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森での戦い、その3

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 そうして修行の再開……と会話の流れから行きたかったが、それなりに奥まで進んでいることに加えて時間もかなり経過していたので今日は引き上げる事に決定した。

 引き上げる為にはここまで進んできた時間と同じだけの時間が必要だし、RPGでよくあるダンジョンからの一発帰還を可能とするアイテム、ならびに魔法は少なくとも今いるメンバーでは使える人がいない。だからこの辺で交代することになる。転移できるアイテムの価値をひしひしと感じるな。

「引き上げるときが無意識の油断を招きやすい。これは新人でも玄人でも大差ない……まあルーキーに比べれば玄人はその油断をする可能性は非常に低くなるが、念のために、な」

 リフールさんの言葉に皆が頷く。いくら途中で休息を挟んだとはいえ、出発時より間違いなく注意力が散漫になる可能性が高い帰還時の行進は危険が伴う事が多い。だからこそ念を押すという意味でリフールさんは口にしたのだろう。その言葉に反発する様な人は、この場には居ない。

「では引き上げましょうか。ここに来る時よりも慎重に」

 このカザミネの言葉で、森を出る為の行進が始まった。とはいってもしばらくの間モンスターの接近はなかった。たまに天然? の落とし穴などがあったが、それは自分が指摘することで誰もはまらずに済んでいた。モンスターの襲来があったのは、あと少しで森を抜けるという所までやってきたところだった。モンスターの反応が《危険察知》に引っかかる。

「全員停止! そして戦闘態勢に!」

 自分の声を聞いたPTメンバーは、疑問などを口にすることなく各々の得物を手に持って構える。すぐさま行動に移ってくれるのは、自分の索敵能力を認めてくれているからこそだな。

「前にイノシシが三。これはまだいいとしても後ろからイノシシが四匹ほど高速で迫って来ている! これ以上前に進むと挟み撃ちにされるぞ! なので、後ろから迫ってくるイノシシ四匹を先に対処し、その後で前方に居るイノシシ三匹を殲滅することを提案する!」

 数で負けた上に挟み撃ちなんて状態になったら目も当てられない。それにしても、なんでこんなタイミングで挟み撃ちになるんだ? 偶然か? それとも……が、今ならまだ挟み撃ちになるような事態は回避できる。回避できるのならばわざわざ危険な状態に状況を悪化させる必要は無い。ピンチに陥ってそれを跳ね返すのは英雄様に任せる。

「そだね、わざわざ挟み撃ちにされる理由はないもんね。アース君の提案は間違ってない。後方からくるイノシシを返り討ちにしよう」

 ロナの言葉がきっかけとなって自分の提案は了承され、前後の編成を変更する。一応前方に居るイノシシ三匹がこっちに気づいて向かって来てもいい様に、防御力の高いシェルフィルさんは後方に配置という形は継続だ。これらの準備がぎりぎり間に合った所でこちらに突進してくるイノシシ四匹が目に入ってくる。《百里眼》を使うまでも無い。

「四匹か……だが、私の防御を舐めるなよ!」

 リフールさんが少し荒っぽい言葉と共に盾を地面に突き刺す。どうやら突進してくる四匹のイノシシを受け止めるつもりだ

「無理をしないでください! 最初の突進は回避しても良いんですよ! 幸いここはそれなりに広いですし!」

 カザミネが声をかける。だが、カザミネの言葉に対し、リフールさんは首を振って反論する。

「いや、ここで奴ら四匹を回避した場合は、ある程度奥に突っ走られることになる。そうすると向こうに居るイノシシ三匹がこちらに気がついて加勢してくる可能性が否めない! それを防ぐためにもここは受け止める! 大丈夫だ、何も考えずに受け止めようとしている訳じゃない!」

 なるほど、何か方法があるという事か。ならば任せる事にしよう──という事を、自分はカザミネに視線で訴えかけた。その自分の事を見たカザミネは、少し考えた後に頷いた。

「分かりました、ならば受け止めた後にできるイノシシ達の隙をついて一気にダメージを与える役目は任せてください!」

 カザミネの言葉に、今度は頷くリフールさん。そして盾を構えるリフールさん目がけて殺到してくる四匹のイノシシ……というか、同時にぶつかれるのはリフールさんの盾の大きさからしても二匹ぐらいだ。残り二匹は……とおもったら、何と二匹二列という陣形を組んで突進してくる。仲間ごと突進するつもりか!? そして十メートル、五メートル……そして。

「《デミ・キャッスルウォール》!」「「「「ブギィィィィ!!」」」」

 アーツを発動したリフールさんと、イノシシ四匹がまともにぶつかり大きな音を上げる。だが、それでも後ろに一歩も引かなかったリフールさん。そしてリフールさんは、盾を横にずらしてから開いている右手を振りかぶる。

「これでどうだ!」

 殴る為のセスタスが付けられたその右腕は、衝突したためにスタンしたらしいイノシシの一匹に突き刺さった。それは殴ったという表現では済まされないレベルで、まさに拳がイノシシの脳天に突き刺さったという表現をせざるを得ない。ゴギョッ、という変な音と共に。

「今だ、リフールの盾に無謀な突進をした対価をイノシシが支払わされた状況になっているここ、この時こそが好機! 皆で一気に攻め立てるのだ!」

 シェルフィルさんの声で自分が、カザミネが、ミリーやロナが動き出す。イノシシたちは厄介な攻撃手段も持っているし、こんな森に生息しているのだから耐久力もある。が、何事にも例外がある様に今のスタンして無防備になっているイノシシ達ならば倒す事はそう難しくない。

「『惑』、あいつを貫け!」

 自分はダーク・チェインの即死を誘うアーツ《サドンデス》を発動してから惑を鞘から抜き放ち、リフールさんに殴られている個体とは別のイノシシに狙いを定めて漆黒の刃を伸ばす。動かない相手ならば、弱点である心臓部分を狙いやすい。

 消費MPが全体の25%を要求されるというコストの重いアーツだが、こういうチャンスが巡ってきた時には使うべきだろう。一匹でも早く消し飛ばせば、それだけ他のメンバーが楽になる。射程もパッシブアーツのお蔭でその場から動かなくても十分に届く。

「ギッ!!」

 惑によって柔らかい下腹部から容赦なく闇の刃にて貫かれたイノシシはそんな悲鳴? を上げると光の粒子となりながら砕け散る。よし、確実に心臓を捕える事が出来たようだ。《サドンデス》は急所に当たらないとダメージはほとんど無いからな……即死したという事はきちんと急所に当たったという事になる。

「こんのおーっ! ボクの一発を食らえーっ!」「切り捨て、御免!」

 ロナやカザミネもこのチャンスを生かしてまだ復帰できないイノシシに攻撃を叩き込んでいく。二人のラッシュが動けないイノシシを消し飛ばす。これで残り二。

「シェルフィル!」「任せなさい!」

 その一方でイノシシをボコっていたリフールさんとそのイノシシに矢を射かけていたシェルフィルさんだったが、リフールさんが右手一本でイノシシを宙に投げ飛ばすと、がら空きになった下腹部にシェルフィルさんの矢が飛び、貫く。こうしてこのイノシシも消滅して残り一。ここでようやく倒されてない最後のイノシシがスタン状態から復帰したが……すでに自分一人となっていた事に気がついたようだ。

「ぴ、ぴぎっ?」

 み、見逃して? というニュアンスで良いのだろうか。こんな妙な反応するモンスターを見るのも久々だな。が、当然ながらPTメンバーの反応は……

「仕掛けてきたのはそちらだろう」「話にならんな」「ふっふーん、もうちょっと殴りたいなーってボクは思ってるよ?」「あらあら〜いけませんね〜、仕掛けておいて逃げるなんて許されないに決まってますよ〜」「私の愛刀は、貴方の血を求めています」

 とまあ、みなさんそんな暖かいお言葉を最後の一匹となったイノシシにかけている。時にカザミネ、お前さんの刀はコテ○じゃないんだぞ?

「ま、あれだけの攻撃をこちらに仕掛けてきた以上は……見逃す義理もない、って事で」

 自分の言葉がきっかけとなり、PTメンバーの攻撃がイノシシ降り注いだ。さすがに六VS一じゃ何もできず、最後の一匹も消し飛ばされた。というより、皆さんの攻撃がかなり容赦なかった気がするが。この勢いで森の出口にたむろしていたイノシシ達三匹もブッ飛ばした自分達は、だれひとり欠けることなくダンジョンとなっている森から生還した。
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スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv42  百里眼Lv37  技量の指Lv53  小盾Lv39  隠蔽・改Lv7  武術身体能力強化Lv90  ダーク・チェインLv49 義賊頭Lv43 ↑1UP 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.92

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34  釣り LOST!  料理の経験者Lv22 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 36

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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