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連載

街に帰還

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 翌日ログインした自分は、ハーピーの母親にそろそろ街に戻ることを告げた。ハーピーの母親はもう少しのんびりしてくださってもよかったのですが……と残念そうな表情を浮かべたが、強く引き止める様な事はしなかった。その代わりいつでも気軽においでくださいと言われたが。

 ツヴァイを始めとしたブルーカラーのメンバーはもうしばらくここの森にて訓練を行い、スキル上げとプレイヤースキルを磨いていく予定だそうだ。特にツヴァイが率いているメンバーの方は、自分達よりも奥地に足を踏み入れているらしい。そこまで行くと自分達が戦っていたモンスターよりもさらにワンランク上の連中が出て来るとの事で、スキルレベルの上昇するスピードがなかなかいいらしい。もちろんそいつらの相手は相応にきついらしく、ちょっと戦ったら引き返して長めの休憩を繰り返すことになるんだそうだが。

「それじゃ、また何かあったらよろしくな! それと、人手が欲しい時は遠慮なんかしないでくれよ!」

 そんなツヴァイからの言葉を貰って、ブルーカラーのメンバーとは分かれた。森を出る為の案内は、来た時と同じくシェルフィルさんが担当してくれた。帰りは途中で訳のわからないモンスターに襲われる事も無く、あっさりと外に出る事が出来た。シェルフィルさんはこのまま森の中に取って返して、訓練を継続するつもりなのだと言う。

「それでは、縁があればまた会おう。それまで、息災でな」

 そういい残し、シェルフィルさんは森の中へと消えていった。その後姿を見送った後、自分はアクアを呼び戻すことにした。自分が大声で「おーい、アクアー!」と呼びかけたらすぐに飛んでくるアクア。どこに居たのかは不明だが、自分の声は距離があっても聞き分ける事が出来るんだろう。かなり前の話だが、冗談半分で呼んだときもすぐに来てくれたことがあるし。だが、戻ってきたアクアの嘴には、一匹のバッファローが啄まれていた。

「もしかして、これから食事だったか?」「ぴゅい」

 呼び出すタイミングが悪かったかな……とりあえずアクアの食事をが終わるのを待つ。じっと見つめられていると食べにくいだろうと思い、自分はアクアの食事が終わるまで背を向けていることにした。そして数分後、バッファローは一匹丸々、アクアのお腹に収まることになった。

「ぴゅいぴゅい、ぴゅい」

 アクアは自分の大きさを二・五メートルモードに変化させた後に座り込んだ。乗って、という事だ。なので遠慮せずに背中に乗り、ゆっくりと立ち上がったアクアにのんびり南街にとお願いする。その途中で何度かバッファローを見かけたが、すぐに回れ右をして逃げていく。おそらくアクアの姿を見て恐れをなして逃げているんだろう。ここで狩りをする時はアクアを下げておかないと駄目か。とりあえずこの調子なら危険はなさそうなので、ちょっとやっておきたい事に目を向ける。

 やっておきたい事とは、先日の戦いでスネーク・ソードのスキルである〈ダーク・チェイン〉が五〇になっていたので、習得したアーツの確認とスキルの進化作業。五〇になって覚えたアーツは《パワードレイン》というアーツだった。ドレインと付いているようにスネーク・ソードを突き立てたモンスターから力を奪うアーツなのだが、ちょっと変わっている所は吸い取る能力が部位によって変わるという点だろうか。

 どこに突き刺しても多少のHPを吸う事は可能なようだが、そこからさらに部位によって吸い取る力の内容が変わる。頭に突き刺した場合は魔法の威力向上やMPの回復力向上。手に突き刺せば腕力が上昇。足の場合は移動速度や蹴り系統の威力が向上。胴体ならば耐久性が上昇すると言った事の様だ。

 普通のスネーク・ソードだと狙った場所に突き刺すのはちょっと難しいかもしれないが、今の自分が持っている惑&クィーンの分身体による連携攻撃が使えるのなら、ほぼ狙った部位に当てる事が出来るだろう。

 そして肝心なのはさらに上位スキルに進化できる事だ。その進化先を確認すると、今回は二つの方向性が示されていた。〈ダーク・スラッシャー〉と〈ダーク・ピアーシング〉だ。何とも名前が香ばしいが、それはさておき確認を。〈ダーク・スラッシャー〉は、スネーク・ソードの斬る攻撃や能力を重視したスキルになっているようだ。突き攻撃が弱くなるという事ではない様だが、得意な方向性を断ち切る方向に向けている。また、斬ると言う動作上、攻撃範囲は広めだ。

 もう一方の〈ダーク・ピアーシング〉は突く事に重きを置くスキルになっている。説明は、〈ダーク・スラッシャー〉の説明の斬ると突くを入れ替えた感じだな。ただ、こちらは〈ダーク・スラッシャー〉よりも発生が早くリーチもあるという点は違うか。その分攻撃面積が突き系統のために狭くなっている。つまり、斬ることによる範囲の広さを取るか、攻撃範囲を狭める代わりに発生の速さとリーチを取るかという二択なのだろう。

(とはいえ、弓という攻撃手段を持つ自分は〈ダーク・スラッシャー〉の方が良いか。攻撃の発生が早いという点は魅力的だが、リーチの長さは弓矢による攻撃の方がはるかに上である以上、〈ダーク・ピアーシング〉の方にはあまり魅力を感じないというのが正直な感想だしな)

 方針が決まったので、さっさと〈ダーク・チェイン〉からExPを五消費して〈ダーク・スラッシャー〉に進化させる。進化させたことによって覚えたアーツは《切断力強化・闇》というその名前のまんまのパッシブスキルだった。説明するまでもないが……スネーク・ソードを用いた切断力を強化するのだが、一般的なものと違うのは闇属性攻撃による切断攻撃にのみ適用されるという事か。そんな限定されている面がある以上、効果は高いと思われる。

 スキルの進化が終わった時には、すでに南街が〈百里眼〉を使わずとも十分に見える距離になっていた。アクアに乗せてもらったまま、自分は南街の門をくぐる。とりあえずは消費した食材関連の補充、そして鍛冶屋さんに行って武器の修理素材なども調達しないと。やはり数日街に戻らないだけで、それなりに物資は減ってしまったからな。

 そんなこんなで一通り買い物を済ませ、小さくなったアクアを頭にのせて宿さがしも済ませて今は宿屋の個室の中。時間を見ると午後の十一時を五分ほど回った所。狩りに出るには中途半端だし、買い物などは済ませてしまったから街にもう一回繰り出す理由もこれといって無く。さてどうしようかなと自分はのんびり考えていた。

(んー、ここでこのままボーっとしているぐらいなら、いっそ薬草の収集に出向いて適当にポーションの補充でもするか? ログアウトするにはちょっと早いし、まだあまり眠くも無い。よし、もうちょっと動くか)

 そう決めて立ち上がろうとしたその時、スタッという音と共に、誰かが自分の宿屋の個室の降りてきた。そんな事をする人物は限られている。

「親分、お戻りになられたところに申し訳ございやせん。親分に仕事の依頼を預かってきておりやす。あっしらだけで勝手な判断をする訳にも行きやせんので。まずはこの手紙を見て下せえ」

 降りてきたのはやはり義賊リーダーだった。それにしても自分にメッセージでは無く手紙ねえ、なんじゃらほい。

〔義賊頭、以前は世話になりました。獣人の北町隠蔽兵のカリーネです。本来であればこのような文を送るのはよろしくない事なのかもしれませんが、もう一度お手を拝借したい事が有りまして、貴方様の部下にお願いさせていただきました。

 さて、早速お願いしたい仕事の内容なのですが……これは、近く北町で行われる獣人の戦士達に加えて、他種族の飛び入り参加も認めたトーナメント大会中の見回りです。今年は東街での一件や、以前に義賊の皆様が協力してくださったラウガ討伐の一件もあり、中止すべきではという意見も議員の中から多数出ました。

 しかし、この大会は一種のガス抜きの役割も果たしており、さらに中止となると東街の一件で萎縮してしまったのか? という意見が一般の人の中から出て来る可能性が高いです。そう言った噂などから始まるかげりがでてくるといろいろと面倒な事も起きてきますので、例年通り開催されることがやや強引ながらも決定しました。

 そして貴方様はお分かりだと思いますが、北町隠蔽兵はラウガの一件により大勢手練れを失っております。その影響で隠蔽兵はこういった大きなイベント中、自警団や兵士では見回ることが難しい影の部分の警護を行う事が多いのですが、その仕事が今回はとても困難となっております。

 そこで、義賊団の皆様に今回のトーナメント開催中の期間にのみ見回りへの協力をお願いしたいのです。もちろん無理にとは申せませんが、どうかご一考してくださいますよう、お願い申し上げます〕

 ああ、ラウガの一件で組んだあのカリーネさんか。それにしてもトーナメントねえ。まあ、いわば一種のお祭りなんだろう。もちろん出場する人は勝つために真剣そのものなんだろうが、その熱い戦いを見て盛り上がろうという面も当然あるはずだ。そうなれば、それを楽しみにしている人も数多くいるのはおかしい事ではない。

 それが突如中止になったらどうなるか。ラウガの一件はほとんどの人が知らないし、東街に押し寄せたバッファローの集団からの防衛戦は街に居る人には被害はあまり出なかった。

 地震とかの天災で大勢の人がなくなったから自粛しようとかなら中止になったかもしれないが、表向きには多数の死者が出たわけではない以上……そう持っていくには苦しいか。それに手紙にも会った様にやると決まってしまった以上、それを今から覆そうという事は考えに入れるべきではないな。

「ふむ、お前も見てみろ。まずはそれからだ」

 義賊リーダーにも手紙を見せて、反応を待つ。読み終わった義賊リーダーは「なるほど、こういう事ですかい」と顎を撫でる。さて、どうするかな……個人的には協力しても良いが、こいつら部下たちの都合もあるからな。ましてや今回は北町の見回りという仕事だ。とにかく部下達全員を総動員させる必要がある。

「親分はどういうお考えで?」

 義賊リーダーの問いには、「個人的には協力してやってもいいとは思っている。が、今回は見回りという手がいくらあっても足りない仕事だ。お前たちの都合を考慮しなければならない」と伝えておく。こいつらはこいつらで義賊として働きつつ、表向きの稼業も持ってるからな。それに今回は義賊の仕事とは少しずれている以上、部下達に協力を強制はできない。

「親分がそう言うのでしたら、あっしらはそれに応えるだけでさ。それに、北町は親分の友人が持っていた魔剣を奪い取ろうとした馬鹿どもがいた所ですからね。あの時の生き残りがまた馬鹿な真似をしないとも限りやせん。そういう意味も含めて、あっしも今回の仕事に協力しても良いと思う訳でさ」

 ──義賊リーダーに指摘されて思い出した。確かにツヴァイの魔剣を奪いに来た連中、大半はあの時の戦いで消えたが全滅はしていないんだよな。そいつらがまだ北街の中で燻っていたとしたら面倒な事に発展するかもしれない。

「──そうだな、お前の言う事も最もだ。部下全員に通達しろ、仕事だ」

 義賊リーダーは頭を下げると同時に天井裏へと消えた。さて、自分も明日になったら北町に向かう事にするか。
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スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 剛蹴(エルフ流・一人前)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv54  小盾Lv39  隠蔽・改Lv7  武術身体能力強化Lv90 ダーク・スラッシャーLv1 NEW! 義賊頭Lv44 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.94 ↑UP

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34  釣り LOST!  料理の経験者Lv23 鍛冶の経験者LV28 人魚泳法Lv9 

ExP 4

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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