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連載

ブルーカラーとの共同狩り

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「かかってこい、《タウント》!」

 集団行動をしながらの狩りという事で、今自分達は北町の外に出て周辺に居るバッファローを相手に戦っている。こうしてある程度近くで見ると、北に住むバッファローのいかつさがよりハッキリと分かる。でもまあ、相手をしているのがブルーカラーのメインメンバーな訳でして……

「ひとつ!」「ふたつ!」「みっつ!」「猪鹿……」「馬鹿止めろ! いろいろと引っかかる!」

 まあ、こんな声が出る位サクサクに近い感じで狩れている。レイジの盾をバッファローは貫けないし、ツヴァイやカザミネが持つ魔剣はバッファローの皮をやすやすと切り裂く。その上にミリーの魔法や、ノーラの急所狙いの一撃。おまけに自分の弓による攻撃まで入るので、アーツを交えて普通に戦ったらオーバーキルも良い所だ。

 なので、訓練を兼ねて挑発目的のアーツ以外はほとんどだれもが使わず(ミリーも使う魔法のレベルをそこそこで押さえている)、純粋なプレイヤースキルによって戦う方向に切り替えている。

「痛風の洞窟で戦ったあの結晶と比べると、動きが止まって見えますね。おまけにレイジさんがしっかりとモンスターを抑えてくれるのですからこちらとしては楽な物です」

 四匹目のバッファローを倒し、大太刀を鞘に納めながらカザミネがそうつぶやく。確かに、あの洞窟で戦った結晶に比べれば動きは鈍重だ。バッファローの体が大きいから当然と言えば当然なのだが、結晶のスピードにある程度でもなれているとかなり動きが遅いと感じるのは事実だ。

「俺も今回の一件が終わったら痛風の洞窟にしばらく潜るぜ。大剣と大太刀は扱い方が大きく違うのは分かるけどよ、それでも技量の差を見せつけられると悔しいからな」

 ツヴァイがそう言うのも無理はない。少し離れた所から動きを見れるからよくわかるのだが、カザミネの振るう太刀の鋭さが以前と比べて大幅に増した気がする。

「その剣裁き、現実で剣道とかやってたら活かせそうだな」

 とレイジがカザミネに笑顔を浮かべながら言う。そうだな、今日の戦いでは挑発のアーツを使う必要があるレイジ、魔法を使うミリーとノーラ以外はほとんどアーツを使わない自力での戦闘を行っている。VRという自分の体を動かす感覚で戦うゲームシステムなのだから、その動きや経験が現実にも反映される一面はあるはずだ。

「──実は、ワンモアを始める前に伸び悩んでいた現実世界での剣道での動きが……今はかなり良くなってるんです」

 レイジが軽い気持ちで言った一言に対し、カザミネがそうつぶやいた。あれま、剣道を実際にやっている人でしたか。「本当なのか!?」 と思わずレイジが聞き返している。

「実は私のワンモアを始めた理由は『このVRという世界なら、一向に勝てずに伸び悩んでいる剣道に何か新しい道を開くことになるのではないか?』なんです。とことん試合に勝てず、相手の動きを見れず、何をすればいいのかわからなくなりつつあった私は、一縷の望みをかけてこの世界にやってきたんです」

 そういう経緯か。VRだからこそできる戦いを経験すれば、何か新しいものを得られるのではないかという事をカザミネは考えたわけだ。

「そして今は、この世界で得た経験を活かしてあちらで戦うという状態になっていますね。始めはこちらの世界で戦う為に現実世界で覚えた剣道の技術を取り入れながら動いていたのに、今は逆になっています」

 剣道の型が崩れそうな気もするんだが、そこは意識をはっきりと切り替える事で対処しているのかも知れない。

「ワンモアは痛みも再現されていますから、何がいけなかったのかどう攻撃を避けるべきだったのかを考える事が出来たんです。これが唯、ちょっと何かに当たったなーぐらいの感覚しかなかったら、私の技量が伸びることは無かったでしょう。賛否両論の痛み再現ですが、私にとってはプラスだったと言って良いでしょう」

 ゲームなのに痛いのは嫌だという意見は当然あるが……カザミネにとってはその痛みから得る反省と修正が大きく役に立ったという訳なんだな。

「今では、相手の呼吸や動きなどが良く見える様になりましたよ。先ほどのバッファローに限らず、いろんなモンスターやプレイヤーと戦っているうちに身に付いた技術ですね。そのお蔭で負け続けの日常から一気に脱しまして……その反動でどんな訓練をしたんだ!? なんて詰め寄られることも時にはありまして」

 苦笑いを浮かべながら、カザミネは話を締める。考え方は人それぞれだが、ゲームなんかが技術の向上に役立つわけがないという人もいるだろうし……カザミネが話したとしても信じてもらいにくい一面はあるだろう。この世界でカザミネが持っている獲物は大太刀で、現実では竹刀。大きさも重量も全く違う物だからなぁ。

「じゃあ、アースさんがもしアーチェリーなんかをやってたら、記録が伸びているかもしれないですね〜」

 カザミネの話を聞いたミリーの一言に、ブルーカラーのメンバーは「あ、それはあり得るな!」という表情を自分に向けて来る。

「残念だけどやってないなぁ。近くにやれるような場所も無いからねえ」

 自分の言葉を聞いて、ややがっかりしたムードが流れる。仕方がないさ、実際に弓道でもアーチェリーでもいいけどやれる場所なんか近くにないのだから。

「っと、話は一旦お終いだ。次のバッファローを見つけたぞ」

 自分が《危険察知》でバッファローを発見したことを伝えると、全員がすぐさま戦闘態勢に入る。数は……ふむ、単体でいる奴を釣り上げるか。弓を構えてゆっくりと弦を引き絞ってから放つ。放った矢はバッファローの横っ腹に命中。当然頭に来たバッファローはドカドカドカっと荒々しい足音を立てながら自分に向かって突っ込んでくる。よーし、そのままそのままこっちにこい。

「お客さん、こっちだよって事で《パニック・タウント》!」

 挑発アーツが届く範囲に入ったところで、レイジがアーツを発動してターゲットを取る。なお、以前のカナさんが使った《チャーム・タウント》。そして今回レイジが使った《パニック・タウント》の効果をここに来る前に聞いてみた所あっさりと教えてくれた。より相手を強くひきつける挑発アーツである事は言うまでもない事なのだが、それに加えてチャーム側にはかかった相手の攻撃能力を下げる効果が、パニックには防御能力を下げる効果があるとの事。

「そこだ!」

 早速ツヴァイの魔剣がバッファローを切り裂きながら焼くが、バッファローは見向きもしない。混乱に近いレベルで怒り狂わせて注意を引くのが《パニック・タウント》の効果であり、かかったモンスターは回避を防御と言った行動がおろそかになる。《チャーム・タウント》の方は魅了されるがゆえに攻撃される回数がかなり減るらしい。そしてパニックは男性専用、チャームは女性専用の挑発アーツとして設定されている。

「隙だらけですね〜」「背中もがら空きよ!」

 ミリーの魔法やノーラの短剣がバッファローを襲う。にもかかわらずバッファローは《パニック・タウント》によって引きつけられているのでレイジへの攻撃をやめない。このように有用な挑発アーツではあるのだが、最大の欠点としては再使用できるまでの時間がかなり長くなっているらしい。便利なアーツだから仕方がないのだろうが。

 安定したタンカーとしての仕事をレイジが完遂したことにより、今日一番余裕をもってバッファローを倒す事が出来た。優秀なタンカーは本当に頼りになるな。

「ふう、お疲れだ。ツヴァイ、魔剣の様子が変わったらすぐに教えてくれよ。アース、お前さんもな」

 自分も最初の釣り行為以外はできる限り惑を使った戦闘を行っている。使わないと話が進まないからな……そんな感じの狩りを、ブルーカラーのみんなと一週間ほど続けることになった。
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花札が舞うというのは斬新だった気がします。

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv48 ↑1UP 小盾Lv31 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv82 ↑1UP ダーク・チェインLv44
 ↑6UP 義賊頭Lv29 ↑1UP 妖精招来Lv13 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.87

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 26

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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