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連載

考え事後半、武器関連

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(さて、と。休憩もこれぐらいにしてこっちを考えないとな。ログアウトすべき時間は迫ってきてるし)

 今使っている弓である伏虎の弓だが、今回の森で行った戦闘で双咆と比べてしまっている自分がいた。伏虎も悪い弓じゃないんだが、やはり純粋な攻撃力でも特殊能力でも双咆がはるかに上なのは言うまでもない。今日の戦いでも双咆であれば撃ち貫けたのにと思うシーンが数回あったからな……不満の内容は、単純にいえば火力不足だ。

(やはり双咆は別格の強さを誇っていたって事だな。しかし、だからと言って今倉庫に預けてあるドラゴン素材はあと一回弓を作ったらなくなる量しかない。今の自分の技術で作ったら、もう一回双咆が出来るだけに留まるだろう。今はそれでもいいかもしれないが、まだこの世界における冒険にはこれから先があるはずだ。そうなると、もっといろいろな素材やスキルレベルを上げてから取り掛かった方が良いに決まっている。どうした物か……)

 今からファストに取って返して弓を作れば火力の増強は行える。だが、先を見据えた場合はまだ早いと言う可能性もある。今まで種族と同じだけの国があっただけに、魔族の皆さんが住む国があるはずなのだ。魔王様も居ると魔族の人は言っていたからな。せめてその魔族の皆さんが住む国に行って、より良い素材を見つける為の探索をするまで、新しい弓は作るべきではないはずだ。

(それは解っているんだがなぁ……弓系スキルのレベルアップとランクアップにおける強化が限界を迎えてしまった以上、後は自分自身の技術を磨く事と、武器の強化を行っていくしか方法がないんだが……)

 そうして伏虎の弓を自分は眺める。しかし、伏虎の弓はレジェンド等級の一品である上にこの国の一流職人が作り上げている一品だ。それ故に下手にいじるわけにもいかない。やはりいじるのであれば自分で武器を作り出すしかないだろう。そうなると、この獣人連合での冒険がひと段落したら、しばらくの間坑道で素材を集めて火事場に籠り、スキルのレベル上げを行いつつ新しい弓の設計図を描く必要があるだろう。

(鉱石の探索とかも久しく行っていなかったな。色々とありすぎて疎かになっていたって訳か……後でこの獣人の国とエルフ、ダークエルフの方をもう一度めぐって鉱石を探そうか。スキルのレベルアップにもなるし、もしかしたら思いがけないアイディアがぽーんと浮かぶかもしれないし)

 今後の冒険というか行動内容はそれでいいだろう。移動にはアクアに頑張ってもらえばなんとかなるし。そうなると、今をどうするかだが……

(大幅な武器の強化は無理だな。そもそもスネーク・ソードは魔剣という一級品を手にしているのだから強化を考える必要はない。今日の戦いで《サドンデス》を放った時も、あっさりとあのイノシシの腹を食い破ったから特に問題はない。蹴りはPTを組んでいる時はまず滅多に出番がないからこれも除外していいだろう。使ってないから装備に痛みも出てないし。そうなるとやはり弓という所に戻ってきてしまうんだな)

 こうなると堂々巡りだ。とはいっても、それを一気に好転させる材料は今の自分の手持ちにはない。お金を払って弓を買うと言う方法もあるが……大抵最高の一品はどこかのギルドに流れる事が多い。

 一般市場に出て来る時は大抵オークションだ。自分は今まで自作して来たからそういう事には縁がなかったと言うだけに過ぎない。それでも一応どんな感じなんだろうかと情報が飛び交う掲示板をいくつかめぐってみたが……出るのはため息ばっかりだ。

(Atkの値が七〇台に乗るだけで数百万か。それに加えて付与されている特殊能力が有用であればあるほど青天井だなこりゃ。もし双咆をここに出したらとんでもない値段がついたことは間違いない。どっちにしろ、今の自分が気軽に買えるお値段じゃないなぁ。それ以下になると値段も安くなるけど伏虎の弓を使った方が良いし)

 掲示板を閉じてはぁ、ともう一度溜息。やはり今すぐに弓の大幅強化を図ることは不可能だ。もうしばらくは伏虎の弓に頑張ってもらうしかないだろう。物のついでにちょいちょいと伏虎の弓を修理しておく。

(やっぱりシェルフィルさんの放った一矢が目に焼き付いているんだろうな。イノシシの体を貫き通して行ったあの強い一矢が)

 火力不足を感じたのは、やっぱり今日の戦いで見たシェルフィルさんの姿が原因だろう。イノシシの外皮をやすやすと貫いて言ったあの威力。今の自分にはできない事を易々と行っていたあの一矢に自分は嫉妬してしまっていたのだろうか。

 とは言え、もちろんあの一矢は良い弓を使えば放てると言う物ではない。相応の訓練と経験を積んだが故に放てる強力な一矢であるという事は想像に難くない。この世界はそう言う面は公平だから、ケンタウロスの皆さんが修行をせず、最初からもって生まれた力であるという事は否定される。

(──火力の向上は必須だが、今は無理だと結論づけておこう。とりあえず《ソニックハウンドアロー》をレベルアップさせた事で、いざという時に頼れる攻撃は得た。後は牽制に主眼を置き、シェルフィルさんの動きを見て勉強をさせてもらうと考えを改めよう。そうした方がない物ねだりを続けるよりもよほどましな結果になるだろう)

 無いなら無いで仕方がないなのだ。ならば無いなりにできる事を探し出し、少しでも改善していく方がよほどいい。なぜなら、他者を変に羨む事ばっかりしているとロクな事にならないから。特に、羨むだけでは自分自身は何にも変わらないどころか、むしろ心が腐っていくことになる。羨むのはいいが、じゃあ自分もあんな風になる為にはどうしたらよいかと考えていかなければ自分自身の向上はあり得ない。

(それに、今日の戦いである程度モンスターの動きも学べた。魔法を使ってくるシカとやらには出会えなかったが、これは出会った時に考えればいいことだ。今まで覚えるだけで使ってこなかったアーツをこの機会にしっかり使っていく。そうしてExPがまた十分な量まで溜まったら使いやすかったアーツや、ここ一番で頼りたいアーツのレベルを上げていく。これが今できる事だな)

 ある程度考えが纏まると、再び自分は溜息を吐く。ここから先の旅はより一層厳しくなる。周りが成長していくのに、自分は限界を迎えた。シミュレーション系統のゲームだったら間違いなく二軍、いや、三郡落ちになるキャラクタータイプだろう。

 だからこそ、これからの自分は一点特化の強さではできない事をこれからはより一層探していかなければいけない。それが出来なきゃ、ただの器用貧乏に成り下がってしまう未来しかない。

(が、それもまた面白い。何も真っ向勝負だけが、そして不意打ちだけが闘い方じゃない。あれこれともっと貪欲に色んな事を試してみよう)

 これから先はそうやっていこうと決めた所で、突如指輪から声がかかる。

(「私の事を忘れてませんか?」)

 指輪の中に居る分身体が指輪の上に幻影の体を浮かび上がらせる。そういやすっかり存在を忘れていた。何か話があるからこうやって呼びかけてきたんだろうし、茶々を入れるのはやめておこう。

(「まあいいです、私も魔剣の『惑』ちゃんを通じてもっと戦力になれる体制がやっと完成しました。今後はよりマスターの援護が出来るようになりましたので報告を入れます」

 なんだろう、なんとなく不安になるんだけど……とりあえず聞いておくか。

(「マスターと『惑』ちゃんのつながりがかなり密接になってきたので、『惑』ちゃんの柔軟性、切断力、耐久性などの力がより強く引き出せるようになりました。そして私がマスターの考えや望みを前よりもはっきりと感じられる様になったことで、『惑』ちゃんの動きがより早くなってます。」)

 おお、これは朗報だな。そういったパワーアップは非常にありがたい。この調子なら、自分が魔剣の鞘になるのはそう遠い事ではないのかも知れない。

(「具体的にいうと、今後大剣相手であろうと鍔迫り合いが出来るようになります。さらにつばぜり合い中に切先を伸ばして相手を切り刻むことも拘束することもお手のものになりました♪ そして切断力も上がりましたので、より硬い物もバッサリと断ち切れるようになりました」)

 ──なんだろう。魔剣がパワーアップして嬉しいのは間違いないはずなのに、どんどん一般的な悪党がとるような行動が増えていくような。いや、目の前に居る分身体はらぐろがよりそっち方面にパワーアップしてしまったのか? 追及はしたくないなぁ。なんとなく、軽く頭痛がするような……

(「ですので、中距離になったら弓矢から『惑』ちゃんを積極的に使うという方向にシフトして頂ければと思いまして。『惑』ちゃんも力をより引き出せるようになってやる気満々ですから、少々乱暴に使っても問題ないですよ〜。では、そろそろお休みでしょうから私も指輪の中に戻ります。またね〜」)

 ──とりあえず、明日だな。明日戦ってみて、それから考えよう。
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クィーンの分身体がよりはっちゃけてきました。
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