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連載

移動中に……

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しばらく更新の間が空いてしまいました。
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 少しの間役所のお偉いさんと言葉を交わしたが、とにかく今回の一件の落としどころとして人側に自浄能力がある事。人族は妖精族との争いを望まない事を念押しされた……しつこいほどに。

「お話は分かりましたし、今回の仕事を引き受けるという事を辞めるつもりもありません。ですが一つだけ聞いて良いですか? 自浄能力があるとアピールするのであれば、サーズの皆様が直接妖精国に出向いて直接お返しする方がよほど強く印象付ける事が出来るのではないでしょうか?」

 別に自分を使わずとも、サーズの役場の人……たとえば自分の目の前に居るお偉いさんが出向いて頭を下げて対話すれば、問題なく謝罪を受け入れてもらえると思うのだがなぁ。ごく一部の悪党がおバカな真似をしたからと言って、それが人族の総意であるなんて考えをあの女王ならしないだろう。

「──それも当然ながら考えました。そしてその方が正式な謝罪になることも承知しております。妖精国の国宝がまさか目と鼻の先ぐらいにしか離れていない場所にあった事すら、我々は突き止める事が出来なかったのですから。ですが、実は妖精国自身が国宝が城の外に持ち出されたという事を表ざたにしていないのですよ。ですので先に妖精国の国宝を周囲にばれないようにお返しして、ある程度落ち着いてから正式に詫びるために訪れる……という流れにしたいのです」

 ふむ、ここで門外不出なはずの国宝が外にあるとばれたら確かに面倒なことになる。だからこそ今回は隠密に事を運び、真実を知るものを少なくする方が良いって事か。

「了解しました。幸い私には妖精側にいくつかの伝手がありますし、今回の一件が極力穏便に済無方向に進むよう努力いたします。では、これら三点をお預かりします」

 お偉いさんが頷いたことを確認してから、宝玉、宝剣、魔除けをアイテムボックスの貴重品枠に納める。ああそうだ、あともう一つ質問しておかなければいけない事があったな。

「すみません、あともう一つだけ質問が。ここから今日、これらの宝物が運び出されることを知っている人はどれぐらいいますか?」

 知っている人が多ければ多いほど、情報漏えいが起きている可能性が上がってくる。そうすると、妖精国に届けるまでに宝物を狙った賊がやってこないとも限らない。その可能性はどれぐらいかを前もって知っておく方が良いだろう。

「ここに有ると知っている役所の職員はそれなりに多いです。ですが本日では無く、あと数日後に運び出されるという偽の情報を流しています。少しでも運搬者が賊に襲われる確率を下げるために、打てる手は打っております」

 楽観はできないレベルという事でとらえておけばいいか。自分が役所に入る姿を見た人なんて多数いるだろうし、その中の誰かが賊に通じて居るという可能性は否定しない方が良いな。自分は役所なんかに頻繁に出入りする人間ではないから、見る人が見ればチェックされていてもおかしくはないと考えるべきだ。

「解りました。それでは早速行ってまいります」

「よろしくお願いします。今回の仕事を達成していただければ、相応の報酬をお支払いいたしますので」

 そんな言葉を交わした後、自分は役所の外に出た。ゆっくりと歩きながら即座に《危険察知》で周囲の様子を伺うが、今のところこれと言った反応は無し。街中で仕掛けてくる可能性もあるから、油断は禁物だが。戦闘力は無くても、スリ取る能力が高い奴はどの世界にもいるからな。

 さて、貴重品を運んでいるとばれないためには、急がず焦らずのんびりと進むことが大事だ。ポーカーフェイスは基本装備。周囲をちらちらと見たり、妙に早足だったりすれば怪しさも跳ね上がってマークされやすくなる。運搬関係の仕事はそこが難しい。

 今回の様な国宝級の物じゃないとしても、それなりの貴重品を預かっている時は普段とは違った行動を取ってしまいがちだ。そうならないように心身を抑えるのも一つのプレイヤースキルである。リアルでも役に立つかもしれないが。

 普段よりやや遅いぐらいのペースで街中を歩き、共同馬車乗り場へ。アクアはとにかく目立つため今回は使わない。ここからネクシアまで馬車で移動し、そこからは徒歩でという一般的な冒険者の移動方法で運搬するつもりだ。そうしないと内密に……という今回の依頼内容に反することになる。

 幸い馬車での移動は問題なく進み、サーズからファスト、そしてファストからネクシアへと移動。ネクシアからは妖精国のある方向に徒歩で移動開始。《危険察知》に引っかかる物は基本的にこの近辺に居るモンスターのみ。現時点では特に追手や賊などは居ない様だが……品物を届け終えて報告するまでが仕事だからな。気を引き締め直して妖精国へと歩を進める。

(妖精国に来るのも久々な気がするわね。ここ最近戦ってばっかりだったからそう感じるのかしら?)

 指輪からそんな言葉も聞こえてくる。そういえばここ最近は戦いばっかりやっていたな。この仕事が終わったらしばらく薬や料理と言った生産作業をしようか。せっかく獣人連合の外に出たんだから、戻る前に龍の国に行ってお米をたっぷり仕入れてカレーライスを量産しよう。薬の方は、いよいよハイレア等級のポーションを本格的に狙おう。レア等級のポーションでも回復量に不満が出てきたし。

 妖精国に入るまでに、モンスターに数回絡まれたが適当にあしらった。状況不利と見て逃げ出すモンスターはそのまま逃がした。情けをかけたという訳ではなく、追うのにかかる時間がもったいないからだ。今は運搬が目的であり、戦闘は運搬を終えるために必要な手段でしかない。手段に時間をかけすぎては本末転倒になってしまう。

 妖精国の門番に許可証を見せて妖精国の中に入り、街中をスルーして再び馬車に乗り込む。今日中に送り届けてしまいたいので寄り道する暇はない。街の様子を楽しむのは仕事がひと段落してからで良い。砦街を出た馬車は問題なく内陸街に到着し、内陸街から中央の城下町に向かう馬車に乗り込む。この馬車が問題なく目的地に到着すれば依頼内容はほぼ終わりになるはずだった。だが。

「おら、降りてこいや!!」「逃げられると思うなよ? 死にたくなけりゃ身ぐるみ置いて行くんだなあ?」

 こんな所で盗賊団がお出ましになられてしまったのだ。御者も馬車を巧みに操って必死で逃げようとしたのだが、ある程度走ったところで馬を盗賊団の手投げ槍にて殺されてしまって馬車も横転。逃げられる状況ではなくなってしまった。盗賊団には馬に乗っている奴もいて、その手にはいつでも放てるように手投げ槍が握られている。

 馬車が横転したところでわらわらと周囲から盗賊がやってきたので、御者は逃げ道を盗賊団によってコントロールさせられていたのだろう。慣れた手口から、馬車を襲ったのは初回ではないと予想できる。《危険察知》で賊の存在は気がついていたのだが、馬車の中から御者に話しかける事が出来ずにこんな事になった。

「お母様……」「ここで慌てても仕方がないわ、静かにして居て頂戴ね……」

 この馬車に乗っていたのは、自分と母親と娘の親子。そして手にハープを持った吟遊詩人? の男性の四人。

「何という事だ、馬車を襲うバカがいるという噂を砦街で聞いたことがあったが、まさか本当にいるとは……」

 吟遊詩人? の男性がうめき声の間にそう漏らす。馬車が横転してしまったせいで、自分以外の三人はそれなりのダメージを受けている。自分はドラゴンスケイルメイルのお蔭で軽傷すら負っていないが。そんな言葉のやり取りが行われているうちに、盗賊団はこちらを完全に包囲したようだ。《危険察知》でも、赤い点が馬車の周囲を取り囲んでいる。

「さっさと出てこねえと、槍で串刺しにするぜ! 別にこちらは死体から物を頂いても良いんだからなあ? ひゃっひゃっひゃ!」

 言動と行動から、自分をピンポイントで狙った盗賊団ではないと判断する。ならば、ヤってしまっても問題はないな。それに、自分以外が戦う事はできそうにない面々だ。自分が動くしかあるまい……結局どこかで派手になってしまう運命だったか。それでも他の人達の命には代えられん。

 腹を決めた自分は懐から妖精の書を取り出す。アクアにはこの場に居る三人の護衛を視線で頼む。アクアも解ったとばかりに小さくうなずいた。

「周りを静かにしてきます。ここで少しだけ我慢していてください」

 馬車の中に居た親子と吟遊詩人? にそう言った後、横転したことで馬車の天井になってしまった扉を開いた後に《大跳躍》で一気に飛び出す。盗賊団の視線を馬車からこちら側に向ける為だ。突然飛び出してきた存在に、盗賊団の連中は全員が上を見上げて……つまり自分に視線を集めていた。狙い通りだ。これで馬車を串刺しにするという行動はいったん中止されるだろう。

 《フライ》をかけて上から周囲を確認すると、馬車を動かしていた御者は馬車からやや遠くに放りだされていた。かなりの深手を負っている、急いで治療しないと間違いなく死亡するだろう。

 幸いだったのは、盗賊が御者の始末を後回しにしている事だ。あの大怪我だ、放って置いても勝手に死ぬと考えられたんだろう。

(もたもたしていたら救える者も救えなくなる。ここはMP惜しまず一気に片をつけよう!)

 妖精の書をやや乱暴に開き、妖精の召喚を行う。呼び出すのは──

(土の妖精よ、周囲に居る盗賊団が立っている場所にやや深い落とし穴を展開! 火の妖精は落とし穴に落ちた盗賊団を灼熱の炎で焼き殺せ!)

 妖精の書を使った同時召喚。土の妖精には四十%のMPを、火の妖精には妖精の本で呼び出して残りすべてのMPを捧げた。こちらの呼び出しに応えた土妖精が、盗賊団の立っている場所をぼこっと急激にへこませる。当然その上に立っていた盗賊団は何もできずに落下。盗賊団が馬車を取り囲んでいたために落とし穴はドーナツ状になった。そしてその穴に走る火の妖精が放つ灼熱の炎。その結果……

「「「「「ぎゃああああああ!!!」」」」」

 と、周囲に響く盗賊団の断末魔。空中でその様子を見ながらMPポーションをぐぃっと一飲み。自分がやったこととはいえ凄惨な状況に軽い吐き気を覚えるが、ぐっと我慢してポーションを飲む。この後何があるか分からないし、MPを補充しておかないと危険すぎる。

 盗賊団の断末魔が聞こえなくなったことを確認して《フライ》の効果を切って地面に着陸。《危険察知》を維持したまま倒れている御者に近寄ると、すでに半死半生で手遅れになる寸前だった。

(この状況ではポーションを口にできる余裕はないな、一本目は体にぶっかけるしかない)

 レアポーションの口を開けて御者に振りかける。ある程度の回復が見込めた所で今度はゆっくりとポーションを口に含ませる。御者の顔色も真っ青だったのが徐々に赤みを指してきた。とりあえず危ない状況からは脱したはずだ。

「大丈夫か? こちらの声が分かるか?」

 御者は自分の呼びかけに頷き、意識を取り戻した事を教えてくれた。とは言え馬車は横転しているし、引いていた馬は死亡。城下町まではまだしばらくの距離がある。それに先程の盗賊団の断末魔で馬車の中に居る三人も怯えているだろうし、はてさてこれからどうした物だろうか……。
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どうも、作者です。今年の更新は、出来てあと一回という所でしょうか? 更新をお待たせしてしまっております。

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv48 小盾Lv31 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv82 ダーク・チェインLv44
 義賊頭Lv29 妖精招来Lv16 ↑2UP (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.87

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv17 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 26

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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