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連載

魔剣狙いの賊集団、登場

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 そしてブルーカラーのメンバーと同行して一週間が経過した後、翌日ログイン直後の自分の部屋に義賊リーダーがやってきた。

「親分、申し訳ありやせん。状況がかなり変わりやした。とにかく説明させていただきやす」

 何でも義賊リーダーの話では、義賊や忍者達の働きでことごとく邪魔&人員を消された連中が手を組み始めたとの事。そして今日ぐらいに数に任せて押し寄せて、ツヴァイから魔剣を無理やりにでも奪い取るつもりらしい。成程な、向こうもいかに回りの連中を出し抜いてツヴァイから魔剣を盗み出せるかが問題だと思っていたのに、自分の義賊団だけでなく忍者達の横やりも入った事でとうとう周囲と手を組んで魔剣を奪う方向に切り替えざるを得なくなったって訳か。色々と被害が大きくなりすぎて、手を引くに引けない状況でもあるのだろう。

「なるほど、そうなるとさすがに全てを影の中で処理するのは厳しいか……そんな状態ならばそれ相応の数がこちらに流れて来るのも止む無しか」

 自分のこの言葉に、申し訳ありやせんと答える義賊リーダー。とは言え、この一週間襲撃を受けずに済んでいたのは間違い無くこの優秀な部下達や協力してくれている忍者さん達のおかげなのだから、彼らを責めるつもりはない。さて、そうなるとどうするか……数分ほど考えた自分は、義賊リーダーにこう質問を投げかけた。

「そうだな……なら、すべてを止める事は不可能でも、ある程度相手を間引くことは可能か?」

 暴論かも知れないが、正面からぶつかってくる相手であればツヴァイ達はまず負けない。今までも難所や激戦でも力尽きることなく戦い抜いてきた実力があるから、そこは信用できる。そうなるとやはり恐ろしいのは技術で攻めてくる連中だ。技術は対策を知らないとどうしようもない一面があるからな。こちらはツヴァイの魔剣を盗まれたら負けなのだから、そちらの方が警戒するべき項目としては上になる。

「間引く程度でしたらなんとか可能ですぜ。どんな奴らを止めれば良いんで?」

 義賊リーダーの返答に、盗みの技術に長けた同じ穴の狢だけは絶対に通すなと指示する。自分の指示を聞いた義賊リーダーは「了解いたしやした、忍者の皆さんにも必ず伝えておきやす」と了解する意思をこちらに伝えてきた。この一週間、表面上は動きが無かったとツヴァイ達は思っているだろうけど……いよいよ直接戦ってもらう時が来たようだ。

「力押しや一般的な戦闘、対人戦ならばあの面子は怯まない。一番厄介なのは一瞬の隙を突いて盗み去っていく同業者だな」

 アーツとしては自分もモンスターなどからアイテムを盗み取る事が出来る事が出来る技術を持っている。単純に今まで一回も使用していないけれど。食指が動かないというかなんというか……対策のために技術自体は知っておくが、それを使わないというどっかの武人みたいな話になってしまっている。

「へい、親分のご友人である皆様の強さはあっしらも解っておりやす。親分のご指示通り技術に長けた小賢しい連中だけは決して通さぬように間引いておきやす。では、あっしはこれで」

 義賊リーダーは天井裏に姿を隠した。早速自分の指示を伝えに走ったはずだ……あとはこちらで何とかしなくてはいけない。

(まあ、今日も予定ではいつものメンバーがそろうはずだから戦力不足という事はないか……もしかしたらツヴァイの魔剣がいよいよ最終段階を迎えるきっかけになるかもしれない)

 実は昨日の狩りの帰りに、ツヴァイが「なんか魔剣から感じていた違和感が消えて、自分の腕の一部になったかのような一体感を感じるようになったんだよな。もしかしたらそろそろかもな?」と言っていた。その一方で自分の方はまだそこまで到達していない。弓も使う自分は、惑と馴染む為の時間がより多くかかるという事なのだろうと予想している。

「おーい、アース。今日もそろそろ行こうぜー?」

 と、外からツヴァイの声が。とりあえず前半は今まで通り頑張りますか。本番は後半だな。どれぐらいの人数が雁首揃えてやってくるのか……今日はより念入りに《危険察知》を働かせないといけないな。


 そうしてこの一週間と同じ感じで街を出て、バッファローを狩って……ここまでは異常はなかった。だが、狩りを続けて五十分ぐらいだろうか? 《危険察知》に大勢の敵影が映り始めた。いよいよおいでなすった訳だ。種族は人族に獣人族、龍人族も少し混ざってるな。一方でエルフやダークエルフ、妖精族は居ない様だ。手を引いた中には居たのかも知れないが、今は居ないという事だけで十分だろう。

「みんな、大勢の敵がこちらに向かってきている! おそらくツヴァイの魔剣を狙っている賊共だ! 最大限に注意を払ってくれ!」

 大声でブルーカラーのメンバーに状況を伝えつつ、心の中のスイッチをモンスター戦から対人戦に切り替える。さて、いよいよ一つの山場だな。賊達は自分とブルーカラーメンバーの百メートルぐらいの距離で停止し、一人の白い仮面……推理探偵物なんかに出てくる真犯人が装着してそうなヤツを顔につけて素顔を隠している人物が賊の中からこちらに向かって進み出てきた。

「失礼、貴方が炎の魔剣使いのツヴァイ様でいらっしゃいますね?」

 進み出てきた人物は、ツヴァイに向かってそう声を発する。その言葉は丁寧だが、その声はこちらを馬鹿にしているような色が含まれていた。隠すつもりもないのだろう。性別は聞こえてきた声からして男っぽい感じがする。

「だったらどうした? 俺はあんたなんか知らないぜ? 何処かで会ったか?」

 このツヴァイの返事に白い仮面をつけた男? はクククと笑う。なんでそんな含み笑いをするんですかね。お約束でやらなきゃいけないとかの決まりがあるんですか?

「いえいえ、こちらが一方的に貴方の事を知っているだけですよ。ええ、具体的には貴方の持っている魔剣をね」

 仮面の下ではにやにやとした表情を浮かべているのだろうか。まあ、ロクでもない相手なのは間違いないが。

「ふうん、そうか。で、わざわざこんな大勢でやってきてどうしたいんだ? 修練の邪魔になるから用事が無ければ引いてほしいんだがな?」

 ツヴァイの言葉に仮面の男はまたクククと笑い声を上げた後に言葉を続ける。

「それはそれは申し訳ありませんね。いえ、用事さえ済めば我々はすぐに引き上げる事をお約束いたしますよ、ええ。そしてその用事はすぐ済みますから、無駄にお時間を取らせることもありませんからご安心を、ええ」

 チラリと左右を見ると、カザミネは冷ややかな視線を向けており、ミリーも普段のぽややんとした空気は一切纏っていない。この後何が起こるかを予想しているな。そして、その予想通りの出来事はこれからすぐ、間違いなくやってくるだろう。

「そうかい。んじゃ教えてもらおうか。そちらの要件ってのは何なんだい?」

 ツヴァイも答えは分かっているんだろうが、敢えて聞いてみようと言った感じなのだろう。そのツヴァイの質問に対して仮面の男が返した質問は、だれもが予想していた言葉であった。

「ええ、ええ。そうですな、長々とおしゃべりをするのは時間の無駄ですからな。では、貴方の手にある魔剣をこちらに譲っていただきたい。もちろん無料で。それをいただけば我々はすぐさまこの場から立ち去りますよ」

 まあ、そんな所だろうな。そしてもしツヴァイが魔剣を渡したとしてもこいつらは立ち去らない可能性もある。例えば「そうですね、ついでに貴方達の身に付けている物もありがたく頂戴しましょうか。なかなかの一品のようですからね」とかなんとか言って、結局戦闘を吹っ掛けてきて身ぐるみ剥ごうとしてくる可能性もあるのだ。モンスターではないから、そんな事をしてきてもおかしくはない。それに口にこそ出していないが、こっちの義賊と協力者の忍者によってかなりの被害を向こうは被っているはずだから、そのうっぷんもついでに晴らしたいとか考えているかもしれない。

「そんな要求に、俺がYESと答えるとでも?」

 ツヴァイの言葉に仮面の男はまた笑う。この僅かに聞こえてくる笑い声がいちいち癇に障る。実際エリザやレイジは表情にイラつきがはっきりと出てしまっているな。無理もないが。

「ええ、ええ。快いお答えがいただけないのは残念ではありますが予想の範疇ですよ。その場合は、私としても心が痛みますが無駄な血を流すことになるでしょうなあ? 我が後ろに控えているのは血の気の多い連中でね、一度走り出すと相手の血をだっぷり見ないと止まらないのですよ。特にそちらのきれいなお嬢さんや可愛らしいお嬢さんの血などを見たがっているかもしれませんねえ、ええ」

 ミリーやエリザを見ながら、そんな言葉を仮面の男は口にする。

「まあ、何が何でも頂いて行くという訳だな?」

 ツヴァイの最終確認に、仮面の男はゆっくりと頷く。

「ご理解いただけて幸いでございます。我々にも面子と言う物がありましたね、クライアントのご要望には必ずお応えしないといけないのですよ。さて、もう一度だけお聞きしましょうか。私にその魔剣をお譲りいただけませんかねえ? 今お譲りいただければ、こちらとしても無用の血を流さずに済むのですがね、ええ」

 クライアント、ね。後であいつらを走らせよう。こちらの友人にこんな形で手を出したんだ……相応の対価を払ってもらわねば気が済まない。仮面の男の言葉が終わり、ツヴァイはこっちを振り向く。ツヴァイを見た自分とブルーカラーのメンバーは一度だけ頷く。もちろんそこに込められたメッセージは『こんな奴らはぶっ飛ばす』である。

「確認を取った。全員一致で応えは『NO』だ!」

 ツヴァイが魔剣を鞘から抜いて構える。もちろん自分や他の面子も完全な戦闘態勢に入る。

「そうですかそうですか、仕方ありませんねえ。幾ら魔剣持ちがいるとは言えたったの十人足らずにあれだけの数を差し向けるのは心が痛みますが、しかたがありませんね。ええ、ええ。では、さようならです」

 その言葉の直後に仮面の男の姿はスッと立ち消えて、百メートルほど先に居た族の集団が「「「「オオオオオオ、ぶっ殺せー! 奪い取れー!」」」」なんて声を上げながら突っ込んできた。

「みんな、こんな連中あのバッファローの大群に比べりゃ楽勝だ! 大掃除としゃれ込もうぜ!!」

 こうして、賊の一団とブルーカラー+自分という勝負は幕を開けた。
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正面からの衝突です。ツヴァイ君の魔剣関連はもうちょっとだけ続きます。
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