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連載

番外編 義賊リーダー側

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アースがログアウトしてからログインするまでに……
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 今回の魔剣から始まった一件は、本当にめんどくせえ話になりやした。あっしらや親分にさんざん手間を掛けさせやがって。それでもまあ、今は牢屋の中で死罪の執行が行われる日が来るのを待つだけの元富豪を見れば少しは溜飲が下がるってもんだがなぁ。

 親分のご友人がお持ちになられている魔剣を狙ってあの元富豪の指示で複数の盗賊、強盗団が動き出したのをあっしが知ったのは以前協力して戦った怪盗の一団からの情報。お蔭であっしらは先手を打って動けたって寸法で、怪盗お抱えの情報屋にも協力してもらって多くの連中の動きを封じられたのはでかかった。

 親分からのご指示もあって、情報が流れても奪い取ることをやめようとしない子悪党どもとの血生臭い活動をすることしばし。こっちの妨害に業を煮やしたのか、今度は大勢で無理やりご友人の魔剣を奪おうとしてきやがった。数が数だけに、あっしらや親分のへの義理を返すべく協力していた忍者の連中でもさばききれねえ。結局親分やご友人の皆様に手を汚させることになっちまいやした。

 とはいえ、親分のご指示通りに手癖の悪いやつらだけはきっちりと手を潰したり始末しておいたことで親分たちは完勝。普通にぶつかればいくつもの大きな戦いを乗り越えてきた親分のご友人の皆様の敵ではなかったって事になるんだろうさ。そしてその後に、親分にようやく元富豪が色々と処から盗みや強奪などで奪ってきたものの一覧をお出しすることができやした。

 親分はその一覧が書かれた紙を、イラつきながらご覧になっていらっしゃった。数が多いのもさることながら、出所がちょっとやばい物もありやしたからな。この時点ではまだはっきりとしていなかったんだが、実は妖精の城の宝物庫から盗み出されたものが数点混じっている事がこの後の部下の調べで浮かび上がってきちまって……サーズのお偉いさんと一緒に頭を抱える羽目になっちまいやしたな。

 話を戻して……一覧を見終わった親分から、正式に仕事の指示が頂けたお蔭であっしらは動き出した。もう何度も忍び込んだので、元富豪の屋敷の中は熟知していたので軽々と侵入。罠も当然あるといやあったが、あっしらをひっかけるには明らかに程度が低い。無いと同じで引っかかる間抜けはあっしらの一団に一人もいねえ。そして証拠品として、ここにあるはずのない宝玉や武具を盗み出してサーズのお役所に。

「ちょいと失礼いたしやすよ、お時間をいただいてもよろしいですかい?」

「──だれだ? ここは私専用の部屋だぞ……扉も空けずにどうやって入ってきた!? 何が目的だ!」

 今回の一件をさっさと処理したかったあっしは、敢えて元富豪の事を調べているサーズのお偉いさんの前に姿を現した。もちろん顔はかくしておいたが。

「ああ、どうしても直接言いたい事がありやして。途中に人を挟むと余計な情報が他人に流れそうなんでさ。要件は一つで、旦那が調べているあの富豪の事を知りたくないですかい?」

 あっしがそう言うと、お偉いさんを目を細めた。まあ、いきなり現れた存在から話を振られてもすぐには信用できないのが当然。だが、お偉いさんは頭をがりがりとかいた後に「話を聞こう」といってきやした。まあ狙い通りなんでやすがね、追及するにも証拠が足りず、行き詰っている事は事前に調査がすんでいやした。

 そんなお偉いさんの状況でやしたから、こちらの持ち込んだ証拠品はとっても喜んでもらえやしたねぇ。あっしの見せた証拠品に、とても良く食いつきやしたし。まあ、お偉いさんが探してほしいと依頼を受けて居た物ばかりを見繕ってきやしたから食いつくのも仕方なし、ってところですかい。出所を教えて、証拠品を渡してあっしらは退散。その直後にお偉いさんの声が聞こえてきやした。

「すぐさま会議だ、あの富豪の一件がこれでようやく……」

 なんて言ってやしたね。その後色々と人を使い、いくつもの理由をつけて元富豪の家に押し入る事が出来る様に恐るべき速度で準備を始めていやした。元富豪の方は地下室から突如として消えたいくつかの物品の行き先を躍起になって探していたようでやすが、そのせいである日突然に押し入ってきた役所の人間に対処できなかったようで……

「何だ貴様ら!! ここは私の家だぞ! 不法侵入で人を呼ぶぞ!」

 なんて役所の人間に言っていやした。そこで一番先頭に居た役所のお偉いさんはこう一言。

「この家を複数の強盗団が隠れ蓑に使っているとの情報を得た。さらに調べた所、いくつもの強盗団が出はいりしていたと言う証言も数多く得た! さらに汝の家のは妙な隠し扉などが多くあることも判明した! あまりにも不自然な事が多すぎる為に、強制捜査を行う! 拒否権はない!」

 もちろん隠し扉などの情報を提供したのはあっしら。あっしらから見れば稚拙な仕掛けでやしたがね。そうして役場の人間は元富豪の屋敷に押し入りやした。そしてさらに役所の人間には幸運で、元富豪にとっては不幸な事に、盗賊団の頭や幹部がこの日この時間、富豪の家の隠し部屋の中にて滞在していたというオチまで付きやした。これでもう元富豪は言い逃れができなくなりやしたな。

 もちろん地下室の方もきっちりと役所の人間は調べやした。そこにはここにあるはずのないお宝の山。当然全部没収されていきやした。この時点で強盗団と一緒に元富豪は捕縛されておりやす。そうして没収されて役所に運び込まれたお宝は役所の一室を占拠してしまいやした。

「これだけの数をよくもまぁ……」「これは、あのマーヴィル家の家宝ではないか!? 確か盗難に遭っていたと聞いていたぞ……あいつが強盗団などを使って盗み取っていたのか!」「こっちの剣や鎧は少し前に活躍していたあの戦士の物ではないか! なんであの富豪が持っているんだ!」

 そしてその一室にて、持ち主が分かれば返却すべく鑑定が行われておりやしたが……一つ一つのお宝が判明すると大騒ぎでやしたな。あっしらが事前に調べておいて親分にお渡ししたあの一覧表には不完全な面もありやしたが、ここの鑑定で完全にどこの誰が本来の持ち主なのかがはっきりしていきやした。そして……

「何という事だ! これは妖精族の宝珠ではないか!! ここに有っていいものではないぞ!」「こっちはエルフ族の宝杖だ! なんでこんな貴重品がここに有るのだ! あのくそ富豪め、自分一人の欲のために種族間の抗争を招いても良いと言うのか!!」

 と、鑑定が進むうちに非常に取扱いに困る物品がぽろぽろと現れ始めやした。天井裏にて事の推移を見守っていたあっしらの中でも焦りの感情が生まれ始めており……鑑定を終えて事実を知り、ぐったりと椅子に突っ伏したお偉いさんが一人になったところを見計らって、あっしは再び姿を現しやした。

「ひとまず、あの富豪をとっちめる事は出来たようで」

 あっしの言葉に、半分うつろな表情でお偉いさんは「お前か……持ってきた情報に感謝する」と返してきましたがね……あの様子では、半分ほど魂が抜けかかっておりやすな。

「どうしやした? とりあえずある程度の決着はついたのではありやせんか?」

 なんでこうなっているかはあっしも分かってはおりやすが、それをあっしの方から言う訳にも行きやせん。あくまで向こうから教えてもらったという事にしなければ、必要以上の警戒心を抱かれる可能性が高くなっちまいやすからね。そうなれば、こちらの提案を聞いてもらう事も難しくなっちまいやす。下手な言葉は災いの元。

「いや、それ以上に厄介なことになった。情報を持ってきたお前だから言うが……あのくそったれな富豪が盗んできた物の中に、とんでもない物品が入っていたのだ。お蔭で今回の一件を知っている役所の人間全員がこれからどうした物かと頭を抱えているのだ。あの富豪の首を落とす事は当然だが、それだけでは……謝罪にならん」

 そして、いくつかの物品の情報をあっしに話してから、お偉いさんは頭を抱えやした。それはまあ、そうでしょうなぁ。あっしらとしてもどうした物かと。こうして表に出てきた以上、ただそっと宝物庫の中に返してくればいいという訳にもいかねえですし。

 今回はあえて情報を流さずあっしらだけで奪い取って、そのままそっと各地に返した方が早かったかも知れやせんが……しかし、それではあの富豪が法の下にて裁けやせん。あっしらはあくまで影働き。最終的な部分はこういう表の部分でケリをつけてもらわないといけねえ。暗殺などは最終手段でさ。

「それは……どうしようもねえですね。下手打ったら、種族間の問題に発展する可能性もありやすぜ……」

 あっしの言葉に、「そうだ、それが問題なのだ。出来る限り早く返却するのは当然だが、どういう形で返却すればいいのか分からんのだ」とお偉いさんが漏らす。そう言われても、影働きのあっしらにはどうにもできない……っと、妖精族ならば最終手段がまだありやすな。

「妖精族の方なら……妖精族に伝手がある人物に繋ぎが取れやす。その人物ならば、大事にせずに済むかも知れやせん」

 親分の事ですがね。親分のなら今代の妖精王と顔なじみでありやすし……何とかしてくれる可能性は高いと踏みやした。とはいえ、また親分を頼る事になってしまうのが申し訳ねえんでやすが……なんてあっしが考えていたら、お偉いさんはいつの間にかあっしの前で土下座しておりやした。

「頼む! その人物と繋ぎを取ってくれ! こっちは手の打ちようがないのだ!」

 土下座までするとは、そこまで追いつめられてるって事ですかい。この日はとりあえず他の人と話し合ってからにして下せえと告げて別れたんでやすが、翌日はこの一件にかかわった役所の人間一同で頭を下げられてしまいやした。こうなっちまったら、親分に頼むしかねえですね……。
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番外編を書いたのは久しぶりな気がします。
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