメンバーはそういう人達である。そのため、発見した対処法に従って確実にバッファローの王・側近に攻撃を仕掛けて体力を削り取り、倒すことが可能であった。ツヴァイ、カザミネ、ランダの三名を主軸とし、その三人を最大限に生かすための支援や妨害を他の人達が行うことで一匹、また一匹とバッファローの側近達は倒れて数を減らしてゆく。

「グラッド! もう少しでバッファローの側近たちとの戦いはけりがつく! もう少しだけ時間をくれ!」

「了解だ! こっちはまだまだ耐えられる、詰めをしくじるんじゃねえぞツヴァイ!」

 そんなやり取りが一回だけ行われる。グラッドの言葉はやせ我慢などではなく、グラッドPTはバッファローの王にダメージを与えつつ余裕を持って戦っている。特筆すべきは、すでにバッファローの王が放ってくる雷光球に対して対応することができるようになっている事だろう。自分ではまだ見分けがつかないのだが、すでにグラッド達は飛んでくるタイプと爆発するタイプの見分けができているらしく……雷光球による攻撃の直撃を貰わなくなっていた。

 直撃を受けない事により回復の手間が減り、その分攻撃へと手を回す事が出来ている様である。特に変身中のグラッドによる複数の武器を扱った攻撃にバッファローの王が押され気味になり始めているようで、直撃させる事はいまだにできていない様子だが、バッファローの王の体には複数の真新しい傷が刻まれている。

 それにしてもグラッドも器用だよな。片手剣や片手斧などの片手武器だけならともかく、両手剣や大太刀、トンファーなどの完全に間合いも動きも変えなけなければならない武器すら使いこなしている。間合いを変え、その間合いに適した武器を掴んでバッファローの王に攻撃できるのだから。

 その場に居る全プレイヤーの活躍により、それから数分後にとうとうバッファローの王・側近最後の一匹が倒れ、消え去った。これでようやくバッファローの王に集中攻撃ができるようになった。

「グラッドさん、こちらは終わりました! これからそちらに助太刀します!」

 アヤメさんの宣言通りに、バッファローの王・側近を相手にしていたプレイヤーが動き始めた。自分も矢を番えてバッファローの王に狙いを定め、アクアに近づいてもらおうとしたとした時だった。

「待て! 何かおかしい!」

 側近がすべて倒されたことに激怒? したのか、バッファローの王が全身に雷光を纏い始めたのだ。今まで行っていなかった行動であり、一目見ただけで『こいつはヤベえ』と理解できる姿でもあった。

「全員回避に専念しろ!! おそらく突っ込んで……」

 槍を持っているプレイヤーの声は途中で途切れた。彼の予想が正しかったことを彼は自分の体で証明してしまったからだ。雷光を纏ったバッファローの王は、大した助走距離もないというのに、高速でタックルを仕掛けてきた。そしてなぜかターゲットにされてしまったその男性プレイヤーは角に体を貫かれて、直接内部に電撃を流されることにより……残っていたHPをすべて吹き飛ばされてこの場から強制退去させられた。そのプレイヤーが狙われた理由は、バッファローの王にとってちょうどいい距離、いい場所に立っていたからかもしれない。一言でいえば不幸だったという事だろうか。

「なんであんな単距離でここまで高速で……どうぇああああ!? 今はやりのレールガン方式とか言わねえだろうな!?」

 次に狙われた槍持ちの男性プレイヤーは奇声を上げつつも、何とかバッファローの王による雷光タックル (仮名)の回避に成功した。そういや今やたらとネタに上げられるレールガンだが、アレは確か二本のレールに電気だか何だかを流して、その中央に生まれたエネルギーを利用して弾を打ち出す兵器……だったような。単体が電撃を纏って突っ込んでくるのはレールガンとは言わないだろう……って、そんなツッコミを入れている場合じゃなかった。

 矢を番え、《風塵の矢》を発動してからバッファローの王に向かって自分は矢を放つ。だが、バッファローの王が纏っている電撃に振れた途端にバチィン! と音を立てて矢自体が破壊された。おいおい、アレは電磁シールドみたいな一面もあるのかい!?

「側近が倒されたから、向こうも奥の手を出して来たって事か。そして矢が弾かれるとなると……魔法による攻撃しか通じないのか?」

 自分の考えた事と、地上で戦っているプレイヤーの皆さんは同じ事を考えたようだ。だが、さらにその一歩先の事を考えたプレイヤーがいた。

「水属性の攻撃魔法を試しましょう! もしかしたら纏っている電撃が漏電を引き起こしてバッファローの王を自爆させられるかもしれないわ!」

 この声はノーラだな。彼女も短剣で戦うと同時に水魔法が使える魔法剣士……いや、魔法盗賊だったな。普段は支援目的の魔法を使う事が多い彼女だが、水魔法にだって当然ながら攻撃呪文はある。ならばそれを試すのは当然の事と言えた。

 バッファローの王が再び突進を仕掛けて来るが、ここでレイジが捨て身の行動に出た。《シールドチャージ》で真っ向からバッファローの王と正面からぶつかる事で動きを一瞬だが止める事に成功したのだ。そんな無茶をしたレイジは重装備であるにも拘らず吹き飛ばされて地面に転がる。すぐに起き上ってこれない事からスタンしたのかも知れない。

「今だ!!」

 誰かがそう叫ぶ。レイジの捨て身による行動により、動きを止めたバッファローの王に向かって《アクアボム》! 《ウォーターシュート》! 《スプラッシュカノン》! などなど、水属性の魔法が次々と降り注ぐ。だが、体勢を素早く立て直したバッファローの王はその飛んでくる水魔法を次々と回避。だが、回避するという事はノーラの読みは間違っていないという事の裏付けでもある。問題がないのであればお構いなしに突っ込んでくるはずだからだ。

「そのまま水魔法をばら撒け! 奴が必死に避けるという事は効果があるってことだ!」

 そんな声も上がる。くそ、ここで強化オイルが残っていればばら撒いて逃げ道を制限することもできるのに……今回はもう使い切っている。一応何回か矢を放ってみるが、やはり矢はバッファローの王が纏っている電撃に触れるとはじき返されてダメージを与えている様子はない。やはり水魔法であの電撃を剥がさないと有効打は与える事が難しいか。自分はアクアにお願いして、水魔法による攻撃に加勢してもらった。だが、それでもバッファローの王はホーミングしてくる魔法、直線攻撃する水魔法を未だに被弾せず避け続ける。

「魔法を打つことだけに夢中になるな! 距離が離れ始めているってことは突進のための助走距離が生まれているんだ! 油断していると突っ込んでくるぞ! 水魔法が使えるメンツがやられたらこっちの負けになっちまう!!」

 そんな警告も飛び交う。そう、このバッファローの王が纏っている電撃を解除できる可能性が一番高いのは水魔法だろう。だからこそバッファローの王はここまで水魔法による攻撃を必死で回避している訳だし。だが、どうしても相手が回避に専念している……と思い込むだけの時間があった為に、プレイヤー全体に無意識の油断が生じていた。

 ダン! ダン! とそれまで巨体に見合わぬ回避行為を続けていたバッファローの王は突如、プレイヤーの集団に向かって突進攻撃を仕掛けてきた。その突進の軌道は……なんと、水魔法を放っていた面子の大半を一直線に薙ぎ払える軌道だったのだ。つまりは、回避をしながら一直線上に水魔法使いが並ぶようにと誘われていたことになる。

(なんだと!?)

 その軌道を上空に居るがゆえに良く見えていた自分は青ざめた。数人がかりで水属性の魔法を放っているのに、回避しきってしまうバッファローの王。水属性魔法はどうしても液体を飛ばすという面から弾速がやや落ちる面はあるとはいえ、ここまでデカい体を当てないように立ち回るのは並大抵のことではない。その上こんな風に相手をコントロールすることができるとは……猪突猛進な力だけの王ではなく、知略も兼ね備えていたという事か。だが、それに気がつくのが遅すぎた! 突進に気がついたタンクタイプのプレイヤーがカバーに入ろうとするが間に合わない!

「ぐあ!」「きゃ!」「しまっ……」

 次々と跳ね飛ばされる水魔法が使えるプレイヤー。プレイヤーとバッファローの王がぶつかるたびにバジッ! バチィン! と雷光と共に音が鳴り響き、その体を砕いてゆく。何とか阻止しようと槍を突き立てるプレイヤーも当然いたが、逆にバッファローの王が纏っている雷光によって反撃を受けてしまい、倒れこんでしまう。

「うぐっ!!」

 そしてそのバッファローの王が最後に突進攻撃を仕掛けたのはノーラだった。一番最後に体当たりを受けたために勢いが弱まっていたのか、突進を受けたノーラは即死せず、弾き飛ばされる事も無く堪えていた。しかし、決して軽くはないダメージをノーラが負ったことは間違いないだろう。だが、突進を受けて地面に倒れこむと思われたノーラはバッファローの王の角を掴み、とんでもない最後の反撃に出た。

「女を舐めるんじゃないわよっ!」

 なんと、ノーラは電撃によるダメージを受けながらもゼロ距離で水魔術を発動。一番初期の魔法である魔術系のニードルであると思われるその魔法は、詠唱時間が短いというメリットがあった。その水魔法の《ウォーターニードル》がバッファローの王が持つ雷光発生装置である短い方の角に触れた瞬間、ノーラは感電によるダメージを受けたようで死亡した。そしてバッファローの王は、水属性の魔法を受けたことにより感電によるダメージでのたうち回るという大きな隙を晒していた。ノーラが最後に行った攻撃により、千載一遇のチャンスがプレイヤー側にめぐってきたのである。
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ノーラの姐さんの意地。
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