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連載

再び森に

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 鹿のボス? のせいで森の探索を諦めてPTメンバー内でPvPによる戦闘訓練をした翌日。メンバーはまたミリーが入ってエリザがツヴァイ達に合流した状態に戻り、再び自分達は例の森を目指していた。

「今日はどうです? まだ近くに何らかの脅威を感じますか?」

 森に数歩入った後にPTはいったん全身を停止した。そして周囲を探る自分に対し、カザミネが問いかけの言葉を発して来た。

「──今日は大丈夫かな? 先日感じた様な嫌な感覚はない、な。このまま森の中へと進んでも良さそうだ」

 自分の言葉に、ホッとした空気がPT内に流れる。まあ昨日は突然大物が出てきちゃったからな。討伐するための準備や人員が揃っているならばいいが、そんな準備も心構えも全くなかったわけだからなぁ。とにかく、今日は昨日の分を取り返すぐらいに意気込みでこの森における探索をしたい所ではある。

「よし、問題がないのであれば今まで通りの陣形でゆっくりと進むことにしよう。油断はできないからな……そしてアース殿は申し訳ないが警戒も頼む。貴殿の魔物に遭遇することを始めとした危険に対する察知能力は我々より上だからな、頼りにしている」

 リフールさんの言葉に自分は頷く。そうだな、確かに弓のスキルレベルはカウンターストップしてしまったが、自分のできる事は弓による遠距離攻撃だけじゃない。色々な事がそれなりにできる、という事でスキルを選んだ初心を忘れてはいけない。それに、探知能力を持つ盗賊は重要なポジションである事も忘れちゃあいけない。しっかりと心身を引き締め直さねば。

「では行きましょうか〜、モンスターの集団さんは適当に歩いているだけでもやってきますから〜」

 何てミリーの言葉と共に、森の中に進むべく足を動かし始めた自分達。ああ、そう言えばPTメンバーの皆に前もって言っておかないといけない事があるな。

「モンスターに出会う前にちょっと言っておかないといけない事がある……少し自分のスキルやこのスネーク・ソードを強化したので、もしかしたらちょっと変わった事が起きるかもしれない。それでもモンスターに攻撃が行っている以上自分のやった事なので、驚かないでほしい」

 スキルの強化によってスキルの見た目が変わっているかもしれないし、この魔剣、惑ちゃんがどう動くようになったのか皆目見当がつかないから前もって言っておく方が無難だろうな。自分の言葉に他のPTメンバーは首をかしげる様子も見せたが、とりあえずは了解してくれた。さて、後はモンスターが出てきたら精一杯戦うだけだ。

 それから数分後、三匹ほどでまとまってこちらに向かって動いているモンスターの反応があった。即座にPTメンバーにその情報を伝える。今伝えておけば余裕を持って戦闘準備に移れる余裕がある。

「詳しい事は分かるか? わかるのなら教えてほしい」

 リフールさんの言葉に……自分はどうやらイノシシ、ペインサーチボアだろうと伝える。

「うわあ、またあのイノシシかあ。アーツを使うとすーぐ反応してくるからボクはあいつ嫌い。前も嫌いって言ったけど、何度も言いたくなるぐらい嫌な相手なんだよねー」

 ロナがそんな事を言う。ともかくやってくるのがダメージに対する反応が特に敏感なペインサーチボアならば、アーツをむやみやたらと撃つわけにはいかない。むしろほどほどに手加減して、前衛からこっちにターゲットが向いて隊列が崩れる様な事にならないよう注意を払わなければならないという、面倒な一面がある相手だ。

「ま、まあ今回は三匹なんですよね? それでしたら先日よりはましかと。そしてミリーさんには申し訳ないですが、支援メインで動いてもらう事になりますね……」

 獲物の大太刀を抜き放ちながらカザミネが方針を告げて来る。魔法使いのミリーはそうするしかないだろうな。魔法使いの火力が高い事が幸いして、下手に一発魔法攻撃を当てたら一気にターゲットがミリーに移ってしまいかねない。

 たまに初期魔法で軽く当てる位ならいいかもしれないが、レベルアップすることで魔法全体の威力が伸びるのが魔法使いだから……今のミリーの能力なら、ファイアランス一発で一気にモンスターの恨み、ヘイトを稼ぐことによって狙われまくる事になってしまいかねない。確実に行くなら、やはりこのイノシシに対しては一切攻撃しない事が無難だろう。

「適所適材、私は別に文句有りませんよ〜。私はシカとか蟻相手の時にどか〜んとやるのがお仕事ですからね〜」

 などと話をしているうちに、百里眼を使わなくても十分にモンスターであるイノシシ、ペインサーチボアが視界に入ってくる。それとほぼ同時にこちら側のおしゃべりも終了し、睨みあいになる。そして盾を構えたリフールさんがガンガンと盾を打ち鳴らして挑発アーツを使うと共に戦いの始まりを告げる。

「どうした? かかってこい! 貴様らの突進など、この盾の前にはそよ風に過ぎんぞ!」

 リフールさんの言葉を理解したのか、アーツの効果なのかはともかく……イノシシ三匹がその言葉に反応してリフールさん目がけて突進して来た。が、リフールさんの大盾はそんなイノシシたちの突進を受け止める。その一方でイノシシ達も助走距離が比較的短かったためか、盾にぶつかった事によるスタンの発症をしていない様だ。

「スタンはしていないからな、油断するな! 私の攻撃した相手を重点的に攻撃して、確実に一匹づつ潰せ!」

 さらにリフールさんの言葉が響く。イノシシ達もショートタックルのような形でリフールさん目がけて体当たりしたり、牙で突こうとしてくるがリフールさんの盾に阻まれる。

 そしてその盾に阻まれてよろけたイノシシの一匹に、リフールさんの鉄拳が飛ぶ。殴られたイノシシの背後からロナが蹴りを一発言入れて退避し、その後カザミネが峰で追撃する。これは、変に大ダメージを入れないためにみねうちなんて方法を取ったのだろう。

 シェルフィルさんと自分は前衛の邪魔にならない程度に矢を放ってダメージを確実に積み重ね、ミリーはリフールさんを回復する事をメインに動く。

「よし、そろそろこいつは一気に落とすぞ! 各自連携して技を叩き込むんだ」

 ある程度体力を削ったイノシシの一匹に対し、リフールさんの掛け声を切っ掛けにアーツを発動することに決めたらしい。文字通り瞬間的に大ダメージを与えて一気に倒してしまおうという事だな。

 最初はリフールさんが〈ナックル〉系のアーツ、《断頭》を放つ。これは首を斬り落とすのではなく、人で言う後頭部辺りを殴りつける事で大ダメージと高確率で瞬間的なスタン状態を発生させる技だ。動けなくなったイノシシに、続いてロナの妖精が軽く魔法をイノシシに対して当てる事でダメージを上げる妖精の連携を行う。

「次はボクが仕掛けるね! 《五芒星突き》いっ!」

 文字通り、ロナが繰り出した五回の正拳突きが五芒星を浮かび上がらせる。このアーツは威力もさることながら、次に繰り出すプレイヤーのアーツの威力をさらに高めると言う連携を重視したアーツであると聞いている。そしてそこにカザミネの妖精がこれまた軽く魔法を当てて、カザミネの行う連携の威力をさらに跳ね上げる。

「これで〆です、《紅散華》!」

 カザミネが繰り出したボスアーツの一つである完成系の《紅散華》が容赦なくイノシシの肉体をうがち、切り裂く。これで一匹目が消し飛ばされた事になる。

「ようし、いい感じだぞ! この調子で残り二匹も片をつけるぞ!」

 リフールさんは先日戦った経験から、ここに住むイノシシの持つ大体力の量を割り出したようだな。だからある程度削って、一気にラッシュをかけて倒すタイミングが分かるようになったのだろう。そのお蔭で、残り二匹のペインサーチボアもそんなに苦戦することなく倒すことに成功した。数が少なかったとはいえ、戦闘が先日に比べるとかなり楽だったことは言うまでもない。

「お疲れ様です、それにしてもリフールさん。もしかしなくてもあのイノシシの体力が大体これぐらいだっていう事を見切ったんですか?」

 戦闘終了後の小休憩時、カザミネがそうリフールさんに問いかけた。

「まあ、これぐらいなら十分いけそうかなというのは何度も戦って分かってきたからな。それに先日共に戦った事でここにいるメンバーの瞬間的に振るえる力の量も把握できた。そしてさらに妖精まで同行しているから、一気に押し切れる予測を立てる事が可能になった。万が一削り切れなくても、後ろに頼れる弓使い二人に魔法使い一人がいるから問題はないだろう。私が大きく間違えていなければ問題なく行けるさ」

 リフールさんはそう話す。ちゃんと考えた上での行動なら問題はないか……実際上手く行ったし、倒しきれなくてもリフールさんが言うようにシェルフィルさんと自分の弓攻撃が残っていたからな、いつでも打てるように構えに入っていたし。 

 ただ、強化した《ソニックハウンドアロー》や惑を振う機会がこの調子だと回ってこないかもな。まあ、それならそれでいいんだけど。特に惑の方はどれぐらいの能力アップが起きたのか分からないから、このイノシシで試す訳には危険要素が多かった。やるなら蟻かシカ相手だな。ここで変に焦っても良い事はないからな。
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スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv42  百里眼Lv38 ↑1UP 技量の指Lv53  小盾Lv39  隠蔽・改Lv7  武術身体能力強化Lv90 ダーク・チェインLv49 義賊頭Lv44 ↑1UP 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.92

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34  釣り LOST!  料理の経験者Lv23 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 6

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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