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連載

事の顛末と・・・

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 ツヴァイが魔剣を吸収して他の人が手出しできないようになった。魔剣を狙っていた賊の一団も吹き飛ばした。普通ならこれで一件落着となるのだが……自分にとってはそうではない。宿屋に戻ってきてツヴァイ達と別れて個室に入る。そして自分がドアを閉めた直後に、天井から義賊リーダーと今回のツヴァイの護衛をするためのお手伝いに来ていた忍者さん達が下りてきた。

「親分、今回はお手数をおかけいたしやした」

 義賊リーダーはそう言って頭をこちらに下げるが、気にするなと声をかけておく。そして自分は忍者の皆さんに視線を向けてこう告げた。

「助太刀に来てくれた忍者の皆様には心より感謝を。貴方達のおかげで我が友人は、魔剣を盗まれることなく魔剣の主になる事が出来ました。皆様の任務はこれで達成となります。達成したという証明書を一筆書いた方がよろしいですか?」

 自分の言葉に頷く忍者さん。なのでさらさらっと任務の達成の証明書っぽいものを書き上げ、親指に染料をつけて母印を捺す。

「これでよろしいですか?」

 自分が渡した証明書を見せると、「問題ありません」との返答が返ってくる。文字だけでは不安だったので母印を捺したが、それが良かったらしい。

「では、我々はこれにて失礼いたします。もし何かありましたら、また教えていただければ……それではこれにて」

 そう言い残して忍者さん達は全員姿を消した。忍者コミュニティと知り合えたのは大きかったな。さてと、これで忍者さん達への対応はいいとして……義賊リーダーにはもう一頑張りしてもらわないとな。そう考えて自分は口を開こうとしたのだが、それより先に義賊リーダーが「今回の一件についてさらなる新しい報告がありやす」と言ってきた。なので「聞こう」と義賊リーダーに告げる。

「今回のあのくそったれな賊共に、親分のご友人がお持ちの魔剣を奪うように命じた馬鹿は誰なのかを前もって部下に調べさせておりやした。そして先程報告が上がってきやしたので……こちらを」

 義賊リーダーが数枚のレポートを手渡してきたので確認する。そのレポートには、今回の魔剣を奪い取ってこいと命じたのは人族の街サーズに住んでいるある富豪が命じた事。手に入れたら富豪は邸宅の地下にある隠し展示場にてコレクションとして飾るつもりだった事。その富豪は表向きでは善人の様だが、その裏では多くの美術品、優秀な武器や防具などの収集のために賊を使って各地から盗ませてきていた事。大雑把にいえばそんなことが報告としてまとめられていた。

「ほう、なるほどなるほど……なかなかに腐っているな」

 自分の言葉に、義賊リーダーもへいと答える。義賊の仕事をするにはうってつけの相手だな。義賊リーダーも『親分、如何いたしやしょう?』と表情で伺いを立ててきていることが分かる。

「よし、やっちまえ。この富豪を社会的に抹殺してやれ。この富豪が絶対に逃げられない様に確固たる証拠を手に入れて各地の役所などにばら撒き、法の下に裁かれるように仕向けろ。容赦する必要はない、徹底的にやれ。今日こちら側にやってきたように、手にした物の中には盗み出した物だけではなく所有者を殺して手に入れた物も数多くあるはずだ。こんな富豪の欲望のために死んでしまった者達の無念も晴らすぞ、そういった人達の弔い合戦でもある」

 こちらに向かって牙を向けた以上、相応の反撃を覚悟してもらおうか。ましてや、命を懸けて戦う武人の武具をコレクションしたいという自分勝手な欲望を持った事を後悔させてやる。今まで表向きは善人だったからこそ、証拠をもって地下の隠し展示場が白日の下に曝されればその反動は大きいものとなる。こんな悪党、義賊の頭として放置して置く理由がない。

「ここで俺達が叩き潰せば、この富豪による被害は今後消える。将来、この富豪の身勝手な欲望のために影で泣く人々が出ないようにするためにもここで徹底的に叩き潰せ、いいな?」

 義賊リーダーは自分の言葉に深く頷き、了解の意思を示した。

「十分に心得ておりやす。では、早速行動に移りやす。今回は親分の手を煩わせてしまった以上、出来る限りあっしらだけでこの富豪の件は片をつけやす。親分は報告を楽しみに待っていて下せえ」

 そういい残し、義賊リーダーも姿を消す。早速行動に移ったんだろう。まああのリーダーが自分達だけでやるというのであれば任せていいだろう。部下を信じるのも上の役目だしな……それに信じる事が出来るだけの実績もある。ならば、後は口うるさく指示を飛ばす事も無い。そう考えてベッドの中に入ってログアウトした。


 そして翌日、ログインするとすでに義賊リーダーが部屋の中に控えていた。ここに居るという事は、もうケリがついたのか?

「親分、此度の一件はほぼ終わりやした。報告いたしやす」

 早いな。相当に力を入れて活動したんだろうが……とりあえず報告を聞くか。

「今回サーズの役所周りに情報を入れた所、すぐに食いつきやした。あの富豪は自分では完璧に隠せていると思っていたんでしょうが、こそこそと富豪の家に出居りする妙な連中がいるという事はかなり前から見られていたらしいんでさ。

で、役所がもしかしたら泥棒に入られたのではないですか? と何度か伺ったこともあるらしいんですがね、そのたびに『問題ない』とか『追い払った』などと返答していたようで。ですがね、そういった事を自分からは一切役所に届け出なかったことで、何か臭いなと感じていた役所のお偉いさんがそれなりにいらっしゃいやしてね……その人の所に今回の情報を差し上げたんでさ」

 ああ、やっぱり火のない所に煙は立たぬというが、そう言う火種は見られていたのか。で、臭いなと思っていた所に情報が舞い込んできたから食いついた、と。

「こちらも役所の皆様に恥をかかせる訳には行きやせんから、証拠をがっちりと固めやして。特に地下の展示場に飾られている品がどこから盗まれて来たのかを部下総出できっちりと調べ上げやした。そうしたら人族だけではなく、妖精族やエルフ族と言った他の種族からも盗み出していた事が判明しやしてね。これが大々的に判明したら大騒ぎに発展する所でやした」

 とんでもない事をしてくれてたな。盗んできた物によっちゃ国際……この場合は種族問題というべきなのか? とにかく大きな騒ぎになることは義賊リーダーの言葉通りだ。

「で、そう言った危ないブツはどうした?」

 ここまでの話の流れから、富豪は間違いなく証拠付きで役所に捕えられてその罪状の元に裁かれるのを待つだけという状態だと予想できるから聞く必要はない。それよりも、そんな種族間の問題になりそうなものをどうしたかの方が気になる。

「──親分、申し訳ありやせん。実は、妖精の城から盗み出されたブツが数点混じっておりやした。これをそのままあっしらが届けてもどこにあったのかの追求は避けれんでしょう。そうして場所が割れれば……戦争とは言いやせんが、人族と妖精族の間柄に冷や水を浴びせる事になり、今の状況にヒビが入るかも知れやせん」

 あ、展開が読めた。

「そこで、出来る限りあっしらだけで片付けると言った手前だというのに心苦しいのですがね……親分が妖精の女王にとりなしてもらえやせんか? これはサーズの役所からの依頼でもありやして……役所はあっしらに、どうにか争い事を起こさず穏便に済ませる手段はないかと一堂総出で泣きついてきやした。あっしらもその姿にいたたまれなくなっちまいやしたし、それに種族間の抗争が勃発することも望んていやせん。ましてやある程度前に一部の人族が妖精族に戦争を仕掛けた事もありやすし……何がきっかけで爆発するか分かりやせん」

 この戦争とは、ゲヘナクロスの事だな。あの戦争はひどいもんだった……よくよく考えると、あの戦争で妖精族が人間嫌いにならなかったのは奇跡な気がする。共に戦った人族 (大多数がプレイヤーだと思うけど)がいたからこそ、人族を嫌わないでいてくれたのかも知れない。

「つまり、妖精の女王と知りあいな俺に届けろと言いたいわけだな?」

 そんな戦争の記憶を隅に追いやり、目の前の居る義賊リーダーに確認を取ると……ほぼ土下座するような格好で「へ、へい。その通りでございやす……」と返してきた。あの女王か……とはいえ、これを放置して変に人族と妖精族の間柄が拗れてしまう事は望まないし、今回は自分が行くしかないか。

「解った、俺が出向こう。お前たちは妖精族の女王にある程度顔がきく人物を仲裁を兼ねて出向かわせることになったと、サーズの役所のお偉いさんに話を通しておけ」

 まだまだ獣人連合での活動はし足りないんだが、ここはいったんこの国から出るしかないな。ついでだから各地から食材を買い集めて来て久々に料理をするのも良いな。最近は以前に作っておいた料理を消費するだけになってしまっていたし、ここいらで料理を補充しておこう。

『私にとってはオリジナルとのご対面になるのね。面白くなりそう』

 指輪から声が。うっ、この一言ですでに嫌な予感がするんだがな……とはいえ行くと部下に行ってしまった以上、取り消す訳には行かんよなぁ。ツヴァイにメールを送ってと……よし、サーズを経由して妖精国に行くか。
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ということで、いったん獣人連合からサーズを経由して妖精国に入ります。その後はまた獣人連合に戻ってきますけどね。
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