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連載

闘技場

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5巻制作作業でこっちに手が回らずです。
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「こちらの馬鹿二人がご迷惑をおかけしました」

 闘技場への案内を行ってくれると申し出てくれた雪女? さんはその途中でそんな言葉を口にした。ちなみに外見は白い着物に白い髪という一般的なイメージと同じです。

「あー、その、まあ。漫才と思えばそれなりに楽しかったですけど」

 ドつき漫才的な感じで。まあ実際は大喧嘩だったんだろうが、どうにも雰囲気的にはギャグ空間だったよな。そもそもド突きあいで砕けてもすぐに再生する体の特性がますますギャグ補正を高めたと思う。それに対して文句を言うつもりは全くないけど。面白かったし。

「そう言って頂けるならばありがたいですね。まったくあの二人は、遊びを覚えたせいかこのようなご迷惑をかける失態を犯すとは。後できつくお仕置きをしておきますので……」

 ──氷柱閉じ込めは十分にきついお仕置きだと思うんですが、あれでも生ぬるいと。とは言えここであれこれ口を出してもどうにもならないよな。アイスガーゴイルのお二人、骨は拾ってあげるよ。残っていれば……というより、骨自体があればの話になるか……あるのかな?

「そこはお任せします。それはとりあえず一旦横に置いといて、闘技場のルールみたいな物があれば教えていただきたいのですが」

 自分の要請を受けて、雪女? さんは「では、歩きながらご説明を行わせていただきます」と断りを入れてから話し始めた。


1.基本的に一対一のタイマン勝負。要請があれば二対二の勝負形式をとることも可能。

2.止め(完全に殺す事の意味で)は厳禁。あくまで勝負を行う場であって殺し合いではないため。

3.勝利とみなされる条件は、相手が負けを認める、相手がダウンした後にテンカウント以内に起き上がってこれない、相手が場外に叩き落された後にテンカウントを数えられる。

4.補足となるが、場外に落ちた相手が復帰することへの妨害を禁じる。妨害した時点で妨害を行った方が負けとなる。

5.武具の使用は許可される。

 どこのプロレスですか。違う点は場外のカウント数とか復帰妨害の面とか武器の使用が許可されてる所か。──あ、けっこう違うな。それはともかくとして、ローマのコロッセオとかとは違ってあくまで純粋に勝負をする場所であって、殺し合いの場ではないという事だけは間違いないか。

「命を落とす可能性はまずありませんが、それでも万が一はございます。その点だけはご覚悟の上で戦って頂きたいです」

 雪女? さんが最後にそう付け加える。まあそれはそうか、ルールがあるとはいっても戦いなんだからな。実際今までにリアルの方にも戦った結果、帰らぬ人になってしまった人がいる。もちろん対戦相手だって殺そうとしたわけじゃないが……結果的にそうなってしまった事例はある。その万が一は覚悟しておけという事だろう。

「了解です、万が一が起こっても貴方達を恨むような真似は致しません」

 まあ、その万が一が起きたとしてもデスペナ貰って街に強制リターンされるだけなんだけどね。何というか、身もふたもないというかずるいというか。この世界にお邪魔しているお客故の特権みたいなもんかねえ。

「その万が一が起きないようにこちらも色々と手は尽くしておりますが、それでもゼロではありませんので……確認はとらねばいけませんから。それと、あのお馬鹿二人の様子ではおそらく伝わっていないと思いますので……迷路担当のグラキエスからの伝言です。『進行速度はやや遅かったが、罠の発見と解除能力は見ごたえがありました。再挑戦をお待ちしております』との事です」

 ふむ、そう言う感想ですか。確かに進行速度が遅かったのは事実だからそう言われても仕方ないか。次回は迷路へのリベンジと行きますかね? ゴールはできないまでも、もうちょっと進んでおきたい。ただ事前準備なしでは無理だな……サングラスみたいな物をかけて、光の反射とかを抑えないと見難いことこの上ないエリアだったからな。そういった物を持ち込んじゃいけないとは聞いてないし。

「では、そのうち再び挑戦しに伺いますと伝言をお願いできますか? いつごろになるかまでは確約できませんが」

 サングラスってこの世界で作るとなると何になるんだろ? ガラスみたいな物を材料にするなら鍛冶? どっちにしろリアルのサングラスとは別物になるな。外見だけ同じで材料は別物。フレームは木で作ればいいや。そうすれば何とか自力で作れる……か? 後で親方に相談しよう。往復手段はアクアに運んでもらえばいいだろう。

「解りました。お伝えしておきますね。良い暇つぶしになるとあちらも喜ぶでしょうし」

 まあその一言に集約されるんだよね。つまり普段とは違う存在が訪れて空気をかきまぜてくれるので退屈が紛れる、と。

「報酬やらお宝があればもっと多くの人が来るだろうに……」

 だが、場所が悪すぎる。一般の人が来るには厳しすぎる場所で、冒険者(プレイヤー、こっちの世界の人々含む)にとっては金銭的な収入が望めないから来る理由が薄い。スキルレベル上げなどの修行にはなるが、それに加えてそれなりの収入がある場所はいくつもある以上……ここに来る理由はどうしても弱くなってしまうよな。

「そこは価値観の違いとしか。それにここには金を始めとした外の人の財宝に相当する物が一切ありません。さらに付け加えさせていただくなら、私達にとっては金なんてあった所で邪魔にしかなりませんから」

 ──そう言われてしまうとなぁ。まあまさに生態系も価値観も違うからどうしようもない所だよ。ここに居るモンスターの皆さんは、ここの冷気が食事みたいな物なんだろうし。服は必要ないし、住処はここって事で、衣、食、住全部がそろってしまっている。そうなると確かに金貨などは邪魔になるだけ、か。所変われば品変わるとはよく言うれどさ。

「まあ、そういう物だという事で理解はできます。邪魔なものを抱え込んでも面倒なだけですからね。どうしても抱え込むとなれば相応の理由がなきゃおかしいですし」

 雪女? さんからの言葉にはそう返しておく。

「ご理解いただけたようで何よりです。さて、もう少しすれば闘技場に到着します。ですが最初は軽く観戦を行って頂きます。ある程度場の空気を掴んでいただいて、それから出るかどうかを改めてお伺いします。もちろん観戦だけに留めて頂いても結構です。普段とは違う存在が見ているというだけで、空気と言う者は大きく変わるものですから」

 へえ、そのまま控室に案内されて戦ってください、ではないのか。まあありがたいと言えばありがたいか。とりあえず闘技場の武舞台の大きさとか、戦いの様子とかを見られるのはありがたい。先ほどのガーゴイルの二人が見せた戦い方が一般的だとは思えない。

「分かりました、では最初はじっくりと戦いの様子を見せていただきます」

 という事で闘技場についた自分は、雪女? さんの案内で闘技場の観客席に腰を下ろした。当然周りには各種氷のモンスターの皆さんがひしめき合っていらっしゃいますが、襲ってこずに「よく来たな、ゆっくりしてけ」とか「気が向いたらぜひ出てくれよ」などと暖かく迎えて頂いた。氷の世界なのに暖かい出迎えとはこれいかに。ちなみに闘技場は石? の様な物で出来ていた。そして肝心の武舞台の上では、クマ型のモンスターさんとリザードマン型のモンスターさんが戦っていた。

 んで、リザードマン型の方はシャムシールの様な剣とバックラー、後はチェインメイルを纏っている。クマ型の方はこれと言った装備品は無し。戦闘内容は、剣を用いているのである程度の間合いを取って戦いたいリザードマン型と、打撃と投げで戦う故にほぼ密着状態で戦いたいクマ型が間合いの測り合いをしている所である。

 一応補足しておくと、クマ型は本当にリザードマン型をぶん投げる。似非パワーボム、似非ボディスラム、似非バックドロップ……などなど、多彩な投げ技を使う。投げが決まるたびに派手な音が響くので会場も湧く。

  リザードマン型の剣技も素晴らしいのだが、盛り上がりという上ではクマ型の投げ技に全部持っていかれてる感じがするなぁ。リザードマン型が繰り出す剣舞を見切って一気に距離を詰めて掴み、高く持ち上げて叩き落す投げ技は見ごたえがある。

 とはいえ、この戦いは最終的に投げを受けても堪えに堪えて起死回生の一閃を決めたリザードマン型にが勝利したが。うーむ、ここに出る資格が自分にあるのか、この一戦を見ただけでかなり悩むことになったな。どうしよ?
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