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連載

アースの行動とブルーカラーの方針

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 翌日ログインして出発するための身支度を整えていると、早速義賊リーダーが目の前に現れた。

「親分、お待ちしておりやした。お伝えしたい報告がありやす」

 自分は頷くことで報告を聞く意思を伝え、その先を促す。

「では、報告を始めさせていただきやす。親分の魔剣の方はあまり知れ渡っておりやせん。親分が常時外套を身に付けているという事もありやして、知られる機会が少なかったんだと思いやす。ですが、親分のご友人の方は……単独行動をしている奴だけではなく、それなりの規模がある集団に目をつけられておりやした。大雑把にいえば二十ほどで……」

 その報告を聞いた自分は右手を顔に当ててううむとうなり声を出してしまう。幾らなんでも敵の数が多すぎるぞ、これではツヴァイを護れるかどうか……状況は厳しいと言わざるを得ないだろう。

「ですが、その大半はすでにご友人の魔剣を奪い取ろうと考える行為から完全に手を引いておりやす」

 そう考えだした自分の思考を、義賊リーダーが止める。大半が手を引いた? 何故だ?

「親分、あっしらは義賊の一団の中でもそれなりに名が売れておりやす。義賊の一団は他にもいくつかあるようですがね、あっしらは活動期間も長い上にそれなりの活動もしてきてやすから。それに少し前の南街であったラウガの一件が原因で名が大きく売れやした。あっしらと直接諍いを起こすぐらいなら、手を引いた方がマシだという連中が一斉に手を引いたんですな」

 ふむ、そうなのか。まあ敵が減るのはありがたい。あの戦いは大変だったが、こんな形で見返りを得る事になるとはな。

「そしてさらに、あのラウガの一件で共闘した怪盗の一団と忍者の一団が今回は協力を申し出てきやした。怪盗側は『戦い続けている戦士の武器を巻き上げるのは、主義に反する。我々が盗むのは汚い儲けで得たお宝を後生大事にしまっておく金持ちなどからだ』などと言っておりやした。そして忍者側は『貴殿らのおかげで任務失敗という汚名を回避できた恩を返す』との事で、へえ。そして怪盗側からは情報を、忍者側からは今後の防衛における協力を得られやした」

 これはありがたい話だ。敵対せずに済むだけではなく、協力してもらえるとは嬉しい誤算だ。怪盗コミュニティの力で情報を得たからこそ二十もの集団がツヴァイの魔剣を狙っているという情報が入り、こちらが動いたという情報を流してもらえたから手を引かせることができたという事になるのだろう。そして諦めていない連中に対処するのに、忍者コミュニティの協力を得られるのはありがたい。戦闘能力、不意打ち能力などは忍者の方が上だからな。

「そして、忍者一団の代表が親分に会いたいと言ってきてやす。どうしやす?」

 ここは一度会っておく方が良いだろうな。会うという意思を伝えた所、すぐさま上から二人の忍び装束に身を包んだ二人が下りてきた。その二人はすぐさま片膝立ちの姿になり、こちらに一礼する。そうして片方の忍者がしゃべり始めた。

「以前は世話になりました。貴方様のおかげで私は命を拾いました。此度の一件は、決着がつくまで私達が貴方様のご友人をお守りさせていただきます」

 ──命を拾ったという事は、あの時のくノ一か。アレは全員ががんばったからこその結果であって、自分達がいたからという訳ではないと思うが……そんな事を一々まぜっかえす事も無い。協力してくれるというのだから、ここはありがたくその申し出を受け取っておく方が良い。

「忍者の皆様による協力の申し出に感謝する。どれだけ時間がかかるかは分からないが、こちらの知り合いは搦め手にはあまり強くない。そちらの申し出が無ければ厳しい展開になっていただろうが……これで護れる可能性は大きく上がった。ツヴァイの魔剣を狙う連中の排除、よろしく頼む」

 自分の言葉を聞いた忍者二人はこくりと頷いた後に姿を消した。早速ツヴァイの護衛を始めたのだろう。ツヴァイには盗賊系統の技術がない事は知っているから、忍者達の動きがばれることは無いだろう。万が一気が付く可能性があるのはノーラだが……忍者達はツヴァイと争うことは無いのだから、問題はない。

「親分、あっしらも個別に親分のご友人の護衛と魔剣を狙っている連中の情報を収集いたしやす。個人でご友人の魔剣を狙っている奴もおりやすからね。また新しい事が分かり次第報告に参上させていただきやす。では」

 そう言い残して義賊リーダーも姿を消した。今回の一件が終わったらそれなりの報酬を弾んでやらないと。さてと、とりあえずこれでツヴァイの魔剣を護る算段はそれなりについたかな。こちらの部下と忍者コミュニティの代表による護衛、怪盗コミュニティによる情報提供。状況は当初の予定に比べて格段に良くなっている。寄り道や回り道、いろいろなごたごたがあったが、それらは無駄ではなかった。今こうして友人を護る事が出来るのだから。そのように考えを纏めていると、個室のドアがノックされた。

「おーいアース、いるかー?」

 ツヴァイか。〈盗賊頭〉としての思考をしまい込んでから返答を返す。

「ああ、今すぐ出る!」

 一言告げてからドアを開ける。ドアを開けるとツヴァイを始めとして、ミリー、レイジ、ロナの三人がいた。手を上げて軽い挨拶をして来たレイジやロナに、こちらも手を開けて挨拶を返す。

「とりあえず、こっちの大部屋に来てくれ。昨日の事を話し合おうと思ってな」

 このツヴァイの言葉に了解と返事を返してから、ツヴァイ達が借りている宿屋の大部屋に移動する。ツヴァイが単独行動をしていないのは、襲撃を警戒しているのだろう。大部屋の中に居れてもらい、ブルーカラーのいつもの面子が集合したところで、昨日の話をツヴァイが行う。自分とカザミネはツヴァイの話からこぼれた部分を補足する。そうして話が終わった後に、ノーラがやれやれと言った感じで感想を言ってきた。

「まさかあの時に手に入れた武器がそんな御大層な物だったとはねー。でも、そんな人の物を奪い取ろうとしてくる泥棒連中なら容赦なくブッ飛ばしちゃいましょう」

 などと頼もしいお言葉をいただいた。個人的にはそうなる前に止めたい所なんだけどな。

「とにかくそういう訳だから、俺は魔剣を吸収できるまで単独行動は避ける。アース、お前も普段ソロで行動しているのは分かっているけどよ、今だけは単独行動しない方が良いぜ。メンバーなら貸すからよ」

 このツヴァイの言葉に自分は「そうするよ」と素直に同意。実際は裏で義賊の配下や忍者と協力しているから完全な単独行動ではないのだが、それは言わない。

「それならばここにいる面子で狩りに行けばいいだろう。ツヴァイ、その魔剣は戦いを続けていけば吸収できるようになるんだったよな? だったら積極的に団体行動で狩りに出かけよう」

 これはレイジ。そうだな、奪われるのが怖いからと言って引きこもっていたらいつまでたっても魔剣を吸収することはできない。それにツヴァイがずっと宿屋に引きこもっている姿なんてものも想像できないし。

「そうだな、そうしよう! ここで怯えていたら何にも出来ねえし、ここはあえて攻めの意識で進む事にするぜ!」

 ツヴァイの一言で方針が決まり、皆で一緒に狩りに行く事に。ターゲットは北町の周辺にいるバッファロー達だ。

(さて、積極的にこちらが動くことでツヴァイの魔剣を盗もうと画策している連中がどう動くか……)

 狩りに出かける準備を行っているツヴァイ達を見ながら、心の奥ではそんな事を考えていた。
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