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連載

あれこれと後始末

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 変装技術と毒関連の技術を学び始めて数日後。ご老人からようやくそれなりに技術を習得したとのお言葉が出た。薬の方は比較的早めに習得できたのだが、難しかったのは変装の方だ。何せどうにも違和感がある顔ばかりになってしまい、一発で変装をしていると見破られると分かってしまう状態だったからだ。

 以前妖精国で悪事を働いていた奴の様な違和感のない顔を作れなければ、変装として成り立たない。因みにこの変装と薬品関係の技術習得を行っている間、アクアには自由行動を取らせている。今日もどこかの空を元気よく飛んでいるはずだ。

「顔の変装に関わる技術は習得が難しいかもしれぬが必須じゃからな。根気よくやるのじゃよ」

 とのご老人の言葉を励みとして、ようやく今日で形になったと言って良いだろう。しかし、変装系のアーツは〈盗賊〉系統よりも〈薬剤〉系スキルの方が重視されているようで、〈義賊頭〉のスキルレベルが2上がったのに対して〈上級薬剤〉のスキルレベルは7も上がっていた。

 もちろん〈義賊頭〉の方が上位スキルなので上がりにくい一面はあるのだろうが、それを考慮に入れても〈上級薬剤〉のスキルレベルの上昇スピードが速い。変装素材の表皮を作る時にいくつかの薬品が必要となるので、その影響がかなり大きいのだろうと見ている。

「とりあえずは基本となる三種類を教えたが、そこからは自分で工夫をしてもう少し顔の数を増やすとよりよいじゃろう。使える手は多い方が色々と助かると言うのはどこの世界でも変わらぬものじゃ」

 一通りの技術の伝授が完了した後、ご老人からはそんな言葉を頂いた。教えてもらったのは基本的な悪党顔であり、ありふれたような感じを受けるのも確かだ。軽い変装に使うならいいが、〈盗賊頭〉として働く時に使う変装の顔はもうちょっと凝った物にしたい所だ。

「毒の方は飲み込みが早かったの。じゃが、念を押して言うがこれらの毒薬は非常に強力じゃ。決して悪用するでないぞ。そして解毒薬を切らす様な事があってはならん、良いな?」

 一方で薬の方だが……念を押されるだけあって強烈だ。毒薬は今までの毒よりダメージが五倍以上に跳ね上がっているし、麻痺や睡眠毒などは事前に飲んでおく専用の解毒薬を口に含んでおかないとまともな行動はとれなくなる。一度その毒の強さを身を持って知るために、ご老人の監督の下で麻痺毒をほんの数滴口に含んでみた所……三分は体が動かなかった。そしてまともに体が動くようになるためにはそこから五分ほどかかっている。

「これは強烈だ……効きすぎる」

 麻痺が完全に解けた後、自分の口からはそんな言葉が自然にこぼれ出た。作る時間と手間は毒素を特定の方法で最大限に抽出して、濃度をとてつもなく高めるために大きくかかってしまう。しかしこれだけの毒の強さであれば直接飲ませたりするだけでは無く、矢に仕込んでモンスター相手に使えばかなりの効果を発揮してくれるはずだ。使う量もおそらく少量で良いので、前に断念した毒系の矢が作れるかも知れない。

「どんな物も使いようによって毒にも薬にもなるのじゃな。お主がこれらの技術を薬として使ってくれることを信じているぞ」

 ご老人と別れるときに、言われた言葉はこれだった。まあ、この毒薬などを街の人なんかに使うつもりはないけれど。そんな事をしたらただの悪党だ。そんなところに堕ちるつもりはないぞっと。そしてもう一つ、行かなきゃならないところがある。それは道具屋のおっちゃんの所だ。あれからそれなりに時間が経ったはずだが(ワンモア世界の一日はリアルの時間で五時間である)、あの親子はどうなっただろうか。雨降って地固まるとなっていれば良いが。

 街の大通りを歩き、様子を伺うがこれと言って変わったことは無い。いくつかのカレーを売っている露店があることはもはや日常だし、マリアちゃんの時の様な行方不明者の情報を募集していると言った物騒な張り紙も無い。

 また、少しピリピリっとした街の空気もやや薄れつつある。東街のバッファローの一件があってからしばらく時間が経過したことに加え、再び他の街でバッファローが集まっている可能性は現時点では認められずとされたからだ。ある程度の緊張感は保つのだろうが、それでもこの街を最初に訪れたときの様な空気ではない。

 そんなことを確認しつつ、道具屋の前に到着する。かなり寄り道してしまったが、痛風の洞窟の奥に進むためにはこの道具屋が取り扱っている各種道具は必需品だ。なのでどうしても訪れなくてはいけない。それだけではなく、あの後のおっちゃんやマリアちゃんがどうなったのかの確認もしなければならないだろう。蹴り飛ばしたこともあって少々気が重いが、それでも道具屋のドアを開けた。

「いらっしゃいませ!」

 そんな自分を出迎えたのは、何とマリアちゃんだった。以前はこんな風に接客に出て来るのはおっちゃんだけだったんだが。

「あ、お兄ちゃん! やっと来てくれたんだね! おとーさん、お兄ちゃんが来たよー!」

 そんな事を考えている自分とは対照的に、明るい声で店の奥の方に声をかけるマリアちゃん。そのマリアちゃんの声に「おーう、今行く!」とおっちゃんの声が。そして少し待っているとゆっくりとおっちゃんが店の奥から姿を現した。そしてほぼ同時に自分に対して深々と頭を下げてきた。

「今回は本当に世話になりました。親子でじっくりと話をして自らの至らなかった所に気がつく事ができ、家庭の崩壊を免れる事が出来たのは紛れも無く貴方様のお蔭でございます。本当にありがとうございました」

 その今までとは違うおっちゃんの言葉に、こっちがやや戸惑った。だが、おっちゃんの言葉はまだ続く。

「あの時貴方様に蹴られるまで、私はマリアの父と名乗る資格を失いかけていた事に全く気がつきませんでした。あの時に蹴られて、娘……マリアの鳴き声交じりの言葉を聞いて。そして自警団の方の言葉を聞いて。私は、私は娘に対し残酷な事をしていたとやっと気が付けたのです」

 ──そうか。だが、気が付けたのなら……何より手遅れにならずに済んだのは本当に良かった。リアルでも家庭崩壊なんて言葉はあちこちに転がっている。そんなことになってしまう不幸な未来はなんとか回避されたとみていいのだろう。少なくともマリアちゃんの笑顔には、そんな未来がやってくるような暗い影は見受けられない。

「お父さんやお母さんに、私も色々と言ったの。我慢してきたことも、納得いかなかったことも。そしてお父さんたちの考えも聞いて……少なくても、私は邪魔者扱いされていた訳じゃないって事だけは分かったから、仲直りしたの」

 マリアちゃんもそう教えてくれた。自分が「そうか、よかったね」と頭をなでながら言うと「お兄ちゃんのお蔭だよ、ありがとう!」とお礼を言われた。

「娘、マリアには店の手伝いをしてもらう事にしました。もちろん無理はさせませんが、出来る範囲はやりたいというのはマリアからの申し出でして。『もっとお父さんやお母さんの事を知りたい、だから手伝える部分はこれから手伝いたい』と言われてしまいまして。大きな騒ぎを起こしてしまい、周りの方々にご迷惑を多々かけてしまいましたが……娘の成長が分かって嬉しいという面もあるのです。不謹慎であるとは分かっているのですが」

 そこはまあ、なんとも。もうちょっと穏やかな形でマリアちゃんの成長を実感していただきたかったが、ここではあえて言うまい。

「そして、今回の貴方様へお支払すべき報酬なのですが……何かご希望はございますでしょうか? 今回は色々とお世話になってしまい、いかほどの報酬を渡せばいいのかが分からないのです」

 うーん、そうだな。ここで何もいらないというのは簡単だが、そう言うとおっちゃんの方は色々と負い目が残ってしまうだろう。かといってバカ高い金額を提供すれば、せっかくたてなおったこの家庭がぶっ壊れる事になる。そうなると……そうだな。

「では、しばらくの間で良いので商品をやや安く売って貰えませんか? あの日この店を訪れた理由は、痛風の洞窟の更に先に行くつもりでして。そうなるとここで各種道具を大量に買う事になります。その代金を多少で良いので負けて頂ければ、十分に今回の一件に対する報酬になりますので」

 この自分の提案に、おっちゃんは難しい表情を浮かべた。が、それでいいのであればと首を縦に振った。これで現時点でやるべき事や心配事などは消えたかな。明日からは痛風の洞窟に再チャレンジしよう。
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一部の人に伝言。 

無理っ!

スキル

風迅狩弓Lv40 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv38 百里眼Lv32  技量の指Lv49  小盾Lv31 隠蔽・改Lv7  武術身体能力強化Lv82 ダーク・チェインLv44
 義賊頭Lv33 ↑2UP 妖精招来Lv16 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.88 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34 ↑7UP  釣り LOST!  料理の経験者Lv22 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 30

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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