トップ>小説>とあるおっさんのVRMMO活動記
95 / 357
連載

VS氷の結晶団体

しおりを挟む

「さて、ようやくモンスターのお出ましとなるが……見えるか?」

 自分の指さす方向には、氷の結晶体が幕の中に多数浮いているあのモンスターが多数いる。こうやって見ている分には奇麗なんだがな〜。

「キラキラしてるな。ずいぶんと奇麗なモンスターだが……」

 レイジもそんな感想を持ったらしい。SSを取ってる人もいるな。

「アース、あのモンスターと戦ってきた経験から注意してほしい事はあるか?」

 ツヴァイがそう話を振ってきたので、今まで戦って分かっている事……結晶の耐久自体は低い、ただし再生能力がある。魔法攻撃は今まで一回も試していないのでどうなるかわからない。結晶が放ってくる水の弾に当たると一気に体が凍り付いてしまうので、避けるか武器や盾手で受けて直撃を貰わないように……といった情報を提供する。そして緊急時には筒を握りつぶす事で無理やり溶かす事ができる点も伝えた。

「魔法攻撃を行った時の挙動が不明、か。ちょっと厄介ね。そして私の水魔法は通じないと……相性が悪いわねぇ」

 こちらの情報を聞いたノーラが、うーんと悩んでいる様子だ。

「あの張っている膜が、あくまで結晶達が散らばらないようにしているだけの壁なのか、魔法に関して何らかの耐性か反撃能力を持っているのかは全く分からない。魔法を主軸にしているミリーとエリザは特に注意してほしい。最悪反射されるかもしれないから、いきなり高位魔法を使わない方が良いと思う」

 あの膜に関しては全く情報がないからな。Wikiにも一切情報がないモンスターだから、手持ちの情報だけでやりくりするしかない。

「覚えておきますわ。確かに魔法を反射してくるというモンスターが居てもおかしくありませんものね、この世界は」

 すっかりワンモアの悪意に慣れた様子のエリザが頷きながら返答する。まあ今までこの世界を旅してくれば、それなりの経験は積んで来ているよな。

「とりあえず、一当てするしかありませんね。あの冷たい風を二回も必死で超えてきたんです。それなりの結果を出せないと面白くないですし」

 カザミネの言葉に頷く一同。こうしてようやくモンスターとの戦闘が始められることになった。


「とりあえず魔法が効くかどうかを真っ先に確かめたいですので、私とエリザちゃんが先手を取りますね〜」

 との要請が出たので、最初の一手をお任せすることにした。ミリーが火の初級魔法を、エリザが光の初級魔法を選択して放つことにしたようだ。攻撃が当たってやってきたらすぐさまレイジが挑発アーツを使ってひきつける事になっている。詠唱が終わり、魔法を放つ二人。その結果は……火の魔法は反射され、光の魔法はある程度通ったらしい。氷の結晶が二つほど貫かれて消えたのを確認した。

「ミリーさん、危ないです!」

 跳ね返されてきた火の魔法を、カザミネがミリーの前に立って大太刀の一振りで切り裂くことで消し去る。今回のカザミネは魔剣の属性が氷であり、相性が最悪なので以前使っていた大太刀で参加している。さて、氷の結晶団体モンスターは数を減らされたことで狙いをエリザに定めたらしく、エリザの居る方向に向かって突っ込んでくる。

「お前の相手は俺だぞ! こっちに来い!」

 当然そこに割って入るレイジ。そして挑発アーツを用いて結晶団体たちの狙いを自分に引き寄せる。この間にミリーとエリザは少し後ろに下がって間合いを取った。狙いがレイジに完全に向いたことを確認してから自分とツヴァイが攻撃に参加する。

「魔法は跳ね返すらしいが、魔剣ならそうはいかないだろ!」

 燃える魔剣を振るって、ツヴァイが氷の結晶達に斬りかかる。炎の魔剣は膜の妨害をものともせずに通過し、氷の結晶を一振りで複数切り裂く。確かに跳ね返せるのは火の魔法だけの様だな。魔剣を拒絶するだけの力まではさすがに無いようだ。

「くっ、ツヴァイ、調子に乗りすぎるな! この近距離ではこいつらが撃ってくる水魔法の連射攻撃を回避しきれん! お前が狙われたらあっという間に氷像にされてしまうぞ!」

 その一方で、攻撃を引き受けているレイジの盾はあちこちが凍り付いていた。時々盾を軽く揺すって張り付いた氷を落としているレイジだが、防御に専念する形になっており片手斧を振るえていない。確かにこのままでは、挑発アーツを使っているとしてもいつまでもひきつけておく事は難しいだろう。防御に専念せざるを得ないレイジに対するヘイトよりも、攻撃を続けているツヴァイの方がヘイトが高くなりやすい。ヘイトの順位が変われば、今度はレイジではなくツヴァイが狙われることになる。

「そうならないために早目にかたをつけたいんだが……やっぱり数が減ると当てにくいことこの上ない!」

 当然自分も惑を振るって攻撃を行っているが……膜の中の結晶残存数が五を切るととたんに当てられなくなる。ツヴァイの大剣も細かく動く相手には上手く当たらない。攻撃が止まったので反撃に転じたレイジも片手斧を振るうが、こちらも空を切る。ノーラも短剣を次々と突き立てているが、クリーンヒットさせることができずにいる。そんな中で大活躍しているのがカザミネだ。

「そこです!」

 大太刀を構えての突き攻撃で数が少なくなって激しく動き回る結晶体をさっきの一撃でもう三体目を仕留めている。残り二となった結晶体はより激しく動き回り、他の結晶が復活するまで粘るつもりの様だ。

「そこです! ああもう、あとちょっとなのに当たりませんわ!」「光魔法の速さでもなかなか当たりませんね〜、こちらの狙っている場所を読まれているんでしょうか〜?」

 魔法使いの二人は反射されないことが判明した光魔法による攻撃で攻撃に参加しているが、数が減ると魔法でもなかなか当てられない様だ。ホーミング性のある魔法では振り切られて絶対に当てられないので、直線的に攻撃する細いレーザーみたいな光魔法で結晶体を狙い撃っているのだが……当たらない。

「見えました、そこ!」

 またしてもカザミネが結晶体を捕える。残り一。必死で回避行動を取る最後の氷の結晶。ここから立ち直られてはたまらないと攻撃を振るう自分達だが、ことごとく空を切る。その最後の結晶に止めを刺したのは……

「ここかしら〜? あ、当たりましたね〜」

 ミリーだった。のほほんとした言葉遣いとは裏腹に、しっかりと狙いを定めていたようだ。これで初めて道具に頼らないで撃破できたことになる。それにしても数人がかりで取り囲んでやっとか……的が削るごとに小さくなるから、最後の方は本当にきついな。

「序盤はいいが、後半は本当に面倒くさい相手だな……」

 盾をおろし、片手斧を腰に戻したレイジがぼそりとつぶやく。

「ですが、経験は美味しいようですよ。大太刀のスキルが一つ上がっていますし」

 カザミネの言葉にツヴァイも「おお、俺も大剣のスキルが上がってるな!」と喜ぶ声を出し、エリザも「私も光魔法が上がっていますわ」と報告する。面倒なだけあってかなりの経験になるモンスターだからな。今回の自分は何も上がっていないが、それはまあ仕方がない。結晶を破壊した数は三つぐらいだったし。

「それにしても、カザミネの突きによる攻撃の正確性はすごいな。自分が挑んだときは結晶の残りが五つ以下になるとほとんど攻撃を当てられなくなるのに、カザミネは次々と確実に貫いていたしな」

 今回一番驚いたというか賞賛したかったのはそこだ。カザミネの大太刀を用いた突き攻撃は、高速で飛び回る氷の結晶体を確実に一突き一突きで仕留めて行った。

「刀……まあこのゲームでは大きい大太刀なんですが、力任せでは切れないんですよ。技を磨かないといけないのは現実と同じなんです。その技を磨く方法の一つに、精神を集中して突きを繰り出すという行動をする大太刀使い限定で入れる隠しっぽい修練場がとある場所にあるんです。そこでの経験が今回は生きましたね」

 なるほど、そんな場所があるのか。自分は大太刀使いではないから知らないだけって事か。おそらく以前入った砂龍さまの修練場みたいな感じなんだろう。

「それにしても、火魔法がそのままこちら側に跳ね返されちゃうのは困りましたね〜」

 これは魔法使いのミリーの言葉。確かに魔法が反射されたのにはびっくりした。カザミネが反射されてきた魔法を切ってくれてよかったよ。そして、二人とも光の魔法が使えたから攻撃に参加できたのは助かったが。

「一番活躍できなかったのはなかったのはあたしよね……短剣であれだけ乱れ突きしたのに当たらないなんて……あの膜のせいで、短剣の刃部分しか結晶を追えないのが辛いわ。あの膜は刃物の刃部分しか通さないみたいだし」

 という事で、かなりノーラにとってもきつい相手らしい。そしてこうなるとこの場にはいないが格闘家であるロナに取っては最悪の相手だ。打撃ではあの膜を貫けない可能性が非常に高いのだから。

「とはいえ、もうしばらくやっていこうぜ? せっかくここまで来たんだしよ」

 ツヴァイの言う事ももっともだ。さて、狩りを再開しようか。
しおりを挟む