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連載

カレー。

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 獣人連合の北町に戻った翌日、自分は久々に調理道具を引っ張り出して料理を行う準備を整えていた。

「アースも無事に戻ってきた事だし、今日はどこに行こうか決めようぜ?」

 ログイン直後に集まってツヴァイが元気よく言い放った言葉に対して、自分が「悪い、今日は少し料理をやりたい」と伝えてツヴァイが軽く肩透かしを食らうというやり取りがあったが……「じゃ、俺達は食材になりそうなものでも狙おうぜ」と自分に言い残してブルーカラーのメンバーは狩りに出かけて行った……ロナちゃんを置いて。

 念のために言っておくと、ロナちゃんは自分のボディーガードの役目として街に残ったのであり、決してハブられたわけではない。

「で、アース君。今日のメニューは何かな?」「え? カレーを作る予定だけど」「それは楽しみだね!」

 なんてロナちゃんとの会話もあった。そして街の大通りを少し外れた他の人の邪魔にならない場所で料理を始めようとしている所である。

「せっかくいるんだから、出来上がった料理の味見もお願いしていいかな?」「おっけー、じゃんじゃん来なさい! お腹すかせとく!」

 ロナちゃんから味見の許可も取ったので、早速製作開始。今回のカレー用ルーとして使う試作品は三種類用意した。料理本やネットの情報と睨みあって配合したスパイスの種類の数が違う。一番少ない配合で六つ。一番多いと十五。中間は十のスパイスを配合した。多分どれも大外れの味にはならないと思うのだが、とりあえず作ってみて、今回一番おいしかった物をカレーのレシピとして採用しようと考えている。

 最初にご飯を研いでおき、《料理促進》スキルで吸水時間を大幅に短縮する。リアルでも使えれば晩飯の用意が楽なんだけどな……吸水時間として一時間ほど早回しさせてから火を入れておく。自動炊飯器のようにスイッチを入れれば勝手に仕上げてくれるという訳には行かないかまどの様な物なので、こっちも注意しないと。

 カレーに使う食材はニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、バッファローのお肉だけのシンプルな内容。隠し味として赤ワインに近いお酒を少しだけ入れる。これだけだとコクが足りないので、鶏がらからとった出汁も投入するつもりだ。固形コンソメなんて便利な物はないんだよねぇ……とにかく作ってみよう。下ごしらえとしてニンジンとジャガイモは前もって一口サイズに。玉ねぎは七ミリぐらいの幅でスライスしておく。

 鍋を三つ用意し、油とバターを入れる。バターはごく少量。軽く温まったらニンジン、ジャガイモ、お肉を入れて軽く火を通す。カレーの作り方なんて各家庭でやり方が違うだろうし、自分の家のやり方でやらせていただく。凝り性の人が作るカレーの作り方は本当に手が込んでるが、それを真似しようとは思わない。作業を真似したからって、美味しさまで真似できるわけではないしな。少し炒めた後に玉ねぎを投入し、これも軽く炒める感じで熱を通す。

 焦げないように投入した具材を適度にかきまぜ、油とバターがそれなりに回ったら水と濃く煮詰めておいた鶏がらの出汁を入れて煮込む。ある程度煮えてきたらしっかりと念入りに灰汁取りを行う。ただ、うまみとなる油も浮いているので、灰汁だけを排除して油は戻す。これがちょっと面倒くさい。この灰汁取りは数回に分けて丁寧に行う。

 そして灰汁がなくなり、ニンジンやジャガイモに火が通ったら弱火にして各種スパイスや小麦粉を混ぜて作った試作カレールーを投入する。

 ここでご飯の様子を確認すると、すでに炊き上がりに近い状態になっているので火を消してご飯の入った釜をじっくりと蒸らす。この仕上げとなる蒸らし作業を怠ると、ご飯の芯に固い部分が残ってしまう。そうなってはせっかく買ってきたお米が台無しになってしまう。

 ご飯の様子を確認し終わってから鍋の様子を伺うと、カレールーが程よく溶けて来たところで、あのカレーの香りが周囲に漂い始める。かきまぜてカレールーを念入りに溶かし込みつつ、隠し味となる赤ワインもどきもここで投入。ロナちゃんと、彼女の妖精が先程からそわそわし始めているのは気のせいではないだろう。カレーの香りは食欲を誘うからな……。

 やがてカレールーも完全に溶けきったことを確認して鍋の火を落とす。だがまだこの時点では完成していない。それはなぜか? まだカレーのルーや具材が馴染んでいないからである。一晩おいたカレーがなぜうまいのか? その理由がここに有る。一回冷えてもう一度温める事で味が染み、全体的に熟成するので美味しくなるのである。つまりここでやることは、《料理促進》にて鍋を一気に冷ますのだ。リアルでこれをやるなら乱暴な方法になるが、鍋を水につけて冷ますという方法もある。あまりお勧めできないけど。

 鍋が冷えたことを確認し、もう一度温め直す。これでようやく完成である。蒸らしも終わり、釜の蓋を開けるとホッカホカの白いごはんが甘い香りと共にその姿を現した。この甘い香りだけで食欲がわいてくる。やや小ぶりなお皿にご飯を取り、三種類のカレーをかけてやっとカレーライスの完成である。


 カレーライス (中辛)

とある島国では多くの人に愛される料理の一つ。この料理は辛さの度合いで言うと中辛タイプ。程よい辛さが食欲を誘う一品だが、食べ過ぎて動けなくなるなんて事にならないように注意!

 製作評価 8 STRとAGIが一定時間上昇する。毒に対する耐性が一定時間時間上昇する。


 幸いにして、どのカレーも製作評価は8となった。これなら大外れな味のカレーとなっている可能性はない。さすがに料理人としてム○オ○カレーとかを生み出したくはな……まてよ? あえてモンスター用にそういう一撃必殺の猛毒料理を作るのも良いかもしれない。ある飲み物とか、あるジャムを見習って。

「ねね、出来上がったんだよね? ね! 食べていいんだよね?」

 おっと、ロナちゃんがスプーンを握りしめて今すぐ食べたいアピールをしてきている。ロナちゃんに早速カレーを渡し、ロナちゃんの妖精にもカレーを用意する。外見はグリフォンだが……アクアも嘴で器用に料理を食べるから問題ないだろう。自分の分とアクアの分も用意して一斉にカレーを食べ始める。

「んー♪ やっぱりカレーは美味しいね!」「うん、これなら十分うまくできた方だな」「ぴゅいぴゅい♪」「きゅるるる♪」

 うん、程よい辛さで食べやすい。これならだれに出しても問題はないだろう。ただ中辛なので、辛さを苦手とする人にはきついという点だけはどうしようもないが。そして十分に味わってもらった後(ロナちゃんは三つある鍋のカレーを各三杯食べた。アクアとロナちゃんの妖精は各二杯。自分は一杯……いくら皿が小さ目とはいえ、どこに入ったんだ)、どのカレーが良いかを聞いてみる事に。

「そーだね、この鍋のカレーは美味しいけど……真っ先に落とすかな?」「ぴゅいぴゅい」

 ロナちゃんとアクアの一人と一匹が最初に落としたのは十五種類のスパイスを混ぜたカレーだった。ちょっとくどいような気がするー、らしい。自分ではそんな気はしないのだが。

「きゅるるる」

 そしてロナちゃんの妖精が自分はこれを落とすと嘴で示したのは六つのスパイスを混ぜたカレー。うん、自分もなんとなく物足りないかな? と思ったので同意できる。

「そうすると、こいつを残すって事で良いのかな?」

 自分が十種類のスパイスを混ぜたカレーが入った鍋を指さすと、ロナちゃん&アクア&ロナちゃんの妖精は皆一斉に頷く。ふむ、なら今後カレーを作る時はこのスパイスを混ぜたカレーで行く事にしよう。六種類と十五種類のレシピは破棄して、十種類の方をレシピ用のノートみたいな物に登録しておく。

「試食に付き合ってくれてありがとう、やっぱり他の人の意見も聞くとこういう時はありがたい」

 自分が感謝を述べると、ロナちゃんが首を振る。

「いやいや、こっちも役得だから問題ないよ〜。やっぱりおいしいご飯はいいね。料理人ギルドの人達が作る一級品の料理も良いけどさ、こういうアース君が作る料理もまたいいものだって再確認できたし」

 あ、料理人ギルドなんてあるのか。ワンモアの料理は色々なもの作れるからな、そう言うギルドが出来上がっていてもおかしくはないか。でもそんなギルドのマスターって、一口料理を口に入れたらそれだけで使われている材料を全て言い当てたり、『うーまーいーぞー!!』とか言いながら目と口からビームの様な物を出せたりしないといけないんだろうか。うん、自分の中の何かがすさまじく間違ってるな。

「また料理を作る時は声をかけてよ! ボディガードに試食係もこなすから!」

 ──試食の部分に力が入っているような気がしたがな。さて、それはともかく、まだツヴァイ達が帰ってくるまでには時間があるな。どうしようか……そうだ、料理中にチラッと思いついた一撃必殺の攻撃アイテムとしての料理を作ってみるか!
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次回、誰かがつまみ食いをして地獄を見る! お楽しみに

嘘です。

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv48 小盾Lv31 隠蔽・改Lv3  武術身体能力強化Lv82 ダーク・チェインLv44
 義賊頭Lv29 妖精招来Lv16 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.87

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv26  釣り LOST!  料理の経験者Lv19 ↑2UP 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 26

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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