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連載

魔剣とは? その2

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「うーん、つまり魔剣とは偶然が重なってできる一種の奇跡の産物に近いような存在という事ですか?」

 お茶を飲みながら一休みした後に、カザミネがそう口を開いてケティさんに確認を取る。

「俺はとしては2番目の魔物生成説だっけか? それが一番わかりやすかったな。実際俺やカザミネの持っている魔剣は馬鹿みたいにでっかいワームを倒した時に手に入った剣だしな」

 ツヴァイがそう感想を述べる。確かに冒険者をやっているプレイヤーからしてみれば、2番目の魔物生成説が一番なじみ深い事になるだろう。すべての説が正しかったと仮定しても、実際に目にできる可能性が一番高いのは2番目なのだから。最前線のトッププレイヤーならば1番目を見られる可能性があるかもだが。

「そうでしたか。確かに冒険者として行動なさっている皆さんは2番目の説に遭遇する可能性が高いですからね。私個人としては、1番目の方も確認したいのですけど……」

 と、ケティさん。そういえば自分の魔剣である惑はどうなんだろう? 譲られた形になっているからどれに属するのやら……っと、それよりも一つ聞いておかないといけない事があるな。

「ええと、今までの話を聞いたうえでケティさんに質問があります。この魔剣の話をするのに、外では都合が悪かった理由は何だったのでしょうか?」

 わざわざ家に招いてまで話すような内容かどうかと考えると……貴重な情報ではあったことは事実だが、まだ外で話す事が出来ないような内容ではない気もする。そんな自分の質問を受けたケティさんは自分をゆっくりと見据えてから口を開いた。

「その理由ですが、まずこれは間違いないと完全に裏を取れた話ではないからです。研究者として、不確定の話をむやみやたらと広げるのは良い事ではありませんから。今までお話しした内容も、いくつもの本や資料などから得た情報を継ぎ合せてこうだったのではないか? という予測の範疇をまだ完全に脱してはいない面が多いのです」

 ふむ。確かに最初にあやふやな面があると念押しされたが、それを不確定多数にばら撒くのを良しとしないからか。確かに研究者にとって、間違った考えを一般の人々に流すのは恥だろうし。

「そして、ここからまだ先があるのです。これから先が特に不特定多数の耳に入れたくない話になる……のですが、すでにこれからの話に該当する方がこの場に二人もいらっしゃったので、私の家まで来て頂いた訳でして」

 なんか嫌な予感が。面倒なことにならなければいいけど……それでもしっかりと聞いておかないとならないが。

「実は魔剣の最大の特徴とされているのが……『主人を鞘とする』特性です」

 ほえ? どゆことだ?

「魔剣にはある程度の意思があるようで、魔剣が使い手を認めて主人とすると大きく変化が起きます。その最大の特徴が主人を鞘として、体内に潜り込むことにあります」

 潜り込むって。その言葉を聞いたとたん、ガタン! と音を立てながら立ち上がったのはツヴァイだ。

「ち、ちょっと待ってくれ!? じゃあ何か? このままこいつを使い続けたら、俺はこいつに体を乗っ取られるって事か? 鞘とするって事は魔剣のイレモノにさせられるって事だろ!?」

 確かにそうともとれるな。その辺はどうなんだろう……そんな疑問を視線によってケティさんに送る。

「落ち着いてください。魔剣が貴方の体を乗っ取るという意味ではありませんから。そもそもそんな危険性が魔剣にあるのならば、即座に破棄するようにその場で言っていますよ。そうではなく、魔剣は主人を得て鞘になってもらわないと本領を発揮することができないのです。何せ魔剣は魔法その物ですから、むやみやたらと力を発揮すると魔力その物が失われてしまい、魔力が多く失われれば魔剣の存在自体がふっと幻のように立ち消えてしまうのです」

 乗っ取られるわけではないのか。それが分かって一安心だ。って、いま大事な事をさらっと言われたな。つまり、剣に違和感を感じている二人……自分とツヴァイの持っているのは『魔導剣』ではなく、本物の魔剣であるとケティさんに宣言されたことになるな。が、ここは横やりを入れずにケティさんの説明を受けよう。質問は後からでもできる。ツヴァイも落ち着きを取り戻して着席し直したところでケティさんの話が続く。

「誤解を招いたようで申し訳ありません。繰り返しますが、魔剣に意思があるとはいってもそれは私達のような人格があるという意味ではありません。魔剣を悪用して多大な被害を起こさないか? 主人にふさわしいか? そう言ったことを本能に近い形で感じ取るぐらいのようです。話の続きとなりますが、主人を見つけて鞘になってもらった魔剣は主人から魔力を提供してもらえるようになるために本当の姿を見せます。また、鞘となってもらった主人にいくつかの魔剣を振るう事によって使える技能を授けるとも言われています」

 魔剣は魔法そのものという言葉を信ずるとなると、魔剣の鞘になった主人は新しい力を取り込んだことによって特殊な技術や魔法を使う事が出来るようになるという考えで良いのだろうな。

「また、魔剣関連の魔法は主人の成長方針に干渉しないという一面があります。つまり、前衛を務めるために必要な筋力や体力が魔剣の魔法を覚えたからそちらに引っ張られて弱体化してしまうようなことは無いという訳です」

 それは……とんでもない情報だな。過去に発表されたが、複数の属性を持つスキルを習得すると上限が下がるシステムになっているのがワンモアだ。だが、そのシステムを魔剣は完全に無視することになるぞ。

「そして先程の一言が、ここにお連れした理由となります。一流の戦士でありながら強力な魔法も扱う。多くの者が憧れる姿ですが、普通は肉体と精神の限界がありますから絶対に叶いません。ですが、そこに魔剣という要素が入ることでその叶わぬ夢であるはずの姿を可能にすると知れ渡ったらどうなるでしょう?」

 ──奪う、盗む……そう言った手段を用いてでも真の魔剣を手に入れたいと願う人はとてつもなく増加するだろうな。それはプレイヤーだけではなく、ワンモア世界の住人にも当てはまる。そしてプレイヤーキラーシステム、つまりプレイヤー同士の無差別殺人は許されていないが、ワンモア世界の住人とはその限りではない。実際今までに戦争もあったし、〈義賊頭〉としてワンモア世界の住人に攻撃を仕掛けた事は今までに何度もある。

「確かに、この話を外で気軽に話て情報をばら撒く訳には行きませんね。アースさんやうちのギルマスが不特定多数に襲われる可能性が跳ね上がってしまいます」

 カザミネの言葉に自分も同意する。一本の剣の有無で世界が変わるのならば、当然手に入れたいと願うのが人だからな。こんな情報が知れ渡ったら、魔剣を手に入れようとする連中を止める為に走り回ることになる可能性が高くなる為に〈義賊頭〉としての仕事がパンクしてしまうよ。それは勘弁願いたい。

「さらに付け加えるのであれば、魔剣が主人として認めた人の体内に潜り込むと、もう魔剣の主人となった人を殺しても魔剣を取り出して自分のものにする事はできなくなります。純粋な魔剣の数が増えない最大の理由ですね。魔剣が生まれても、そうして消費されてしまうのですから」

 そんな一面も魔剣にはあるのか。色々と面倒くさいな。

「つまり俺やアースが持っている魔剣がケティさんの言う真の魔剣であって、それを他人に知られないように注意しながら取り込みなさい、と言う事になるか?」

 ツヴァイの確認するような言葉に、ケティさんは無言に頷く。その返答にツヴァイがうわぁという声を上げる。ついでに顔もマジかよ……と言わんばかりの渋い顔だ。

「まさか、本当の魔剣の持ち主を短期間に二人も見る事になるとは思いませんでした。そちらの方……アースさんの剣を見たときにはもしかしてと思い、魔剣の目覚めを促すために痛風の洞窟をお勧めしたのですが……予想以上の展開になってしまい、私も正直に申し上げると困惑しています」

 腰に下げている剣は、どでかい爆弾だったって事になるのか。頭が痛い。

「ちなみに……魔剣が本領を発揮するようになるとどうなるんです?」

 カザミネの言葉に、ケティさんは即座に一言で「解りません」と返答を返す。その言葉にカザミネは「どういうことですか?」と問いかけるが、ケティさんの返答は変わらない。

「本当に分からないのです。どうにもあやふやな記述しか残っていない事もありますが、完全に操れる攻撃性能を持った水になったとか、はるかに大きな大剣に変わったとか一貫性が全くないんです。魔剣の主人として認められて、その本当の姿を見るまで一切不明です。申し訳ありません」

 との事。惑の本領発揮か……見てみたいような恐ろしいような。
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