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連載

蹂躙

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この程度の敵なら、たとえこれぐらいいても……今更って感じになりますね。
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 大勢でこちらに向かって突っ込んでくる賊の連中。ミリーやエリザ、こーんぽたーじゅさんはすでに魔法の詠唱に入っており、ツヴァイやカザミネ、レイジは突っ込んでくる賊との距離を見て攻撃に移るタイミングを計っている様子だ。カナさんとノーラは近接戦闘に備えている。ならば自分は少しでも魔法使いの詠唱時間を稼ぐことにしようか。久々に懐から妖精の記憶を取りだし、土の妖精を召還する。

(土の妖精さん、目の前からやってくるアホどもの足元にだけ地震を起こして足止めをお願い)

 MPを30%捧げて土の妖精にお願いをして、軽い地震を発生させてもらった。突如起こった揺れに、賊達の前進速度が鈍る。それだけではなく転ぶ奴もいて、後ろからやってきた連中に踏みつぶされたりしている。あちこちから「俺を踏むんじゃねえ!」とか、「てめえこそ転んでるんじゃねえ! お宝が逃げるだろうが!」とかの怒号が飛び交っている。よしよし、所詮は寄せ集めで数だけは多い連中だから、こうやれば簡単に揺さぶれる。それに、そんな言い合いをしている時間はないという事をあいつらは分かっていないな。

「詠唱完了です、まずは私から参りますわ! 《ウィンド・スパイン》!」

 この風魔法は前方に空気の衝撃を放ち、前方に居る相手を吹き飛ばす魔法だ。威力もさることながら相手をかなり強い力で吹き飛ばす特性があり、距離を開けたい事が多い魔法使いには有用な上級魔法だ。また、詠唱が長い事が多い上級魔法の中では例外的に、比較的詠唱時間が短いという利点もあるらしい。まずは吹き飛ばして時間を稼ぎ、ミリーとこーんぽたーじゅの詠唱時間を稼ぐことをエリザは選択したのだろう。もろに《ウィンド・スパイン》を食らった先頭にいた賊、大体十数名ぐらいは派手に吹き飛んで後ろに居る連中を巻き添えにしてごろごろと転がる。

「エリザちゃんナイス! 次は私がどかーんと行くよ! 《グラヴィティエリア》!」

 二番手はこーんぽたーじゅだ。闇魔法の《グラヴィティエリア》で相手の勢いをさらにそぎ落とした。それにしても二人とも足止め重視の魔法だな……そしてミリーの魔法詠唱がまだ終わっていない。もしかすると、これは特大の魔法が来るのか? そうしてこーんぽたーじゅの放った《グラヴィティエリア》の効果が切れる少し前にミリーの魔法が完成した。

「アースさんには初お披露目ですよ〜、《ナパームメテオ》〜」

 気が抜けるようなノンビリ声だが、放たれた魔法はのんびりでは済まない規模だった。何かが上の方から落っこちてくる音がしたかと思った直後、賊達がいる場所のあちこちに火球が降り注ぎ大爆発を起こした。そんな状況になったのだから、賊達は一気に数を減らして悲鳴があちこちから聞こえる状況になり、さらに混乱まで広がっている様子が伺える。

「よし、ここからはこちらから打って出るぞ! ツヴァイとカナはここに残って魔法使いの護衛を頼む!」

 レイジの言葉に、ツヴァイは不満そうだが……今回はツヴァイの魔剣が奪われたら負けなのだから仕方がない。デカい魔法を討ったことで残りMPが少ない魔法使いには護衛が必要だ。それに……

(よし、頼んだぞ)

 薄らと姿を現した配下の義賊&援軍に来てくれている忍者と目で合図を送り合い、ツヴァイのガードを頼む。義賊リーダーに頼んだのでほぼいなくなっているはずだが、まだ姿を隠して盗みを行う事が出来る奴が残っていない可能性は否定できない。その万が一に備えるためにも、今回はツヴァイに敵との近接戦に突っ込んでもらっては困るのだ。そしてレイジを先頭に、自分、カザミネ、ノーラは《ナパームメテオ》にて大きな被害を被って建て直せていない賊達に向かって突っ込んだ。

「賊に情けはかけませんよ! 《完全版・紅散華》!」

 っと、いきなりカザミネが大技を。そうか、以前のあれを完全に習得したのか。その威力は大したもので、複数の賊を容赦なく貫いて完全に止めを刺す。

「短剣には広範囲技が無いのよね。手数でどうにかするしかないわねえ」

 そう言いながらも、ノーラは的確に賊達の顔や首に刃を煌めかせて一人一人を確実に片づけていく。そんな行動をスピーディにこなすために、なかなかの撃破スピードを発揮している。

「俺も頑張らないとな! 俺達のギルマスに手を出した事をお前達には後悔してもらおうか! 《アックス・スライサー》!」

 レイジが片手斧を思い切り前方にぶん投げて複数の賊を吹き飛ばしていく。ある程度飛んでいった斧は放物線を描いてレイジの手元に戻ってくるようだ。斧を投げた事で隙ありと見たのかレイジに直接攻撃を仕掛けてくる奴もいたが、レイジの持つ大盾にぶん殴られて昏倒して戻ってきた斧で止めを刺されるのがオチだった。

 ミリーを始めとした魔法使いの放った開幕大魔法三連発によるダメージもあったのだろうが、賊達に最初から勝ち目などあるはずがなかったのだ。ブルーカラーのメンバーは常に最前線で戦ってきたトップギルド、その上今この場にいるのはその中でも最強の布陣。自分も賊と刃を交えてみたが、個々はせいぜい街に居るごろつきよりも多少強いか? ぐらいのレベルでしかなく、大きな障害とは言えない。だからこそ数を集めてきたんだろうが、その数の優位もミリー、エリザ、こーんぽたーじゅの三名による大魔法で吹き飛ばされてしまった。

「ば、化けモンだ! こいつらは化けモンなんだ! 逃げろー!

 そんな声があちらこちらから聞こえてくる。もっとも、そんな声が聞こえてくる前に逃げ出していた奴はちらほらいたんだけど。この戦いは乱暴なたとえをすると数百匹の蟻が数匹の象に挑んだようなものだ。だから一方的な蹂躙になる。たまに逃げずに襲い掛かってくる龍人はさすがに周囲の奴よりも強いが……それでも今の自分やブルーカラーのメンバーにとっては特筆すべき力の持ち主という訳でもない。多少倒すのに時間がかかるのは事実だが……

「はい、《バックスタプ》。まだまだ数がいるから時間をかけてあげられないわ」

 こんな風に、ノーラの不意打ちによる一撃で止めをさくっと入れられて終了する。そうして混ざっていた龍人も数人が倒されるころには、賊の一団はもう散り散りになっている状況であった。結局苦戦らしい状況は一度も起こらず、あっさり薙ぎ払ってしまったという感想しか出てこない。

(ま、奴らの本業は盗みだものな。こんな風に真っ向勝負を仕掛けてくるしかないという時点で、賊達に勝ち目があるはずがない)

 そうするしかない状況に追い込んだのは自分なのだが。戦いは戦う前から勝敗が決まっていることがあるなんて言葉があるが、今回はまさにそのパターンと言って良いだろう。結局賊連中と戦っていた時間は三十分にも満たなかった。

「そ、そそそんな馬鹿な!? 数百人はここに居たんだぞ!?」

 そんな叫び声が聞こえてきたので声のしてきた方向に目を向けると、三十分前には薄ら笑いを何度もしていたあの白い仮面が居た。逃げる事も忘れ目の前で起こっていた状況に呆然としていて、今やっと意識を取り戻したという所だろうか? どうでもいいけど。

「こんな状況よりも辛い戦いなど今までに何度もありましたよ? 私達を甘く見ないでいただきたいですね。さて、遺言はどうしますか? 何か言い残したい事でもありますか?」

 冷ややかな空気を纏った……いや、実際氷の魔大太刀を持っているから物理的に冷たくさせるカザミネが仮面の男に近づく。

「ゆ、遺言だと! こんな所で死んでたまるか!!」

 そう言い残して姿を隠し、逃げ出そうとする仮面の男。──誰が逃がすか。自分にとっては半透明の姿で見えているので、惑を操る事で仮面の男の足を遠慮なく切り裂く。転びながら悲鳴を上げながら姿を再び表しつつ地面に転がる男。最初の余裕たっぷりの姿はそこにはない。

「アース、ナイスだ。こんな大騒ぎを起こしたお前はきっちりとここで倒しておかないといけないからな」

 そんな声が聞こえてきた。それははっきりと怒っていることが表情から簡単にわかるぐらいに怒っているツヴァイの声だった。ツヴァイ達もケリが粗方ついたことを見てこっちに向かっていたのだろう。

「お前らのつまらない欲のために、今回は大勢の人に迷惑を掛けちまった。みんな、こいつは俺が斬る。構わないよな?」

 ツヴァイの言葉に反対意見を出す人はだれもいなかった。シャリンと鞘から炎の魔剣をを抜き放つツヴァイ。

「せめてもの慈悲だ。お前達が欲した魔剣であっちに送ってやるぜ!」

 魔剣を大剣に変えて、ツヴァイが仮面の男に向けて剣を振り下ろす。仮面の男は絶叫する暇も無く切られて砕け散った。

「──これで終わりだといいんだけどな。みんなの行動をかなり拘束してしまっているしな……んっ?」

 ツヴァイがそんな言葉を口にしている時だった。ツヴァイの持っている魔剣がツヴァイの手を離れてゆっくりを浮かび上がり始めたのは。これはもしかして、もしかするのか?
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スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv48 小盾Lv31 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv82 ダーク・チェインLv44 義賊頭Lv29 妖精招来Lv14 ↑1UP (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.87

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 26

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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