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連載

惑の本領

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初校がひとまず纏まったので更新再開です。でも、まだ作業は終わりじゃないので再校が始まったらまた一時的に止まります。
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「うーむ、どうにもイマイチピリッとしないな」

 そしてスネーク・ソードの修練を重視してから数日が経過した。いつも同じところでやっているので、狩りに出かける獣人の皆さんからは「お、兄ちゃん今日もやってるな!」と声を掛けられる。まあ石を投げてもらってスネークソードで砕き続ける訓練を同じ場所で何度も続けて居ればそう言われるようになるのも無理はない、な。

 そして肝心の修練成果の方だが、少しは良くなった程度というのが正確なところだろう。数日訓練を続けていたからそれなりに石に当たるようになってきているが、それでも完全に貫くクリーンヒットは未だ少ない。このレベルでは、数が減って動きが速くなった氷の結晶を取らえることはできないだろう。まぐれあたりに期待するレベルから抜け出したとは言えないという評価を下さざるを得ない。

(とはいえ、さすがにある程度はましになってきたか。このまま少しずつスネーク・ソードの腕を上げていくしかないな)

 アクアに投げてもらった石を惑で攻撃しながらそう自分は考えていたが、そこにイラつきを隠すつもりが全くない声が聞こえてくる。

『いつまで気がつかないの? 貴方は今までの経験を活かすつもりはないの?』

 指輪に居るクィーンの分身の声だ。イラついているのは名前がまだ決まっていないからかも知れない……適切な名前が浮かばないんだよな。どうにもありきたりの名前ばっかりになってしまう。いや、今はそんなことはどうでもいいか。

「経験を活かすつもりがない、とはどういう意味かな?」

 指輪に向かってそう問いかけた所、返答としてこんな言葉が返ってきた。

『そのままの意味よ。なんで魔法的な能力を持つ武器と付き合うのが最初ではないのにその性能を引き出さないの? いつ気がつくのか黙って見守るつもりだったけれど、このままじゃこの世界が終わっても気がつきそうにないから教えるわ。

 貴方の以前使っていた双咆、だったかしら? アレと同じよ。貴方の精神力を少し魔剣に吸わせてあげなさい。そうすればその剣は貴方の要望に応えてくれるわよ。そう、それこそ一般的なスネーク・ソードとは全く別の動きができるようになるわよ? 凝り固まった常識を捨てなさい、常識に縛られ続ける者は決して上の世界に登る事はないのだから』

 む、そうなのか? いまはもうサクリファイス・ボウを発動して犠牲にしたために砕けて消えてしまった双咆だが、あれと同じ一面がこの惑にもあると言うのか。精神力、つまりMPを捧げればそれに応じた性能を発揮する、と。双咆の場合はより強く弓を引けるようになって威力が爆発的に増したが、惑はどうなんだろうか? とにかく一度試してみるとしよう。

「アクア、次をお願い! 惑、こんな動きはできるか!?」

 アクアに数個同時に石を投げてもらい、惑には今までと違って漫画などに出て来る稲妻のようなジグザグ動く様なイメージをMPを注ぐと同時に送り込んでみた。刃が連接しているのだから、そんな動きはスネーク・ソードでは不可能なはず……が、自分からMPを受け取った惑はその刃を完全な闇に変えて、関節部分などが大きく曲がるはずのない常識をすべてぶち壊して次々と直角に曲がりながらアクアが空中に投げた石を追いかけ、次々と粉砕する。

「でき、た?」

 惑の刃を戻すと、闇化が終わっていつも通りの刃に戻る。試しにそのままの状態で先程のイメージだけを送ってみるが刃が曲がらず失敗する。MPを送らないと、一般的なスネーク・ソードと同じ動きしかできない様だ。

『出来たわね。特殊な材料で作った武器や、魔剣に精神を注ぐ事で一時的に能力を全開放できるって事はこれで分かってもらえたわね? まず言ってしまうけど、貴方には先日同行したカザミネという男の人が放っていたあの鋭い一撃を完全な形で身に付けるのはほぼ無理よ。

 アレは一芸に秀でた人が修練に修練を重ねて到達する場所、貴方のように複数の事をやる人では決して届かないわ。だからこそ貴方は手持ちの札の性能をちゃんと理解する必要があるわ。同じ道ではなく、別の道で目的の場所に達する必要があるのよ。それは貴方も解っている事のはず』

 それはごもっともな話だ。とは言え分身から提案されたこの修練自体は無駄にはなっていないと思う。スキルレベルも1上がってるし、スネーク・ソードの扱いもプレイヤースキルレベル的な意味でも上がっているはずだから。

『もちろん私が提案して今までやってきた修練を否定するつもりはないわよ、そこは勘違いしないでね。そう言った修練をしながら、さらに一歩進んだ修練をしなさいって事だからね?』

 確かに、このMPを注いだ惑の動きは今までのスネーク・ソードの動きの常識に囚われていては本領を発揮させることはできないだろう。こっちも修練が必要だな。って、ちょっと待てよ?

「もしかして、ツヴァイやカザミネが持っている魔剣や、レイジやカナさんが身に付けている魔防具にもMPを注げば発動する性能があるのか?」

 自分が持っている惑だけが特別という事はないだろう。だが、そんな自分に呆れたような返答を返すクィーンの幻影。

『何言ってるのよ、すでに彼らは魔剣その物に宿っている能力を使いこなしているのが私にはわかっていたわよ。たとえを出すなら火の魔剣を使うツヴァイ、だったかしら? 彼の持つ魔剣が相手をたたき切る時に温度が急上昇している事に気がついたしね。その制御は僅かな精神力の消費で大きな成果を出す見事な物だったわ。

 貴方は伸ばして引っかけたりカウンター技を発動出来たりと言った魔剣の持つ能力面にとらわれ過ぎて、魔剣その物に精神力を注いで魔剣その物の力を上げる所に気がつかなかったのは迂闊だわ。ましてや貴方は弓でそれを一度事前に学んでいたのだから尚更ね』

 ありゃ、そうだったのか。戦闘に必死で気がついてなかったが、すでにツヴァイ達はその力に気がついて使用していたのか。これはクィーンの分身が言うように迂闊だったな。そう言った可能性があるという事を、もっと早く考えて積極的に試すべきだったんだ。

「でも、まだ遅いわけではないね。気がついたのならば、それをこれからの戦いで生かせるようにしていけば良いだけだし」

 惑を構えなおしつつ気合いを入れる。惑にあった能力を使わずに振り回してきたという事は、今まで鞘の中に剣を収めたまま殴りつけていたような一面があったという事にもなるのだろう。ならば、その鞘から剣を抜いてみよう。

「ぴゅい? ぴゅい?」

 そろそろ次を投げていい〜? と言った感じのアクアの声に、自分は頷くことで答えた。いくつかの石を嘴で加えてぽいっと無造作に投げるアクア。よし、常識に囚われて居てはいけないというのならアニメなどにあるあれを試してみるか。

 惑にMPを全体の二割ほど吸わせてからイメージを固めて石に狙いをつけて振りかざす。イメージしたのは、ワープホールを何度も経由しながら石を貫いていく惑の姿。攻撃が空間を飛び越えるという、ボスが使ってきそうな技である。

「む、だめか」

 だが、その試みは不完全で終わる。ワープホールこそ出なかったが、完全に闇化した惑の刃は途中から消えて最初に狙いをつけた石を真上から貫いた。だがそこから先の発展はなく、刃が戻ってきて普段の姿に戻ってしまった。

 二、三回試したが結果は同じであり、どうやら連続してのワープはできない様だ。もしくは注いだMPが足りないだけかも知れないが。だが、MPをこれ以上注いでしまうと他の行動に差しさわりが出てしまうからな……今はこれで良しとしておくか。

 だが、この切っ先のワープはダーク・チェインのアーツである《サドンデス》との相性が抜群すぎるな。両方を発動すると一気に五割近いMPがふっ飛ぶことになってしまうが、相手の弱点近くに刃の先をワープさせて、ざっくりと貫くことが可能になった訳だ。

 が、即死させられないとこちらのMPが一気に五割近くふっ飛んでいるのだから厳しい事になりそうだ。一種の博打に近い行為だから多用はできないな。それに切先が見えない事で、別の角度から狙われている事がばれるから初見の相手にしか不意打ち効果がないな。カンが良い人なら一発で見抜くだろうし。

『きっかけさえあれば、一気にふざけた事をやれるのね。まあいいわ、その調子で頑張れば精神力を注いでない状態のスネーク・ソードの扱いも自然と上がるはずよ』

 一般的な武器とは違い、伸ばして叩くという扱い方をするスネーク・ソードだからどう攻撃するかのイメージはかなり大事になってくる。そのイメージが鍛えられるという事になるのだろう。これからの修練は、MPを注ぐ時と注がない時の訓練を交互にやろうか。MPを注ぐ量も微量に止めて回数をこなそう。

 この石割り訓練はもうちょっと続きそうだが、一つ新しい事が見つかればやる気もでる。付き合ってくれるアクアのためにも、もっとはっきりとした訓練結果が出せるようになりたい所だな。
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最近、他の人には見えにくい部分(鼻の中とかね)に白い毛が混ざっているのがショック。書籍化が始まったこの一年でちらほら見られるようになったんですよね……

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv46 小盾Lv31 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv80 ダーク・チェインLv34 ↑1UP 義賊頭Lv28 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.82

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 26

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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