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連載

ハーピー達の家

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「さてアース、あの霧を体験したことで湧き上がってきた疑問に答えとくぜ。なんで先回りのように言うのかって理由だが、俺達が最初に体験した時にフラッドを始めとしたケンタウロスの皆さんに質問攻めをやっちまって迷惑掛けちまったからだ。おんなじことを何度も繰り返したくはないしな」

 霧を抜けて点呼を取った後に前進を再開したのだが、ツヴァイがが自分の近くにやってきてそんな事を言い出したのである。

「了解、とりあえず話を聞くよ。そしてその話を聞き終えた後で分からない部分は再度質問する、という事で良いか?」

 自分の言葉に、ツヴァイは「ああ、そうしてくれよ」と返答を返してきた。まあなんにせよ、とりあえず話をきちんと全部聞くか。良く人が話している途中に割り込んで質問をしてくる人がいるけど、アレは大抵の場合は邪魔にしかならんのよな。

「んじゃ、ちっと長くなるかもだがまずは聞いてくれ。まず、あの霧はいつからあるのかーって事はケンタウロスの皆さんも解らんらしい。相当昔からあの森にはあの霧がかかってるって事だけは間違いないらしいけどな。あの霧はケンタウロスの皆さんや、ハーピーさんとかの一部を除いた生物の方向感覚などを狂わす性質がある。それは身を持って体験したろ?」

 ツヴァイの言葉には頷くしかない。回りは真っ白で何も見えないわ、どこをどう進んでいるのかの感覚も解らないという状態になっていたからな。間違いなく一人で入ったら死ぬまで出ることはできないだろう。魔法使いの人はもしかしたら何らかの脱出魔法を手に入れているかもしれないが……。

「んで、これまた体験してもらったように俺達があの霧を抜けるにはケンタウロスの皆さんの様な協力者が必要になるんだ。そして、ケンタウロスさん一人につき、他の種族一人までしか案内することはできないというルールみたいな物がさっきの霧にはあるらしくてな。一人ずつ手を繋いで霧の中を案内しようとすると、その全員が森の霧に迷う事になる。ケンタウロスの皆さんの感覚が、二人以上一緒に案内しようとすると大幅に狂うらしい」

 やはりそんなルールというか制限があるという展開は読めていた。そうじゃなきゃ、これだけ大勢で来る理由がないからな。とはいえ、こうして確信を持たせてくれることはありがたいけど。

「ちなみに、ケンタウロスの皆さんの背中に乗せてくれってのは基本的にNGだぞ。どうしても背中に乗せてもらいたけりゃ、決闘して勝つか……」

 ツヴァイのこの言葉に、自分の隣に居たシェルフィルさんがすっと割り込んだ。

「我らの同胞になる、つまりは我らの誰かと結婚するかだな」

 ツヴァイが「そうそう、その二つの条件のどっちかになるな。あ、言っとくが重傷者を医者に運ぶ時とかの緊急時は別だぞ? そこまで融通が利かない人たちじゃないからな?」という念押しも入る。だから手を繋ぐと言う方法を取った訳か。

「最後に霧の中に居るモンスターなんだが、これまた詳しい事は一切わからん。そんなに強くないみたいなんだが、色々と正体不明な部分が多くて放置するしかないって状況だ。襲い掛かってきた時はケンタウロスの皆さんにお任せするしかないな……とりあえずこんな所だが、なんか質問はあるか?」

 うーん、そうだな……ああ、ダンジョンの事を聞いてみるか。

「ツヴァイ、隠しダンジョンを見つけたと言ってたが……もしかしてそのダンジョンも霧を抜けたこっち側にあるのか?」

 この自分の言葉に、ツヴァイは頷く。

「あの霧を抜けてこれから向かうハーピーの皆さんの生活エリアとは道が違う所にある。そこは一見普通の森なんだが、足を踏み入れると特定の獣道以外の通行が厳しく制限されている空間が広がっているんだ。ちなみにそのダンジョンの壁役を果たしている木々は燃えないぜ。

 少し前にミリーがやむを得ずファイアランスをモンスターにはなって避けられたことがあったんだが、ランスが刺さった木は焦げ跡すら残さなかった。まあそのお蔭で森の中でありながら火力のある火魔法を気軽にぶっ放せる事にも繋がったんだがな」

 あー、火っていう属性関係上、周囲が炎上するのが怖いものねえ。古典的なダンジョンである石作りで出来ている場所とかならいいけど、ワンモアはそうじゃないところも多いからな。その代わり純粋な威力という意味では、火は他の魔法を凌駕する。もちろん他の属性が弱いわけではないが……純粋な火力の話である。大事な事なので二回。

「ついでに言っておくと、そこに居るモンスターはアリとか、イノシシとか、シカとかの系統だな。だけど、出て来るモンスター全部が魔法も使ってくるし近接のアーツも使ってくる。かなり強いぜ? その分倒すと使える素材が獲得できるとかスキルレベルの成長が進むとかの恩恵も十分にあるんだけどな」

 蟻は甲殻とか蟻酸とかかな? イノシシは毛皮に肉、牙とかが使える。シカも角、毛皮、肉が取れるだろう。おそらく肉はどこかに持ち込んで調理してもらっているか、ギルドメンバーの料理が得意な人に回して料理を作ってもらっているんだろう。

 そんな話を聞きながら歩くことしばし、シェルフィルさんから「もうそろそろハーピー達の巣に付くぞ」とのお言葉が。さて、どんな巣なのかがちょっと楽しみだ。ハーピー達の体の大きさから、一般的な鳥たちが作るような木の上にある巣に生活しているとは思えないが……まあ見てみればわかるか。

 って、そう言えば今回自由に散歩させてるから別行動しているアクアを始めとした妖精国のピカーシャの皆はどういう所に住んでるんだろ? 以前見た場所は、あくまで療養用の場所だったし。

 そんなどうでもいいことを考えながら歩くと、ハーピーの皆さんがお出迎えするかのように勢ぞろいで待っていた。お母さんんハーピーの大きさもさることながら、しばらく見なかった子供ハーピー達の身長が一メートル七〇センチぐらいの大きさにまで伸びていた。ずいぶんとでっかくなったもんだ。まあそれだけ元気に成長してるという証明でもあるか、ハーピー達の顔色も良いしね。

「本日は私達ハーピー一家の家にようこそいらっしゃいました。出来る限りにおもてなしをさせていただきます。立ち話もなんですので、こちらへどうぞ」

 そして招かれた先にあったのは……どでかい木をくりぬいて作ったツリーハウスだった。ツリーハウス自体はエルフの里でも見たが、ハーピー達が不自由なく使える広さを確保しているために特大の大きさであるという点が違う。というか、良い家に住んでるな……ちょっとうらやましいぞ。

「では貴方達、きちんとお客様たちをあの部屋に案内してね。お世話になった皆様なのだから、決して失礼の無いように。私は皆様にお出しする食事の用意がありますからね」

 そう言い残して、ハーピーのお母さんは一足お先にツリーハウスの中へ。そして残された自分達は、ハーピーの子供達(と言っても身長的にはもう子供でもないが)の案内で、広々とした応接間の様な部屋に通された。ツリーハウスの上の方にあったその部屋は、自分やブルーカラーのメンバーのプレイヤー、ケンタウロスの皆さん、ハーピーの子供達が入ってなお十分すぎるスペースがあった。贅沢な一室だなぁ。

「皆様、食事を用意いたしました。お気軽につまんでいただければ幸いでございます」

 しばらくブルーカラーの面々にハーピーの子供達、ケンタウロスの皆さんとあれこれ談笑や質問などを交し合っていると、ハーピーのお母さんが料理を運んできた。野草と各種お肉が使われた料理がならぶ。なかなかに豪勢だな。街で料理の店を出してもおかしくないレベルと言っても良いかもしれない。漂ってくる香りが食欲を誘う。

「こりゃすごいな」「これはありがたい、遠慮なく頂くとしようか」「おかーさん、今日は特にすごいねー」

 そんな言葉のやり取りがあった後に、各々が用意された皿に料理を取って口に運ぶ。うん、いい味だ。自分の作る料理よりおいしい……な。このシカ肉のハンバーグ? みたいな料理はおいしいな。肉の味に疲れたら野草のサラダがあるからそれでさっぱりとさせることができるし。っと、そろそろこちらからも一つ差し入れをするか。

「では自分はこの飲み物を提供します。皆さんどうぞ」

 果物から作ったシンプルな各種のジュースをアイテムボックスから取り出す。自作品なので大した経費はかかっていない。「あらあら、申し訳ありません」と追加のコップを用意してくれるハーピーのお母さん。そのコップにブルーカラーの面々とジュースを注いで次々と回してゆく。こうして和やかな雰囲気の中、食事は進んだ。
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しばらくはのんびりモード。
ツヴァイ君たちもワンモア世界の住人と良好な関係を結んでいます。
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